『俺』が誕生してから、いや、憑依したと言ってもこの身体にはまだ本来の『吐喰』が残っていた
本心に誓ったことで『俺』は『俺』なれた
天秤の様な状態じゃなくなった
俺はもう心は『ヴィラン』だ
それが俺の進むべき道だ
目が覚めってから眠ることはなく、朝になるまでずっと考えていた
気が付くと面会時間になり、繭と間壁断空さんが来ていた
「おはよう」
俺は笑いながらそう言った
「大丈夫!?」
繭は慌てたようにそう言った
そんなに慌てなくても大丈夫なのにな
「ああ、大丈夫だよ。繭は心配し過ぎだ」
間壁さんはどうやら俺らのことを見守っているようだった
「ね、ねぇ吐喰くん?さっき私のこと繭って呼んでくれた?それになんかいつもと違うような…」
繭はやはり賢いな
賢いというより、普段から俺の様子を見ているからか、
「そうか。違って見えるなら胸のつっかえが取れたからかな」
~間壁side~
何かがおかしい
そう思うのは俺だけではなく、繭ちゃんも同じだったようだ
明らかに雰囲気や目つき、話し方が違う
吐喰君は覚えていないようだが、誕生日などで顔を合わせている
それに先輩から聞いていた人物像と大きく違って見える
「俺の息子は賢いうえに努力家でな、その上言葉使いも優しくて。将来は俺たちみたいにヒーローになりたいと言って、もう訓練を始めているんだ。
更にはもうすでに一人の女の子を助けたみたいで、その女の子は息子に惚れているみたいで、将来が楽しみだ」
そう、酒をかわしながら自慢話をしていた
だが今はどうだろう
どことなく青年のように感じる
少なくとも小学四年生とは思えない
もしかしたら先輩たちの遺体を見て、ショックを受け何かしらかの変化があったのかもしれない
この子は以前にも記憶障害を発症しているとも聞いていたし・・・
とりあえずは精密検査を受けさせよう
先輩たちに託された希望なのだから
~間壁sideout~
「間壁さんにも心配をおかけしました」
何やら考え込んでいる彼にも声をかけた
「あ、ああ、気にしないでくれ。それよりも吐喰君の方こそ大丈夫かい?」
まぁあれだけのものを見て気を失ったんだ
そう思うのも当然だろう
「ええ、大丈夫、とは言えません。まだ両親が死んでしまったことに現実味がなくて。もしかしたらあれは自分が見た夢のようにも感じるんです」
嘘だ。もうわかっている父さんも母さんもAFOに、もしくはそれに近しい人物に殺された。
相手は相当の手練れだろう。何年もヒーロー活動を行い強個性の訓練を絶えず行ってきた二人が殺されたんだ。予想としてはAFOが妥当だろう
俺としては、『俺』というイレギュラーがこの世界に誕生しているため、AFOは本当に死んでいる可能性もある。少なくともオールマイトが死んだという情報が入ってきてはいないので、生きてはいるだろう。ヴィランの活動が収まったということは、あの戦いに決着がつき、ヒーロー側が勝利したことになる。でなければ今頃町はヴィランであふれかえっていることだろう。
しかしだ、オールマイトという平和の象徴が死んだということが世間に広まれば、またヴィランが活発化するかもしれない。情報規制がされているかもしれない
これに関しては間壁さんが答えてくれるだろ
なぜならその戦いで両親を失った息子の願いだからだ
「間壁さん、少しお聞きしたいことがあるのですがよろしいですか?」
「いいとも。私が知っていることに関してはだけどね」
快く承諾してくれた
「では単刀直入にお聞きします。今回の戦いで多くのヒーローが死傷したでしょう。その中でも平和の象徴たるオールマイトは生きていますか?」
間壁さんの表情が変わった
「どうしてそう思うんだい?」
「父が任務に行く際、オールマイトも参戦すると言いました。それでも両親はあの状態で帰ってきた。そして、この一週間オールマイトの活動を耳にしていません。ヴィランの大元と対峙したオールマイトが生きているのか、もしくは活動を休止するに得ない状況になったのか。どちらですか。答えられないはなしです。ヒーローネットワークや、あの日、町にいなかったあなたなら知っているはずです」
「そうだね。君はやっぱり先輩が言っていた通り賢いようだ。それにする同洞察力を持っている。守秘義務もあるから本当は言えないだろけど、教えないわけにはいかないだろね・・・
少なくともオールマイトは生きている。これだけ言えば君なら理解してくれるはずだ」
渋い顔でそう言った
これで原作と大きく乖離することはなくなった
現時点でAFOは死んでいると思われている
だが俺というイレギュラー程度で、この世界は変わらない。
たぶん、きっと『そうできている』
俺は大切なものを一日にして多く失った。いや失いすぎた。もしも神という存在がこの世にいるというのなら、自ら命を絶った罰であり、この世界での苦しむ罰を与えた。
だがそんなものはもう関係ない。俺には決めたことがあるからだ。仮に神がそうなるように仕組んだとしても、何物にも邪魔させる気はない。自らの信念でもある。
「ありがとうございます。オールマイトが生きていなければ、またヴィランどもが活動を始めますからね。俺も私有地以外で個性を使いたくはないですし、何より俺と繭のような思いをする子が減りますから」
「ああ、繭には悪かった。おばさんのこと思い出させちゃったか」
繭はハッキリとした口調で
「ううん。大丈夫。お母さんが死んじゃったのは確かだけど前を向かなきゃいけないって、吐喰君を見て思ったの」
俺はその発言を聞き嘘だと思った。少なくとも繭と特別親しい人間はこの世に四人。おばさん、俺の両親、そして俺。半分以上を失ってそんなこと思えるはずがない。少なくとも俺は、それが原因で人生の分かれ道が決まった。しかもだ、俺の精神年齢は二十歳を超えている。それで決めた進む道だ。確かに俺は前を向いたが今までとは反対方向だ。道が、目的があるからこそ精神が保たれている。
なのに繭の精神年齢は、身体よりも高いとしても倍にはならないだろう。
「そうか。何かあったらすぐに言えよ」
少し顔を赤くして
「は、はい!」と答えた
そこから間壁さんから精密検査を受けるように言われ、検査を受けたが異常はなし
帰宅することができた
家では一日離れていたためか、繭が腕に引っ付いてきてキャーキャーしていた
間壁さんはこの家に住むことになり、繭は不機嫌になっていたが致し方ない
繭との時間が減るかもしれないのはすこし残念だが、自由に動けなくなるのが非常につらい。
だが今まで訓練していても歯が立たないヴィランやヒーローが現れるかもしれない。
間壁さんという新しい個性を相手に訓練できるのはありがたいことだ。
一応ここで間壁さんの個性について軽く説明する。名前からわかる部分もあると思うが、空間を断つことができる。まぁ簡単に言えば透明な壁が作れたり、空間掌握の範囲以内であればヴィランを押し潰したり、真っ二つにできる可能性もある。
繭の動きを止めたのも立方体のように空間を断ち、閉じ込めたということだ
かなりのやり手である
繭の移動速度は、尋常じゃない
それを正確無比に、傷つけることなく行えたという時点で凄腕だ。
早く訓練が楽しみだ。
~繭side~
吐喰君が倒れたと聞いて早一日
次の日の朝一番に、彼のところに連れて行くように頼んだ。
間壁とかいうヒーローもそうする予定だったらしい
病院に到着し、病室を開けると吐喰君?がいた
いつもの彼と違うのは一瞬で分かった。まず雰囲気が違う。顔つきや、私の名前を呼び捨てにした。一日前の彼とは大きく変わっていた
おじさんとおばさんが亡くなってしまって、ショックでそうなってしまったのかと最初は思った。
でも、それは違うと私の直感が告げている。
彼がその理由を話さないということは、それ相応の理由があるのだろう
それがわからないのは悔しい・・・
でも変わってしまった彼でも、ほんわかした優しさより大人びたというか、とにかくかっこいい優しさがあった。
移り住んできたヒーローが邪魔に思えて仕方がないけど、彼と一緒にいるには必要なことだから仕方がない
それに彼は訓練が楽しみだと言っていた
いつもより好戦的な目で
あああああ、かっこいい!!!!!!!!
お母さんもおばさんもおじさんもいなくなっちゃたけど、これで吐喰君の側には私だけ
なんてシアワセナコトナンダロウ
~繭sideout~
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