瞑想をしながら個性を発動していると、訓練場の入口から繭の声がきこえてきた
「吐喰君!準備できたよー!ってあれ?いないのかな。ここだと思ったんだけど・・・」
準備が出来たってことは間壁さんも来たってことか
それと個性は発動できていたようだ
今俺のいる場所は入口からでも良く見える位置だ
聞こえないように意識して声をかけた
「俺はここにいるぞ!」
どうやら聞こえていないようだ
消音も成功
少なくとも意識を集中して行えば使うことができる
それがわかっただけでも良い成果だ
個性を解いて繭の前に姿を現した
「ここにいるよ。わざわざ呼びに来てくれてありがとう」
「わ!?」
驚いて尻もちをつきそうになったが蜘蛛の脚で身体を支え、斜めの状態になっている
「咄嗟に使えるようになったんだね」
繭の背中に手を回しこちらに引き寄せる
「あ、ありがとう。今のって新しい個性?」
「そうだよ。まだ意識を集中してないとダメだけど使えることには使える。ちなみに消音も出来たよ」
「自覚してから使ったの初めてなんでしょ?やっぱりすごいなぁ。あ!そうだ、トガちゃんと間壁さん、それに吐喰君のご両親の知り合いも来てくれてるんだよ!急がないと!」
それはなんとも嬉しいことだ
きっと誕生日に来てくれた人達だろう
「「「「退院おめでとう!!!」」」」
思ったよりも人数が多くて驚いた
ただあの日に出会った人たちも若干老けている
いや、そこまで歳のいった人たちはいないから、老けているという表現は正しくないだろう
「ありがとうございます!」
ひとつ思ったのだが、意識を失った時と今の話し方などいろいろと違っているが疑問に思われないだろうか?
まぁなんとかなるか?
みんな一言一言おめでとうと言って中には抱きしめて来る人もいた
男女関係なく居たが、女性の時に殺気というかものすごい視線を感じたが無視することにした
後でいっぱい可愛がってあげよう
間壁さんが挨拶に来た
「あの日、君を傷つけてしまって本当に申し訳ない。本来ならヒーローを引退するべきなのに」
「気にしないでください。あれは事故ですし、逆に引退なんてされてたら怒っていたところですよ!」
「そう言ってくれてありがとう。退院おめでとう」
お互いに言いたいことは伏せている
「ありがとうございます。また後でお話しましょう」
そう、あの日俺の個性が複数あることを知っている間壁さんには説明が必要だろう
少なくともAFOとの接触はないこと
その意志を継いでないことも
夜も更けてまた1人また1人と家を出ていく
彼らはヒーローだ
泊まって行く暇はないだろうし、俺も困る
最後の一人が家を出てから間壁さんに声をかけられた
「吐喰君、少し話したいことがあるけど大丈夫かい?」
「はい。もちろんです」
「君の個性についてだ。あの日、君は姿を消し音もなく僕の元にたどり着き勝った。基本的に個性は一人一つ。複合個性という二つの能力を使える者もいる。それは君自身がよくわかっているだろう。だが、君はあの日僕が知らない個性を見せた。それはどうしてかな?」
「それは俺にもよく分かりません。記憶喪失という状態で、新しい人格が構成されました。人格によって新しい個性が目覚めたという可能性はありませんか?」
「確かに個性についてはよくわかっていない部分があるから、君の言う可能性は否定できない。だが、僕は個性を複数持っていた人間を知っている。その者は個性を奪い与えることも出来る存在だった。そう、あの日君の両親を殺したAFOというヴィランだ」
そうだと思っていた。
やはり俺の両親を殺したのは奴だったか
ギリっと歯を噛み締める音が聞こえてきた
それは自分のものだった
「すまない。だが確認しなきゃいけない事なんだ。君は奴から個性を貰ったか」
間壁さんの目は子供を見る目をしていない
憎悪と嫌悪に満ちた目をしている
余程憎く、そして関係者がまだ存在するなら・・・
「その、AFOっていうのがどういうやつかは間壁さんから聞いたことしか知りません。少なくとも個性を貰う?なんてことは無いはずです。どんな方法で個性を与えるのか分からないのでなんとも言い難いですが」
そう言うしかない
間壁さんよりAFOより詳しいが、それを話してしまうと大事になるからな
前世の記憶のことも、繭にはヒロアカという漫画があるということは説明していない
あくまで前世の記憶があると話しただけだ
「そうか、わかった。ちなみに奴はあの日ヒーローによって討ち取った。君のご両親がいなければなせなかったことだったよ」
「そう、ですか」
奴は決して死んでなんかいない
「済まなかったね。退院したばかりなのに。あとはゆっくり休んで」
間壁さんはそう言って家を出ていった
「吐喰君、大丈夫?」
「トバ様大丈夫ですか?」
心配して声をかけてくれた
「大丈夫だよ、ありがとう。今日の手料理も美味しかったしこれから三人で生活していくのが楽しみだよ」
「うん!トガちゃんには渡さないけど!」
「あ、私だってトバ様のこと愛してるんです!」
そう言って右腕、左腕に抱きついてきた
繭はヤンデレなような気もしたが、俺が眠っていた間にトガちゃんのことを認めたのか?
とりあえず俺は今両手に花の状態だ
少し顔がニヤケてしまう
退院一日目は怒涛の一日だった