時は少し遡り、健二が2度目の大本営召集の時。
俺は元帥閣下の執務室の扉の前にいた。
コンコンと扉をノックする。
すると「はーい」という女性の声が聞こえ扉を開けた。
「失礼します。原田健二少佐参上いたしました。」
扉を開けたのは艦娘の高雄さんだった。
高雄さんは元帥の秘書官である。
「よくきてくれたの。とりあえずそこに座っておくれ。」
元帥は名前を加藤弘という高齢の人だ。
おそらく60歳は超えているだろう。
そしてこの元帥は俺が提督になりたての頃、色々と助けてもらっている。
「失礼します。」
と言いながらソファに座る。
「堅苦しいのはやめじゃ。ここは儂とお主しかおらんからの。他の人の目がないとこでは普通にしていいからの。」」
言われた途端俺は気を緩める。
もちろん加藤元帥に失礼にならない程度だ。
すると高雄さんがお茶を出してくれた。
「はい、どうぞ。熱いので気をつけてくださいね。」
「ありがとう。高雄さん。」
お茶に口をつける。
今日の会議でもグチグチと文句を言われていたから疲れた。
「それで原田提督、会議で言っていたことは本当かの?」
会議で言っていたこと。
それはレ級との取り引きの話だ。
「もちろんですよ。うちはもう4人も沈められましたからね。もうレ級とは戦いたくないですよ。」
「……お主、その発言は会議でしてはならぬぞ?敵前逃亡として訴えられかねんからの。ま、それはそれでお主らしいからの。」
長門、照月、神通そして瑞鶴。
大切な仲間が殺された。
もう誰も失いたくない。
「それでじゃな、今度…そうじゃな、一週間後に1度お主の鎮守府に行くことにする。儂も1度レ級と話してみたいからの。」
「わかりました。鎮守府で迎えの準備をしておきます。」
「うむ。儂も護衛として大和と武蔵それから大鳳を連れて行く。何も心配いらんじゃろ。」
最強と謳われている戦艦大和と戦艦武蔵。
この2人を出すほどだ。
加藤元帥もかなり警戒しているようだ。
「それではそろそろ鎮守府に戻ります。うちの子たちが心配なので。」
「うむ、頼んだぞ。」
「失礼します。」
そして俺は鎮守府へと帰っていった。
そして一週間後元帥閣下がここショートランド泊地にやってきた。
「ようこそ加藤元帥。遠路遥々お疲れ様でした。」
「じゃから普通に接してくれて良いというておるのに…。」
「うっ…すみません。」
とりあえず俺の執務室まで案内する。
「それで原田提督よ、奴が来る日などはわかるのか?」
「わかりません。レ級は…いやレイは何か欲しいものがあるときにここにくるはずです。なので正確にはわかりませんがおそらく来週ぐらいに来るでしょうね。」
「来週?何故そう思うのじゃ?」
「おそらく牛乳を取りに来ると思います。」
「牛乳??」
そう、牛乳。
あの深海棲艦になっていた電が取りに来る筈だ。
あの電はなんなんだろう?
本人も電って言っていたし。
「まぁ、お主がそういうのなら儂は信じるぞ。」
それからまた一週間後。
哨戒中の部隊から連絡が入った。
馬鹿でかい艦載機が鎮守府に向かっているのを見たと。
「ついにきたか…。」
「いや原田提督よ、馬鹿でかい艦載機とはなんじゃ?」
「とりあえず工廠に行きましょう。見ればわかりますから。」
響を呼んで工廠に向かう。
すると響からあることを言われた。
「司令官あの電は助けられないのかい?」
そう響は電の姉だ。
妹の電があんな姿になってショックを受けていたのだ。
「ふむ、そういえば報告にあったの。深海棲艦の姿になっていた電か…。儂の方から聞いてみよう。何か理由があるのかもしれんからの。」
コクリと頷く響。
「それじゃあ大発に乗ってくれ。」
響が出した大発に加藤元帥と一緒に乗り込む。
「大和、武蔵、大鳳、護衛頼んだぞ。」
「「「はい!」」」
そして移動すること5分。
レイが空から降ってきた。
「……なぁ原田提督。深海棲艦って空飛べるのかの?」
「こいつがおかしいだけです。あとあいつを呼ぶときはレイと呼んでください。名前だそうです。」
「個体名がついてる時点でおかしいのじゃがな…。レイか…。」
今までの深海棲艦には名前というものはなかった。
だがこいつにはなぜか名前がある。
さてそろそろ要件を聞くとするか。
「原田提督よ、儂が喋っても良いかの?」
「わかりました。気をつけてください。」
そう言いながらレイと向き合う。
「君がレイ君かね?」
「ソウダ、貴様誰ダ?」
「儂は加藤弘じゃ。こう見えても元帥という役職をしておる。」
レイは興味のなさそうな目で見ていたが元帥と聞いて少し目を見開いていた。
まるで元帥という役職を知っているかのようだった。
そしてレイはこちらに目をやってきた。
「それでレイ。今回はなんの用事だ?」
「牛乳ガ無クナッタカラ牛乳ガ欲シイノデス!」
電が艦載機から降りながら要求を伝えてきた。
というかやはり牛乳だったか。
「そうか…牛乳ならちゃんとあるから持ってこよう。
「アリガトウナノデス!牛乳ガ無イト生キテイケナイノデス!」
……それは言い過ぎなんじゃ無いか?
「加藤元帥牛乳を取りに行くので一旦工廠に戻ります。」
「うむ…。」
元帥は何か考え込んでいるようだ。
響にお願いして工廠まで戻ってくる。
そして牛乳を大発に乗せてまたレイのとこまで行く。
牛乳を電に渡すとそそくさと艦載機に乗った。
「感謝スル。マタナ。」
そう言ってレイが艦載機に乗ろうとする時加藤元帥が引き止めた。
「ちょっと待ってくれんかのう。1つ質問をさせてくれ。」
「ナンダ?」
「その電はどういう経緯でその姿になったのじゃ?」
「別ニ特別ナコトハナイ。浜辺デ倒レテイタカラ助ケタダケダ。モウイイカ?」
加藤元帥は考え込むかのように黙り込んだ。
レイはそれを肯定ととったかのようにさっさと帰っていった。
そして無言のまま俺たちは鎮守府に帰投した。
「加藤元帥どうかしたんですか?」
「うむ…。もしかしたら我々が間違っていたのかもしれんな。」
「間違っていたですか?」
「深海棲艦にも心優しい奴がいるのかもしれないということだ。」
心優しい?あのレイが?
元帥は何を言っているのだろうか?
「元帥閣下よろしいでしょうか?」
「ん?大和君どうしたんじゃ?」
「あのレイ君ですが、姫の力を感じました。電ちゃんもです。」
姫の力を感じた!?
ということはあの2人は姫級並もしくは姫級以上の力があるということか…。
「そうか…。わかった。原田提督儂は大本営に戻る。そしてレイに絶対に手出しすることを禁止とする。よいな?」
「了解しました。」
「それじゃあの。」
そして加藤元帥は翌日に帰っていった。
加藤元帥の謎な発言もあったがそれも後でわかるだろう。
また牛乳、仕入れないとなぁ。