信じて送り出したダチがTSして帰って来たんだが   作:有象無象

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第2話

「ここが先輩の通っていた小学校ですか!」

 

マシュが目を輝かせている。こいつはどんだけ立香が好きなんだ。

 

信じて送り出したダチがTSして帰って来た翌日。俺と立香はマシュ(本人がそう呼んで欲しいと言っていた)に生まれ育ったこの街を案内してまわっていた。

 

良く遊んだ公園に、商店街、そして学校。俺らには見慣れたそのどれもが、マシュにとっては目新しい存在のようだった。

 

「結構変わったね」

「そうだな。公園の遊具は老朽化で撤去されたし、商店街もシャッターが目立つようになった。おまけに、小学校は建て替え済みだ」

「懐かしいのは変わらないけど、なんか悲しいような」

 

確かに、なんか悲しいような気がする。とはいえ、変わらないものなんてないのである。

 

「にしても、お前も変わったよな。色々と」

「?そうかな?」

「いや、何で自覚ねぇんだよ」

 

主に身体的に。なんだこいつ、骨格どころか遺伝子から変わってねぇか?なんかいい匂いするし。身長十センチ以上変わったし。柔らかいし。

 

「性格といい、容姿といい。何処に出しても恥ずかしくない美少女になったもんだな」

「おお?ドキドキしたりするの?」

「ちょっと何言ってるかわかんないです」

「何でわかんないんだよ」

「やかましいわ」

 

からかう立香を軽くこづく。

あー、この感じ前と同じだわー。男だった頃のこいつと同じだわー。これにドキドキとかありえねぇな。落ち着くわー。

 

「マシュ、そろそろご飯にしよう」

「はい!」

 

立香と共にショッピングモールに向かいながら昼食をとる。ショッピングモールに向かっているのは、マシュと立香の日用品を買うためだ。最近、急遽女になった立香はもとよりマシュもあまり服とか持ってないというのには驚いたが、生まれからほとんどカルデアにいたならあり得ない話ではないか。

それはともかくとして、だ。

 

「マシュ。これ美味しいよ一口どう?」

「ありがとうございます。ん……美味しいです!」

「良かった」

「お返しにこれをどうぞ」

「ありがとう。……んー美味しい」

 

あれ?この寿司甘いな?玉子焼きだったっけ?

昼飯はマシュに何か日本らしいものをという事で寿司になった。安価な回転寿司だが。

そこで二人は一皿二貫の寿司を共有し、あまつさえ、食わせあっている立香とマシュ(見た目は両方美少女)の回りに百合の花が見える。

 

「マシュは初めてのお寿司だけど、食べられそうで良かったよ」

「はい。存在としては知っていましたし、キャメロットでのベディヴィエール卿の行軍食に比べれば、生魚は問題ないです」

 

色んな意味で腹一杯になったので、本来の目的である服と日用品を買いにショッピングモールへとやって来た。

 

「さて、まずはどうする?」

立香に尋ねると、まずは服を買うということになったのだが。ここにいるのは男と女になったばかりの元男と箱入り娘の三人であったため、ファッションなどわからない訳で。

 

「店員さんにおまかせする他無いな」

「そうだね」

「そうしましょう」

 

という事で、良さそうな店に突っ込んでおいた。俺はその間適当に時間を潰そうと思っていたのだが。

 

「あ、彼氏さんもよかったら一緒に選んであげてください」

「あ、彼氏じゃないです」

 

女二人つれて服選びにくる彼氏がいるか!

 

「え?彼女公認の浮気じゃないんですか?」

「どんな頭の構造してんのこの店員!」

 

彼女公認の浮気ってなんだよ。この店員いかれてんのか!

 

「え?私は彼女じゃなかったの?」

「話をややこしくするなァ!立香ァ!」

 

悪ノリを始めた立香に叫ぶ。

 

「やっぱりそうじゃないですか!」

「違うわボケぇ!」

「そうですよ。店員さん」

 

立香、ようやく正気に。

 

「マシュは私のものです!」

「せせせせせせせ、先輩!」

「んなこったろうと思ったよぉ!」

「彼氏の彼女で彼女の彼氏。そんな考え方が……アリだ」

「ねぇよ!そして彼氏じゃねぇ!」

 

真っ赤になったマシュを抱き寄せる立香を見て店員は新しい扉を開けたような清々しい表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「疲れた」

「いやぁ、面白い店員さんだったね」

「アホか」

 

なんやかんやありつつ、なんとか必要なの物を買いそろえた俺達は、帰路についていた。

 

「すっかり遅くなってしまいましたね」

「あの店員のせいでな」

 

あの店員二人を着せ替えては興奮した様子で感想を述べては、どんどん興奮して鼻息が荒くなっていった。結果として時間を食ってしまった上に結構買わされてしまった。

 

「夕飯家で食べる?」

「ああ、久しぶりにおばさん達に挨拶したいしな」

「了解。連絡しとくね」

 

そう言ってスマホを取り出した立香だったが。目の前に電柱が迫っているのに気づいていない。

 

「危ねぇな!お前はホントに」

 

慌てて腕を引いて回避する。が、代わりに体勢を崩したのか腕の中にすっぽり収まってしまった。それはつまり、しっかり抱き締める形になってしまった訳で。

 

「ったく。気をつけろよ」

「あ……ぅ。ありがとう」

 

おい、そのなんか赤い顔やめろ。変な声出すな。変な感じがするだろうが。

 

「気にすんな」

 

俺はなんとかその言葉を絞り出して、帰路を急いだ。

 




悪ノリが過ぎた
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