魔法少女まどか☆マギカ〜謎の少年と魔法少女〜 作:TRcrant
——魔女
それは、絶望を振りまく存在でもあり、魔法少女の敵。
——魔法少女
それは、魔女を倒す使命を与えられし者。
そんな二つの言葉が存在する世界で、魔法少女にとって魔女という存在は敵ともいえる。
そんな魔法少女は願い事を一つ叶える代わりに、魔女退治と言う役割を担うのだ。
だが、その願い事は一歩間違えれば身の破滅を呼ぶことさえある。
危険なものなのだ。
「僕と契約して、魔法少女になってよ」
もし、あなたが白い猫のような生物にこのように言われたら何を願うだろうか?
そして、その願いは今後の未来を戦いに染めるのに、ふさわしい物なのだろうか?
見滝原市内某所。
薄暗い周囲にあるのは鏡のみという、まるでおとぎ話の中にいるような空間に、金髪の髪を後ろでぐるぐる巻きにまとめた少女がいた。
外見では、どこにでもいるただの少女だろう。
ただ異なっているのは……
「ティロ・フィナーレっ!」
彼女の前に置かれた、巨大な大砲のようなものと、その先にいる薄暗いにも関わらずに異様な存在感を放つ、真っ黒な塊だろう。
その塊を、彼女たちはこう読んでいた。
―――絶望や呪いを振りまく、”魔女”と
その大砲から放たれた光は、彼女の前に立っていた真っ黒な塊……魔女を貫いた。
「■■■■っ!!!」
必殺級の攻撃を受けた魔女は、断末魔と共に消滅しその瞬間、彼女がいた空間はぐにゃりと姿を変え、時間もかからずにごくごく普通の空間に変わった。
そこは、廃墟ビルを思わせるほどあちこちのコンクリートはぼろぼろになっており、鉄筋がむき出しになっていた。
「ふぅ………今日もなんとか倒せたわね」
『さすがだね、マミ』
力を抜く様に息を吐いた瞬間、少女の体は一瞬ではあるが光を発すると制服のような服装に変わった。
「ありがとうキュゥベぇ」
白い猫のような生物………キュゥべぇに金髪の少女………巴マミは柔らかい表情を浮かべるとお礼を言った。
彼女、巴マミこそが魔女を狩る魔法少女なのだ。
そして、この日もいつものように魔女を倒した。
「それにしても、今日の魔女はあっけなかったわね」
『確かに。ただ立っているだけで使い魔もいなかったし』
マミの呟きに、キュゥべぇが相槌を打った。
「あんな風な魔女って、これまでにいたのかしら?」
『いないという確証はないね。でも、いたとしても珍しいという部類に入るよ』
「まあ、考えていても仕方がないわね。グリーフシードを回収して帰り————」
浮かんでいた疑問を振り払うようにつぶやくと、彼女から少し離れた場所に落ちている魔女の卵であるグリーフシードを拾おうとしたマミは、言葉を失った。
『どうしたんだい? マミ』
それを見たキュゥべぇが、不思議そうに尋ねる。
「見てキュゥべぇ! あそこに人がっ!!」
マミが指さす方向には、柱の陰になっており一歩間違えたら気づかなかったであろう場所に横たわる人だった。
マミは急いでその人物の元に駆けよる。
その人物は、黒髪の少年だった。
「ッ! ひ、酷い」
マミは、少年のひどい有様に口を手で覆った。
少年の着ていたマントのような服はぼろぼろに裂け、裂けている箇所には切り傷のようなものと出血があった。
それが至る所にあるのか、少年の周囲には血だまりが出来つつあった。
『大変だマミ! 急がないと彼が助からなくなる!!』
「わ、分かってるッ!」
キュゥべぇにせかされるように、マミは慌てた様子で男の治癒魔法をかける。
すると、今まであった傷がまるで最初から存在していなかったかのようにふさがった。
「ふぅ………」
それを確認したマミは、胸を撫で下ろす。
「後は、彼を人目に付く場所に移せばいいわね」
そう呟くと、マミは少年を背中に背負うと歩き出した。
この時、グリーフシードをしっかり回収していることから、彼女のベテランが伺えた。
「ここなら誰かに見つかるわね」
廃墟ビルから出て、しばらく歩いた場所にあるベンチにたどり着くと、マミは周囲を見ながらそう呟いた。
そこは、廃墟ビルのある場所に比べれば、人通りは激しくすぐに発見される可能性がある場所だった。
「あとは、彼をここに横たえて………」
マミは、そこまでつぶやくが再び固まった。
なぜならば、少年の手が彼女の制服を力強く握りしめていたからだ。
(え? な、なにこれ? 一体どうなって……)
突然の事に慌てふためくマミ。
そんな彼女のそばには、キュゥべぇの姿はなかった。
(も、もしかして、起きてる?)
マミは、そんな疑いを抱いていた。
それを確認するために、彼女は行動に移した。
「あ、あの……もし起きてたら、服から手を放してほしいんですけど」
「………」
「………」
マミの呼びかけに、少年は何も答えない。
それは、少年が起きていないことを意味していた。
(無意識的につかんでるっていうの? というより、一体どうすれば………)
考えること数分。
彼女が出した結論は………。
「はぁ………一旦私の家に運びましょうか」
自分の家に連れて行くことだった。
(男の人を家に上げる事になるだなんて)
マミはため息をこぼしたくなるほど、気を落としていた。
(まあ、何かされたら魔法を使って逃げればいいよね)
マミは、万が一にも襲われた時に逃げれるように、シュミレートをしながら帰路につくのであった。
それが、すべての始まりだとも知らずに。