信じて送り出したダチがTSして帰って来たんだが 作:有象無象
突然すまないが、俺の話を聞いてくれ。
俺にはかつて相棒と呼べるほど仲のいいダチがいた。
そいつは、自分を平凡な何処にでもいる男だと言っていた。
そんなわけあるか。
平凡な男は俺のような不良になにくれと世話を焼いて更正させないし、なぜか人を惹き付ける魅力を振りまいたりしない。
さらに言えば、何処にでもいそうな男は国連の組織にスカウトされたりしない。
まあ、そんなことはどうでもいい。
そんな自称平凡な立香と俺は昔からなぜか良くつるんでいた。親も手を焼く俺を、あいつだけは見捨てなかった。
ケンカしても、授業サボっても、アイツだけは本気で心配して、怒ってくれた。最初はイラつく事もあったが、気づいたらアイツの言葉に従っていた。
俺も立香のよく分からない魅力にやられた一人なのかも知れない。
アイツがいたから、俺は今大学通えてる訳だし。
そんな藤丸立香は、高校卒業と同時に国連の承認組織のカルデアとやらにスカウトされ、旅立って行った。
そして、すぐに例の事件が起こって、世界中がなぜ進んでた一年に混乱を極め、それがようやく収まった2017年。
アイツが一時的に帰省してきたのだ、が。
「あ、久しぶり、元気だった?」
「誰だお前!」
あの野郎、女になってやがる!
「で?何でこうなった?」
「いやぁー。まあ、色々あってね」
その色々を聴きたいんだが?
いや、想像して欲しい。家帰ったら親に「客が来ている」と言われ、部屋に行ったら、見知らぬ美少女が「久しぶり」と言ってくる状況を。
誰だって混乱する。しかも会話してわかった。こいつ間違いなく立香だ。
親友に起こった一大事だ。誰だって何があったか知ろうとするだろう。なのに返答は「色々あってね」だ。ふざけるんじゃない!
何でこうなった?
「おい、説明しろ」
「いやぁー。ホントに色々あった結果だし?」
「そこからは、私から説明させてもらいます!」
「お前誰だよ!」
立香を問いただそうと詰め寄ると背後から声をかけられた。振り替えると、桃色の髪の美少女が立っていた。
「あ、申し遅れました。私はマシュ・キリエライトです。カルデアで、先輩、りつ、藤丸先輩の後輩をしています」
「まあ、カルデア歴的にはマシュの方が先輩だけどね」
「お前ちょっと黙っててくれる?!」
何なんだコイツら。女になった親友に、先輩だけど後輩を名のる怪しい女のコンビとかマジふざけんな!混乱してどうにかなりそうだよ!
「それについてもお話ししますので、落ち着いてください」
キリエライトが静かに話し出した。
カルデアとは人の未来を守るための機関で、立香はたまたま人類最後のマスターになって、過去の英雄をサーヴァントとして呼び出して文字通り世界を救ってきたと、一年間の停止はその人理焼却を阻止する戦いの結果だと。今回の帰省に際して、身の安全のために、変装としてスナック感覚で性転換してきたと。
「なんだそれ?訳わかんねぇ。マスターだのサーヴァントだの人理焼却だの。そして何よりスナック感覚で性転換ってなんだよ」
「あの、大丈夫?」
「説明聴いたのに全部が全部訳わかんねぇ」
「あはは、だよねぇ」
「けど、とりあえず言わなきゃならないことはわかった」
頭の整理も何もかも放っておいてとりあえず言わなきゃならない。
「立香」
「?」
「俺達を、人類を救ってくれてありがとう」
礼を言って頭を下げる。再び顔を上げると立香は、驚いたような顔で固まっていた。ややあって、立香はその大きな瞳を潤ませると声を上げて泣き出した。
「お、おま!何で泣いてんだよ!」
「だ、だって!そんな正面から、お礼、言われる、と、思わなかった、から!」
お前の今の姿で泣かれるとすげぇ罪悪感あるんだけど!
ああ、もう収集つかない!そうだ。後輩をキリエライトなら!って!お前まで感極まった感じで泣いてんじゃねぇよ!
おい立香!すがり付くな。お前今ただの美少女なんだからいい匂いして変な感じすんだよ!中身男だと知ってる分より質悪いよ!
「あーもう、こうなったら気が済むまで泣いてやがれ」
「ありがとう」
バカ、礼を言うのはこっちだよ。