とある科学の電閃飛蝗《ライジングホッパー》 作:フォックス少佐
「凄い、凄い! 見てください佐天さん! ZAIAエンタープライズの本社が見えてきましたよ!」
「はいはい、そうですねーっと。やれやれ、初春はそういうのほんと大好きなんだから」
無事に怪我を治療して退院した初春、そして佐天はZAIAエンタープライズのロゴが入った大型バスに乗って第三学区内を移動していた。彼等、柵川中学生徒の目的はZAIAエンタープライズ本社での社会科見学だ。飛電インテリジェンス以上の大企業である学園都市屈指のAIや宇宙開発に取り組む企業の見学はそうそうできるものではない為、そういう分野に興味がある初春は興味津々だった。しかし一方――担任の不破諫はというと。
「はぁ……厄日だな。今日は」
「あれ、どうしたんですか先生。そんな世界の終わりみたいな顔して」
「ん? ……ああ。ZAIAにはちょっと……いや、かなり苦手な知り合いがいてな」
「えっ!? 不破先生、ZAIAの社員さんとお知り合い何ですか!?」
不破の知り合いという発言に真っ先に反応した初春は不破に詰め寄る。そんな初春を見てさらに溜息が大きくなる不破。社会科見学に対する不安、そして自分を教員に付かせたアンチスキルの先輩に対してイラつきを覚えるがそれらをぐっとこらえながら徐々に近づくZAIA本社を眺めていた。
◆
バスを降りて真っ先に顔を上げてZAIA本社を眺める不破と全生徒。首がいたくなるほど顔を上げても建物の頂点が見えないほど大きいZAIA本社に平平凡凡の日常を送ってきた不破とその生徒達は圧倒されていた。
「相変わらずの間抜け面だな、不破」
「あ? ……げっ、お前は……」
突如として罵声を浴びせられ反射的に睨み付けたその先には見知った顔があった。
黒スーツを着た長髪のスレンダーでスタイル抜群の女性……だが、中身は鬼畜の悪魔だ。と心の中で思いながら不破は生徒達を整列させる。
「ようこそ、ZAIAエンタープライズ本社へ。この度は柵川中学の皆さんを案内させていただきます、社長直轄開発担当の刃唯阿です」
その挨拶が終わると不破の代わりに唯阿が先頭になってZAIA本社の案内を始める。
最初は興味がまるでなかった一部の生徒達もZAIAが開発している様々な時代の最先端を行く商品を見てその心を奪われていった。
その中でも特に舞い上がっている初春は唯阿に対して質問攻めをしているが、唯阿も取り乱すことなく的確に質問に答えている。
やがて案内があらかた終わり自由見学になった頃、まるでZAIAに対して興味がない不破はエントランスホールの自販機の横で缶コーヒーを飲みながら楽しそうにしている生徒達を眺めていた。
「おや、先生も退屈なんですか?」
「佐天……お前もか」
「はい。私こういうのあんまり興味ない……っていうか説明受けてもチンプンカンプンなんですよね~、あはは」
そう言って不破の横にある自販機で飲み物を買おうとする佐天。
「おっ、珍しい飲み物発見! ゴリラパワーサイダー! ゴリラのようにエネルギッシュな弾ける強炭酸……ですって、ついついこういうの買っちゃうんですよね~、私」
「ああ……」
ZAIAとは全く関係のないところでワクワクしている佐天を他所に、不破は生徒達を見て昔の自分を思い出していた。
ヒューマギアによって破壊された青春。もしデイブレイクが無ければ自分も彼らのような青春を送れたのかもしれない。そう思うと、ヒューマギアに対する憎しみと怒りがこみ上げてくる。
手に持つ缶コーヒーがメシメシと音を立てる中――。
「うーん! うーん! ……あれ、おかしいな」
「……なにを唸ってるんだ、佐天」
「いや、この缶ジュースの蓋が凄い硬くて……うぐぐぐぐっ! はぁ……はぁ……びくともしないんですよ~!」
「はぁ……お前は能天気だな。ほら、貸してみろ」
不破が佐天から缶ジュースを受け取ると、軽く力を入れてふたを開けようとする。しかし、それでは開かずもう少しだけ力を入れる。それでも開かない。今度はめいっぱい力を込めて蓋をねじるがそれでも開かない。
「ぐぬぬぬぬぬぬっ!! 俺にこじ開けられねぇもんは……ねぇっっ!!! ――あ」
さながらロックのかかったプログライズキーをこじ開けるかの如く、不破は限界まで力を振り絞り蓋をこじ開けた。すると、いろんな角度から降られていた強炭酸ゴリラサイダーは不破の顔面目掛けて大噴射。
「…………」
「あははは!! 先生、文字通りゴリラですね!」
「あぁあんっ!!」
佐天のゴリラ発言によって堪忍袋の緒が切れた不破は逃げる佐天を追いかけまわし始める。その姿はまさに怒れるゴリラ。
そんな様子を見た唯阿は呆れた様子で走り回る不破に足を引っかけた。
「ぶっ!? てめぇ何しやがる!」
「ここは動物園じゃないんだ。走り回るな。それよりもそろそろ昼時だ、社員食堂に案内するからお前が生徒を先導しろ」
「ちっ……わかっ――」
不破が生徒達をまとめる為に呼びかけようとしたその時、急にけたたましいサイレンの音が鳴りだした。
《4番棟にて火災発生。速やかに社員は非常口から脱出してください。繰り返します。4番棟にて火災――》
その警報と共に生徒達がパニックになりその場にしゃがみこんだりと身動きが取れなくなる。しかし、瞬時に行動を起こしたのはジャッジメントである初春だった。初春は不破と共に非常口への誘導を始める。
「くそっ! 本当に厄日だぜ! この日に限って火災なんてな!」
「不破先生、生徒達全員避難させました! 私たちも早く逃げましょう!」
初春の迅速な対応のおかげで無事全員を逃がすことに成功した二人は非常口から脱出を図る。
そしてなんとか犠牲者を出すことなく避難できたことにほっとする不破は生徒達が全員いるか点呼を取り始めた。
◆
「けほっ……けほっ……初春、先生。どこ……」
その頃、独りだけ逃げ遅れていた佐天は煙で視界が遮られ喉が焼けるように痛む中、非常口を探して歩いていた。
すると煙の中で人影を見つけた佐天は不破であると認識し、助けを求めて必死に走りその服の裾にしがみついた。すると――
「あれ? まだ人が居たんだ」
(先生じゃ……ない……)
「あはは、死んじゃうね……君。でも僕は助けないよ。人類滅亡が僕たちの目的だからさ」
そう言いながら煙と熱さの中でも微動だにしない怪しげな男。それどころか不敵な笑みを浮かべるその男に佐天は恐怖を覚える。
「でも……かわいそうだから僕が楽にしてあげるね」
そう言って懐から拳銃を取り出し佐天の額にあてる。そしてゆっくりと引き金を引こうとした時、別の場所から銃声が鳴り響き怪しげな男の手元にあった拳銃は吹き飛ばされる。
《シューティングウルフ!》
【"The elevation increases as the bullet is fired."】
「てめぇ、俺の生徒に何してやがる!!」
突如として現れた仮面ライダーバルカンは怪しげな男に向かって渾身のパンチを撃ち込む。それを真面に喰らった男は吹き飛ばされるが、受け身を取ってすぐさま立ち上がる。
「あはは、君が噂のバルカンかぁ~! 目的とは違うけど、君の戦闘データを取るのもアリかな」
《ウィング!》《フォースライズ!》
《フライングファルコン!Break down...》
「なっ! 変身しただと!? くっ……!」
男がピンクのライダー、仮面ライダー迅へと変身するとバルカンの方へ向かっていく。しかし、バルカンは佐天を抱えると敵に背中を見せ、逃走を開始する。
(佐天は多く煙を吸っている! 今は奴にかまってる暇はねぇ、早く佐天を外に出してやらねぇと!)
「えぇー、逃げちゃうの? 待て待てー!」
佐天のことを第一に考えて行動するバルカン。しかし、無慈悲にも迅は鋼鉄の羽を飛ばして追撃してくる。
「ぐっ!」
敵の攻撃になりふり構わず走っていたがダメージが蓄積し、とうとう膝をついてしまう。
それでも諦めまいと必死に非常口へ進もうとするバルカン。
「はぁーあ。逃げる相手を倒してもつまんないだろ」
獲物を仕留めようとゆっくりバルカンに近づく迅。そしてそのままバルカンを何度も蹴りつける。その間にも必死に佐天の盾になっているバルカンだったが、ライダースーツの限界が来たのかとうとう変身が解除されてしまう。
「バルカン……あんまり強くなかったな。それじゃもう帰ろっかな」
不破に対し失望した迅が背を向けた時、突如として迅の背中に衝撃が走る。よろけた迅が振り向くとそこにはガスマスクを付けた女性の姿があった。
「刃……お前……」
「情けない恰好だな。子供たちの未来を守る教師という立場にいるのなら、ちゃんと守って見せろ」
「は? 誰だよ、お前」
「それはこちらの台詞だな。お前が何者なのかは拘束した後に聞かせてもらう」
突如として駆け付けた刃唯阿の腰には不破が付けているのと同じショットライザー。まさかこいつも――。そう思ったのも束の間、懐から取り出したのはチーターの柄が入ったプログライズキー。
《DASH! KAMEN RIDER……KAMEN RIDER……》
そしてショットライザーにプログライズキーを差し込むとキーを展開し、ショットライザーの引き金を引いた。
「変身」
《ショットライズ》
銃弾が射出され、まるで意思をもっているかのような軌道で迅へと飛んでいき打ち抜くと唯阿に弾丸が向き胸元に直撃した。するとその弾丸が弾けて装甲に変わり、全身に装着されると仮面ライダーバルキリーへと変身を遂げた。
《ラッシングチーター!
"Try to outrun this demon to get left in the dust."》
「私は対象を拘束する。不破はその子を連れて逃げろ」
「っ……すまない!」
不破は痛みに耐えながら佐天を負ぶって外へと向かう。
バルキリーは腰に付いたショットライザーを手に取ると迅との戦闘を開始した。
「あはは、仮面ライダーが増えた増えた! いい土産話ができたよ」
「さっそく私から逃れる気でいるのか。舐められたものだな」
二人の戦闘能力は五分五分。だがそれでいい。唯阿はZAIA本社内の消火が終わるまで時間を稼げば、後はZAIA内のセキュリティシステムで目の前の敵を無力化すればいいだけの話だ。
「あのバルカンより手ごたえがあって良いね。でも、もうそろそろ迎えが来る頃だ」
「迎え、だと?」
迅の意味深な言葉に疑問を抱く唯阿。その直後、耳に着けた通信機から通信が入る。
《刃主任! 開発中のギーガが突如制御不能に――!》
「なんだと!? まさかお前たちの目的は――!」
「そういうこと。僕たちはお友達を増やしに来ただけ、君たちの兵器は今や僕の大きなお友達さ」
「貴様!」
《ダッシュ!》
バルキリーはショットライザーのプログライズキーのボタンを押す。するとショットガンにエネルギーが蓄積され、バルキリーはその強靭なスピードを生み出す脚力で縦横無尽に走り回りながら迅へ向かって弾丸を放つ。
《ラッシングブラスト!》
やがて最後に強大なエネルギーがこもった弾丸を放つと迅のいた場所は大爆発を起こした。
対象を拘束ではなく破壊してしまったとバルキリーが思った時、煙が晴れて出てきたのはZAIAで開発中のギーガと呼ばれる巨大ロボット兵器の腕だった。そしてその腕の横からひょこっと変身を解除した迅が現れる。
「君との戦い、楽しかったよ。また遊ぼうね」
「っ! 待て!」
バルキリーはギーガの手のひらに乗って逃げようとする迅を追いかけようとするが、飛行能力を持っているギーガに追いつけるはずもなく、迅と無数のギーガは空へと消えていった。
◆
その頃、不破は佐天と共に駆け付けた救急車に運ばれようとしていた。
「すみません……私が佐天さんをちゃんと見てないから……」
「お前のせいじゃない。見れていなかったのは俺の方だ。それに、俺にもっと力がなかったから……」
不破は自身の無力さに怒りを覚えていた。佐天を抱えていたとはいえ、何の抵抗もできず唯阿が来なければ守ることすらできないところだった。これではアンチスキルとして、教師として、仮面ライダーとして未熟すぎる。そんなくやしさに打ちひしがれながら病院へと運ばれるのだった。
そして唯阿はと言うとあれから不破達に姿を見せず、火事によって4分の1が燃えてしまった本社を眺めながら誰かと通信を取っていた。
「すみません……私がいながら本社に損害を与えてしまい……。この責任は必ず取ります」
「……そうだね。この事態は1000%君のせいだ。責任は取ってもらう。……だが、思わぬ収穫があったよ」
「思わぬ収穫……ですか?」
電話越しの相手。白いスーツの来た男性の足元には見るも無残なほど崩壊したヒューマギア。そしてその手にはプログライズキーと少し違うが、とても似たキーがあった。
次回 第八話【手にした力₋レベルアッパー₋】
基本的に挿絵投票の締め切りは【次回の話が更新された時点】で終わりとなります。
私自身、不定期更新なので締め切り期間はランダムですがご了承ください。
この話の挿絵となるワンシーンは?
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ゴリラサイダー、ゴリライズ
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迅と佐天
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仮面ライダーバルキリー、変身