目を覚ますと俺はベッドに寝かされていた
普段見たことがない部屋とこの世界に憑依した時と同じような構造なので、どうやら病室の様だ
辺りは暗く俺が病院についた時間から考え、だいたい10時間ほどだろうか
俺の後見人と名乗った『間壁 断空(まかべ だんくう)』さんがいないことを考えると、面会時間も終わっているようだ
俺は気を失う前のことを思い出していた
母さんと父さんは確かに帰ってきた
物言わぬ、まるで人形のような手足、欠損した顔で
悲しいという感情が出てこない
『アレ』が母さんと父さんだと思えないからだ
俺は確かに約束を守った
だけど約束は一方的なものとなってしまった
果たして『ヒーロー』とは何だろう
『ヴィラン』という存在は明確だ
他者に害なす者。程度の差はあれど、一歩線を踏み越えればそれはヴィランとなりうる
だが『ヒーロー』はどうだろうか
様々な訓練、試験を突破し民間人を守る
簡単に言ってしまえばそんなもの
でも果たして命を懸けてまで行うものなのだろうか?
そこには様々な思いがあるだろう、十人十色だ
名声を得たい者、お金を稼ぎたい者、憧れていた人物に近づけるようにヒーローになった者、自分の個性がヒーローになりえるから、純粋に困っている人を助けたいから
どんな理由でさえ、本来の目的を達成するためとはいえ人々を救っている
立派なことだろう
だが俺は『ヒーロー』にはなりえない存在だと気づいてしまった
いや、本当はもっと前から気が付いていた
前世でもよく考えていたことがある
例えば、自分勝手な理由で人を殺し、警察に捕まる
だが場合によっては数年という短い期間で社会に戻ってくる
殺されてしまった人には、残り何十年という未来があったのだ
それが一瞬にして奪われ、それを犯した者は規律はあるものの、そこらの人よりも健康的な生活を送り、被害者家族、犯人に対して怒りを感じている人たちの金を使い、その人物を生かしている
こんな理不尽なことがあっていいのだろうか
被害者家族は、のうのうと生きている加害者が憎いだろう
だが現代では復讐をすることは非常に難しい
何年もそれを思い続けてきた
それはこっちの世界に来ても変わらなかった
ヴィランを捕縛する際、傷つけることはあっても、殺すことはない
それが『ヒーロー』だ
ヴィランが捕まって安心する民間人がいる一方、被害を受けた者たちの心の傷が癒えることは少ない
『ヒーロー』であってもヴィランを殺してはいけない
ヒーロー協会や警察が決めたことかもしれない
だが、『ヒーロー』という存在が現れてから、なぜそれが定着してしまったのか
俺のように同じ考えを持つものはいただろう
だがそれは多数決という名の圧力で潰されていった
『ヒーロー』は確かに多くの、被害にあっていない民間人を多く救っている
だが傷ついた被害者家族の心の傷を、憎しみを救えてはいない
『ヒーロー』という縛られた存在が逆に人々を傷つけている
だから俺がそれを変えなくてはいけない
目には目を
歯には歯を
痛みには痛みを
苦しみには苦しみを
そして
死には死を
俺がこの世界に来た理由がやっと見つかった
握った手からは血が流れ、頬には熱い涙が伝わっている
外から差し込む月の光は新たな存在の誕生を祝っているようだった
「見つかってよかったね」「君が見つけたものなら、僕は応援するよ」「もうこれからは本当に君の身体だ」「ここから先はいばらの道だけど、諦めたらだめだよ」「最後に僕から君への名前をプレゼントするよ」
今まで一言も話すことのなかった口がそう言った
そして最後に
「ハッピーバースデー、『復讐者(アヴェンジャー)』
どうだったでしょうか
後々改訂するかもしれませんが、大筋は変わりません
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