寝て起きた。気付いたら違う鎮守府にいた。それも黒い方らしい。   作:朝凪

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第一話  『知らない部屋』

 

「…………」

 

 

 ……ここは、どこだ?

 

 

 体がどんどん沈んでいる。……水の中、か?

 

 

「…………」

 

 

 苦しくない……けど、声が出ない。体も動かない。目は……見える。でも、動かせない。しかも暗い。

 

 

 ……何もわからない。

 

 

『…………けて……』

 

 

 ……?

 

 

 どこからか、声が聞こえる。下からか、上からか、あるいは横からか。

 

 

『……すけ…………て……』

 

 

 所々声が掠れていて、何を言っているのかよくわからない。けど、それは何かにすがるような、そんな悲しみに溢れていて……。

 

 

 とてもじゃないが、聞いちゃいられない。

 

 

「…………ぅ」

 

 

 未だ沈み続ける中、俺は微動だにしない右腕を、力ずくで振り上げる。全身に得体の知れない力が掛かっていて、少しでも力を緩めれば押し戻されてしまいそうだ。

 

 

 でも、それでもーー。

 

 

『…………たす、けて』

 

 

 この声を、どうしても無視することができない。

 

 

「ぐ…………ぉ……」

 

 

 どこから聞こえるかもわからないその声に、俺は手を差し伸べる。

 

 

 姿の見えない君の手を、俺は握れない。だから、掴んでくれ。

 

 

『……あ…………』

 

 

 深海のような暗闇の中、ふいに目の前に光が現れた。

 

 

 そしてそれは、俺を包むように徐々に大きく広がってーーーー。

 

 

 

 

       *     *     *

 

 

 

 

提督「ーーーーは、ぁ」

 

 

 ……気が付くと、ベッドの上にいた。見上げると、そこには見慣れた天井がある。

 

 

提督「……夢、か…………」

 

 

 フー……と深く息を吐き、目を閉じて腕を額に当てる。夢を見るなんて久し振りだが……妙にリアルな夢だった。あの声の主は、一体誰だったのか。

 

 

 ……それはともかく、おかげで身体中汗びっしょりだ。風邪を引く前に、早く着替えを済まさねば。

 

 

提督「……ん?」

 

 

 ベッドから立ち上がり、部屋を見回した直後……違和感を覚えた。

 

 

提督「……俺の部屋じゃ、ない……?」

 

 

 ここはまるで、物置部屋のような場所だった。

 

 

 部屋の隅に置いてあるいつものクローゼットはなく、机や本棚、果てはカーテンすら存在しない。

 

 

 それに今気付いたが、ベッドには布団も枕もなかった。俺はそんな状態で寝ていたのか。

 

 

提督「……卯月らへんのドッキリか? いや、でも流石にここまでするとは考えにくいし……」

 

 

 異常な光景に停止した頭をフル回転させて、状況を把握しようと試みる。

 

 

提督「……取り敢えず、一旦外に出てみよう。何か分かるかもしれない」

 

 

 ひとまずそう決心すると、汗に濡れた服もそのままに扉へと向かう。ギシギシと床が鳴っているが……俺の部屋ならこんなことはなかった。本当にここは俺の部屋ではないらしい。

 

 

『…………』

 

 

『…………』

 

 

提督「……む」

 

 

 扉の前につくと、何やら話し声が聞こえた。……さては明石が空間物質転送装置でも作ってやらかしたな?

 

 

 前例がありすぎて困る。何か起きたらまず明石。これはもう俺の中での常識だ。

 

 

提督「全く……その技術を他に活かしてくれればいいものを……」

 

 

 嘆息しつつ、扉のノブに手を掛ける。そして、頭をガシガシと掻きながら、軋む扉を開けた。

 

 

提督「おい明石、勝手に俺で実験するなと言っているだろうが。全く、何度言えばお前は……」

 

 

 そこまで言って、目の前にいるであろう明石に目を向ける。……が、そこにいるのは明石などではなく。

 

 

睦月「……!?」

 

 

如月「……っ!」

 

 

 先月『改二になったばかり』な筈の睦月と如月が、俺の姿に驚いたように目を見開いて、そこに佇んでいた。

 

 

提督「……は?」

 

 

 またしても、一瞬思考が停止した。それに、その反応は何だ。

 

 

提督「何で、お前達……改二じゃないんだ…………?」

 

 

 事態の異変に気付き、俺は屈んで睦月達と目線を合わせる。……が、何か様子がおかしい。

 

 

睦月「……ぁっ……ぅ……!」

 

 

如月「…………っ」

 

 

提督「……?」

 

 

 ……何だ? 何でこんなに怯えてる?

 

 

 というか、二人共、なぜか小破のままだ。入渠はしていないのか?

 

 

提督「なぁ、睦月……」

 

 

睦月「ひっ!!」

 

 

如月「……っ!!」

 

 

 睦月を宥めようと手を差し伸べると、睦月が過剰に反応し、逃げるように後ずさる。その次の瞬間、俺の頭のすぐ横で何かガチャリと重たい音が鳴った。

 

 

如月「睦月ちゃんに、近づかないで……っ!!」

 

 

提督「!?」

 

 

 見ると、如月が艤装を展開し、手に持った単装砲で俺の頭に照準を合わせていた。

 

 

提督「き、如月……?」

 

 

如月「早く、離れて……! いくら駆逐艦の砲撃でも、人の頭くらいなら簡単にっ……!」

 

 

 そう言って、如月は砲口を俺に向け続ける。しかし、その手はふるふると震え、瞳は涙で潤んでいた。

 

 

 ……俺の知っている如月はこんなことはしない。

 

 

提督「……わかった。すまない、今離れる。だから如月も砲塔を下ろしてくれ」

 

 

 如月の訴えに、大人しく身を引く。しかし、如月は俺から照準を下ろしてはくれない。

 

 

 間違いなく警戒されている。一体何故……?

 

 

 如月達が豹変した理由が分からず、頭はあくまで冷静に、俺はただただ混乱してしまう。……が、その直後、如月が放った一言で、その冷静さはいとも容易く打ち砕かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

如月「……貴方は誰……? 何で、こんなところにいたの……?」

 

 

 

 




実家(SS投稿速報)から持ってきました。実家では一部構成なので、ここに載せる際には区切りがよさそうな部分で切ってます。ちょっと話切れがおかしいところもあるかもしれませんが許してください。
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