トガちゃん出ます
俺の目の前にいる少女は原作でヴィラン側で出てきたキャラクター
『渡我 被身子』
確か個性は『吸血』いや『変身』だったか?
原作の知識がどんどん朧気になっていっている
個性の要素は血を吸った相手に変身することができ、吸った量に応じて変身時間が延びるというものだったような・・・
「ねえねえ、この子カァイイと思いませんか!」
彼女は烏の死体を両手で持ち、血を滴らせながらにこやかに笑っている
異常だ
でもこの世界ではこれも普通。前世でも普通とまではいなかったがサイコパスといわれ、そういう存在がいた。
そして『オレ』もそんな存在だった
「口が血で濡れているのは、その烏を食べたから?」
流石に動物の死骸をかわいいと思えなかったので話を逸らすことにした
するとトガちゃん(心の中だしそう呼んでもいいだろう)はふるふると首を振り
「違います。血を吸っていたんです!それにしてもあなたは逃げ出したり、気持悪がったりしないのですか?」
逃げ出したりするはずないじゃないか。俺と同じ人間なのだから
「血を吸うのが君の個性のために必要なことなの?気持ち悪いなんて思わないよ。だってそれは君にとって必要なもので、その個性は君を形作る一つじゃないか。だから俺はそれを否定しないよ。それを否定する周りが間違っているんだよ。あと、俺もこんな見た目だしね」
そういって俺は顔に『口』を移動させて、腕をまくった
「わあ!すごくカッコイイですねェ!!!!それにその傷跡も素敵です!!!!」
興奮したようにそう言った。まぁ好みは人それぞれだしね
そんなことを思っているとトガちゃんは話をつづけた
「そうです。私の個性は変身っていうのです。でも周りは私の個性を、私を否定します。どうしてなんでしょうか。私はただ普通に生きたいだけなのに、お父さんにもお母さんにも否定されました。そんな顔で笑うんじゃない。私は私になれません」
ああ、もうこの時から周りはたった一人の女の子を殺しに来ているかのか。両親でさえ否定して、この子には誰もいない
独りぼっちだ
いったい誰がこの子を救ってあげられるんだろうか
驕りかもしれないが俺以外にはいない気がする
でも俺と深く関わりすぎると、ヴィランの道へ引きずり込んでしまう。どうしたらいい。トガちゃんを救うには・・・
「どうしたらいいでしょう。ずっと考えているのです。でも私じゃ何もできない。素直に笑うことさえできません」
マチガッテイル
トガちゃんはこっち側に引きずり込んで、たとえヴィランになろうとも幸せをあげよう
この世界はやっぱり間違っている。ヒーローも今後出てくるであろうヴィラン連合も間違っている。正しさを知っているのは俺だけだ。
「俺の名前は口多吐喰って言うんだ君の名前を教えてくれないかな?」
「あ!私は渡我被身子って言います。11歳の小学五年生です!トバミ君って呼んでもいいですか?」
マジか
俺よりも年上だったか
「うんいいよ。俺はトガちゃんって呼んでもいいかな」
「もちろんです!仲良くしてくれると嬉しいです!」
元気だなぁ
果たしてこれは本来のトガちゃんなのか。抑圧され続けた環境で生まれたトガちゃんなのか。これから先関わっていけばわかるだろう
「トガちゃん、自由に、自分が自分で生きられる世の中ってどう思う?」
トガちゃんは目を輝かせて
「とっても素敵です!!!!」
続けて俺は言った
「じゃあ、ヒーローって間違っていると思う?」
どうしてそんな質問をという顔で返答してくれた
「間違ってないと思うのです。いろんな人を助けて周りから認められて」
「じゃあどうしてヒーローは苦しんでいるトガちゃんのことを助けてくれないんだろうね」
するとトガちゃんは目を泳がせ言葉に詰まった
「俺はね、ヒーローはヴィランと変わらないと思っているんだ。だって目に見えることだけを救っている。トガちゃんのように苦しんでいる人のことは助けない。いつか助けてくれるっていう期待だけ押し付けて、助けようともしない。ヒーローはヴィランを傷つけることはしても、殺しはしない。それがどれだけの罪を抱えていようと。ヒーローは被害者の心を見ていない。司法の場に連れ出すだけだ。ヴィランはたとえ人を殺していても、数年後には何事もなかったように社会に戻ってくる。おかしいと思わない?俺はおかしいと思う。どうして被害者は損をし続ける。こんな世の中間違っている。だからね、俺はこんな世の中壊そうと思うんだ。痛みには痛みを、苦しみには苦しみを、死には死をってね」
それを聞いていたトガちゃんは恍惚とした表情で
「素敵です!素敵です!素敵です!私もそれに参加したいです!壊しちゃいましょう!こんな世の中!そしてそんなことを考えられるトバミ君はもっと素敵です!!!血を吸わせてください!!!」
軽くトリップしているようだった。たぶん最後の発言もそのせいだろう。でもこれでトガちゃんヴィランとなることが決定した。そして俺が幸せをあげることも。
だから俺はまず始めに
「いいよ、血がほしいんでしょ」
そう言って刃物を取り出し腕を切った
鋭い痛みが走り、血が腕を伝って指先からぽたぽたと地面に落ちている
「遠慮しなくていいよ。トガちゃんはトガちゃんなんだから」
チウチウと指をくわえ血を啜っている
多分これが初めて誰かから許された行為であり、渡我被身子という存在を認めてもらった瞬間なのかもしれない。
トガちゃんは涙を流しながら血を啜ていた
口調がおかしかったらすみません