俺ガイル~二次 雪ノ下父が贈賄容疑で逮捕!雪乃が独立する? BT付き   作:taka2992

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第三話

 

 数日のあいだ、平塚先生救出作戦は遅々として進まなかった。というのも、佐川明彦に隙がなかったからだ。

 そんなある日、昼休みに俺と雪ノ下が平塚先生に呼び出された。職員室の一角にある応接スペースで三人が向かい合った。平塚先生の顔つきが妙に硬い。

 

「君たちを奉仕部の代表格として呼んだ。悪くいえば首謀格だが。少し聞きたいことがある」

 

「なんでしょうか。あらたまって」

 

「私の付き合っている人を君たちは調べているようだな。なぜだ?」

 

「どうしてそう言えるんです?」

 

俺がそう訊ねると、先生はタバコを一本取り出して火をつけた。ふう~と紫煙を吐き出す。

 

「雪ノ下が彼と話しをしているのを目撃した。スポーツクラブで。そして彼には、あの女性はうちの生徒だと説明した。彼によるとその女性は大学生で、私の知らない名前を名乗ったそうだ。

 それから、その女性からと思われる電話の着信があったらしい。着信履歴に残っている番号を教えてもらったら、なんと比企谷、君の番号だった。どうした雪ノ下、君がこういうことをやるとはな。比企谷の悪影響か?」

 

「すみません。それは・・・」

 

雪ノ下が謝る。しかし、おれはその先の発言をさえぎった。

 

「先生、確かに俺たちは調べています。佐川さんのことを。率直に言います。俺たちは先生が結婚詐欺に巻き込まれているのではないかと疑っています」

 

 しばらく先生の口からは言葉が出てこなかった。一層顔つきが鋭くなる。

 

「まさかな。心配してくれてありがとうと言いたいところだが、今回ばかりは違うと思うぞ。大はずれもいいところだ」

 

「いえ、俺は先生が騙されていると確信しています。これまでに、お金を貸してくれと頼まれたことは?」

 

「ちょっと、比企谷君」

 

「ない。金は持っているように見えるな。私が騙されているという根拠は? 確かなものがあるのか」

 

「ありません。今のところは」

 

先生は呆れたような表情を見せる。

 

「だったらそろそろ矛を収める潮時だ。これ以上、首を突っ込んでくるのは高校生の領分を越えているぞ。昨日も誰かに尾行されているのに気がついたと言っているし。つけてきたのは男だったそうだ」

 

「昨日ですか?」

 

雪ノ下が怪訝そうな顔をするが、はっと閃いたようにうなずく。俺も誰が尾行したのか想像がついた。少なくともその依頼者については。

 

「わかりました。佐川さんに対する直接的な尾行は止めます。でもそれ以外の調査は止めません」

 

「あくまでそう言うのか」

 

「そうです」

 

「比企谷君、相当失礼なことを言っているのよ、あなた。いくら確信があるからって・・・先生の立場を無視するつもり? これは相当な迷惑行為よ」

 

「そうか、比企谷。君がそこまで骨があるとは思わなかった。だったら思う存分に調べるといい。彼にも言っておく。君たちのことだから彼の家とか会社とかも調べたのだろうな。そういえば、この前の日曜日に彼の実家にも行って、両親に会わせてもらった。山梨県まで行ってな。そこまで疑うのだったら君も行ってみるといい。場所も教える」

 

「わかりました。行ってみます。ただし、実家に俺が行くことは彼には伏せておいてくれますか」

 

「いいだろう。比企谷、いったいどうした。なぜそんなに疑っている。私には理由がわからないぞ」

 

「直感としかいいようがありません」

 

「わかった。もうこうなったら私と君の勝負だ。もし君が負けたらどうする? 私の負けだったら・・・」

 

「先生・・・私たちはそんなつもりじゃ」

 

雪ノ下が心配そうに平塚先生を見つめる。

 

「また勝負ですか。どんだけ勝負が好きなんです。勝負というよりもこの場合は賭けという感じですが。いずれにしても俺の負けはあり得ません。だから先生が負けでも何のペナルティも求めません。ただ、自分の過去を素直に見つめなおす機会を必ず持ってください。もし俺が負けたら、そうですね・・・卒業まで坊主頭で過ごします」

 

ここで平塚先生の顔が初めて綻んだ。

 

「いいだろう。しかし、比企谷、君はいつからそんなにしたたかになった? 自分の信念を一歩も引かないで通す君を見て、私はちょっと感動したぞ。奉仕部に連れて行ってから、想像以上の化学変化が起こったようだな」

 

「そうですかね。ただ開き直っちゃってるだけかもしれませんね」

 

「それに最近の雪ノ下の変化も驚きだ。まあわかった。君たちの調査結果を楽しみにしているぞ。話はこれで終わりだ」

 

昼休みも残り少なくなっていた。昼飯が食いたい。空腹と緊張が解けたことで腹がグウと鳴った。俺と雪ノ下はそそくさと職員室を後にした。

 教室に帰る途中、階段の近くで雪ノ下にそでを引っ張られた。人に見られないように柱の陰に連れて行かれる。

 

「ちょっと比企谷君、いったいどうするつもり? あんな大見得切ってしまって。その自信はどこから出てくるの? 話の進め方が強引すぎて少し異様な感じがしたのだけれど」

 

「自信も根拠もないさ。最初に話を聞いたときと、ホテルで佐川を見たときの直感。それだけ」

 

「それだけ? バカね。でも驚いたわよ。あなたの強気には。・・・私もあの人は黒だと思う。実際に話してみて、言葉ではうまく言い表せないのだけれど、なんか薄っぺらいのよ。先生もどうしてあんな人と・・・」

 

「それはやっぱり、焦っているからだろ。佐川にしたって普通の人間だったら尾行には気がつかないはずだ。おそらく尾行したのはプロだ。心当たりがなければ自分の後を気にして歩くはずがないさ」

 

「それで、どうするつもり?」

 

「俺一人で山梨へ行ってくるわ。実家を見てくる。できれば両親に会う。今度の土曜か日曜に」

 

「あなた一人で行かせるわけにはいかないわ。私も行くに決まっているでしょ」

 

「そうか」

 

俺たちはそれぞれの教室に向った。その途中で、陽乃さんに尾行を中止して欲しいと伝えるように、小町にメールした。

 

 


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