現実に戻ってきたのだろう
またどうやら病室のようだ
だが、なんだか今までと違った感じがする
腕が妙に細くなっており、点滴などの管も多く着いている
その時だった
ガラッと音がして、ドアが開いた
そこに居たのは、繭のような人だった
「め、目を覚ましたの!?吐喰君!」
「っぁ」
上手く声が出ない
おかしい
「私の事わかる!?繭だよ!!あれから四年経ったんだよ!
聞き間違いか?
今四年って
まさかあの試合から?
いや、意識を失って自分の心に潜っていた体感時間はせいぜい数時間だ
でも、現実と乖離していても何もおかしくない
そして、この人は繭なんだろう
個性とかじゃなくて雰囲気とかそういうのが繭だって伝えてくれる
「ま、ゆ?」
「そうだよ!吐喰君の彼女の繭だよ!覚えてる!?」
なかなか上手く声が出せないが、単語なら問題ない
「う、ん。覚えてる、よ」
「よかった!本当によかった!あ!!今お医者さん呼んでくるね!!」
そう言って慌てて病室を出ていった
そうか、四年か
約束の期限は過ぎてるし、繭は制服を着ていた
きっと中学校に通っているんだろう
トガちゃんとはどうなっているか
間壁さんも・・・
これから考えることはいっぱいあるけど、四年という月日は身体に大きな影響を与えているようだ
これはリハビリが必要だな・・・
それから数分たって繭と白衣を着た男性が来た
どうやらこの白衣を着た男性は、こっちの世界の俺が飛び降りをした時に担当した医者のようだった
記憶の有無、身体の動作など様々な確認を行ったあとこう言った
「まさに奇跡だ」
そう、奇跡だ
四年という月日は軽くない
だが、あの空間から戻ってこれたこと
そして、さらなる力を手に入れたこと
俺はついに俺に成った
前世の俺とはもう違う
今までとこれからの全てを受け入れる
きっとそこから始まる
医者が病室を出ていってから繭と話をした
「繭」
俺はそう言って繭に手を伸ばして、繭はその手を取ってくれた
そのままの勢いで抱きしめた
「四年も待たせてごめん。待っててくれてありがとう。大好きだ」
繭はそっと俺の背中に手を伸ばし抱きしめ返してくれた
そして俺の言葉を聞いて少しづつ力が込められていく
「う、ん!まっだよ!わだじもだいずき!!!」
涙を流しながら、そう言ってくれた
密着する身体からは繭の鼓動が伝わってきた
そんな一言で償えるものでは無いことはわかっている
でも今はそれを伝えたかった
暖かい
満たされている感覚がある
でもきっとこれもすぐに無くなるんだろう
だが、この温かさは心の穴を埋めてくれる
そんな気がするんだ
そこから1時間くらいは抱きしめ合っていた
「この、四年で、何があったか、教え、てくれる?」
「うん」
あの日俺が意識を失ったあと、俺であって俺じゃない雰囲気を放って立ち上がったあと、間壁さんを圧倒して試合に勝ったようだ
それも姿が消え、初めからそこにいたように間壁さんの前に立っていたそうだ
その後直ぐに倒れ、切られた腕を接合してもらい病院に搬送
間壁さんは私闘で未成年、自分の庇護下にある俺に対して試合の結果から、ヒーローを引退しようとしたらしいが、繭が引き止めてくれたらしい
それは俺が望んでいる事じゃないと説得して
そのおかげか間壁さんは未だにヒーロー活動をしてくれている
トガちゃんについては、今も交流があるらしく繭に変身して、繭の個性を使い訓練をできる段階まで来ているらしい
お見舞いにも来てくれていると言っていた
繭は自宅近くの中学に通い始めたようだ
本当なら今までのように生活したかったが、そうもいかず、俺が目を覚ますまで学生生活と訓練、お見舞いの日々を送っていたと言っていた
そしてちょうど今、中学二年と聞いた
原作開始前後だ・・・
不味い
繭には一部を除いて全てを話すことにした
前世の記憶があること
試合の時に間壁さんと戦ったのは別の人格ということ
自分が酷く歪んでいること
驚いたことにあまり衝撃を受けないと言ったことだ
どうやら俺は周りよりも達観しており、年齢不相応だったようで、前世の記憶ということは想定外だったが驚きよりも納得したと言った感じらしい
そして前世の記憶を持っていようと俺は俺だと認めてくれた
「吐喰君は吐喰君のままだよ。あの日私を助けてくれて、私のヒーローになってくれたかっこいい『ヒーロー』。そしてこれからも吐喰君は色んな人の『ヒーロー』になれるよ。世間が認めてくれなくても、私やトガちゃんのように救われた人がいる。だから、大丈夫だよ」
やっぱりすごく暖かい
言葉の一つ一つが、心の穴を埋めてくれるような、そんな感じがする
やっぱり繭のことが好きだ
「嬉しい!私もだよ!」
「あれ?声、にでてた?」
「うん!」
くすくすとお互い笑いあっていた
夕日が差し込む病室で、笑みを浮かべる彼女は何よりも綺麗な存在だった
これから繭は今まで通りの生活を送り、俺の退院に備えるようだ
トガちゃんとも会う頻度を増やし、少しでも動けるようにするらしい
俺は当分リハビリ生活にはなるが、何としても高校入学まで、特にUSJ事件の時までにはなんとかしたい
約1年という期間があるが、肉体だけでなく個性の調節も行わなければならない
早く退院して、実家の訓練場に戻らなくてはならない
そして自らの死を偽装する必要もある
繭、トガちゃんのもだ
正体が直ぐにバレてしまっては行動もしづらくなる
致死量の血液を亜空間に保管し、表舞台から去ると同時に訓練場血液をまく
そして訓練場を崩壊させ、俺の新しい個性を使い身を隠す
お金や食料などは予め準備しておけば大丈夫だろう
あとは、情報屋と繋がれればなんとかなる
やることは多い
だが、止まるわけにはいかない
そういう道を『俺』が選んだんだから