俺ガイル~二次 雪ノ下父が贈賄容疑で逮捕!雪乃が独立する? BT付き 作:taka2992
その夜、自分の部屋に閉じこもって勉強していた小町が、リビングに「ふわぁ~」とあくびをしながら出てきた。俺はソファに寝転んで本を読んでいた。
「そっか~、私のお姉さん候補はとうとう雪乃さん1本にしぼられてきたかぁ~。ふわぁ~」
小町はの目は少し充血していた。止まらないあくびを口に手を当てて押し殺している。
「おまえなんなの?どっからそんなガセネタつかんできてんの?」
「うん?陽乃さん。最近結衣さんがそっけないと思っていたらそういう事情だったんだね~」
「くだらん詮索してないで勉強しろっ」
「お兄ちゃんが理科と数学得意だったらなぁ。苦労しなかったんだけどなぁ。できの悪い兄を持つ妹は苦労するのです。いいも~ん、小町はちゃんと強力な対策を立てているのです。お兄ちゃんもきっとびっくりするのです」
「お前、泣かせたろか。あ、ちょっと雪ノ下のメアド教えてくれよ」
ニヤリとする小町。
「ふんふ~ん。いいよ。そっちにメアド送っとく」
俺は雪ノ下4号の出現を危惧していた。このままだとまずいと思い雪ノ下にメールした。
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TO:yukinoshita××××.○○○○○○.jp
SUB: (non title)
明日、土曜日、夕方時間があれば会ってくれ。話がある
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FROM:yukinoshita××××.○○○○○○.jp
SUB:(non title)
あなたやっぱりストーカー?メアド教えた記憶がないのだけれど
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TO:yukinoshita××××.○○○○○○.jp
SUB: (non title)
すまん。。
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FROM:yukinoshita××××.○○○○○○.jp
SUB:(non title)
冗談よ。明日の夕方5時に駅前でいいかしら
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TO:yukinoshita××××.○○○○○○.jp
SUB: (non title)
お前が冗談?冗談でしょう。行く、よろしく
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翌日の夕方になると、曇り空は晴れ、一月下旬にしては暖かくなった。しかし冬の五時ともなればすでに薄暗い。俺は自転車で駅前まで来たが、ハンドルに装着するランプを忘れてきた。こりゃ、帰り道で警官に遭遇しないことを願うしかない。あいつらはランプ点けてたってすぐ止めるからな。
駅前にはすでに雪ノ下がいた。ライトグレーのコートに茶色いブーツ姿。それを横目に歩道に自転車を止める。俺たちはすぐ目の前にあるコーヒーおかわり自由のドーナッツ屋に入って座った。
「話って何?」
「いや、話っていうか、会いたかっただけだ。俺おまえのこと好きだし」
ついつい魔がさしたというか、ちょっと勇気を振り絞ってそんなことを言ってしまった。
雪ノ下の顔がとたんに赤くなっていく。よくSS掲示板などで見られる「・・・///」カァァァってやつだ。しかし、以前の雪ノ下のように滅茶苦茶なことを早口でまくしたてることはなかった。
その様子を見て、俺まで顔が赤くなってしまった。恥ずかしさのあまり右手で後頭部をかいた。数分間そんな状態が続いた。はたから見れば、何やってんの、このバカップルっていう感じ。
「そ、そう、あなたがそんな直球を投げてくるなんて信じられないわね。少し変わりすぎじゃないかしら。私は先にあなたにボールを投げてみたのだけれど、やっと返してくれたのね。ずいぶん待ったような気がするわ。昨日なんかイライラしてしまったし」
ボールというのは、雪ノ下をおぶっていたときの会話のことだろう。
「俺はもう捻くれないようにしているからな」
そこで雪ノ下の目つきがするどくなった。
「でも依然として隠し事はするのね」
「どんな?」
「私の母に何か言ったことよ。それを隠して姉さんといちゃついていたわね」
やっぱり。さすが鋭い。姉の鋭さと強烈さのおかげで忘れていた。妹にも同じ素質が隠れていたことを。
「そうか、余計なことをして悪かった・・・って、あれがいちゃついていたように見えるのかよ」
雪ノ下の顔がどんどん険しくなる。口もとがピクピクして、やばい、今にも言葉の爆弾が発射されそう・・・やはりお節介すぎたことをしたのだ。
俺は被害を少しでも減らそうと腕を顔の前に組んで、爆風に備えた。その瞬間、雪ノ下の表情がふわりと緩んで元に戻った。
「ふぅ、冗談よ。やっぱりそうだったのね。今さらあなたのヘンチクリンなお節介に驚いたり怒ったりしないでしょ。今のは推測に基づく仮定を証明するためのフェイントだったのよ」
「やられた・・・」
「でも、もうそういうことは止めてくれるかしら。そうね、私があなたに対して怒れないのは、あなたは決して見返りを求めていないからよ」
「確かにな、こんなことは闇に埋もれてしまえばいいと思っていたが」
「昔から私に好意で親切なことをしてくる男子って必ず何か見返りを欲しがっていたけれど、あなたが誰かを助けるときって、一切自分の利益を誘導するような打算がまったくなかった。私があなたに興味を持つようになったのはそれがきっかけよ」
俺は無言だった。
「それどころか、他人を助けることによって、別に負わなくてもいい傷まで負って、マゾヒストなのかしらって思っていたのだけれど、最近はそういうやり方も改めたみたいね」
「俺の昔のやり方だと、本当に助けたい人は助けることができない、って平塚先生に言われたからな。ああいうのは止めた」
「あなたも変わったわね」
「お前も変わりすぎだろうが。昔は話しかけるなオーラ全開のハリネズミだったくせに。今のお前なんて誰も想像できねぇよ。それが今じゃ冗談連発だぜ」
「そうかもしれないわね。私も変わった。それは、やっぱりあなたたちのおかげだと思っているわ。感謝している」
「しかし、俺はあまり変わっていないかもしれん。お前がボールを投げてくれた日から、お前にどう接していいのかわからなくなった。今日だってトチ狂っていきなり変なこと言っちゃったし。よくご存じの通り、俺には女子と会話したり付き合ったりした経験がないからなんだよ」
雪ノ下はクスクスと笑い始めた。
「だから言ったでしょ。私たちが友達になることなんてありえないと。私だってあなたとどう付き合ったらいいかわからないところがある。だから、やりたいようにやればいいのではないかしら。一般の人たちが共有している男女交際という幻想は私たちには無縁よ」
雪ノ下はサラリとそう言ってのけたが、俺は由比ヶ浜のことを思い出していた。
「あのさ、由比ヶ浜のことだが・・・」
「そうね」
雪ノ下が目をテーブルに落とした。思うところがあるらしい。
「由比ヶ浜さん、あれだけあなたに対してラブラブ光線っていうの?出していたから、いくら私でも気がつく。でも、最近そうでもないような感じなのよ。あなたにはどう見えているのかしら」
「確かに、最近そっけない。相変わらず電話とかメールは来るが・・・」
「私は由比ヶ浜さんにも大きな借りがあるの。さっき言ってたハリネズミオーラを乗り越えて最初に友人になってくれたから。だから、私は由比ヶ浜さんの悲しむことはとてもできない。あなたが由比ヶ浜さんとくっつくのもいいと本気で思っていた」
「わかるだろ。俺と由比ヶ浜では決定的に何かが違っている。天性の優秀かつ鈍感なコミュニケーション能力のおかげで住んでいる世界が違いすぎる」
「でも由比ヶ浜さんに乗っかって違う世界を体験するのもよかったんじゃないかしら」
「そうは思わんな、置いてけぼりくらって自己嫌悪に陥るだけだろ」
「で、また捻くれてしまうわけね。リア充爆発しろって。やっぱり俺は天性のぼっちだったって」
雪ノ下がまたクスクス笑う。
「なんとでも言え。俺が由比ヶ浜のことを言い出したのは、俺たちのことを隠して奉仕部を続けるのは欺瞞にならないかということだ。お前はうわべだけの関係は嫌っていただろ」
「そうなのよね。もしかすると由比ヶ浜さん、部活止めるかもしれないわね」
「それはお前としては避けたいんだよな?」
「私たちのことをおおっぴらに周囲に言いふらす必要があるのかしら。それに、私はあなたとのことがバレても由比ヶ浜さんとは友人でいられるような気がするの。もう少し待ってみましょう」
「それは問題の先送りじゃないのか。それもお前は嫌っていたはずだが」
「ずいぶんと厳しいのね。だったら、私は由比ヶ浜さんと友人を続けるほうを取るわ」
「そうか、実は俺もそれのほうがいいような気がする」
「あなたって本当に自己犠牲野郎なのね。変わっているように見えて変わっていないのね」
「俺はとっくにうわべだけの関係、そう、葉山たちみたいな連中の軽いうわっつらに見えるお友達関係の存在を認めているぞ。確かに俺は変わっている。
あいつらだって自分たちの関係が壊れないように必死になっている。残り少ない高校生活をみんなで過ごそうと焦っている。その点であいつらはうわべだけじゃない。うわっつらな連中にだって内部に入ってみなきゃわからない本物の関係が存在することを知ったから」
「だったら私たち三人の関係だってお互いを思いやっている本物の関係だと言えないかしら。少なくとも以前のように過ごしている限りは」
「そうだな。そうも言える」
「安心しなさい。由比ヶ浜さんは離れていくことはないわ」
「そう願うな」
「それに、四月になれば新入部員も入ってくるかもしれないし・・・比企谷君、私もあなたのことが好きよ、だからもう少し待っていてくれないかしら」
そう言うと雪ノ下は少し赤くなった。その様子を見て、また俺は魔がさしてしまった。
「わかったよ、ゆきのん」
「え?またからかうつもり?」
「からかってなんかないよ、ゆきのん」
「やっぱり最近のあなた変ね」
「変じゃないってば、ゆきのん」
雪ノ下は赤い顔を隠すようにニットの裾を指でいじり始めた。頭の上の黒髪がパラリパラリと落ちる。その様子が可愛くてしかたがない。俺は発見した。雪ノ下は一見とっつきにくい美人なのだが、本当は可愛い系だ。少しだけツンデレとは違う。
「意地悪なのね」
「俺が意地悪になるのはレアだよ、ゆきのん」
「さ、冗談はやめて。今何時かしら」
「六時過ぎだな。雪ノ下さん」
「今度はさん付け? そろそろ私用事があるから行くわ」
「わかった」
俺が会計を済ますと、律儀に雪ノ下が300円を差し出してきたので受け取った。
俺が自転車に到着すると、雪ノ下もついてきた。
「早く。遅れちゃうでしょ」
「お前は電車だろ」
「違うけど。後ろに乗せてもらうけど、いいかしら」
「何いってんの?」
俺が事情を飲み込めないでいると、雪ノ下が言った。
「あら、聞いてなかったの?これから小町さんに数学と理科を教えにいくのだけれど」
「あ?」ポカンとした俺の顔をしげしげ眺めながら雪ノ下がまたクスクス笑う。
「二ケツはやばいだろ。このへん、警官多いぞ。で、今日に限ってランプ忘れた」
「見つかってもつかまるのあなただけでしょ。早く」
「そうかい。そうですかい」
俺が自転車にまたがると雪ノ下が横座りに荷台に乗った。バッグを肩にかけて両手で俺のコートの脇をつかむ。俺は警官に止められたくないからステルスモード全開。全力でペダルを漕ぐ。
「お尻痛い」
「我慢しろ、ブタ箱に入るよりはマシだろ」
「バカね」
そうこうしているうちに自宅に到着。玄関を開けると小町を大声で呼んだ。
「おーい。お前の言ってた最終兵器運んできたぞ」
「はーい、ご苦労さま~。あ、雪乃さんこんばんは。ありがとうございます」
「こんばんは、小町さん」
「お前な、こういうことは先に言っとけ。雪ノ下、いいのか、こいつでき悪いぞ」
「あなたよりもいい成績でうちの学校に合格させて見せるわ。そういえばここに来るの初めてだったわね。お邪魔します」
小町が雪ノ下の腕にしがみついた。頬をスリスリしている。
「できの悪い兄にだけは言われたくありませ~ん。あ、お兄さま、私と雪乃さんにお茶入れて持ってきてくださるかしら」
そういうと小町と雪ノ下は二階へ上がっていった。しばらく二人は閉じこもっていた。本当に真面目に勉強しているようだ。
夕食の時間になっても二人は出てこなかった。そしてメール着信。「二人分の食事を持ってきてって、小町さんが言ってるのだけれど」と雪ノ下から。
おれは母親が作った食事をトレイに載せて部屋のドアを開いた。机に向かう小町とその横で赤ペンを走らせている雪ノ下がいた。
「小町、お前これで不合格だったら雪ノ下の面目を潰すことになるんだぞ。死ぬ気でやれよな。寝るなよ。死んでもいいから」
「あら、もしかすると小町さん数学できるほうじゃないかしら。よくわかっている方よ」
俺は傍らのベッドの上に本を並べて、硬くし、トレイを二つ置いた。
「そうか。すまんな、ゆきのん」
そう言って部屋を出て扉を閉めた。すると、小町の「え!ええ~??」と凄い声が聞こえた。
それに続いて、「あれは、からかっているだけよ」という声。
しばらくしてトレイを取り下げてくれというメールが着信した。俺はコーヒーと紅茶を淹れて、持って行った。すると、ジト目の小町が顔を上げた。
「さっき判明したのです。これからの小町の使命は、総武高に入って雪乃さんをお兄ちゃんの毒牙から守ることに決定したのです」
「あれは何でもないから。まだ私たちは何でもないから」
「まだ? それを聞いてさらに小町の決心は硬くなったのでした。というのはウソで、雪乃さんがお姉さんなんて小町嬉しい」
「馬鹿言ってんな。俺もう寝るわ。雪ノ下、お前、お姉さんがあんな感じで、その下に小町みたいな妹ができたら大変だぞ。よく考えたほうがいい」
そういって部屋を出た。一〇時過ぎだった。その後、雪ノ下が何時に帰ったのか俺は知らない。というか、あんな時間だったらタクシーだろ。小町、タクシー代くらい出したんだろうな。