血が止まりやっと興奮が収まったのだろう。トガちゃんはちゅぱと音を立てて口から指を離した
「個性が変身って言っていたよね。俺の血を吸ったってことは俺に変身できるってことだよな」
「血、ありがとうございました!!こんな風に私を私と扱ってくれたのはトバミ君が初めてなのです。それと短いですが、変身できますよ!でも服も併せて変身するとなると、裸にならなきゃいけないので、トバミ君の前では恥ずかしいです」
普通の少女のように顔を赤らめ手を前に組んでもじもじしている
「いや!さすがにそこまでしなくていいよ。服とかはなしの方の変身をお願いできるかな」
「わかりました!」
そうすると蝋が顔を覆っていき、俺の姿が出来上がった。先ほどまで見ていたトガちゃんの面影すらない。傷跡も、今ある口の位置も同じだ。まるで鏡、いやドッペルゲンガーの様だ
「おお、女装をした俺の姿だ。ここまで精密に変身できるとなると、癖とかさえ把握しておけば誰にもバレないだろうね」
俺の顔と俺の声で
「嬉しいです!私、トバミ君になっちゃいました!!」
うん、嬉しいのはわかるけどそうキャピキャピしないでほしい。ヴィラン顔して傷だらけの少年が女の子の服を着て、喜んでいる。まったく誰得だ。精神的によくない。できるならモザイクをかけたいくらいだ
でもこうも喜んでいるのを、しかも自分からお願いして変身してもらったんだ。なんとなく止めずらいが・・・
そんな風に思っていると俺の顔がドロドロと溶けるようにしてトガちゃんの顔が見えてきた。よかった。可愛いトガちゃんに戻ってくれた
「あぁ、もう変身が解けちゃいました。残念です・・・」
トガちゃんは俺と反対でとても残念がっていた
「また今度吸わせてあげるから」
そういうとパッと顔をあげて喜んでいた
「そういえばトガちゃんはここら辺に住んでるの?」
当たり前のことだが聞いておいた。万が一旅行で家族から離れ迷子になっているかもしれないからな
「そうですよ。ここを抜けてちょっと歩くと私の家です!」
ならばよかった。この位置を記録し、また今度会う時の待ち合わせ場所にできる。早いころあんな環境から連れ出してあげたいが、何もないのにいきなりいなくなると捜索願いが出されるであろう。もしくは誘拐事件としてトガちゃんの顔が全国に流れるかもしれない。それだけは困る。俺の活動に参加してくれて、同じ志を持つ子だ。他の誰かに大っぴらに見られるわけにはいかない
だが俺の住んでいるところからここまでは距離があるし、小学五年生と言っていることから、学校には通っているんだろう。必然的に長い時間一緒にいられるのは土日のどちらかか、両方だ。間壁さんには向こうで友達ができたとでも言っておけば、頻繁にではないだろうが会わせてくれるはずだ。まあ最終手段として無断外泊という手もあるからな。
話は変わるが、亜空間のなかに自分は入れないのだろうか?入れるならば世界から断絶された空間内で過ごせるのだが・・・
いや、やめておこう。流石にそれは危険すぎる。亜空間というものを何もない部屋という認識でいるが、もしかしたら球体かもしれないし捻じ曲がっているかもしれない。
まあ、今まで収納したものは変化なく射出できることから、中に入って死ぬことはないだろう。お自身は決して入ることはないが、念のため実験してみよう。
ん?今思ったが、収納物に変化がない?
まさか時間が止まっている????
今まで気にしたことはなかったが、樹海でヴィランを細切れにした時も腐乱臭がしなかった。まさか・・・
ここでまた俺の個性の新しい可能性に気が付けるなんて
今日はなんていい日だ
おっと、考え事はそこまでだ。トガちゃんに返事をしなければ
「そうなんだ。じゃあ気軽には会えないね」
「え!?どうしてですか?」
トガちゃんは焦るように言ってきた
「実は俺、神野の方に住んでて気分転換に旅行に来たんだ。だから普段はこっちにいないから気軽に会えなくなると思う」
そういうと涙目になってしまった
泣かせたいわけじゃないが事実なんだよ、トガちゃん
できることなら俺も毎日会いたいものだよ
「でも携帯で連絡も取れるし、俺の住所とかも教えるから!それにまた近いうちに絶対会いに来るから!というか明日も会えるから!」
そう、静岡県に着いて一日目である。富士の樹海を置くまで進みヴィランを処分した後、道に迷いトガちゃんと出会った。とても濃い一日だった
「それならよかったです!」
トガちゃんはそう言って、それからは他愛もない話をしてお別れの時間となった
「それじゃあまた明日ここで会おうね」
「はい!トバミ君!!」
トガちゃんは俺が見えなくなるまで手を振ってくれた
どうして俺の周りには不幸な人しか集まらないんだろか?
携帯のナビを使いながらやっとこさ予約していたホテルに着いた
かなりいいホテルで値段は考えたくない。今回は間壁さんのご厚意で俺は金を一銭も払っていない。申し訳ない気分でいっぱいだ
夕食や風呂を済ませ『個性』について考えていた
この世界ではすでに当たり前となっている個性だが、前世の世界ではおとぎ話のようなものだった
だが、この世界は前世の世界の上位互換のようなもの。そしておとぎ話のようだったということを、この世界の人たちは忘れている。生まれた時から個性は当たり前のことだったからだ。だから発想力が低下している。サポートアイテムについては例外だ
だが俺は前世の知識を持っている。この一ヵ月、完璧に習得できる必殺技があれば、間壁さんをその場から動かせずに勝つことができる作戦がある。間壁さんの周りに『口』を二つ出現させ、『口』と『口』の間を砂でも水でも、細く糸状で高速移動させれば牢獄の完成だ。たとえ間壁さんが空間断絶を使いそれを防いだとしても、お互いに動けない状況が続く。そうすれば戦いは対等だ
それに空間という概念を排除、除外できるこの世界では俺の個性で空間断裂を喰らうことができるかもしれない。
まだまだ頭を働かさなければ
そしてトガちゃんの個性についてだ。『変身』という個性はただ相手の姿に変わる物だけではないとは思う
この世界では発想力と、それができると思う強さで、自分の個性をどこまでも伸ばせる。例えばだが、『変身』の個性を極めれば、変身した相手の記憶を覗くことやその個性を使うことができるかもしれない
原作B組に個性をコピーできる個性があった。それを考えればできないということもないはずだ
これは明日トガちゃんに伝え、活動始動の時までに何とかしてもらおう
まぁ俺の予想でしかないからな
あまり期待だけはしないでおこう
ワクワクが止まらない
まるで遠足前の小学生のように楽しみでなかなか眠れない夜を過ごし、一日が終了した
~渡我side~
今日はとてもカァイイカァイイ鳥さんを見つけました
血を吸っているときはとても幸せです
でもそれはおかしいと周りから言い続けられました
でもカァイイ鳥さんよりもとってもいい出会いがありました。私の姿を見ても逃げ出さず、私を私と認めてくれました
こんなことは初めてで、心が何かで満ちたような感覚でした
そして『トバ様』の考え方は私の、私たちのような人たちを救う『ヒーロー』でした
感激して私はそれに参加すすことに決め、ついつい血を下さいと言ってしまいました。勢いで言ってしまったと気が付いたのは後のことでした。
なぜならトバ様は自らの腕を斬り私に血をくれたのです。傷だらけの腕。そこを伝う真っ赤でキレイな血。素敵すぎます!
地面にしたたり落ちる血がもったいなくて、指にしゃぶりつきました。きっとお父さんとお母さんから言われた気持ち悪いと、やめなさいと言われた顔をしていたと思います。でもトバ様はそれでも側にいて血をくれました
なかなか会えないと、わかった時には絶望しましたが、また今度会えると言ってくれたので安心です
ああ、なんてトバ様は素敵なんでしょう
~渡我sideout~
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