次の日、トガちゃんと昨日会った場所で待ち合わせをした
今日が日曜日なので、明日は会うことが出来ない
トガちゃんには申し訳ないが、朝から会うことにした
一日たった今でも果たして本当にトガちゃんをヴィランにしてもいいのかと悩んでしまう
トガちゃんを巻き込まずとも、俺一人で少しでも現状を変えることができたのでは無いのかと
『ヒーロー殺し』という大人が行った行為でさえ、世間に注目されていた
なら、それよりも子供という影響力のあるものを使えば多少は変わるかもしれない
トガちゃんは活動に参加することに賛成してくれたが、たまたま俺が優しくしてくれたからそうなっただけだろう
もしも、他のヒーローが気がついていればトガちゃんはこれから普通の人生を歩めていたかもしれない
あるいは、自分と同じような境遇の子を助けるヒーローになっていたかもしれない
俺は独りの少女を助けるのと同時に茨の道へと誘い込んだ
果たして俺はいったいどこを目指しているのか分からなくなってきた
両親とおばさんが死んだ時、前世からの思い
そこから俺の人生は変わった
信念だってある
だけど、その信念を、トガちゃんを率いれたことによって捻じ曲がってしまったかもしれない
いや、深く考えるのはやめよう
これは俺の悪い癖だ
俺は俺のやりたいようにやる
それで十分だ
待ち合わせの時間になってトガちゃんが現れた
「あれ?遅刻しちゃいましたか?ごめんなさいです」
「いや、俺がちょっと早く来ただけだから気にしないで。それよりもこんな朝早くからごめんね」
そう、今は朝の八時だ
流石に早過ぎるが時間が有限だったため仕方がない
「気にしないでください!トバ様と会えるなら問題ないです!」
「昨日から思ってたんだけどトバ様ってなに??」
「トバ様はトバ様です!私を私と認めてくれて、目標もくれました。私はトバ様のこと愛してます!トバ様になりたいです!なので血をください!」
早速か
トガちゃんはボロボロな人に興味を持つのと、確かステインの動画を見てヴィラン連合に加入
その理由がステインを愛していて、ステインを殺したいっていたような・・・
多分俺の信念に感激したのと、俺がボロボロなのもあるのだろう。
昨日の今日で愛してるは予想出来なかったが、こうなるとそのうちトガちゃんに背中を刺されるかもしれない・・・
後繭にも・・・
ま、まぁそれは置いておこう
そうならない様に気をつけなくては
「愛してるってそんなに簡単に言っちゃダメだよ?それとトバ様もなんか、俺なんか様付けされるような人間じゃないし。あと個性の訓練のために血はあげるから安心して」
そう言うとちょっと怒ったような顔をした
「トバ様は私を私と認めてくれた『ヒーロー』です!トバ様と出会わなければ私は私になれませんでした。トバ様の考えは生きやすい世の中にしてくれます。見えないところまで助けてくれる『ヒーロー』なのです!あと、血は嬉しいです!」
っ!『ヒーロー』か
トガちゃんから見たら俺は『ヒーロー』になるんだろうか
俺は当たり前のことを当たり前のように言っただけだ
だが、その当たり前のことすら満足に出来ていない。この世界では、いや前世でも出来ていない
どの世界でも結局光があれば影ができるのだろう
俺が、俺たちが歩こうとしてるのはその真ん中だ
白をヒーロー、黒をヴィラン、灰色は俺たち
どちらにもなれるし、どちらにもなれない
中途半端な存在
だが、俺たちは自らが掲げる『正義』がある
それは『ヒーロー』にも『ヴィラン』にもある
勝った方が『正義』となる
だから俺たちは勝ち続けなければならない
歪んでいる世界を正すために
俺たちの活動は普段、ポイ捨てされたごみを拾うような存在だ
大きなごみは周りが排除してくれる。たまに大きな廃棄物を処理するだけだ
そしてリサイクルされたものを更にリサイクルするだけだ
海に捨てたごみが生物に害を与え、また海岸に戻ってくる
それを本当の意味で無くすのが俺たちの役目
二度と同じようなことができない様に徹底的に・・・
「トガちゃん、俺は『ヒーロー』なんて存在じゃないよ。これだけは覚えておいて。当たり前のことを当たり前にしているだけだから。それとトガちゃんの個性なんだけど、血を摂取すれば、血の持ち主になれるんだよね」
ぶーと口を膨らませ、トバ様はヒーローなのにと言っている
「はい。血の量にもよりますが身体の爪から毛先、服装まで再現することができますよ!」
「じゃあ今から血をあげるから服装ごと変身してくれないかな。俺は少し離れたところにいるから」
ううっと唸って顔を赤くして
「トバ様のお願いなら仕方ありません」
昨日よりも多くの血を吸わせ、変身が終わるまで少しだけ待った
「お待たせしましたトバ様」
そこにいたのは『スーツとサポートアイテム』をつけた俺だった
そう、今回試したかったのは俺の活動アイテムであるスーツの復元能力だ
「トバ様のこの服とサポートアイテムはかっこいいです!」
「ありがとう。ちょっと試したいことがあるからその場を動かないでね」
そう言って俺はスーツの一部分を喰った
このスーツは防刃防弾耐火耐冷など様々な耐性があるため、生半可な攻撃じゃ破れない。そして俺が成長した証として、喰らう範囲を精密にコントロールできるようになった。今思えば血の滲むような日々だった・・・
おっと考え事はここまでだ
スーツの一部を喰われた俺もといトガちゃんは聞きたくもないキャッと声を出していた
「トガちゃん、その服には復元能力がついていて髪の毛一本くらいの量で破れたところを修復できるんだ。試しにやってみてくれないかな」
はいと返事をして、髪の毛を一本抜いてスーツが破れたところにあてた。予想通りにスーツは復元を始めた。これで確定した。『変身』の個性の可能性について
「トガちゃん。君の『変身』の個性は変身した相手と遜色なく、この世界では同一人物として認識される。その証拠が今修復を始めている俺の服だ。それは俺の細胞以外では自動修復しない。つまりトガちゃんは個性を極め、血さえ採取できるなら誰にだってなれるってことだよ。これの凄さがわかる?変身した人の記憶や『個性』さえ使えるってことだ!!」
まくし立てる様に言った俺に対して、トガちゃんはポカンとしている
「え、っとそれはほんとうですか?」
「間違いないと思う。どれだけの訓練が必要かはわからないけど、必ず俺の予想は当たる。それがさっき証明されたからね」
と、その時だった
俺が溶けて、そこには一糸纏わぬ姿のトガちゃんがいた
個性の時間切れだった
今度は俺がポカンとする番だった
事態に気が付いたトガちゃんはキャーーーと声を出して、しゃがみ込んでしまった
俺は急いで後ろを向いて
「ご、ごめん。個性の時間について考えていなかった」
するとトガちゃんは唸りながら
「ど、どこまで見ましたか?」
「ノーコメントで」
「お嫁にいけません!!!!」
そう言ってその場を動く音が聞こえた
服を着に行ったのだろう
数分後、顔を真っ赤にしたトガちゃんが戻ってきた
「お父さん以外の男の人に初めて見られました・・・」
そして言った
『責任取ってください』
家には繭がいる
というか彼女だ
終わった
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