悲鳴が聞こえた。
怒号が聞こえた。
何かが裂ける様な音が断続的に響き、辺りを錆びた金属の匂いが支配していく。
それからつんざくような咆吼が一切を薙いで、合切が静寂に降った。
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「ここも枯れたか……。瘴気が濃くなっているな。」
男は乱暴に足下の蕾を蹴りつけ、苛立った様子でズカズカとこちらに歩いてきては嘲りも半分に吐き捨てる。
「フン……、枯れているのはこいつらも同じか。」
「そ、そうです、枯れてますから…、こんな瘴気の中での探索は無茶です、今日は……ぐっ!?」
嘲りを向けられた当人は怒るでもなく否定するでもなく下手に出ることで難を逃れようとしたようだがどうやら上手くはいかなかったらしい。控えていた男の部下にバットプレートで殴られ苦痛に悶えている。
横柄な態度のその男はさして気にする様子も見せず懐から何かを取り出すと未だに苦しんでいる若者に向かって質問を投げかけた。
「コレが何か、わかるな?」
当然、苦しむ若者が答えられるはずもない。これはまた殴られるな。他人事のようにそう考えていると見かねたのか別の男が声を上げる。
「血涙…だろ。」
その答えに横柄な男は満足したのか少し頷くと、今度はこの場にいる全員に向けて話を始めた。
「そう、この血涙を今から探してきてもらう。この先の地下道でな。次の血涙の徴収日まであと少し…だか今の俺たちに余分な血涙なんてない。このままじゃ血も涙もないシルヴァの犬どもに身包み全部はがされちまう…」
まるで被害者の様な言い草だ、どうせそうなっても俺たちを切り捨てて自分だけは助かる算段は立ててあるだろうに。お前はどこまで行ったって加害者だ。
そうこう考えているうちにも先ほどの若者たちは地下道へ連れられていく。幸い単独で行動させられる訳ではないようだが俺に同行すると思われる2人の顔はどうにも見覚えがなかった。きっと最近連れてこられたばかりの新入りなんだろう。少しばかりの憐憫を込めて2人の新入り達に目をやる。白い髪をした女の子は未だに状況が掴みきれていないんだろうか、危機感すら感じていない様子でもう1人の女の子の側にただ立っている。しかし彼女の仲間らしいもう1人の女の子は大人しそうな見た目に反してなかなかに反抗的な態度だ、油断なく辺りを見渡したかと思うと長い黒髪を逆立たせて今にも殴りかかりそうな姿勢をとる。出来る事なら俺だってそうさせてやりたいけどごめんね、そういうわけにもいかないんだ。
「よすんだ、みんなを巻き込んでしまう。今は従うしかないよ。」
「………わかった。」
この子、意外に素直みたいだぞ。無言で視線を寄越された時はもしや殴られるかと身構えたけれど素直に従ってくれるようで一安心だ。そのまま部下の男達に従い地下道の入り口へ向かっているといきなり先程の横柄な男が白い髪の女の子を引っ張って行ってしまう。
「お前は俺たちと留守番だ、戻ったら返してやる。回収した血涙と交換にな。」
黒髪の女の子はすぐさま男に食ってかかったが部下の男に阻まれてしまう、ここで暴れては白い髪の女の子を巻き込んでしまうと考えたのか彼女は意外なほど大人しく引き下がると再び地下道の入り口へ歩を進めた。入り口はまるで吹き抜けようになっていて地下道の地面まではとても遠い。どうやって降りたものかと思案していると背面に強い衝撃を受けて吹き抜けに身を踊らせてしまった。あいつら後ろから蹴落としやがったな。いくら俺達が"人でなし"だからってこの高さは流石に痛いじゃ済まない。凄まじい勢いで迫り来る地面を見据え、俺は目を瞑った。