信じて送り出したダチがTSして帰って来たんだが   作:有象無象

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想定よりも難産でした。


第5話

「燃やします!」

「あー!死んじゃう!死んじゃうよぉ!」

 

扇から飛ばされた炎を必死にかわしつつ俺は家から飛び出した。

 

なぜこんなことになったのかというと、それは数分前までさかのぼる。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

マシュの尾行をしてから数日後、バイトから帰ったら珍しく部屋に誰もいなかった。普段は立香か邪ンヌが入り浸っているのだが。今日はいないらしい。

 

久しぶりにゆっくりできるかな?

なんて考えた瞬間だった。玄関の呼び鈴が鳴った。

 

「誰だ?」

 

宅配便とか今日くる予定なかったけど。

「こんにちは。ここが秋人様のお宅ですか?」

 

玄関を開けるとそこには和服の美少女がいた。大人びた風貌だがたぶん年下だろう。

 

「俺が秋人ですが?どちら様ですか?」

「ああ、そうですか」

 

こちらの言葉に答えず少女はうつむき、懐から扇を取り出した。

気のせいだろうか?気温が上がったような気がする。

ややあって、少女が顔を上げた。微笑んだままだが言い知れない恐怖を感じた。

 

「貴方が!!」

「うわぁ!!なんだこいつ!あっぶねぇ!」

 

怒りの叫びとともに少女は扇を一閃した。間一髪かわすと前髪がチリチリと焦げ臭い匂いを発した。

 

あかん!燃やされる!

こいつサーヴァントじゃねぇか!じゃあ立香関係かよ!

 

「ちょ、ちょっと待てよ!あんた何なんだよ!」

「貴方が安珍様をたぶらかしたのですね!」

 

あ、ダメだこいつ。話を聞かねぇ。

 

「私と安珍様のために燃えてもらいます」

「ちょっと待って!命粗末にするんじゃないよ!命なんだと思ってんだよ!殺すぞ!」

 

しかし、少女は意に介さない。むしろ炎の勢いが強まっていく。

だんだん熱が冗談じゃなくなってきた。

 

「燃やします!」

「あー!死んじゃう!死んじゃうよぉ!」

 

 

 

 

 

 

となった訳である。

 

 

 

 

 

 

「ちっくしょう!燃やされるぅ!死にたくねぇよぅ!」

 

俺の後ろを猛スピードで追随する少女。なんだこいつ。見かけより足はえぇ。これがサーヴァントか。こんな武力人に向けちゃダメでしょ!

もう体は小さい擦り傷と軽い火傷だらけだ。

 

「あ!」

 

足がもつれた。

 

そう感じた次の瞬間に、俺はアスファルトを滑っていた。

 

立ち上がろうとしたが、真後ろに少女が肉薄しているのを理解して体が硬直した。

蛇に睨まれた蛙かよ。

 

「最期に、一つだけ言わせてくれ」

 

返事はないが、即座に燃やされなさそうなので続ける。

 

「俺は立香をたぶらかしたつもりはない!」

「嘘です!」

 

後ろ髪チリチリするぅ!

 

「待て待て待て待て!ストーップ!まだ話は終わってねぇ!確かに美少女になっててちょっとどぎまぎしたけども!あんたがそれだけ必死に独占しようとするぐらい魅力的ならむしろそうなるのが自然じゃないか?」

 

一気に言葉を発すると、後ろからの圧力が消えた。恐る恐る振り返ると、少女は思案顔で佇んでいる。とりあえず即焼死は免れたらしい。

 

「確かに、安珍様なら、それが自然ですね」

「そうだろう!そうだろう!だから話をしよう!まずあんたの名前は?」

 

訊くと少女はさっきの圧力からは考えられないほど穏やかな顔で答えた。

 

「わたくしは清姫と言います。貴方のことを誤解していたようですね。申し訳ありません」

ペコリと清姫は頭を下げた。清姫ってあれか、安珍清姫伝説の。良かった。焼かれなくて。にしても、安珍、もとい立香を褒め称えただけで止まるとは、

 

「チョロ過ぎないこの娘?」

「はい?」

「あ!」

「わたくしの前で、嘘を、つきましたね」

 

再び叩きつけられた殺気。あ、これダメだ。死ぬ。

 

「あんた何でこうなってんのよ!」

 

その言葉とともに間に割って入った人影に突き飛ばされた。

その人影はジャケットとタイトなスカートの出で立ちで。

 

「邪ンヌちゃん!」

「邪ンヌちゃん呼ぶな!」

 

最近、立香とともに俺のパーソナルスペースを占領しつつある邪ンヌちゃんだった。

 

「邪魔をしないでもらえますか?」

「清姫、前にも言ったわよね? 嘘も許容できないなら、尼にでもなりなさいって」

 

まさに一触即発。サーヴァント同士の対峙で、空気が歪んでいるようにすら感じた。

 

「二画の令呪をもって命ずる!落ち着いて清姫!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に申し訳ありませんでした」

「いや、もういいわ」

 

数十分後、立香司会の下、話し合いが行われた。その話し合いは何度も拗れながらもなんとか、俺には立香に対する恋心はないということを認めてもらえたのだった。

焦げた家の修理代や、俺の治療費(といっても塗り薬や絆創膏ぐらいだが)+慰謝料をカルデア持ちで俺の口座に振り込まれることと、清姫とマスターである立香の謝罪を受け取った。

ちなみに、今回は和服を着たランサーの清姫だったから話し合いでなんとかなったが、バーサーカーの清姫なら名乗った瞬間に燃やされてたらしい。つまり、俺は今回リアルに「ここがあの男のハウスね?」されたのか。あと、清姫ぐらいの立香ラブがあと二人いるらしい。カルデア魔境過ぎない?

 

「治療費と修理代と慰謝料くれたし、謝罪ももらったし、清姫さんも立香のお仕置き受けた訳だからもう手打ちにしよう」

 

という訳で、今回のことはこれで解決ということになったのだが。

 

「あ、そうだ。清姫さんに最後に言っておく」

「はい?」

「狂うぐらい立香に惚れたんなら、もっと立香を信頼して、どっしり構えてな。あ、あと立香が好きな味とか知ってるから、今度聞きに来いよ。客なら歓迎する」

「はい!」

 

清姫は満面の笑みで答えた。あら可愛い。そっちの方がいいよ。

 

 

 

 

 

 

PS.この後邪ンヌちゃんに「命狙った相手を客として歓迎するとか。アイツの親友だけあって、あんたもなかなか狂ってるわね」と言われた。解せぬ。

 

 

 

 

 

 




筆の進むまま書いたら主人公が某実況者みたいになってしまった。
ちなみに、主人公の名前は我が拙作の「幼馴染はコミュ力お化け」の主人公「紅秋人」から適当にとってきました。物語に関連性はありません。
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