小学校に入学後、繭ちゃんという異形系(蜘蛛)の友達ができた。非常におとなしくつつましい。そのうえ優しい。
だが周囲はその見た目から嫌悪し、近づこうともせず剰え悪口を広めるありさまだ。
人は見た目じゃない。そういうことがわかるのはもう少し年を重ねるか、直接その優しさにふれるかのどちらかだと俺は思っている
巣から落ちてしまった雛を、繭ちゃんが巣へ戻すという出来事があった。
それを見ていた周りの生徒が、繭ちゃんが雛を食べるために巣へ向かったと非常に悪いうわさを流した。
正直はらわたが煮えくり返りそうだった。
直接の暴力は何があってもしてはいけない。ヒーローを志して来たからそう思ってしまう。
今の自分にできることは噂の鎮静化と、教師への報告だ。
人の噂も七十五日というが噂で傷ついた繭ちゃんの心の傷は治らない。だから少しでも側にいて支えよう。
繭ちゃんは次の日から学校に来なくなってしまった
そこでクラスの担任が、普段仲良くしている俺にプリントを届けてくるように頼んだ。
はっきりってこの教師はあまり好きになれなかった。
俺の見た目に関してもそうだが、繭ちゃんにも似たような目で見ていたからだ
でもいまは何より繭ちゃんのことが最優先だ。
教師からプリントを受け取り住所を教えてもらい、学校が終わり次第すぐに向かうことにした
俺はこの現代においてこの情報管理に危機感を覚えるのであった
住所を確認してみると俺の家から数件離れたところに繭ちゃんの家があるようだった。
世間は狭いというか、まぁ同じ学校に通っているのだからこういうこともあるだろう。
蜘蛛異という表札を見つけたのでインターフォンを押した。
「すみません。繭ちゃんと同じクラスの口多吐喰といいます。繭ちゃんにプリントを持ってきました」
そういうと「あらあら」という声が返ってきた。
玄関のドアが開き、繭ちゃんの母親らしき人物が出てきた
「初めまして。繭の母の女郎(じょろう)といいます。あなたが吐喰君ね。繭からよく話は聞いているわ。いつも仲良くしてくれてありがとう。プリントを持ってきてくれたみたいだけど、いったんお家に上がっていかない?」
そういわれたが冷静になってみると昨日の今日で会うのも繭ちゃん的にどうなのかと思った。
「初めまして!あの、繭ちゃんは大丈夫ですか?」
そういうと女郎さんは
「そうね、今は部屋に閉じこもってるわ。でも吐喰くんと会ったら繭も元気になるとおばさん思うの。だから繭に会ってくれないかしら?」
そういわれて断れるはずもないし断りたくなかった。
「もちろんです!それじゃあおじゃまします!」
靴をしっかりそろえて繭ちゃんの部屋の前まで連れてきてもらった。
「繭、お友達の吐喰君が来てくれたわよ」
おばさんは僕に小声で「あとは任せてもいいかしらといったので」、間を置かず「はい」と返事をした。
おばさんから俺が来たと聞いて、部屋からガタガタっと音がした
でも一向に繭ちゃんからの返事がなかったので、俺から話しかけてみることにした。
「繭ちゃん。学校のプリント持ってきたよ」
そうすると返事があった。
「ありがとう。部屋の前に置いておいて」
いつもの繭ちゃんから感じられる優しさがなかった。
当たり前だよな。でも俺はこのまま帰ったりしない。
もしかしたら逆に傷つけることになるかもしれないが放ってはおけなかった。
「繭ちゃん、僕の話を聞いてほしいんだ。僕は繭ちゃんが周りの人が言っているようなひどい子じゃないって信じてる。僕はヴィランみたいな見た目で幼稚園でいじめられていたんだ」
その言葉を聞いてか否か、部屋の中で息をのむような声が聞こえた
「それでね、なんだか生きるのが嫌になっちゃって、高いところから飛び降りたの。何とか助かったけど記憶がなくなっちゃってお父さん、お母さんにいっぱい心配かけちゃったんだ」
そういうと部屋のドアが開いた
「とばみくん、それってほんとうなの?」
「うん。だから傷ついている繭ちゃんを助けたいと思ったんだ」
それはヒーローになりたいだからとかそういうことじゃなかった。純粋に助けたいと思った。どうしてこんなに優しい子が傷つかなければいけないのか、それが納得できなかった。
繭ちゃんは言った
「みんな私のこと気持ち悪いっていうの。ヴィランだって。それなのに一緒にいてくれたり、遊んでくれるのはどうして?」
繭ちゃんの目から涙がポロポロ流れていた」
だから俺は言った
「どうしてって、一緒にいて楽しいからに決まってるじゃん。繭ちゃんは気にしてるかもしれないけど、その瞳だってつぶらで綺麗だしその腕でいろんなことができる。この前だって巣から落ちた雛を元に戻してあげてたでしょ。それは繭ちゃんの個性があったからできたことだよ。だから僕は気持ち悪いとか、ヴィランだって思ったりしない。それにヴィランみたいなら僕の方だよ」
涙を流しながら
「家族以外の人からそんなこと言われたの初めてで、すごくうれしい。でもとばみ君こそヴィランなんかじゃないよ!だってこんなにやさしいもん!」
そう声を張り上げていた
「ありがとう。もしよかったらだけど明日から一緒に学校にいこう?ぼくの家と繭ちゃんの家ってすごく近かったんだ」
繭ちゃんの目にはもう涙は浮かんでなくて「うん!」と返事をしてくれた。
時間も時間だったのでお暇することにした
おばさんに挨拶をしていたら繭ちゃんも玄関まで来てくれた
「とばみ君、今日はありがとう!明日は一緒に学校に行こうね!」
それを聞いていたおばさんはまた「あらあら」と嬉しそうに言っていた
「うん。それじゃあまた明日!」
帰宅するとどうして帰るのが遅くなったのかを聞かれて、詳しく話すと頭をなでて「よくやったわね」といってくれた
ついでに
「その繭ちゃんって子、今度は家に連れてきてね!」
母さんは妙に張り切っていた
改めて偏見という現実を知った
そのうえで繭ちゃんを救えたと思う
でもこれからだ。繭ちゃんのことも、偏見で決める世界のことも
少しだけだけど、目標が見つかったような気がする
どうだったでしょう
物語的にはあまり進んでいませんが、主人公的には大きな一歩です