機動戦士ガンダムSEED パトリックの野望   作:UMA大佐

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前回のあらすじ
連合軍「荒涼とした宇宙という名の砂漠に、オアシス(軍事拠点)を作りたいと思います」
ZAFT「やめろぉ!」


第13話「ダイジェストでお送りいたします」

1.「黄昏の魔弾」VS「切り裂きエド」、再び

 

10/13 

L1宙域

 

「デブリを上手く使え!落ち着いて、敵の攻城装備持ちに集中だ!」

 

「一撃でも良い!奴らに本懐を遂げさせるな!」

 

ここ、L1宙域に拠点を再建したい連合軍と。

それをなんとしても阻止したいZAFT。

今から約1週間程前から、両勢力間では何度も小競り合いが行われていた。

連合側はMAとMSで連携しながら、拠点再建の最大の障害となる装備、「バルルス改特化重粒子砲」を装備した”ジン”を集中して狙い、ZAFT側は、「バルルス改」を装備したことで機動力が低下した僚機を他の”ジン”が護衛する。それが両軍の基本戦法となっていた。

 

「お前らはデカ物背負ったやつだけ狙え!他は俺達でやる!」

 

そんな中”マウス隊”の面々は、率先して敵護衛MSの排除に当たっていた。

現在連合側に参加している戦力の中では、最も対MS戦経験の豊富な彼らにこの役目が当てられるのは、当然の帰結だった。

 

「モーガンさん!敵増援、さらに来ますぅ!4時の方向、数は3!」

 

「セシル、観測データをよこせ!砲撃で仕留める!」

 

「どうぞ!」

 

”マウス隊”パイロットは現在、3人1組で二手に分かれて行動している。ローテーションを組んでおり、現在こちら側にいるのは、モーガン、セシル、エドだった。

 

「うぅ・・・・エドさんがいれば・・・・」

 

「泣き言言ってんじゃねえ!あいつは今、俺達よりもやばい鉄火場にいるんだ!おら!1機撃破!接近して残りをやるぞ!」

 

「助けてぇ、アイクさん・・・・」

 

そう言いつつも、セシルは正確に攻撃を敵機に当てていく。この3ヶ月の間に、大分本人の能力も向上したようだ。口調とは裏腹に、その動きに澱みは見られない。

モーガンは言わずもがな、重装甲・高火力な、曰く「肌に合う」MSを手に入れたことで活き活きとしている。

この二人だけではなく、”マウス隊”の面々は『世界樹再生計画』期間中に、多数の戦果を挙げることとなる。

ただ一人、エドワード・ハレルソンを除いて。

それは彼が劣っているという訳では無い。むしろ、他よりも優れている能力と機体を持っているからこそ、彼にしか出来ない役割を担っていたためだった。

 

 

 

 

 

 

「想像以上に早い、再戦だな!『黄昏の魔弾』!」

 

「はん、またお前か!今日はお前に合わせて、とっておきの調整で来てやったんだ。喜べよ!」

 

二つのMSが、モーガン達のいるエリアから少しばかり離れたところで激突する。

エドワード・ハレルソンとミゲル・アイマン。

先月激闘を繰り広げた彼らは、三度まみえていた。

そう、三度。実は、彼らは先月の戦いと現在の戦いの間に、もう一戦繰り広げている。

連合の計画を阻止するための部隊に配属されたミゲルは、二日前にエドワードと激闘を繰り広げていた。しかし、決着は付かなかった。その前に、ZAFT側が一時撤退を決めたからだ。

ミゲルも、まさかこんな短期にエドワードが復帰してくるとは思っていなかったのだろう。また、以前よりも動きの良い”イーグルテスター”の動きなど、複数の衝撃から立ち直り、今、三度目の戦いが始まった。

 

「おっと!?あっぶねえ、バズーカ持ってきやがったか!」

 

「この”キャットゥス”を持ってこなければならないとはな・・・・今日は確実に仕留めるぜ!」

 

今、ミゲルの乗る”カスタムジン”は二つの装備を持っている。

一つは、”ジン”の基本装備である重斬刀。これは何もおかしくない。

しかしもう一つは、「キャットゥス無反動砲」。これは本来、対艦用に用いられる装備であり、MS相手に使用するには不向きな装備だ。しかし、彼はまず、エドワードを倒す事だけを優先した。この武装でなければ、やつの装甲は突破できない。「バルルス改」は、機動性が低下してしまう。

やつを倒さなければ、この妨害作戦は失敗する。ミゲルは、それだけの強敵と認めた。ならば、他の装備はやつを倒すのには邪魔だ。「キャットゥス」も重斬刀も、ただ一機を倒すためだけに。これは他の隊員も承知している事だし、連合側も、ミゲルは最低でも”マウス隊”で無ければ太刀打ち出来ない強敵であることを認め、もっとも対MS戦に長けたMSに乗るエドワードにミゲルの対処を任せていた。つまり、これは両勢力から認められた『一騎打ち』なのである。

 

「いくぜミゲル・アイマン!俺の頭は今、最高にアドレナリンが沸騰してんだ!」

 

「これでも喰らえ、『赤壁』!お前を倒せば、俺の名はますます広まるだろうさ!」

 

エドワードは射撃をよけながらミゲルに接近し、ミゲルは付かず離れずの距離を保ちながら「キャットゥス」による攻撃を加える。

結局、この彼らの戦いも決着は付かなかった。

だが、彼らはここから何度も戦い、その能力をお互いに高めていくことになる。それが後にどのような波紋を生み出すのかは、まだ誰にもわからない。

 

 

 

 

 

2.「蛇の尾」との出会い

 

10/15

”ヴァスコ・ダ・ガマ”艦長室

 

『戦力増強?』

 

「はい。そろそろ必要になってきていると考えます」

 

今、ユージはハルバートンと通信を交わしていた。その内容は、激化する戦闘に合わせて戦力を整えようというユージの意見具申だった。

 

『たしかに、日に日に敵戦力が増大しているのは確かだ。しかし、中途半端に戦力を増やしても、焼け石に水といったところだろう。かといって、現状でも第8艦隊総出で計画遂行に当たっているのだ。他の艦隊に増援を要請すると、今度は月の防衛に支障が出る。何か考えがあるのかね?』

 

「もちろんです。ここは傭兵を雇うべきだと考えます」

 

『傭兵、だと?』

 

はい、といって自分の意見の正当性を証明するために話始めるユージ。

 

「傭兵の中には、MSを有する者達も少なからず存在します。そして、対MS経験もそれなりにはあるでしょう。即戦力になり、他の基地の戦力低下を気にする必要もない。連合軍が公的に傭兵に頼るというのは、少々お気に召さないかもしれませんが・・・・」

 

『ふむ・・・・。確かに、軍が傭兵頼りというのはあまり良くない。しかし、出来ることは何でもやっておくべきだな。後悔は先に立たない、というしな。依頼先は、目星が付いているのかね?』

 

「はい。それも、最高クラスの実績を持つ者達を。既に、アポイントメントは取得済みです」

 

『その傭兵の名は?』

 

ユージにしてみれば珍しいことに、自信たっぷりにその名を告げる。

 

「傭兵部隊、『サーペントテール』。私の知る限り、信用がおける最強の傭兵部隊。彼らなら、きっと十分な戦果を挙げてくれるでしょう」

 

 

 

 

 

10/17

”メネラオス”応接室

 

「では報酬は4分の1が前払い、残りは作戦成功後に。また、使用するMSの貸し出しや、その整備などに必要な機材・人員はそちらの都合で動かせるようにしておく、ということで」

 

「ああ、それで問題ない」

 

この部屋の中には、3人の男性がいた。テーブルを挟んで、2人と1人で分かれている。

2人の方は、ハルバートンとユージ。この艦隊の最高責任者としてハルバートンが目の前の『彼』に依頼内容を伝えていく。ユージは、『彼』を仲介したということもあってハルバートンの後ろに立っている。

そして、1人の側。その男は、物静かな雰囲気を漂わせているが、同時に大きな力を秘めていることもわかる顔つきに表情を浮かべずに、依頼を受諾した。

その男の名は、「叢雲劾」。傭兵部隊『サーペントテール』のリーダーにして、C.E最強パイロットの内の一人である。ユージはそのことを、原作から得た知識から知っていた。その能力はもちろん、依頼内容に不備があったり彼らに不利益になるような行動をこちらが採らない限りは、確実に依頼をこなす。傭兵としては理想的な存在だ。

ついでに、ユージの目にも高い能力を裏付けるデータが表示されていた。

 

叢雲劾(Cランク)

指揮 9 魅力 10

射撃 13(+2) 格闘 14

耐久 10 反応 12(+2)

空間認識能力

 

得意分野 ・魅力 ・格闘 ・反応

 

”マウス隊”はもちろん、今まで見てきた中で最高クラスのステータスが表示されているのを見て、彼が味方にいるという安心感と、彼に敵になって欲しくないという不安が織り交ぜになった感情をユージは得る。

彼は淡々と打ち合わせを済ませると、部屋から出て行く。その光景を見ながら、ハルバートンは口を開く。

 

「ふむ、大分ストイックな男だったな。さばさばとしていて、何というか・・・・愛想はない。だが、傭兵としてはそちらの方が好ましいといえるかもしれん」

 

「ええ。それに、彼らはこれまで、殺戮や弾圧のような行いに関係する依頼は、一度も受けていません。信用してもよろしいかと」

 

「連合の制服を着ていることは気になるが・・・・余計な詮索だな。彼らへ貸し出す機体の用意は、出来ているのかね?」

 

「はい。彼らなら、きっと使いこなしてくれることでしょう」

 

 

 

 

 

 

「なるほど。装甲は薄いが、その分機動性はなかなかだな。好みの機体だ。連合軍も中々のMSを造り出したものだ」

 

「劾、あまり飛ばしすぎないでくれよ?こっちは通常タイプらしいからな」

 

第8艦隊が用意したMSの試運転に、劾と、『サーペントテール』所属のMSパイロットである「イライジャ・キール」は繰り出していた。

 

イライジャ・キール(Dランク)

指揮 3 魅力 6

射撃 5 格闘 4

耐久 7 反応 5

 

得意分野 ・格闘 ・耐久 ・反応

 

イライジャの言うように、彼に支給されたのは通常の”テスター”だ。武装にも特に変わったところは無く、アサルトライフル、シールド、アーマーシュナイダーの基本装備だ。

しかし、劾に支給された機体はそうではなかった。彼に渡されたのは、”ジャガーテスター”。”マウス隊”で優秀な性能が発揮されたこと、高いMS操縦能力を持つと目される劾のために、新たに生産されたものだ。ちなみに、ドリルは付いていない。ライトシールドと、その裏にアーマーシュナイダーが懸架されている。

 

「機動性だけなら“シグー”並、火力も十分、機体バランスも良い・・・・。これなら、今後も彼らから依頼を受けることを考えてもいいな」

 

「こっちも、”ジン”よりずっと使いやすいぞ。連合はどんなマジックを使って、これだけのOSを作り出したんだ?報酬の代わりに、この機体が欲しくなるぜ」

 

「働き次第では、交渉して手に入れられるかもしれないぞ。今日中にこの機体をモノにして、ミッションを開始する」

 

「ああ、やってやるぜ!」

 

彼らはこの後、計画終了までの約2週間後まで、独立部隊として戦う事となる。この戦いで彼らが挙げた戦果を見て、連合第8艦隊内では「『サーペントテール』に手を出すな」という暗黙の了解ができあがり、ZAFTもまた、機体にペイントされた蛇のマークを見て、『サーペントテール』に対する戦力評価を改め、彼らの元には依頼が多く舞い込むようになった。

ちなみに、追加報酬として、『サーペントテール』は”テスター”に搭載されているOSを手に入れる事に成功した。このことからイライジャは、原作序盤でよくよくさらされていた醜態の数が少なくなったとか。

 

 

 

 

 

3.気になる彼、気にする彼女

 

10/21 "コロンブス"休憩スペース

 

「ふう・・・・」

 

そっと息をついたのは、カシン・リー。

時刻は今、18時を回ったところ。彼女は計画始動から今日に至るまで、既に2桁を超える出撃を経験していた。今日は特に辛いと感じた日、一日に二回以上の出撃があった日だった。その疲れを少しでも癒やすために、彼女は現在、好物の甘いジュースを休憩スペースで飲んでいた。

彼女がくつろいでいると、休憩スペース内に誰かが入ってくる。

 

「あれ、カシン。君も休憩?」

 

「あ、アイク。うん。今日は流石に疲れたから・・・・」

 

そっか、といって入室してきたアイザックは、自販機の前で自分は何を買おうかと悩んでいる様子だった。彼もまた、この連戦の疲れを取りに来たのだろう。

そこまで考えて、ふと思いつく。あのことを聞くなら、今がタイミングが良いのではないか、と。

 

「ねえ、アイク」

 

「ん?」

 

アイザックは、炭酸系の飲み物を購入してそのままカシンの向かいのベンチに座る。

 

「アイクは、どうして連合軍に入ったの?」

 

「えっ・・・・」

 

「私と違って、自分から志願して入隊したんでしょ?それはどうしてかなって」

 

アイザックとカシンは、どちらも同じくコーディネーターだ。しかし、連合軍に入隊した理由はまったく異なっている。カシンは、アイザックが自分から入隊したという話を他の同僚との会話で聞き、ずっと不思議に思っていたのだ。

なぜ、進んで戦争に参加したのか。連合に入隊すれば、周りからの視線は冷たいモノとなるだろう事は、想像に難くなかっただろうに。

 

「うーん、そっか。カシンにはまだ、話したことはなかったね」

 

「ご、ごめんなさい。気を悪くしてしまったかしら」

 

「いや、全然そんなことはないよ。ちょうど良いから、話しておこうかな」

 

そういって、アイザックは話し始めた。自分が、兵士になることを決めたきっかけを。

 

「僕の両親は、コーディネーターだった。お互いに周りからの厳しい態度にさらされてきた間柄で、そんな中で出会った二人は、自然に仲良くなっていった。二人が結婚を決めたのは、至極当然と言えば当然なことだったんだろうね。二人はその後、大西洋連邦内でも田舎と呼べる地域に移り住んだ。おじいちゃんおばあちゃん、世情に疎い片田舎で二人は暮らし始め、僕もそこで生まれた」

 

「・・・・」

 

カシンは、静かに話を聞いている。きっとこの話が、彼の戦う理由の根幹なんだろう。

 

「だけどね、エイプリルフール・クライシス。あれのせいで、地球上で反コーディネーター感情が劇的に高まっただろう?故郷では、Nジャマーのもたらしたエネルギープラントの停止の影響は少なかったんだけどね。だけど、そこに住んでいた両親は、コーディネーター狩りを始めた連中に見つかって殺された」

 

「それは・・・・」

 

「しかも、二人をかばおうとした人たちもまとめて殺したんだ。小さな街だったから、住民同士の結びつきも強くってね。ほとんど、皆殺しにされた。もう、僕の故郷は地図に載っていない。僕は、カシンみたいに遠くの大学に通っていたから、免れたけどね。たぶん、もう少ししたら、志願しなくても『スカウト』が来ていたんじゃないかな」

 

アイザックの表情は暗い。やはり、何度話しても辛いものがあるのだろう。しかし、彼は話をやめない。

 

「僕みたいな人間は、たぶん2種類に分かれる。親しい人を殺されたことから、実行した人を憎む。もしくは僕のように、その原因となった人たちを憎む。この、どっちかさ。どっちでもない人も居るかもだけど、今のところそんな人は見たことはないね」

 

「アイク、それじゃああなたは・・・・」

 

「そう、そうだよカシン」

 

息を吐いてから、ゆっくりと吸う。アイザックが、自分の中の闇を吐き出そうとしているのがわかる。

 

「僕は、エイプリルフール・クライシスを引き起こしたZAFTが憎くて、許せなくて連合軍に入隊したんだ。復讐のために、銃を取ったんだよ」

 

何も、言えなかった。

流されて入隊した自分と、明確な理由を持って戦場に立ったアイザック。しかし、それを讃えることや肯定することは出来なくて。

彼に、なんと言えば良い?この、人当たりが良く親しい人を大切にする、ありふれた青年に。しかし、その優しさ故に戦う道を選んでしまった彼に、私は。

カシンが考え込んでいる中アイザックは、でもね、と続ける。

 

「隊長は、ユージ・ムラマツさんは。こんな僕を肯定してくれた。復讐を目的として戦ってもいいって。だけど、こうも言ったんだ。それでも、優しさを失わないでくれ。その先には、君のためになるモノはひとつもないって。難しい話だよ。復讐をしても、優しさを失わない。口にするのは簡単だけど、実際には難しい。だけど、隊長が真剣に僕のことを考えてくれているっていうのはわかった。僕は、一人じゃない。今はこの部隊で戦って、戦争を少しでも早く終わらせたい。そして、自分の心との決着を付けたいんだ」

 

「・・・・アイクは、やっぱり強いね。私には、とても・・・・」

 

「カシンは、それでいいんだよ」

 

「え?」

 

アイザックは、優しく語りかける。

 

「僕はこうなってしまったけど、カシン。君にはまだ、家族がいるんだろう?大切な人たちが死んでからじゃあ、全部が無意味になってしまう。無駄になってしまう。僕は君の戦う理由を決めつけたりはしない。けど、失われたらもう、手に入らないものもあるというのは、忘れないで欲しいんだ・・・・」

 

「アイク・・・・」

 

そこで、警報が鳴り響く。

この数週間で、聞き慣れてしまったサイレン。

敵が、攻撃してきたのだ。

 

「行こう、カシン!この作戦が成功すれば、戦争がもっと早く終わるようになる!あと少しで終わるんだ、今が踏ん張りどころだよ!」

 

「アイク・・・・そうだね。私も、今自分に出来ることをするよ!」

 

そういって、二人は駆けていく。戦場に向かうのだ、彼らは。

しかしその足取りは、決して重いものではなく。自分達の使命を背負った者達の、しっかりとした足取りだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、10/31。

この日、ZAFTはL1宙域からの撤退を決定した。もはや、これ以上この宙域で戦闘を継続する意義がなくなってしまったからだ。

そう、新たなる「世界樹」が、ここに生まれたのである。

戦時に急造したものであるから、以前この宙域に存在していたものよりも規模は小さく、基地としての機能も、以前の半分ほどとなってしまった。

しかし、ただの軍事拠点としてだけではない、様々な意味があった。

この基地を中継点として、月と地球の間の行き来が容易になる。

そのことによって、宇宙から地上に、MSという新戦力を送り出せるようになる。

これからの主戦場は、地上へと移り変わる。そしてそれは、地球連合軍にとっての福音であり、ZAFTにとっては崩壊への序曲とも言えるものだった。

後にこの戦いは、「植樹戦役」と呼ばれるようになり、この基地も「セフィロト」と名付けられ、長く長く使われていくこととなるのだった。

ここに、地球連合軍の「生命の樹」が誕生したのだった。




ということで、「パトリックの野望」序盤戦、これにて終了となります。次回以降に、「植樹戦役」の後日談や、これまで描写をサボってきた戦艦、輸送艦等のステータス表記が続いて、その後地上での戦いの描写が増えていくことになります。また、ようやく中立コロニーヘリオポリスからの、「彼ら」の戦いも始まることとなります。



本作は、なにかしらのSSを書きたいと思っていた作者が「SEED系列の世界観に、野望ネタをつっこむと面白いのでは?」と考えたことによって生まれました。その過程で、ステータスなどを表記するには、何かの特殊能力が必要だな、という経緯を経て、転生者設定を取り入れることになりました。
私個人の意見を言うなら、転生モノって実は嫌いな部類に入るんですよね。
お手軽に無双出来て、それぞれの作者が原作で気に入らないところをサクッと解決してしまうような、それってようは「あからさまな」デウス・エクス・マキナじゃないですか。結局、物語っていうのは作者自身が神のような存在となってつくられる訳ですから、「誰かの都合良い妄想」から抜けることは、永遠に出来ないんですよ。そこに、さらにそれを助長するっていうのは。物語の登場人物含め、様々な存在への冒涜だと思うんです。だから、ユージを転生者にするのは、結構な葛藤・苦労がありました。
けっして都合良く無双しないように。
チートと呼ばれるようなことはしないように。
そうして、「MS・MAの操縦がそこまで上手くなく、開発チートや内政チートなどの、知識が限界突破している」ようなわけでもない、中間管理職系主人公ができあがりました。彼が現時点でやったことなど、それこそ”マウス隊”を立ち上げたことくらいなんです。
だけど、戦記ものって本来そういうものなはずなんです。少数が無双したところで、大局は変わらない。それが、私の中での「ガンダム世界戦争観」なんです。そういう意味では、「ギレンの野望」はアムロどころか、ガンダム無しでも一年戦争に勝てるという、色々と衝撃的な出会いでした。そういう思いもあったから、この作品は生まれたんでしょうね。まあ、ガンダムというMSやアムロのような主人公自体は、非常に魅力的で好きですけどね。それはそれ、これはこれってやつです。
つまり、これはユージの物語ではなく、”マウス隊”や第8艦隊の物語です。天才、凡人関係なく。様々な人たちが手を取り合うことによって紡がれる物語。どうか、彼らの戦いが決着を迎えるその時まで、「パトリックの野望」を閲覧していただけると幸いです。
とりあえず、無印種の部分までの構想はできあがっています。今後は、原作主人公達も本作に登場し、オリジナル機体もどんどん増えていきます。気長に、次回以降をお待ちください。
それでは、(^-^)/

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