げんじつ?
そんなこと当たり前じゃないか・・・?
あいつらは何を言っているんだ
確かに漫画みたいな話だけど、こうして俺は生きているじゃないか
あれ?
漫画みたいな話?
ヒロアカは漫画で、その世界に憑依したんだよな
それで、新しく父さんと母さんがいて・・・!?
その瞬間バチリと脳内にある光景が浮かんできた
肉片にされた両親
暗い部屋で物言わぬ両親の遺体
部分部分でやっと判別できるくらいに損傷した肉体
もうこちらを見てくれることも、声をかけてくれることも無い
え、あ?
この世界の吐喰と入れ替わってからの両親
抱きしめてくれたり、撫でてくれたり、好きなご飯を作ってくれたり、時には叱ってくれて俺を包み込んでくれた
記憶じゃなく別の人格、吐喰本人ではないのに愛してくれた
きっと、別の人格が入り込んだなんて思ってもいなかっただろうけど
それでも母さんと父さんとの思い出が沢山ある
沢山あるんだ
そう、あるしこれからも?
これから?
これからって何だ?
だって2人は死んじゃったじゃないか
漫画の世界で、今後の展開を知ってて見捨てたせいで
俺というイレギュラーがいたせいで、繭のお母さんも
いつもニコニコしていて、早く孫の顔が見たいわ、なんて小学生に何言っているんだって思った元気で明るいあの人も・・・・?
げんジつ?
もう元には戻ラない??????
ナンデ?
ナンデソバニイナインダ?
その瞬間、心の世界に豪雨と濁流が押し寄せて来た
それに飲み込まれ視界はあの汚い色に染まっている
水のようなものはきっと感情や思い出といったものなのだろう
それが穴に吸い込まれていく
だが、量が多すぎて吸い込みきれない
どこからかバキバキと音が鳴る
ああ、また壊れていく
壊れて壊れて
どうなってしまうんだろう
俺はそれに溺れながら声にならない声で叫んでいた
〜現実side〜
その場に居た誰もが、吐喰君の敗北を認めた
私も間壁さんも
私も急いで駆けつけたかったができることがない
拳を握りしめ下を向いていた
間壁さんが私の傍にいた接合さんを急いで呼びに行こうとした時、吐喰君が起き上がった
え?
『真壁さんも酷いですね。こんな一方的にやるなんて。僕らがやらなくちゃいけなくなったんですよ?』
『そうそう。あいつは馬鹿だから現状を理解出来てないからな。オレらがやることになった』
アレはなに?
吐喰君?
ううん、吐喰君だけど吐喰君じゃない
雰囲気とか表情、話し方
今までの彼じゃない
「吐喰君?何を言っているんだい?あの状況から戦うなんてこれ以上は無理だ」
ある程度危険と分かってはいたが、あのままでは吐喰君は四肢を切りをとされるまで戦っていただろう
だからこそ四肢を欠けさせ、実力の差を分からせた上で意識を飛ばしたというのに、すぐに起き上がった?
ありえない
いや、当たりどころが運良く外れ起き上がれたとしても、彼はなんて言った?
彼は普段一人称を俺と言っていた
だが、起き上がった彼は僕らと言った
『僕ら』だ
つまり彼には・・・
『じっとしてていいんですか?』
その言葉と同時に岩石が物凄い勢いで飛んできた
個性を発動させ何とか防いだものの、あれが当たっていたら死んでいたかもしれない
あくまでこれは試合だ
それは彼も理解してるはず
なのに何故?
『それ、壊しちゃいますね?』
岩石を防いだ空間壁がバキリと音を立てて、崩れ去った
しかもいとも簡単に
そう、いとも簡単に壊された
でもおかしい
彼と同じく空間系個性だから壊せてもおかしくは無い
戦いの中で成長する子は珍しくない
だが急激に変化し、尚且つ『口』が見えなかったことそして起き上がってからの様子が少しおかしい
『あー、間壁さん。こいつやばい事になってるんで早めに終わらせます』
彼はそう言いながら血の涙を流していた
次の瞬間彼が視界から消えた
音もなく、気配も感じない
まるでその場から居なくなったかのように
彼の移動方法は知っている
だが、その場から消え去るような移動方法なんて知らない
奥の手なら、倒れる前に使っている
あの壁を壊した個性の使い方もだ
そんなことを考えていると
『チェックメイト』
胸元から声が聞こえ、顔の正面に『口』が突きつけられていた
『いつ目を覚ますか分からないんで、繭のことよろしくお願いします』
そう言って彼はその場に崩れ去った
『アレ』は一体なんだ?
急激な個性の成長
姿を消すという、まるでもう1つ個性があるとでも言っているような・・・
まさか彼は奴との接触が!?
私はその場で立ち尽くしていた
起き上がった吐喰君は吐喰君であって私の知る吐喰君じゃない
私と模擬戦をしていた時とまるで動き方が違かった
私の吐喰君はどこに行ったの?
そんなことを考えている間に試合は終わっていた
彼は再度倒れており、目からは血が流れている
私は急いで彼の元へ向かった
『おいおい、あの数分でどうしてこうなるんだよ』
『そんなの僕より君の方がよく分かるでしょ?『オレ』は今の『俺』を形作った大元なんだから』
『それはそうなんだが。やっぱり最後の一言が不味かったか?』
『それ以外ないと思うよ。まぁ何とかなると思うけど、こんなに荒れている所には居られないから、部屋に入ろうよ』
『だよなぁ。メンタルクソザコナメクジだからな。特大ブーメランなんだけど。その意見には賛成だ』
2人は足並みを揃えて部屋へと入っていった