信じて送り出したダチがTSして帰って来たんだが 作:有象無象
「おつかい?」
「はい。といっても近くのスーパーまで夕食の材料を買いに行くだけなのですが」
ここんとこしばらく学校、バイト、立香と邪ンヌの相手のローテーションをこなしていたのだが、今日はバイト帰りにマシュと会った。珍しく一人のようだ。
「送ろうか?」
「いえ、本当にすぐですし。一人でのおつかいは初めてですから。実はワクワクしていまして」
「そうか、気をつけて頑張ってな」
「はい」
マシュと別れて帰路を急ぐと数十メートル先の電柱に何かいた。
「何やってんだ?立香」
「あ、いやぁ、そのぉ。マシュが心配で」
「なら一緒に行けばいいものを」
「やだよ」
「なんで?」
「マシュがあたふたしてるところ見たいの!あのマシュが不慣れで緊張しつつもワクワクしてるところを離れたところから観察したいの!」
「歪んだ愛情だな!」
え?コイツ、カルデアで性別と一緒に愛情まで歪んだの?
「だって、それこそがマシュの等身大の感情だから!」
「何真顔で言い切ってんの!この女!」
「男だよ!」
「女なんだよ今は!」
もう放置して帰りたい。
「あ、ヤバい見つかる!」
「おい!引っ張るな!力強!」
騒いだせいかマシュが振り返ろうとしていた。立香に電柱の裏に引っ張り込まれた。
「おい、流石にこのスペースに二人は無茶だ!」
「いいからもっとこっちに詰めて!見つかるから!」
「ダメだ!これ以上詰めるとお前を潰しかねない!」
「潰されたってかまわない!」
「なんの覚悟してんだァ!お前ェ!」
そんなに覚悟決めたこと言われてもやってることはマシュの尾行だからな!
「ふぅ、なんとかなった」
「なんで気付かないんだよ 」
電柱の影であんだけ騒いでたのに何で気付かないんだよマシュ。
「さぁ、行くよ!」
「いや俺帰るぞ?」
「え?」
「え?」
何でさらっと付いていくことになってんの?
「なんで?あたふたマシュを見たくないの?」
「いや、興味ないし」
「マシュを観察したくないなんて、やっぱり、ソッチの気があったの?」
「ないわ!てかやっぱりってなんだよ!」
やっぱりってことは前から疑惑あったんじゃねぇか!
「だって、昔から私としか絡まないし。女っ気なかったから。奴はソッチの気があるんだって噂を皆してたよ」
「その皆の名前を教えろ」
「ダメ」
御礼参りの時間だコラ。
「とにかく。今はそんなことよりマシュだよ!」
「はあ、これ、はいって言わないと進まないやつだ」
そんなこんなで、俺達はマシュを尾行しつつ、あらゆる障害を秘密裏に取り除いていったのだが。
なんだこいつの指揮能力。これが人類救ったマスターか。
「あ、まずい!あれはスーパー試食おばさんだ!」
「スーパー試食おばさんってなんだよ」
「スーパー試食おばさんは試食を薦めつつ話術で巧みに品物を買わせる店員さんだよ」
まずいな。お人好しなマシュでは買わされかねない。
「いえ、今は買わなければならないものがありますので」
「そうかい。なら仕方ないねぇ」
「ってあれ?」
スーパー試食おばさんまさかの敗北。
「あらー!お熱いアベックねぇ!良かったら食べてって!」
「いや、アベックじゃありません」
スーパー試食おばさんに捕まった!
「んまー!一丁前に照れたりなんかしちゃってもー!」
「いや、そういうんじゃないんで」
「とりあえず、これ食べながら詳しくきかせな!」
気がついたら、試食の皿持ってた。なんて素早いおばさんだ。俺でなくても見逃すわこんなもん。
「珍しいですねおばさんが容易く引き下がるなんて」
素早いおばさんに戦慄していると立香が疑問を投げ掛けた。
立香。お前この状況で訊くのか?
するとおばさんは試食のソーセージをタバコのように食わえながら口を開いた。
「ああ、さっきの娘ね。あの娘、今時珍しいぐらい純粋でしょう?押せば買ってくれるんでしょうけど。私はねぇ、プライド持って試食おばさんやってんのよ。あんな娘の純粋さにつけこんでなんて。私のプライドが許さなかった。それだけよ」
答えてくれんのかよ。なんで無駄しっとりした裏の女感出してくるんだ。
「そうだったんですか」
「ええ、そうよ?ところで、情報には対価がいるわよねぇ?」
「あ、はい。買わせていただきます」
この後滅茶苦茶ソーセージ買った。しばらくおかずこれだな。
「マシュのおつかいも終わったし、バレないうちに帰るよ。」
「そうか、じゃあな」
そこからしばらくマシュを尾行したのちに、別れて帰った。
冷静に考えていたいけな少女を尾行して過ごしたって結構ヤバい発言だと思う。
あと、慣れないおつかいであたふたするマシュは確かに可愛かったです。立香が尾行するのもわかる。