テュテュ視点です
「じゃあ吸血鬼は死なないってこと?」
「んー、まぁそうだね。」
彼──オリバーは足元の蕾を指差しながら言う。初めはあの横柄そうな男の仲間かとも思った彼だがやたらとお節介で心配性な性格を見るに多分ただの良い人なんだと思う。とても誰かを虐げたり出来そうには見えないし。
「俺たち吸血鬼は致命傷を受けても体が霧散してしまうだけでしばらくすると近くにあるこのヤドリギが霧散した体を繋ぎ止めて再生してくれる。原理はわからないけどね。ただし完全に不死身って訳じゃないんだ。心臓に傷を付けられてしまうと死んでしまうからテュテュも気をつけるんだよ?」
「うん、任せて。でも…ヤドリギがなくても別に…。」
そう言って私はオリバーに向けた右手を霧散させて戻して見せると、彼は驚いたように目を見開いて私の右腕をしげしげと見つめてくる。
「やろうと思えば全身でも出来るけど…、オリバーは出来ないの?」
「あぁ、出来ない。驚いたな、そんなことが出来る吸血鬼も居るんだね…。」
「吸血鬼は全員自分で霧になれるわけじゃない?」
「うん、俺たち吸血鬼は1人1人血液型みたいなのが違くてね。同じ吸血鬼でもそれぞれ出来ることが違うんだ。きっとそれが君の力なんだろう。俺なら…」
彼は右手を強く握り込みながら、おもむろに近くの大きな瓦礫に近づいていく。
「破片が飛ぶと行けないから、少し離れてて。」
そういうと彼は瓦礫をしたたかに打ち付ける。ゴツンと鈍い音が響き、数瞬の後に瓦礫が粉々に砕け散った。
「わぁ……。すごい…。すごい馬鹿力だね!」
私が興奮してそう言うと彼は苦笑しながら首を横に振る。
「違う違う、これが俺の能力だよ。俺の力を増幅してくれるんだ。」
「力をぞうふく…、やっぱり馬鹿力だ…。」
「……そうだね、馬鹿力だ。まぁ、効果が一瞬で切れてしまうからあいつらとの戦いじゃあまり役には立たないんだけれどね。」
「そうなの…。」
確かにどれだけ力が強くなってもすぐに効果が切れてしまうなら奇襲くらいでしか役に立たないのかも…。でも堕鬼は待ち伏せてることが多いとも言ってた。だからこっちから奇襲を仕掛けるのは難しい…?いや、でも確か…
「そうだ、投げるんだよ。硬いものとか遠くから。さっきみたいに。」
「投げる?なるほど、確かに効果はついさっき実証済みだ、良いかもしれないね。でもそれだとまたテュテュを驚かせちゃうんじゃないか?」
「それは大丈夫、次からはちゃんと一緒に戦うから、オリバーが何しようとしてるかわかる、驚かない。」
「ははっ、それは心強いな。よし!そうと決まれば善は急げ、身体も少しは休まったし、そろそろ先に進もうか。」
彼はマスク越しにもわかるほどの笑顔を浮かべると私の頭をわしゃわしゃと撫で始めた。どうにもしばらく行動を共にしてからというもの彼は私のことを子ども扱いしているようだ。なんだかそれが気に食わなかった私は体を霧に変えて、彼の支えを奪ってやる。驚いて冗談みたいに綺麗な転び方をした彼を笑いながら、私達は血涙を求め再び地下道を歩き始めた。