ゴブリンスレイヤーRTA 狂戦士チャート   作:花咲爺

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実習、就職、経験不足…
息抜きに始めた筈のこれがなかなか、救いやねんな。
しかし、楽しみに待ってる人を差し置いて食う飯は旨いか?となったので(再)から閑話を持ってまいりました。
たぶん1カ月以内に5の裏出しますので、出しますので!


世界竜の昔話

 昔々のそのまた昔、記録神イム・ジッキョウが生まれてしばらく。

 あるRTAを見て奮起したイムが試走と称して様々な冒険者を四方世界に出しては埋もれさせ、出ては埋もれを繰り返していた時の話です。

 とある蜥蜴人の英雄が生まれました。

 それは、運命か偶然か、汚らしい下水のつまりをとっていた時に青く光り輝く曲刀を見つけ出し、数多の冒険を経て勇者と共に魔神王を打倒すと神へと召し上げられた益荒男。

 盤上の駒が神となるのは珍しいですが、例外はどこにだって存在するのです。

 これは、イムに導かれしままに冒険し、神になった。そんな彼の道中のお話です。

(おや、これは【幻想】殿、一体何をしておられるので?)

 あ、ちょ!今説明をしていた最中なんですけど、ちょっと、ちょっとぉ!

(おお!これは我が神と某の記録!末端とは言え、上位の存在になってからというもの、中々話が出来なんだ、お懐かしや…)

 もぅ…勝手に見ないで下さ…あ!そうだ!世界竜、貴方が語ってください!その方が面白い筈!

(何と!うーむ、成程…事情はあい分かり申した。快諾させていただきましょう、某がその役果たさせていただきます)

 流石話がはやい!それじゃ、お願いしまーす。

(は、それでは、始めさせていただきましょう。某が生まれたのは…)

 

 

 彼が生まれたのはとある混沌にして善の蜥蜴人達が暮らす部族だった。

 卵の中より出でて産声を上げれば、新たなる戦士の誕生だと村を挙げての儀式が行われ、父祖とされる竜の大遺骸の前へと晒される。

 儀式は生まれた者、ひいては村の吉兆を計る重要な占いであり、大遺骸に対する赤子の行いによって占われる。

 竜の頭骨によじ登れば頭目・族長となる兆し、腕に行けば益荒男・勇者・豪傑の兆し、腹に行けば頑強・大酒飲みの兆し、足に行けば迅速・早熟・不屈の兆し、尾に行けば生命力・繁栄の兆しといった具合の内容だ。

 それ以外にも母の元に戻る、父祖の爪をしゃぶる、尿を掛ける、骨を遊具とする等の細かな吉兆を占う項目があるが、三十近い項目故省くとして、果たして彼は…「臆病にして勇猛果敢、父祖にも及ぶ益荒男になる」であった。

(ここ、記録と違いません?)

 伝説なのですから。多少は、ね?どうかお目こぼしを…この先の方にご注目くだされ。

(まぁ面白いので許します!)

 それは重畳、続けまするぞ。

 

 占いより5年余り経つと蜥蜴人の戦士となるための準備が始まる。

 蜥蜴人、殊更に蜥蜴人戦士の志は皆同じで気高く強き父祖、恐るべき竜になることを自らの本懐として胸に刻んでいる。

 正々堂々真っ向から得た勝利を誉とし、武勇を広める等の行いを積み重ねて位階を高め竜へと近づいていく。

 故に戦に生き、戦に死ぬ。

 そんな見ようによっては高潔と言うよりも、野蛮な考えを持つ彼らの鍛錬は勿論尋常のものではない。

 

 山の中を四つん這いになって駆け抜け、四肢と尾を鍛える四足駆けから始まり、川では潜水による心肺の鍛錬と並行して魚の狩猟を行われる。

 一息の内に魚が捕れなければその日の飯は無く、恥辱と共に一日を過ごさなければならなくなる為皆必死になって魚を探す。

 それが終われば激流のど真ん中で踏ん張り、親父達から礫を投げつけられる頑強な肉体作りの鍛錬の時間だ。この際礫を防ぐ者はやっせんぼ(臆病者)きっさねもん(卑怯者)と呼ばれ、蔑まれる。

 その後も牙と顎を鍛える石噛み、火中においても戦闘を続けるための火渡りと言った最早鍛錬とも言えない拷問的・苦行的な行いを続けていく。

 鍛錬、鍛錬、さらに鍛錬の日々である。

 全ては屈強な肉体を作り上げ、父祖たる竜に少しでも近づく為に。

 

 この鍛錬を、臆病な彼はどう切り抜けたというと、周りと比べると少々頭が回った彼は様々な方法でどうにかこの鍛錬で楽をしようとした。

 祖竜術を使ってはならないとは言われなかったので術を使って肉体を強化したり。水の中に隠した罠を開いて魚を捕った。

 だが、後でバレて族長に大岩で潰され、嘘は言っていないのに3日飯抜きにされたりもしていた。

 またある時は村に攻め込んできた化物と一対一(サシ)で戦わされたり、同じく鱗を持つ毒蛇と心を通わせる鍛錬中に噛まれる等して何度か死にかけながらもどうにか生き抜きそれなりに過ごしていた。

 そんな日々を彼は大人の蜥蜴人からは「きっさねもん」、同じ齢の蜥蜴人からは知恵者を表す「とろおどん」等と呼ばれながら過ごし、ついにその日が来た。

 

 旅立ちだ。

 

 13歳となった蜥蜴人は成人の儀式と称して外界を知るために外へ放り出される決まりだった。

 放り出された後1年は一度たりとも村へ戻ることを許されず、己の力のみで外界を生き抜かなければならない。

 大半の蜥蜴人は傭兵をするなり、野山の動物を狩って糧とする猟師等になって1年を過ごすのだが彼は違った。

 神からの託宣が唐突に聞こえたのである。

 

『僕と契約して、冒険者になってよ!』

 

 彼は自らの血と魂で繋がっている恐るべき竜を信じていたが、別段他の神を信じていない訳でもなかった。助言が聞こえ、それが良いものであるならば従う、そういう思考回路をしていた。

 故に助言に従い、彼は冒険者として走り始めることとなったのだ。

 

「ゴブリン退治さ!」

 

 そう言ってきた只人の4人と一党を組み、初めての冒険へ行くことになった彼は様々なものを学んだ。

 只人には勇気と無謀をはき違えている浅慮な者もいれば、優秀ながらも他者を見下す高慢な者もいること。そんなものかと思えば己の武技を鍛える武芸達者な者や、竜ではなく地母神等の神を奉じながら世の為人の為に動く者等多数の考えや姿形を持っていることを知った。

 また、小鬼は邪悪であること、卑怯であること、間抜けだが到底許される存在ではないこともその後に理解した。

 里で暮らしていた世を知らない蜥蜴人であった彼には外界全てが目新しく、面白くも厳しい世の中であることをその身を以て学んだのだ。

 

 そして彼は、何やら鱗が浮つくような空気を察知して横穴を看破し、卑怯にも背を襲おうとしていたゴブリンの野望からして嚙み砕くと、彼を追い抜いて先のゴブリン共から襲われていた剣士と武闘家を【竜吼(ドラゴンズロアー)】の祖竜術で助け出した。

 彼は神に言われるまま殿としてゴブリンをあしらいながら逃げ帰る道中で小鬼殺し(ゴブリンスレイヤー)と出会った。

 

 ゴブリンスレイヤーは豪傑や益荒男、英雄という器ではなかったが、彼以上の知恵者であった。

 只人の武器は知恵と投擲である。そう言って憚らなかったゴブリンスレイヤーの策は総じて合理的かつ速く、経験から来るもの。

 ゴブリンスレイヤーと共に彼は当時の強敵であった田舎者、小賢しい【火矢】を使う呪術師等を自らの牙尾爪爪(がびそうそう)で以て切り刻み、心の臓を喰らってようやく最初の冒険(チュートリアル)を終了。

 村を救い、他人より褒められる体験と言うのは存外に心地が良いものであると彼は知ることになった。

 

 しかし、世の為人の為に武勇を立てる前に、まずは自分の為の生活基盤をどうにかしたい。

 元々野獣の肉や魚を売って集めておいた金貨10枚(支度金)を水薬や防具で消費したため武器もなく、触媒を買う金もなかった彼は下水関連の依頼ばかりを神から受けさせられた。

 何でも神によれば汚らしい汚水と泥の詰まった溝にこそ、浪漫(取れ高)は詰まっているのだとか。

 本当に何を言っているのやらと呆れながらも溝の中身を丸匙で掬い、詰まりを取る。まあこれも人の為になる、小鬼を殺す際に鼻がもげそうになったので慣らしだと思えば鍛錬ばかりの日々を過ごしていた彼にとってそれ程苦でもない。

 そんな事を考えていた時のことだった。

 

(汝、我が身を泥濘より掬いし者よ…汝に感謝を。100と余年の月日を以て蓄えられしこの力、存分に振るってくれ)

 

「おぉ!!!??おおおお!!?」

 

 彼の脳内に響き渡る、昏くしかし荘厳で清廉なものを感じる声。

 一体誰かと周りを見回すがそれらしき者は見えない。

 声は神の声ともまた違う、地の底から響いてくるかのようで、もしや父祖の声かと思えば魂に何も反応がない。

 

(汝よ我はここにいる。ここぞ、ここ、おい汝の足に触れておる刀ぞ!こっちを見ぬか!)

 

 まごまごした彼に対して怒りの声を上げた主が、泥の中から発光を始めた。

 使えるものは使うが武器が声を発するなど尋常のことではない、彼は一度それから手を引こうとした。

 しかし、神の後押しもあって、好奇心を抑えきれなくなった彼は泥の中に手を突っ込み弄ると右手に確かな感触が伝わり掘り起こす。

 見れば、その正体は一振りの刀。抜き身のそれは青く光り、聖なる光を湛えていた。

 共に溝浚いを行っていた女魔術師は、その剣を神剣の類であると見た。

 曲刀は四方世界において東に位置していた彼の村へ数少ない交流を持ち掛けてくれていた只人達が腰に差しているものと同じで、名称をカタナと呼ぶものだった。

 彼はその輝きに夢中になってそこに、大黒蟲(ジャイアントローチ)の大群が丁度そこを通る時間であることにも気づかなかった。

 しかし、聖剣はそれら全てを一太刀で葬った。

 

 目を白黒させる女魔術師を尻目に、彼の口には自然と笑みが浮かんでいた。

 これならば、この剣と共に在るならば己は…

 彼と聖剣の旅が始まった。

 まずゴブリンスレイヤーと共に小鬼の軍を率いて森人の里へ攻め入ろうとしていた人食い鬼(オーガ)の首を討ち取り、その心臓を喰らった。

 次に、邪神の復活を目論んでいた闇人(ダークエルフ)の呪物を破壊。幾本もの手を巧みに操った闇人の首を打ち取って心臓を喰らった。

 少し困ったのは大目玉(ベム)

 とある遺跡で出会った大目玉が放つ【分解(ディスティングレート)】の術を避けに避けて目玉のついた触手を根切りにしたはいいものの、首も心臓も見つからず仕方なく中央の大目玉を喰らうことにした。

 首狩り、心臓狩りの旅はまだまだ続く。

 

 が、その道中で彼は魔神王討伐の旅をしているという少女と出会った。

 少し調子に乗っていた彼はやろうやろうと子どもの如くせっついてきた少女と手合わせをし、全力で以て蜥蜴人の威光を示してやろうと考えていた所をコテンパンに叩きのめされることになる。

 まるで住む世界(ゲームシステム)が違うかのような力の差に軽く絶望を覚えた彼だったが、結局は少女と共に真に世界を脅かす者共の首と心臓を取ることへ目標を少々変えた。

 

 まずは彼が密かに保有していた【転移】の大鏡を勇者の党員であった賢者が解析し、自由に勇者を出張させることができるようにした。

 水の都で事件が起ころうが、雪山で吸血鬼が出ようが、古代遺跡で邪教徒が儀式を行おうがすぐさま勇者が駆けつけて首魁の首をずんばらりする。帰りは己の足でなければならなかったが、それでも大勢の人の命を救う重要な装置として機能していた。

 そんな彼女はまさしく最強(クリティカル)百手巨人(ヘカトンケイル)も外宇宙の物体も祈らぬ者(NPC)共を彼女は等しく切り刻み、聖剣の錆とした。いや、錆にさえならなかった。

 彼女が人知れず倒していた怪物達と比べれば彼の喰らったものは精々虫か小動物と同じと言える程だ。

 

 だが、彼とて神剣携えし蜥蜴人。剣聖や賢者と共に戦いの日々を送る内に彼の位階は以前と比べ随分と高くなっていた。

 背は8フィート(2M40CM)に近づき、肉体は巌のように強靭に、精神もそれに伴い臆病が豪胆になった。さらに彼の使う祖竜術も日に5度の行使が出来るようになった。

 

 彼の名が歌になり始めた所で、彼の耳に凶報が入ってきた。

 それは故郷にてあの父祖の大遺骸が唐突に動き出すと、火炎を吐き爪と牙で部族を壊滅させたという知らせだった。

 全てを見通す賢者はそれを混沌の手合いが父祖の体に悪霊を宿らせ、暴れさせたのだと言った。

 すぐさま大鏡で移動しその場に駆けつけると蜥蜴人達は逞しく蘇った父祖を打ち倒していた。だが、犠牲は大勢。強者と正々堂々戦うことを誇りに思う彼らは多数でかかることを良しとしていなかったため効率よく倒すことをせず、生き残ったのは元いた数の半分にも満たなかった。

 その中には彼の親までもが含まれ、彼の後産まれていた妹達が唯一の肉親として残っていた。

 だが、彼女等の足や腕には火傷や裂傷と言った消えぬ傷跡がついていた。

 蜥蜴人の再生能力は高い、が、血を多く流したり欠損すれば再び生えてこないのも特徴である。

 この時代、彼の耳に凶報が届くまでにどれだけの時差(タイムラグ)があっただろう。彼が急いで駆けつけた時には既に彼らの傷は癒えていた。癒えてしまっていたのだ。

 奇跡も祖竜術も、治ってしまった傷を元の状態に戻すことは出来ない。嫁入りする前の滑らかで光を反射する美しい鱗肌に消えぬ傷、傷、傷…

 何と言うことをしてくれたのだと、まるで溶岩のように煮えたぎる激情を抱いた彼はその時運悪く出て来たマンティコアを殺し、遺骸を踏みつけると勇者に言った。

 

「とどめは任せる、だが魔神王と俺で死合をさせてくれ」

 

 いつも明るく、快活な少女である勇者もさしものこれには首を縦に振らない。

 如何に彼が武芸者として高みにいるからと言って、彼女に剣の一つでも当てられない様の彼に魔神王との一対一は譲れなかった。

 

 それでも納得できなかった彼はすぐさま祖竜術の重ね掛けによって自身の力を何倍にも引き上げると勇者に切り掛かる。

 数年ぶりの手合わせに彼女は何を思ったのだろうか、しかし、勇者は「強い」以外の言葉が出ない相手だった。

 

 音速に迫る神剣の連撃も全て完璧に避けられ、反撃に空いた腹を殴られたたらを踏めば、今度は尾を掴まれ投げ飛ばされる。

 ならば体術でと爪、牙、尾の多重攻撃を行ってもその全て見切られ彼女の拳と柔術で彼は転がされることになった。

 

「攻撃に、殺気が篭ってなかったよ、優しいね蜥蜴さん…」

「う、うぅ…うぅううう…俺は、俺は弱いッ!!!」

「大丈夫!僕、勇者だよ?」

 

 彼女から、一緒にやろうと手を差し伸べられ、彼は涙で塗れた顔でその手を握った。

 また一つ強くなった彼だった。

 傷跡は彼ら一党の中でも新参の聖女がどうにか小さくしてくれ、感謝の言葉も無かった。

 

 そんな出来事(イベント)も挟み、彼の冒険もいよいよ終局。

 混沌の者共の野望をすべからく打ち砕いてきた勇者一党に業を煮やした魔神王との直接の御対面。

 魔神王は虚空から昏きモノを凝縮した闇の剣を生み出すと己に立ち向かう勇者達へその切っ先を向ける。

 

 彼等は一様に戦闘態勢に移るとそれぞれ行動を開始した。

 勇者は空を駆け一撃必殺の構えを取り、賢者は魔法でそれを援護、さらに剣聖が己の剣で魔神王が生み出した眷属共を切り払う。

 

「こちらも抜かねば、無作法というもの…」

 

 そう呟くように発した蜥蜴人の彼は腰に帯びた刀を抜くと魔剣を超えた神剣の輝きが場に満ちた。

 

「チィイエストオオオオオオオ!!!!」

 

 恐ろしい竜の末裔の、恐るべき抜刀術は魔神王の腕を跳ね飛ばし、返す刀で上段からの兜割りが魔神王の剣を真正面から叩き切る。

 蜥蜴人は退かぬ、蜥蜴人は恐れぬ、蜥蜴人は成し遂げる。

 遠き過去、偉大なる父祖の力を受け継いだ者達はそれを胸に抱いて、知恵を捨て(チェストし)恐怖を捨て、その身を一つの剣と化す。

 たとえその力が末端程しか残って無かろうとも、たとえ己は神が盤上に置いた駒であろうとしても、自身が誇る父祖を信じず何とする。

 誉のために勝ちに行くのが我ら、蜥蜴人なり。

 

 彼の心にもう臆病の二文字はなかった。

 ひたすらに突き進めば、仲間と共に結果はついてくるのだから。

 魔神王何するものぞ、こちとら蜥蜴人の勇士、侍である。

 

 右腕が攻撃を受け止められず潰れた、迎撃に使っていた尾が魔法で消し飛ばされた、両の目と足が闇に喰われた。

 だから何だと言うのだ。

 

 左腕がある、牙がある、爪がある、鱗がある、これだけ残れば充分である。

 風の動きを鱗で感じ、牙と爪、そして刀を振り上げ彼は叫ぶ。

 

「シァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

 

 あな憎し魔神王、我らが里を焼きおって。憎し憎し、だがそれはそれとして心を研ぎ澄まし、彼はこれまでになく輝く神剣で以て魔神王の手足を切り落とし、勇者の道を切り開く。

 数瞬あれば魔神王はそれをも再生できるだろうが、数瞬あれば勇者にとっては十分だ。

 

 太陽の爆発!

 太陽の爆発!!!

 おまけに太陽の、爆発!!!!!

 

 聖剣と勇者の力を全身に浴びて爆発四散した魔神王に最早無事な所など見つからない。

 彼の背よりも大きかった肉体は一回り小さくなり、人型に焼け焦げた肉面を晒しながらぐちゃりと地面に堕ちた。

 命の灯が消え行く魔神王に蜥蜴人はずりずりと蛇の如く体を捻って辿り着くと、心配する勇者や同胞達が見守る中朱く輝く核を己が牙で嚙み砕き飲み込んだ。

 それで魔神王は終いだった。

 心の臓ではないが、これもまた強者の臓物、自分を位階を高めるには足り得るだろう。聖女の奇跡でも治せぬ深手を負った彼はそう考えながら息を引き取ろうとした。

 だが、その時、奇跡が起きた。

 

『おめでとう、君は神に、神たる竜になるだろう』

 

 神の声が脳裏に響く。

 彼はついに、ついに来たのかと喜んでいた。

 生え変わりを果たした筈の牙が伸び、口元には何やら突起のようになった髭も生え始め、さらに額からは小さく2本の角が顔を覗かせている己の身についに、ついに。

 これは吉兆と喜んでいたものが、ようやく時を迎えて花開く。

 

 思わず彼は涙した、この世に生を受けて3度目の涙だった。

 彼の肉体には変化が起き始めた。

 潰されたはずの手足が生え、尾が再生し大きく伸び、髭も伸びると言った塩梅に強靭な肉体へ自らの存在が進化していくのを感じ、脳内が歓喜に満ちる。

 神になるというのは、存外に心地が良く、不思議な感覚だった。

 

「GYAOOOOOOOOOOOO!!!!」

 

 変化を終えた彼の啼き声が大気を震わせる。

 5チェーン(100M)もの体躯となった彼の身は比喩でなく、事実として天へと昇り始めていた。

 蜥蜴人から竜へと身を転じさせた彼は風の魔法で雲を生み出しては掴むと、空へ空へと体をくねらせ駆けていく。

 

「竜に、ホントになっちゃった…」

 まさかまさかの出来事に驚く勇者。

 

「彼らの神話は本物だったのか、これは興味深い」

 知識の一つとして自らの手記に今起きたことを記入する賢者。

 

「手合わせ、手合わせを!」

 死合いをしたがる剣聖。

 

 三者三様の反応に竜は身を回転させ竜巻を起こし、周りの雲をすっかり押しのけ晴天を彼らに見せつけるとまた一啼きしてさらに高みへ登り、消えた。

 

(これにて蜥蜴から竜へと成った男のお話は終い、とっぴんぱらりのぷぅ、でございまする)

『おぉー!素晴らしい、素晴らしいです!まさに覇道を行った王道の叙事詩というやつですね。』

(楽しんで頂けたのでしたら、恐悦至極)

 

『あれ?何してんの?』

(おぉ!これは我が神!イム・ジッキョウではありませんか)

『久しぶり~。元気してるみたいで何よりだよ』

(神となったのですから、元気以外にあるはずも)

『確かにそうだ、こりゃ一本取られたよ』

 

「『(あっはっは!)』」

『あ、そうだ。これからまたRTAをやるんだけど見に来る?』

 

 実は寂しがりのイムです、これは見に行ってあげなければ元信徒として可哀想と言うものでしょう。

『ちょっと幻想さん?』

 世界竜と化した後も、彼は自らの神が好きだった。『ちょっと』

 彼の神は今度は森人を操作して世界を救いにいくらしい。『ちょっとって』

 いや、正確には辺境のあの街を救う所で終わるつもりらしいが、それでもまた同じような世界で骰子の一つ一つに一喜一憂の様を見せてくれるだろう。

 世界竜は、世界を見守ると共にイムのRTAも見守る存在だった。『おいゴルルァ!』

 はてさて、結果は如何様になるか…『免許証持ってんのか!』

 

 これは疾走狂戦士と呼ばれることになる筋骨隆々の森人が走り出す、少し前のお話だった。

 




 蜥蜴侍君(最終的な状態)

 8フィートも上背がある益荒男。
 最初はダイスの出目が移動力以外そこまで良くなく、イムにもさほど期待されてはいなかったが洞窟のゴブリン退治(チュートリアル)後の溝浚い中に見つけた日本刀が神剣であった為、興が乗ったイムに世界の果てから果てまで駆けずり回された。
 神剣の効果は身体能力全向上に加えて、聖なる輝きでNPCの能力ダウン、同じ等級以下の攻撃では壊れず、クリティカルで万物両断というクソ程強い神剣。でもビルド的に強化しても標準的な森人の素早さにも負ける鈍足さな模様。
 途中からは勇者ルートに入り、英雄達の一人として咥え入れられ、最終的に方々の体になりながらも魔神王を打倒す。その功績が認められた結果神の一員として迎え入れられた後は世界竜として色々な世界を見て回っている。


四方世界こそこそ裏話

 最初に出て来た父祖占い、そのほかの占い結果は左から将来性なし・臆病、性豪・種付け係・挑戦者、反逆者・変り者、先祖返り・英雄だったりする。一挙一動見られて総合的に判断されるので、下手な事をすると殺されるぞ!
 蜥蜴侍君は一度親元に戻るが、駄目、来ないで!という親からの念を感じて頭骨によじ登り、太鼓のようにペしぺしした結果「臆病者だが見る目あり、恐るべき竜に至るやも」という占い結果でした。
 ここ等辺は完全オリジナル設定です、公式設定ではありません。バンバン使ってくれてもええんやで。

 蜥蜴侍君は中国の龍みたいになる前はドロヘドロのカイマン君がでっかくなった感じの見た目だったぞ。服装はDLCダイカタナが入る前に行ったやつなのでそれっぽいので代用だ!

 今作は色々な作品に書かれていることを流用したり、アレンジしたり、オリジナルのものを掛け合わせたキメラ的なものです。女神官逆行や小鬼殺し√諸兄には本当に頭が上がりません。二次創作ってこういうものだよね、という感じで許してください、何でもしますから!
 本来この話、実は2話投稿時で感想を言ってくれた兄貴からインスピレーションを得て作成しておりました。結局2年も待たせてしまう結果になり本当に、申し訳ありません。

 没ネタ
 蜥蜴侍、蜥蜴司祭に相対す。

「ダイナの僧でありましたか!」

「いかにも、拙僧は恐るべき竜を奉じる蜥蜴人の司祭にて、現在はゴブリンスレイヤーと呼ばれる御仁とその仲間と共に専ら小鬼を滅している身にございます」

「あの小鬼殺し殿と一党を!これぞ奇妙な縁えにし、あぁ、折角の蜥蜴人同士我らの言葉で会話をしないか」

『よか(良ぉございます)』

「しかし、流麗な共通語恐れ入る。俺も蜥蜴人だが、どうにも言葉が伝わりにくくて難儀している身だ。自分以外の蜥蜴人に会うのは久しくないが、そちらはどこの部族出身か。」

「拙僧は鬱蒼と茂る密林の中で暮らす南方の部族出にて、出家をして司祭となりもうした。共通語はその折に身に付けたもの、そちらは中々に知恵が回るしきっと共通語もじき流麗になりましょう。」

「おぉ!ありがたい言葉、銀等級にもなった方が言うならば間違いない。俺も道半ば、努力を続けねば」

「うむ、良い心がけだ」

 こんな感じの会話を薩摩言葉でやろうと思って色々探したけど良い感じの文章が出なくて没に。そもそも昔話口調なので中々組み込むのが難しいねんな…

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