話の大筋は変わっていません
とりあえず旅行であったことを、俺の考えを繭に伝えた
これが間壁さんに伝われば、それ相応の施設に連れていかれるだろう
これから俺達がなすことは犯罪だ
ある者にとっては救いである物には罰を与える
執行者、被害者たちの思いを降す復讐者
ヴィランという存在にはそれ相応の報いを受けてもらう
俺たちはそういう存在になる
そしていずれ俺たちもその対象になる
繭はなんて応えるだろうか
俺の話を、真剣に聞いてくれている
時折こくこくと頷き、トガちゃんの名前が出ると眉間に皺を寄せている
やっぱりトガちゃんが問題か・・・
「私はいつだって吐喰君の隣にいるよ。考え方も凄くわかる。お母さんを殺されて、反射的だったけどヴィランを殺したことに後悔はないし、私みたいな子を救えるなら救いたい。そのトガちゃんって子が言っていたように吐喰くんは『ヒーロー』だよ。周りに認められなくても、 私たちにとったらもう既に救われているんだもん。否定しても私たちはそれを否定するからね。それとトガちゃんって子にも1回合わせてね??」
やはり繭は俺について来てくれるようだ
当初心配していた対ヴィラン戦についても、問題はないと思う
試合をした時、あれは不意打ちで勝っただけだ
実力はほぼ同じと考えていいだろう
あとは、間壁さんとの試合とトガちゃんの個性の成長具合による
それから数日が経ち、いつも通り訓練を行う
その後繭との試合ではやはり五分五分の勝率だ
繭の個性を扱う才能か、俺が個性を扱いきれていないのか
多分どちらも正解だろう
繭は訓練に参加し、個性を受け入れたことによって飛躍的に個性が身体に馴染んだように感じる
俺がいない間何があったのかは分からないが、明らかに個性が有利の俺に対して半分は勝っている
このままでは間壁さんとの試合には負けてしまうだろう
だから、繭にお願いをした
命をかけたお願いだ
それを繭はすぐに承諾してくれた
本来ならばこれは使いたくない手段だ
はっきり言って卑怯というかなんというか
それに、繭の命に関わるかもしれない
繭の力を借りて訓練と試合を行い、その合間に2人でトガちゃんに会いに行った
約束はいつもの場所で、トガちゃんは口をモチーフにした服を着ていた
恐る恐る横にいる繭を見てみると、ニコニコと笑っている
逆に怖いよ
「お久しぶりですトバ様!!それと横にいるのはトバ様が言っていた彼女ですか?」
あ、俺がトガちゃんに彼女って説明したことを聞いて、繭がさっきとは違った表情で笑っている
「その黒くて丸いお目目も、太い脚?腕?も素敵ですね!」
トガちゃんは個性に偏見がないのだろう
いや、逆にあっては困るのだ
「ありがとう。私は繭っていうの、個性のこと気にしないんだね」
「はわ!私はトガです!私の個性は血を吸わなきゃいけないので、周りから嫌われていたのです。でもそんな時トバ様に救われたんです」
「吐喰君みたいにトガちゃんって呼んでいいかな?」
「もちろんです!私は繭ちゃんって呼びます!お友達になれますか?」
「もちろん!吐喰君のことをわかっている時点で友達だよ!もし良かったら吐喰君抜きで2人で話さない?女の子同士の話も必要だと思うの。いいよね吐喰君」
いや、この流れで断れるわけないよね
この後血にまみれた繭が戻ってきたりしないよねー?
「もちろん。あんまり遠くに行き過ぎないでね」
そう言って2人は俺から離れていった
正直不安で仕方がない。彼女と、それを狙う泥棒猫とも言っていい存在
諍いがないといいが、繭は独占欲が強いしトガちゃんはヤンデレっぽいし
どうしたものか
前世でこんな経験したことないからなぁ
あるとしたら読んだ漫画とか見たアニメとか
アニメの方だとかなり有名なやつがあるからなぁ
頭だけ切り取られて、ボートに乗せられないか心配だ
〜繭&トガ〜
「改めまして繭です。一体どういうつもりで『私』の吐喰君に近ずいたんですか?事と次第によっては潰しますよ?」
「繭ちゃんってそういう感じの人だったんですね!驚きです!トバ様の側にいるのは、トバ様が私を救ってくれてトバ様の考えに賛成だからです。お友達の繭ちゃんと喧嘩したくありません。トバ様のことが好きなのは本当ですが、私の片思いなので心配しないでください。それに繭ちゃんの個性についても嘘は言っていません!それに同じ人を好きになっちゃうなんてなんだか繭ちゃんとも運命を感じちゃいます!!」
そうトガは話してくれたが実際はわからない。人間の汚さと欲深さをよく知っている。少し話しただけで信用できるはずがない。それにさっきも言った通り『私の吐喰君』だ。それを会って数週間の女が彼のことを狙うなんて・・・
彼はまさしく『ヒーロー』に成しえる存在だ。今後もトガのような存在が出てくるかもしれない
それに、彼の話を聞く限りトガの個性は、彼の活動に欠けてはならないものだ。
消すにしてもそれが活動の妨げになる
私は吐喰君の『彼女』なのだから誰よりも理解してあげなくちゃ
だから今は見逃してあげる
「それはすみませんでした。不要に近ずいて欲しくなかったので。私と違って貴方には吐喰君しかいなかったんですよね。私も彼に救われて彼の側にいました。彼がなそうとしてる事はなんとなくですが予想は出来ました。ヒーローを目指していたのに、個人を優先してしまう人ですから。でも真に『ヒーロー』になれるのは彼だと思っています。貴方もそうなのでしょう?」
「はい!トバ様は私の個性を認めてくれて居場所になってくれたのです。トバ様は自分はヒーローじゃないと言っていましたが、私たちにとってはヒーローで、これからも多くの人のヒーローになります。偏見のなく、悲しみを少なくするために自らを傷つけるトバ様は本物の『ヒーロー』です」
私たちは吐喰君について話し合った
そこで改めて気が付いた
彼はそこらの人とは違う
他人を思い自らを犠牲にし、平和を求めてしまう
だから、私が支えなくてはいけないと思っていた
だけどきっと彼はそれじゃ満足できない
いや満足という言葉も正しいのかわからない
彼は彼の成すことをなして、どこを目指しているのだろう
彼はどこか歪んでいる
自らを犠牲にし他者の幸福を願う人間が普通なわけではない
私の愛し方と同様にどこか歪んでいる
そう感じてしまうのは何故だろう
直感としか言いようがないけれど、なんとなくそう思ってしまう
トガちゃんは吐喰君に従順だろうから問題ないけど、個性の扱いを上手くしなければ、私たちには着いて来れない
彼の役に立つためには私も協力しなくては
トバ様の彼女さんはとても素敵な人でした
トバ様のことをよく理解していて、トバ様を第一に考え、トバ様の邪魔になるなら私を直ぐに排除しようと考えていました
殺気というのでしょうか?
足がすくんでしまいました
8つの目に見られ、何時でも臨戦態勢に入れるように構えていました
でも私は血がなければ何も出来ない出来損ないです
彼女には勝てません
でも、彼女私を認めてくれました
これからどうトバ様を支えていくかを話し合い、私の個性訓練も手伝ってくれる見たいです
流石トバ様の彼女さんです
私のお友達です
素敵です、素敵なお友達です
〜繭&トガ〜
1時間ほどだろうか、二人が手を繋いで戻ってきた
どうやら仲良く出来そうだ
これで1つ安心することが出来た
あとはこの3人で訓練をし目的の日までに成すべきことをなすだけだ