俺ガイル~二次 雪ノ下父が贈賄容疑で逮捕!雪乃が独立する? BT付き   作:taka2992

11 / 45
第十一話(最終話)

 

 卒業式の3日前、土曜日の学校へ行くと、森閑として寒々しかった。時々、かすかな人の声が冷たい廊下に響いてくる。13時集合だったが俺は30分遅れた。学生なのに休日出勤なんて勘弁してほしい。

 部室に到着すると扉が開いていた。だが誰もいない。先着の二人も今日はカバンを持っていないだろうから、置いてあるものも何もない。テーブルの上には「みんな講堂だよ!」と書いた紙があった。

 

 講堂にテクテク歩いていくと、真っ先に聞こえてきたのが一色の声。

 

「あ、比企谷せんぱ~い。遅いじゃないですかぁ~」

 

 そういって俺に手を振る。見ると生徒会の面々と一緒にパイプ椅子を並べていた。だだっ広くて寒い講堂には、20人くらいの生徒が働いていた。演壇では飾りつけも行われている。その中に奉仕部の二人もいた。そして城廻先輩もいたのは意外。ちょこまかと動き回っている。

 

「ヒッキーこっちだよ!」

 

由比ヶ浜が手招きする。すぐ近くの雪ノ下も俺に目を向けたが、バツが悪そうにすぐに作業へ戻る。

 

「あれ、持ってきた?」

 

由比ヶ浜がニヤニヤしながら言う。

 

「ああ、あれな」

 

 俺もつられて口元がゆがんでしまう。昨日、千葉街道沿いのドンキでネコ耳セットを買ってきてあった。言いだしっぺの俺が用意することになっていたのだ。

 

「はぁ~」

 

雪ノ下が諦めたようにため息をついた。

 

「どれかしら?」

 

俺はコンビニ袋からネコ耳セットを取り出し、由比ヶ浜に渡した。装着も由比ヶ浜に託した。

 

「はーい。ゆきのん。まずネコ耳だよ」

 

そういって由比ヶ浜はカチューシャと同じ構造をしているネコ耳を雪ノ下の頭につけた。

 

「か、かわいい~!」

 

 そして、しっぽはスカートの後へクリップで留めるようになっている。取り付けると、ダラリと下がったので、由比ヶ浜が途中から曲げて大きな釣り針のような形にした。

 

その様子を見ていた生徒たちが集まってきた。城廻先輩も興味津々の様子で歩いてくる。

 

「わぁ~、雪ノ下せんぱ~い。どうしちゃったんですかぁ。そんなことする人だったんですね~」

 

一色がニコニコして雪ノ下の周囲を回る。

 

「雪ノ下さん。こういう趣味があったの?かわいいね」

 

 城廻先輩が雪ノ下のネコ耳を撫でる。

 

「あの。これは・・・」

 

雪ノ下の顔に赤みがどんどん増す。

 

「いろはちゃん、これはね、ゆきのんの罰ゲームなんだよ~」

 

「へぇ~、でも似合ってますよね。さすがです~」

 

「椅子の配置はもうそろそろ終わりそうね。次は、卒業生用のリボン作りだったかしら」

 

「そうですね~。じゃあ、残りは生徒会でやりますから、奉仕部の人たちはリボン作りに取り掛かってもらえますか?」

 

 俺たちは講堂を出て、職員室の隣りの教室へ向った。雪ノ下は恥ずかしそうに早歩きで前を歩く。やはりしっぽが気になるのかどことなくぎこちない。その様子を見て俺と由比ヶ浜は微笑んだ。

 

「で、さっき、なんで城廻先輩がいたんだ?卒業生だろ」

 

「特に何も聞いてないけど、やっぱりいろはちゃんたちの生徒会が気になったんだよ」

 

 目的の教室には、巻いてあるリボンが山積みになっていた。それを切って、色違いに組み合わせ、最後は花を模したワッペンの下につける。その作業をやるようだ。どう見ても俺に向いている作業じゃない。だが、すでに半分くらい作ってあった。

 

「さっそく始めましょ」

 

そういうと雪ノ下はリボンを作り始めた。由比ヶ浜もそれにならう。

 

「マジ?俺こういうの無理かも」

 

「まあ、そういわないで頑張ろう、終わったら平塚先生がごはんおごってくれるって」

 

 さきほどから雪ノ下が黙っている。やはり、恥ずかしいのか少し機嫌が悪くなっているようだ。だって、罰受けるとか言い出したの自分だぞ?

 

しかたなく、俺も見よう見まねでリボンを作る。だが、一向に効率が上がらない。しばらく無言の時間が続いたが、突然カシャッと音がした。由比ヶ浜が携帯で雪ノ下の写真を撮っていた。

 

「由比ヶ浜さん」

 

雪ノ下がひきつった笑顔でいった。

 

「いいじゃん。誰にも見せないから」

 

「比企谷君がもう少し意地悪じゃなければよかったのに」

 

「まあでも、これでたぶん、奉仕部の活動も一区切りついたということだろ。だから先生も勝負のこと言い出したわけだし」

 

「そうね・・・思えば色々なことがあったわね」

 

「あ、ヒッキー、こんなんじゃ卒業生に渡せないよ?」

 

由比ヶ浜が俺の作ったリボンを一つつまんで言った。

 

「え?そうか?」

 

雪ノ下が立ち上がって見に来た。一つ取ってマジマジと見る。

 

「比企谷君、これじゃダメだわ。赤と白のリボンの長さが違っているじゃない」

 

「だいたいがだな、俺にこんなことやらせるほうが・・・」

 

「こんな簡単なこともできないのかしら。これだったら家で寝ててもらったほうがマシだったわね」

 

そういって雪ノ下は自分の席に戻ろうとして身を翻した。しっぽが俺にふわりと当たった。

 

「るせー。こんな、女子供のやるようなことやりたくないわ」

 

「ずいぶんな言い方するのね。あなた差別主義者だったの。これだって立派な仕事よ。余計な手間がかかりそうだから、もう何もしなくていいわ」

 

「そうかよ。わかったよ」

 

俺が立ち上がろうとすると由比ヶ浜がポツリと言った。

 

「ま~た夫婦喧嘩してるし」

 

「え?」

 

思わず俺と雪ノ下が聞き返した。

 

「だって、ゆきのんとヒッキーのそういうのって、誰が見ても夫婦喧嘩だし」

 

「そうかしらね」

 

雪ノ下が気まずそうに由比ヶ浜を見つめる。

 

「私気がついてたよ。かなり前から。それに、ゆきのんとヒッキーって校内で結構うわさになってるよ? 私近くにいるもんだから、文化祭の終わったあたりから、あの二人どうなってんのってよく聞かれてたんだよ。そのたびに知らないって言ってたけど」

 

「そ、そう・・・」

 

「ゆきのんとヒッキーって、もう何十年も一緒に過ごしてきた夫婦みたいじゃん。ずっと前からそうだったし。ゆきのんがヒッキーのこと言うときって言葉は悪いけど何か楽しそうだし。二人の会話とか喧嘩とか始まると私入れないなぁって」

 

俺と雪ノ下は無言でいるしかなかった。

 

「ゆきのんもさ、ヒッキーのこと好きなんでしょ? ゆきのんは思っていること隠すのあまりうまくないから、すぐ態度に出るじゃん。はっきりわかったのはやっぱり修学旅行のときだよ」

 

「由比ヶ浜さん・・・」

 

「私のこと気を使っているんだったら、もう大丈夫だから。私もヒッキーのこと好きで、色々アピールしてたけどさ、ヒッキーは全然相手してくれなくて、さすがに醒めちゃうでしょ。ゆきのんだったらあきらめもつくってもんだよ。だからもうそういうの止めればいいのに」

 

「由比ヶ浜さん・・・仮によ? 仮にそうだっとして・・・あなたは奉仕部にいづらくなることは・・・というか、奉仕部止めるとか考えてしまうのかしら」

 

「わからないよ。正直いって・・・どうなるか」

 

「由比ヶ浜さん・・・私はね、由比ヶ浜さんに感謝しているの。友人関係だってずっと続けていきたい。だから、あなたがこの部や私から離れるようになるのだったら、私は比企谷君じゃなくてあなたとの友人関係を優先するつもりよ。これは彼にも言ってあるのよ」

 

「ゆきのん!!」

 

ガバッと由比ヶ浜が立ち上がる。なみだ目を含んだ顔がワナワナとふるえている。

それにつられて雪ノ下も立ち上がった。

 

「ゆきのん!大好きっ!」

 

由比ヶ浜が雪ノ下に抱きつく。なにこれ? どんな青春ドラマ? おい雪ノ下、そこで顔を赤くするな!

 

「大丈夫ですよ、結衣さん。これからは兄の勝手にはさせませんから~」

 

 そう言って小町が入ってきた。傍らには不思議なものを見ているような表情の川崎大志がいた。

 

「おまえらいったいなに?」

 

俺の問いかけを無視して小町が雪ノ下の腕にしがみつく。

 

「私も雪乃さんLOVEです~!」

 

「小町さんまで・・・」

 

由比ヶ浜と小町に抱きつかれて雪ノ下が苦しそうな笑顔を見せる。笑顔というかちょっとうろたえているな、あれは。

 

「おい、ここでどうして小町と大志が登場する?おかしいだろ」

 

「小町さんと大志君は奉仕部に入りたいんですって。それで、今日も来たいっていうから、来てもらったのよ」

 

「あ、俺も総武高受かったっす。姉からは奇跡といわれてるっす。だから、比企谷さんに誘われて奉仕部入りたいっす。よろしくお願いします、お兄さん」

 

「お前、殴るぞ。お兄さんと呼ぶな」

 

「そうで~す。前にも言ったとおり、小町の使命を果たすために駆けつけたのです。お兄ちゃんには雪乃さんぜぇった~い渡しません。ね、結衣さん!」

 

「うん、そ~だそ~だ!」

 

お前らなんかおかしいぞ。変だぞ。なんなの? ここは百合の花園なの? 女だけで青春するな。アマゾネス軍団の結成か? そんなん勝てるわけないじゃん。

 

「由比ヶ浜さんと小町さん。ちょっと落ち着きましょう。お茶でも飲みましょうか。部室で。じゃあ、比企谷君、あとよろしく。しばらく仕事続けてくれるかしら」

 

そういうと雪ノ下を中心とした女三人の結合体はゆっくりと部屋を出ていった。俺はあっけにとられてそれを見送った。しっぽだけが左右に揺れていた。

 

 残されたのは俺と大志。

 

「あれ、なんなんすかね」

 

「知るか!知りたくないし。百年研究したって誰も解明できん!」

 

「自分には、お兄さんが雪ノ下さんを取られたようにみえたんすけど」

 

「なあ、お前だって雪ノ下に小町取られただろ?」

 

「やっぱそうっすか」

 

えへへ、みたいな顔で大志が笑った。

 

小町や大志の加入で新学期からは奉仕部がどうなるか想像もできない。いや、女三人の結合体に悩まされることだけは確かだろう。やはり俺の青春ラブコメを無理して捏造するのは間違っていた。だが、あいつらも絶対間違っている!

 

-----完-------

 

※稚拙な乱文失礼しました。読んでくださった方、ありがとうございました。9巻に期待しましょう。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。