俺ガイル~二次 雪ノ下父が贈賄容疑で逮捕!雪乃が独立する? BT付き   作:taka2992

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ラストで雪ノ下雪乃の不条理な怒りが爆発する

 

 

 

 

 雪ノ下がはっと何かに気がついたように、左手でつかんでいた俺のMA-1ジャケットの裾を離す。

 

「わたし、あなたと付き合わないから」

 

「は? いったい何を言いだすんだ?」

 

「言ったとおりよ」

 

「意味がわからんが」

 

 雪ノ下の表情がさきほどとはうって変わってきつくなっている。

 

「胸に手を当ててよく思い出してごらんなさい。どうして私の知らないところで私とあなたが付き合うという取り決めが行われているの? 私とあなたが交際するかどうか、姉さんとあなたが決めるわけ? あなた、姉さんに何か言ったんでしょ? 姉さんの許可がないと私と付き合えないのかしら」

 

 俺は陽乃さんに妹さんと付き合わせてくださいと頭を下げたことを思い出した。小町だ。お前は俺の味方じゃなかったのかよ。小町経由で陽乃さんとの会話が伝わっていたのだ。チェンソーでも切れない陽乃~小町ラインの太さが脳裏に浮かんだ。そんなイメージありえないんだが。

 

「それはだな。陽乃さんに半分強制的に言わされたんだよ。何をそんなに怒っているんだ」

 

「あら? 別に怒っていないわよ。そんなに重要なことを本人に内緒にして姉さんと話をするくらいだったら、ずっと姉さんと付き合っていればいいじゃない。あなただったらきっと忠実な犬になれるでしょうね。それに、あなたにはかわいい彼氏がいるでしょ。なにも私が出る幕はないじゃない」

 

「おまえ、なんかトチ狂ってる。俺は陽乃さんの犬でもないし、戸塚はただ、可愛いやつだと思っているだけだろ」

 

「そうかしらね。では、試しに姉さんに言ったこと、今ここで私に言ってみたら? あなたと姉さんが勝手に決めたことが、無意味だとわかるはずよ」

 

 早くて強い口調で、雪ノ下がまくしたてる。俺が何か言うたびに雪ノ下の顔が険しくなっていく。ちょっとやそっとじゃ治まりそうにない。問題が一つ解決したとたんに、こうして次の問題が勃発するのはセオリー通りなのか?

 しかし、陽乃さんに言ったことが原因だとしても、なぜこんなに怒っている? その理由について見当もつかない。俺は問題になっている言葉を、一回だけ息を飲んで再現した。

 

「雪ノ下、こんな俺でよかったら、俺と付き合ってほしい」

 

「答えはもうわかるでしょ? NO! お断りよ!」

 

「どうして!」

 

「理由はさっき言ったじゃない。それに、由比ヶ浜さんとのこともあるから、もう少し待ってほしいと言ったはずよ。でも、もうそんな気もなくなったわ」

 

 そう言うと、雪ノ下は身を翻して歩き始めた。これはまずい。ここで雪ノ下を一人で帰したら、おそらくこれで終わりだ。崖っぷちで木の根っこにぶら下がっているような気分で、俺は雪ノ下の手をつかんだ。

 

「何するのよ。放してくれる?」

 

 俺の手が振り払われた。しかし、再び手をつかんで引っ張ると、近づきざまに右頬にビンタが飛んできた。

 

「おまえ・・・」

 

 呆然とする。一瞬歩きを止めた雪ノ下が再び歩き始める。

 

「待て! お前が何で怒っているのかもっと詳しく教えてくれ!」と言って俺はまた手をつかんだ。今度は容易に振り払うことのできない力で。

 雪ノ下は身をよじったりして手をはらおうとするが、俺も諦めない。

 

「暴行するの? 逮捕監禁? 誘拐? 痴漢? あなたの人生も意外に早く終わりそうね」

 

「お前を失った人生なら、終わったも同じだ!」

 

 俺は思わずそう叫んでしまった。俺の手を離れようとしていた力がおさまる。離れたベンチに座っていたカップルがこちらをチラチラを見ている。

 

「何なんだよ! はっきり教えてくれ! わからないだろ!」

 

 そう叫ぶ傍らで、ランプを点けた自転車が二台、こちらに走ってくるのが見えた。すぐにそれが警官だとわかった。今日は警察官と縁のある日らしい。案の定、二人の警官は俺たちの前で自転車を止めた。

 

「君たち大丈夫? いま大きな声が聞こえたから。何かトラブル?」

 

「あ、いや・・・」と俺が言い淀んでいると雪ノ下が答えようとする。まさかこいつ?

 

「すみません。ちょっと喧嘩してしまいました。大丈夫です。問題ありません」

 

 俺は胸を撫で下ろす思いだった。二人の警官は懐中電灯で俺や雪ノ下を照らす。顔から足先までなめ回すように。

 

「そうですか。女性がそういうんでしたら問題ないはずですね。このへんは結構事件が起こってますから気をつけてください。もう10時過ぎですから、あまり大声を出さずに穏便に。誰かに通報されたらもっとたくさんの警官が来ますよ」

 

「わかりました。ご迷惑おかけしました」

 

 警官たちは自転車にまたがって再びパトロールを開始した。

 

「ふぅ。今わたしが痴漢ですって言ったらあなたつかまってたわね。感謝しなさい」

 

「でもそれは冤罪だろ。それよりもどうしてそんなに怒っているのか教えてくれないかな」

 

「その前に手が痛いので離してくれないかしら」

 

 俺は雪ノ下の手をまだつかんでいたことに気がついた。離すと、つかまれた部分を「痛い」と言いながらさすった。

 

「お前と付き合わせてくれと姉さんに言うのがそんなに腹が立つのか? 理由がわからん。一応陽乃さんはお前の肉親だろ。筋違いだったり、おかしな話だとは思えない。いくら嫌いだといっても、お前の態度はどうしても理解できない」

 

 雪ノ下はまた遠い空に視線を投げかけるように目を細めた。そんな微妙なしぐさを見せたときのことを俺ははっきりと思い出していた。

 

「このまえ、山梨まで行ったとき、葉山君のこと聞いたわね。そのときは口を濁していたのだけれど、小学校低学年のころ、私は葉山君が好きだったの。いわゆる初恋といわれるものね。最初は葉山君も私のことを気に入ってくれてたんだと思う。でもその様子を見て、姉さんが邪魔をしてきたの。私と葉山君を引きはがそうと色々仕掛けてきた。

 それだけならまだいいけど、私の前で葉山君に『おれはハルちゃんのほうが好きだ』なんて言わせるのよ。そのころになると葉山君は姉が好きになっていた。言うことも何でも聞くようになっていた。

 幼いころのこととはいえ、すごいショックだった。姉や葉山君を憎しみ交じりで避けるようになるのも普通でしょ。あなたに恋愛感情に関するトラウマがあるのと同じように、私にもあるのよ。

 もうわかるでしょ。自分の好きになった人が姉さんと仲良くしているのがとても耐えられないことが。私は、葉山君以来、好きになった人なんていなかったから、そのトラウマがあることに気づいたのはつい最近。わかった? 私が怒っている理由が。私のことを姉さんとあなたが勝手に決めるのが許せなかったことが」

 

 俺は、雪ノ下の3LDKマンションで、突然入ってきた陽乃さんの手を引っ張り、出て行ったときのことを思い出した。あの後も雪ノ下は不気味なくらい怒っていた。今から思い出せばあれも嫉妬だ。

 そして・・・俺は陽乃さんの顔も思い出していた。雪ノ下と交際したいと言ったとき、陽乃さんは吹っ切れたような表情を浮かべた。それは、妹に与えてしまったトラウマが、これで癒えると思ったからなのか? ずっと妹への懺悔の念を持っていたとするなら、陽乃さんもそれほど悪い人ではないことになる。

 だが、しかし、最初のころ、陽乃さんはその気のない雪ノ下と俺をくっつけようとして囃し立てていた。本人の気持ちを無視して煽るような人を善人とは言えない。昔は妹の初恋の相手を奪い取り、最近では無理やり妹と俺をくっつけようとする。確かに迷惑この上ない姉だ。

 花火大会で陽乃さんが「また雪乃ちゃんは選ばれないんだね」と呟いたことも思い出す。自分が選ばせなかったくせに。

 雪ノ下が姉との間の溝を意識的に作っている理由が今になって理解できた。この溝は、もう少し時間が経過しないと埋まらないのかもしれない。

 小学校時代のトラウマ。高校生になればそんなもの忘れていそうだが、雪ノ下の場合はそれを癒してくれる経験がなかったのか。そもそも、過去の嫌な経験に縛られてきた俺がそんなこと言う資格はない。

 

「そうか。悪かった。そういう事情があるなら話してくれたらよかったのに。さすがにそこまで想像力は働かない。確かに俺もあの人には振り回されていると感じるけど、性格がよくわからなくて不気味だ。俺には苦手な人だ。もうお前をイライラさせるようなことはしない。許してほしい・・・」

 

「・・・」

 

 しばらく雪ノ下は俺を見つめていた。何分も、俺たちは動かずにお互いを見つめ合っていた。やがて、その表情が緩んできた。

 

「わかった。許してあげる。そのかわり、ひとつお願いを聞いてくれる?」

 

「なんだい?」

 

「その、あの・・・やるべきことがあるって言ってたわよね・・・くんずほぐれつの前に・・・」

 

 雪ノ下がその細い体をモジモジさせている。俺は何を言いたいのかわかった。どうでもいいじゃないとか言いながらも待っていたらしい。今度は俺が行動する番だ。

 

「わかった。それ以上言わなくていい」

 

 俺は雪ノ下をしっかりと抱いた。雪ノ下の両手が俺の肩の上で首の後に回る。すぐ目の前には、はにかんでうつむき加減の顔。俺も恥ずかしさで爆発しそうだが、なんとかこらえる。右手でそのあごを少し上げる。そして、くんずほぐれつする前にやるべきことをした。

 俺はこのとき、雪ノ下と初めて本物の関係になれたような気がした。お互いの気持ちがわかってから4ヶ月以上。ずいぶんと長い時間がかかったように思う。

 

 俺は顔を少し離して「俺たちも帰ろう」といい、雪ノ下の手を引いて歩き始めた。その手が俺の腕にからむ。

 

「おまえの中に、あとどれくらい地雷が埋まってんだ?」

 

「どうかしらね。詳しく診察してくれる?」

 

 一瞬、陽乃さんと会話しているような錯覚に陥った。

 

「おい、急に大人の会話して子供をからかうな」

 

「そういう意味だったら、私だってまだ子供なのだけれど」

 

 平塚先生は今ごろ片岡さんと一杯やっているのだろうか。先生が昔の彼をどのように思っているのかわからないが、少なくとも今回の件を一人で背負い込むことだけは避けられたように思う。孤独に陥ることを防ぎ、ショックを共有できる人を提供できたとしたら、今回の作戦は大成功だ。

 俺はそんなことを考えながら帰宅した

 

 

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※乱文失礼しました。最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。

八幡が俺TUEEEになってしまっている点、ご容赦ください。ご笑読のほど

お願いします。

 


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