まずこれからの生活について三人で話し合った
俺と繭には知る限り親類はおらず、今頼れるのは間壁さんしかいない
親類がいないことについては俺も知らない
そして現在、頼ることは特に思いつかない
両親はこの家と保険金をかけており、生活には全く困らなかった。
ヴィランの活動が鳴りを潜めている状態で、この家に侵入しようとしてくるやつは少ないだろう。それに、俺と繭のコンビならその辺のヴィランには負ける気はしない
学校については俺と繭二人そろっていかないことにした。最初はもちろん反対させたが、両親のことや自らたちがヴィラン寄りの見ためをしていること、嫌がらせや暴力を振るわれていたこと。そして両親が残してくれたこの家にいたいということを伝えると、折れざるを得なかったようだ
勉強に関しては、俺から前もって間壁さんに高校三年までの問題を出してもらった。間壁さんは「いくら何でも・・・」と言っていたが、繭の家庭教師も務める予定だったので、試験のような形で勉強を行った。
結果としては正解がほとんど。これに関しては間壁さんもぽかんと口を開けていたが、『ヒーロー』になるためには訓練だけじゃだめだと思い、日頃からやっていましたと嘘をついた。それを証明できる人物はもういない
では学校に行っていない間は何をするのか。
それは訓練だ。脳筋と思われるかもしれないが、今できることと言ったらこれくらいしかない。強いて言うなら俺のこれからの活動を行う上での仲間集めくらいだ。
もちろん情報屋もいるだろうが、それだけではあてにならない。
そのものが犯した罪を、真実を知れる個性が必要となってくる。
原作では、洗脳という個性が出てきたが、あれの上位互換がほしいところだ。相手の記憶に潜れる個性などだ。洗脳に関してはかなり強いと思うが、相手が返答しなければ意味はない。俺の活動が始まれば小さな噂から、真実にたどり着く者もいるだろう。
その上で、仲間の個性を知られたら洗脳の個性は使えない。
拷問でもすれば答えるかもしれないが、それで真実が捻じ曲がっていた場合、俺の信念に反する。
とりあえずは中学に上がるころには、活動する予定だ。
それまでに間壁さんレベルのヒーローを押さえつけるだけの力が必要になる
間壁さんは俺たちの後見人にはなったが、ヒーロー活動は二十四時間だ。
当然帰ってこれない日もある。それは大きなチャンスにもなりうる。遠出することができるからだ。
仲間集めやヴィランの分布を調べておきたい。
また、その日を利用してサポートアイテムを新たに考案してもらえるよう、知り合いの企業に行く予定だ。自分が実験台となることでよりいいデータが取れるはずだ
新しく始まった日常は、両親がいない以外特に変わったことはない。繭は常に俺の側にいる。繭がどういう道に進むかは繭次第だ。繭がヴィランを殺し、それを隠ぺいしたことや、今まで一緒にいたこととはつり合いのとなれないほど大きな選択だ。そもそも繭には黙って家を出るか、説明をしてから家を出るか迷っている。
繭のことだから付いてきそうな気もするが、命にかかわることだ。場合によっては無理やりにでも止めるか。
訓練では今まで通りの訓練なのだが、妙に個性が扱いやすい。抑えられていたものが解放されたような感じだ。もしかしたらこの身体が本当に俺のものになったからかもしれない
そして新しい訓練を始めた。遠くのものを母さんと父さんの力の両方を使い、喰らうように取り込むことができる。ならその場所に目には見えなくとも『口』が存在するのではないかと。ならば逆に遠くの位置に『口』を出現させ、そこから射出もでき可能性がある。
もしくは一定範囲を超えると『口』が見えなくなるという特性もあるのかもしれない。
個性は鍛えれば鍛えるほど、可能性が広がりそれが開花するときがある。俺はまだ始まりに立ったばかりなのかもしれない。
そう思い立ってからさっそく訓練を始めた。今まで以上にハードなものを。残された時間は短い。許容上限を増やすときには、鮮血が舞い、射出の際には筋肉が悲鳴を上げ、骨がきしむ。
繭はこちらをじっと見て何も言わなかった
だが流石にこれにはストップがかかった。訓練での怪我が間壁さんにバレたのだ。
「僕は君たちを、君のお父さんから託されたんだ。自分の身を傷つけるようなものは認められない」
そう言われたがこちらも引くことはできない
「力がないからあの日、二人は殺され、繭のお母さんも死んだ。いつまた惨劇の日がやってくるかわからない。だから、ヴィランが活動を控えている今こそ力をつけるチャンスなんです」
間壁さん困ったように言う
「それは、僕たちヒーローの役割だ。あの日それができなかったのは本当に申し訳ない。だが君がそこまでする必要はないんだ。今度は必ず、あの惨劇日が来ないよう努めるよ」
だが俺は反論した
「それはあくまで間壁さんの見解です。他の人も同じとは限らない。もし、過剰な訓練をやめてほしいならお願いがあります」
「それは、確かにそうだ・・・。そしてそのお願いとはなんだい?」
「間壁さんの時間の取れるときは、全力で訓練の相手をしてください。俺をヴィランだと思って。間壁さんが培ってきた経験と技術を俺に見せてください。ただ手を抜いたと一回でも思えば、今と同じような訓練を行います」
「それは本気で言っているのかい?流石に僕も『ヒーロー』を名乗るものだ。手を抜かないというのは、今行っている以上に傷を負わせてしまうかもしれない。そのお願いは少し卑怯じゃないかな。結局君を傷つけることになる」
「『ヒーロー』に傷を負わせてしまうかもしれないと言われるのはうれしいですね。そこまで俺のことを評価してくれているってことですから。なら一回だけ試してみましょうよ。俺と間壁さんにどれだけの差があるのかを。それで決めましょう。完封されるようであれば無理な訓練はしません。ですが間壁さんと善戦できた場合、今の訓練を認めるか。それとも毎回全力で間壁さんと訓練をしてもらえるか。まぁどちらにしろ完封される以外なら俺はどっちでもいいんですよ。卑怯でも自分のためですから」
だいぶ上から目線になってしまったが仕方がない。譲れないことだから
「随分と自信があるようだね。いいよ、その条件に乗った。だがその代わりその一戦だけは手を抜かない。申し訳ないけどしばらく訓練はお預けにするよ」
つまり痛い目を見せるってことか
上等だ
挑発も込めて
「ヒーロー活動に支障がでないといいですね」
そう言って訓練場を出た
その後の話し合いで模擬戦は一か月後
本来であればこういった模擬戦などは禁止されるだろう
だがこれは俺のこれからと、間壁さんが父さんとの約束を守るために戦うのだ
もしもだ、俺が善戦できお互いに負傷した場合でも、サイドキックや他のヒーローもいるから安心だ
この準備期間でどれだけのことができるか
訓練については、過度なものは禁止された。だがそれでもいい。本物のヒーローと全力で戦えるのであれば安いものだ
そしてこの一ヵ月という準備期間は俺に幸運の女神が舞い降りた
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