四年生となり俺に嫌がらせをしていたやつらは卒業していった
四年生というか、日常的に変わったことと言えばヴィランが活発的になったことだ
ニュースではヴィラン関係のものばかり
なので尚更訓練に身を投じなければ
そんなある日、父さんが帰ってきて話があると言われた
側には母さんもいる
「吐喰、大切な話があるんだ」
こんなに真剣な顔をした父さんを見るのは初めてかもしれない
「本当は自分の子供にも話してはいけないことなんだがな、吐喰は賢いからこの意味が分かると思って話をする。今度大きな仕事がある。今のヴィラン活性化と関係のあることだ。俺たちヒーローはその大元を突き止め、捕縛することになった。だがあれらのヴィランを束ねる存在だ。だから命の危険も十分にある」
その言葉を聞いてAFOのことを思い出した。オールマイトが重傷を負った事件だ。
「待って、父さん。そこには言っちゃダメ」
ここは引いてはいけない
様々なヒーローが参加してなお、オールマイトに重傷を与え生き残った存在だ
その後ヴィラン連合の大元となり、脳無を作成し神野区の事件でオールマイトを引退に追い込んだ。
だがAFOは死ぬことなくタルタロスに収容されることとなった
その事実を知っているため俺はここで何としても止めなければいけなかった
「父さん。そこに行ったらたぶん父さんは死んじゃう」
まさか自分の息子にこんなことを言われるとは思わなかったのだろう
しかし父さんは
「オールマイトや他の有名ヒーローも来てくれるんだ。それに母さんもな。それに吐喰を残して父さんが死ぬわけないだろう」
少しだけ悲しそうな顔をしてそう言った
まさか母さんも行くとは思わなかった。でもなぜ母さんが訓練を再び開始した理由に納得がいった
そしてどれだけAFOが危険な存在なのかを知っていることも・・・
「一生のお願いだから行かないで」
もしかしたら死なないかもしれない。だが死んでしまう可能性のほうが高い
母さんは今にも泣きそうな顔でこう言った
「ごめんなさいね。でも大丈夫よ。私たちはちゃんと帰ってくるから。それに今ヴィランが活性化していて被害にあっている人が大勢いるの。だから私たち『ヒーロー』が助けてあげなくちゃいけないの。『ヒーロー』を目指している吐喰ならわかってくれるわよね」
そんなことを言われても、俺は周りの人よりも父さん、母さんを失いたくない。繭ちゃんもおばさんも
自分に力がないのが憎かった
先日の母さんとの対人訓練でもボロボロにされた
実力が全く足りていない
「それでも行かないで!」
泣きながらそう叫んだ
「吐喰。よく聞け。『ヒーロー』っていうのは常に危険がつきものだ。いついかなる時にも危険が伴う。それを承知して俺たちは『ヒーロー』になったんだ」
そんなことはわかってる!!!
そう言いたかった。
でもわかっていなかった
原作という事実だけを見て、普段の父さんの活動、過去の母さんの活動に目を向けていなかった
もしかした今回と同様に危険なこともあったかもしれない
だからこそ父さんはそう言ったのだろう
「お父さんには私がついているから!ちゃんと二人で帰ってくるから、その時はいつも通り「おかえり」って言ってくれないかしら」
ああ、なんでそんなことを言うんだよ
なんで母さんたちは『ヒーロー』になんかなってしまったんだろう
心の中では到底納得のできないことだった
でも原作で父さんたちが参戦して生き残った可能性もある
ここで俺が決めつけてしまうのも、また違うのかもしれない
言いたくはなかった
止めなくちゃいけなかった
でも言ってしまった
「っ。わがっだ」
顔が涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながらそう言った
両親ともに俺を抱きしめ、頭をなでたり鼻を拭いてくれた
それからは繭ちゃんとの二人での訓練になった
父さんと母さんは、対策会議や本格的な訓練のため家に帰る日が少なくなっていた
「おじさんとおばさんはどうして最近訓練にいないんだろうね」
何も知らない繭ちゃんがそういった
「仕事が忙しいみたいなんだ」
そう言うしかなかった
「そっか、じゃあ二人で頑張っておじさんとおばさんをびっくりさせちゃおう!」
「そう、だね。がんばろっか」
二人のことが頭から離れない
そんな状態で集中できるはずもなく、まともに訓練できなかった
繭ちゃんからは心配され、今日の訓練は終了となった
そして約束の日が来た
二人が家をでる
外まで見送りに行った
「絶対帰ってきてね」
二人の腕をぐっと掴んでそう言った
「ああ、約束だ」
「ええ、いい子で待っててね」
二人の姿が見えなくなるまで手を振った
深夜、下の階から何かを壊すような音が聞こえてきた
一瞬で察した
今日が『あの日』なのだと
急いでヒーロースーツに着替え、亜空間に仕舞ってある捕縛アイテムなどを確認し部屋の窓から外に飛び降りた
家の中は危険だからだ
戦闘となった時家が崩れたらたまったものではないし、二人が帰ってくる場所をこれ以上壊したくなかった
「おい!クソヴィランども!こっちだぞ」
まだ家の外にいたヴィランに向かってそう言い、牽制として泥水を射出した
ああいう輩はバカにされると血が上るからな
「クソガキが!」
「おい、ガキがこっちにいるぞ!お前らも来い!」
そう言いながら追いかけてくるヴィランを、いつもの訓練場に誘い込んだ
「バカだなぁお前。知ってるか?こういうのは袋のネズミっていうんだよ」
「大人しくしておけば、何もなかったのになぁ?いっちょまえにヒーロー気取りか?」
ヴィランどもはそう言い爆笑していた
その気が抜けている瞬間に、出口を大岩で封鎖し本当の密室を作りこんだ
「な、何が起こった!?」
慌てるヴィランどもにそう言った
「ドアをふさいだだけ。何も慌てることじゃないよ」
冷静に、ヴィランども目を見てそう言った
「なめやがって!!!!」
一斉に攻撃してくる
躱すのは簡単だ。そこらのヴィラン崩れに後れを取るほど俺は弱くない
炎や風、身体から刃を生やすもの
相手は四人だが、母さんましてや繭ちゃん以下だ
数分で片が付いた。
捕縛アイテムでヴィランどもを拘束し素早く岩を取り除き、家に戻った
一階は破壊しつされていた。
だが、二階にみんなで撮った写真などが飾ってあったので、そこが荒らされてなくて安心した
地下には気が付かなかったようで安心した
地下にはヴィランが使えるサポートアイテムがあったからだ
できる限りサポートアイテムや思い出の品を収納しておく
この後またヴィランが来るかもしれないからだ
少し時間が経った頃、繭ちゃんの大きな声が聞こえた
「どうしたの!?」
焦燥した顔で、血のような赤い液体を滴せながら
「吐喰く、ん。私、人、殺しちゃった・・・」
一瞬で様々な考えが頭を巡った
繭ちゃんが人を殺した?
いや、殺すってことはまさか繭ちゃんの家にまでヴィランが!?
繭ちゃんに傷はない
でも、おばさんがここに来ていない・・・
「おばさんはどうしたの」
心臓が激しく動いている
「殺されちゃった」
聞きたくなかった
あの優しいおばさんが
二人目の母親のように、優しくしてくれて
繭ちゃんと一緒にいるところを微笑ましい顔で見守ってくれていたおばさんが・・・
「今から繭ちゃんの家に行く。見たくもないものがあるだろうから目を閉じてていいよ」
数件の距離を歩く
ヴィランが破壊したような跡が残っている
つないでいる手が震えている
どちらの手が震えているのかわからない
繭ちゃんの家に着いた
玄関は無残にも破壊され、見る影もない
「おばさんとヴィランは」
そう尋ねると
「お母さんとヴィランはリビングに・・・」
リビングに到着して俺が見たものは
胸に大きな穴が開いたおばさんの姿と、白目をむき、口から泡がこぼれ、首筋から大量の血が流れているヴィランの姿だった
「いったい何があった」
「突然ヴィランが家に入ってきて、私を狙ったヴィランからお母さんが私をかばって、あとは無我夢中で・・・」
薄情かもしれないがおばさんの死を悲しんでいる暇はない
このままでは繭ちゃんはヴィランとなってしまうかもしれない
正当防衛でヴィラン認定されなくともそれ相応の施設へと連れていかれる
それでは繭ちゃんが壊れてしまう
そう直感で感じた
俺は黙ってヴィランを収納した
「吐喰くん、なにを・・・」
「繭ちゃんのヒーローでいるって言ったでしょ。こんな場所で言うことではないかもしれないけど、俺は繭ちゃんのことが好きだ。だから僕の側以外どこにも行かせない。たとえヒーローになれなくても、繭ちゃんのことは守るから」
そう言って俺は隠蔽工作と、事情聴取の際のつじつま合わせを行った
~繭side~
二階で寝ていると、とてつもなく大きな音が鳴った。
吐喰くんと訓練をしているときでさえなかなか聞くことがない音だ
母もこの音には飛び起きたようで、すぐに私のところに来てくれた
母も私もヴィランがこの家に来たことはわかっていた
「お母さんは隠れてて!」
そう言って急いで一階に下りていく
玄関は破壊され外から家の中が丸見えの状態だった
個性を使い周りの音を拾い、ヴィランがリビングにいることが分かった
私は身を隠しながら毒毛を飛ばし、ヴィランの様子を窺った
ヴィランは金目の物を探しているようで、私の毒毛には気づいていないようだ
ヴィランの様子が少し変わってきた
私の個性が効いているようだ
個性で捕縛できるが念のため捕縛用サポートアイテムを手にヴィランのもとへ近寄った
捕縛できる自信があったが相手のほうが一枚上手だった
「お前が俺に攻撃してきたやつか?」
動きが鈍っていたのが嘘のように立ち上がり私にそう言った
「な、なんで」
「あ“?んなもん気づかないわけねえだろ。さて俺を攻撃したってことは死ぬ覚悟があるってことだよな?」
そう言って腕が金属の用の変化し、拳を握り私に迫っていた
殺気というものだろうか
私は動けず、ヴィランの攻撃がスローモーションで迫っているのがわかった。
あ、私死んじゃう
そう思った時目の前に黒い影が私の前に現れ、暖かい液体が顔を覆った
「え?」
「だ、いじょ、ごほっ」
黒い影は母さんだった
ヴィランの拳が母さんの胸を貫いている
「あ?なんだこの女は?こいつの母親か?」
そう言ってずるりと母さんの胸から腕を抜いた
「に、げな、さい」
「お前は黙ってろ」
母さん蹴とばした
「お前もこの女と同じ場所に連れてってやるよ」
そこからの記憶は曖昧だ
気が付いたらヴィランは死んでおり
私の口には暖かく、鉄臭い液体が満ちていた
口の中の液体を吐き出し、急いで吐喰くんの元へ向かった
~繭sideout~
おばさんの遺体をベッドに寝かせ、繭ちゃんにはシャワーを浴びてもらった
俺はテレビをつけて番組を見るとどのチャンネルでもヴィランが起こしている被害
それに対応しているヒーローの姿を映していた
繭ちゃんがシャワーから戻ると、スーツに身を包んでいた
「おかえり」
「ただいま」
「とりあえずはおばさんを襲った後、繭ちゃんの毒をくらって逃走したことにしよう。もし本当のことを伝えたら、ヴィランとならずとも、離れ離れになるとおもう」
そう聞いて一層顔を青くした
「大丈夫、そんなことにならないようにああしたんだ。それに事情聴取の時には俺も一緒にいるから」
少しでも不安をかき消せるように強く強く抱きしめた
少し落ち着いたようで先ほど俺が言ったことを思い出したようだ
「吐喰君が私のことが好きって本当?ずっとそばにいてくれる?」
「当たり前だよ。ずっとだ。何があってもだ」
「うれしい。私も大好きだよ・・・」
そう言って眠りに落ちてしまったようだ
壊れた家で生活していると、ヒーローと警察が訪ねてきた
どうやらヴィランの多くが身を隠したようで、やっと被害の確認ができるよになったみたいだ
おばさんの遺体を病院に運んでもらった
ヒーローはおばさんを助けられなかったことを謝罪していた
繭ちゃんの目は冷めきっていた
事情聴取にきた警察なども想定通りにごまかすことができた
壊れた家で生活するのと、子供だけでいることが心配だというヒーロー、警察だったが俺には約束がある
それを伝えるとしぶしぶ、毎日確認に来ることで手を打ってもらった
だがいまだ父さんと母さんが帰ってこない
どうやら他のヒーローは戦闘で負傷し帰宅が遅れているものもいるようだ
一週間後
警察とヒーローがやってきて俺を病院に連れて行った
車の中では何も考えられなかった
なぜなら両親ともに殉職したことを伝えられたからだ
病院の遺体安置室前につくと、ヒーロー協会から預かっていたという遺言書を受け取った
内容は、約束を守れなくてすまなかった。それから今までの思い出や、俺に対する思いがつづってあった。そして側にいるヒーローが俺の後継人になってくれるということが書いてあった
今にも崩れ落ちそうだった
ヒーローがこういった
「これから先には君のご両親の遺体がある。僕は君の両親の後輩でね・・・。君にはこの先へ行く資格があるが、僕は辞めておいたほうがいいと思う」
その言葉で察してしまった
「いいえ、行きます」
「そうか」
身体に力入れて前へと進む
遺体安置室に入って目にしたものは
そこにあったのは腕や足といったものだけで、胴体や顔は欠損していた
「おかえり」
そういって俺の意識は闇に沈んだ
どうだったでしょうか
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