機動戦士ガンダムSEED パトリックの野望   作:UMA大佐

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ジークアクスが私の心に暗い何かを灯したので、初投稿です。


第136話 「オペレーション・ブルースフィア」10

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オアフ島

 

「こちらは”第442戦闘団”、ジャン・キャリーだ。これより貴隊を援護する!」

 

窮地に陥った”アークエンジェル隊”の元に駆けつけたのは、『煌めく凶星”J”』の名を持つエースパイロット、ジャン・キャリーだった。

彼は”アークエンジェル隊”と共にオアフ島に降下、ZAFT軍基地に向けて進撃していたが、敵の攻撃を受けて墜落した”アークエンジェル”を見て後退してきたのだ。

 

「私は近接戦型の”アイアース”を抑える、お前達は高火力型の”アイアース”を!」

 

<<<イエッサー!>>>

 

自分に追随してきた部下に指示を下した彼は、今にも損傷した”ダガー”にトドメを刺そうとしている、イザーク・ジュールの乗る”アイアース”に牽制射撃を仕掛けた。

 

<ちぃ、また『ガンダム』だと!?>

 

攻撃を防ぎながら飛び退く”アイアース”。

イザークの言葉通り、ジャンは、全身を彼のパーソナルカラーである純白に染めた『ガンダム』に搭乗していた。

”デュエルガンダム・マレフィクス”。元は3機製造された”陸戦型デュエル”の2号機*1で、ジャンの操縦特性に合わせたチューンが施された機体だ。

見た目は純白の”デュエル”というシンプルなものだが、ジャンが操る場合は最新鋭機にも匹敵するポテンシャルを発揮することが出来る。

無論、”アイアース”にもけして劣らない。

 

<あんたら……助けに来てくれたのか!>

 

<そういうこと! この高火力型(長物持ち)は私達がやるから、あんた達は他のお仲間の所にいってやりな!>

 

<分かった!……行くぞマイケル、まずはヒルダを助けに行く!>

 

ジャンの部下達も、ディアッカの”アイアース”を相手に苦戦を強いられていたムウとマイケルの元にたどり着き、ビームライフルを発射し始める。

イザークにトドメを刺されかけていたヒルデガルダの”ダガー”がムウ達に援護されながら離脱していくが、今のイザーク達にそれを咎める余裕は無い。

そして、もう一点。イザーク達にとって目を疑うような光景が目の前に広がっていた。

 

<バカな……”ゲイツ”だと!?>

 

ジャンに引き連れられて来たのは、彼らの味方である筈の”ゲイツ”だった。

味方で有るはずの”ゲイツ”に襲われながら、ディアッカはある結論を導き出した。

 

<こいつら……『裏切り者部隊』かよ!>

 

 

 

 

 

「裏切り者だと……!」

 

ビームサーベル───本来の”ゲイツ”には装備されていない───を抜いて斬りかかりながら、ヴァレンティーナ・ビノンは表情を憤怒に染めた。

彼女は『大西洋連邦』に所属する、ハーフコーディネイターだ。

元々は軍属ではなかったが、平均的なナチュラルよりは高い能力、そしてコーディネイターの血を引く『裏切り者』として迫害されてきた。

今こうして、地球連合軍で戦っているのも、彼女の本意によるものではなかった。無理矢理に入隊させられたのだ。

ユージ・ムラマツのように上手くハーフであることを隠せなかった者達を待っているのは、悲惨しかない。

 

「裏切り者は……お前達の方だろうが!」

 

彼女達にとっては、ナチュラルもコーディネイターも大した意味は無い。どちらも等しく、自分達を害する存在だ。

特にZAFTは、自分達が軍に入隊することになった直接的な原因と言ってもいい。

そんな彼らに『裏切り者』と呼ばれることは、この上無い屈辱と言えよう。

自分達(ハーフ)のことは『半端者』と見下し、『プラント』ではなく地球に住むコーディネイターのことも、考慮していないとしか思えない数々の行い。

───どの口で、裏切り者などと言えるのか!

 

<ヴァレ、落ち着け!>

 

「でも、こいつら……!」

 

<こんな戯言一つで、()()()の信頼を裏切るのか!?>

 

仲間からの言葉で、我に返るヴァレンティーナ。

人として扱われず、無理矢理に戦わされ、全てを信じられなくなっていたヴァレンティーナ達。

そんな彼女達の前に現れたのが、ジャン・キャリーだった。

 

『すまなかった……同胞達の行いが為に君達をここまで貶めてしまった』

 

会って早々に、深々と頭を下げたジャン。そんな彼に、ヴァレンティーナ達は有らん限りの罵声を飛ばし、物を投げつける者もいた。

ジャンは純粋なコーディネイターであり、元は『プラント』にいた人間だ。どんな考えが有って連合に味方をしているのかは知らないが、彼女達にとって『敵』であることに違いは無い。

敵意の雨に晒されながらも、ジャンは頭を上げなかった。ジッと、ただ耐えていた。

ヴァレンティーナ達が罵声を飛ばすのにも疲れてきた頃になって、ようやく彼は頭を上げた。

 

『信じることは難しい、いや、出来ないかもしれない……。だが、もう一度だけチャンスをくれないか。君達に信じて貰うチャンスを』

 

その日から、ヴァレンティーナ達の世界は少しだけ変わった。

ジャンは彼女達の存在を知ってから、出来る限りの伝手を用いて自分の”第442戦闘団”に組み込んだのだ。

その頃には既に”テスター”シリーズの量産が始まっており、ハーフコーディネイターという存在の優位性はほとんど無くなっていた。

故に彼女達の所属が移るとしても、当時の上司は『厄介者払いが出来る』として全く問題視しなかったのである。

 

『私が囮になる、その隙に攻撃をしてくれ!』

 

戦い方も大きく変わった。

それまでの彼女達の戦い方は、味方の振りをしてZAFTの拠点に近づき、内部で暴れるというものだった。

味方からの援護は無い、それどころか後から来た本隊にZAFTと誤認されて撃たれる危険性もあった。肉盾の方がマシ、と言う者もいたほどの最低な戦法だ。

ジャンは、そんな風には戦わせなかった。むしろ自分が囮になってZAFTを攻撃させ、極力リスクを減らす戦い方をしていた。

 

『おう、お前達が新入りか!』

 

『随分と無茶をさせられてきたみたいだな……ま、ここでは()()ならんから、安心しとけよ』

 

”第442戦闘団”のメンバーも、快く自分達を受け入れてくれた。

なぜハーフコーディネイターである自分達にここまで良くしてくれるのか。そう聞くと、彼らは笑った。

 

『んな風に考えるのはプラントのエリート様だけさ。地球で生活していた俺達にとっちゃ、むしろコーディネイターなんて身の上は窮屈でしょうがねぇ』

 

『俺なんか、奴らが落としたNジャマーのせいで仕事を失ってやむなく軍人ルートだぜ? むしろ同じく奴らの被害者なお前らの方が同胞ってもんよ』

 

そして、彼らはこうも言った。

 

『あとはまぁ、あの人……ジャン隊長がいるからだな』

 

『隊長は真面目な人でな、憎しみの連鎖を広げないためって戦ってんのよ。率先して危険な役目を引き受けて、俺達を何度も助けてくれて……綺麗事の一つや二つ、信じるには十分なもんだったさ』

 

部隊の誰もがジャンを慕い、尊敬を口にしていた。ヴァレンティーナのこれまでの人生で、そんな人間に出会ったことは無い。

次第にヴァレンティーナ達ハーフコーディネイターも、ジャンに全幅の信頼を寄せるようになっていった。

ジャン・キャリーという存在は、日陰で生きていかなければならなかった彼らにとって、余りにも眩しい『光』だったのだ。

ジャンという光に照らされた彼らは、一種の狂信的な戦意を伴ってイザーク達に攻撃を浴びせる。

 

「死ねよクソZAFT共……あの人が目指す世界に、お前らみたいな奴らは要らないんだ!」

 

 

 

 

 

(俺は……何をやっているんだ)

 

戦場は佳境に入った。

キラの駆る”アクセルストライク”と、ヘキサの操る”ブラックストライク”が戦場を縦横無尽に駆け巡りながら火花を散らし合う。

駆けつけたジャン達が、ムウ達”アークエンジェル隊”のMSと代わってイザーク達と戦い始める。

ムウ達は体勢を立て直すため、中破したヒルデガルダの“ダガー”を守るように陣形を組む。

不時着した”アークエンジェル”にも戦闘ヘリや”ディン”が押し寄せており、必死にランチャーストライカーを装備したベントの”ダガー”や対空機銃座が応戦している。

おそらくは、艦内にも攻撃ドローンが入り込んでいるだろう。MSパイロットでなくとも、この場の誰もが必死に戦っていた。

 

(『邪魔』……だと?)

 

そんな中、ただ1人だけ戦場に加われずにいる男がいた。───アスラン・ザラである。

本来はこの戦場でもトップクラスの実力者である彼が、ポツンと1人取り残されてしまったように、手持ち無沙汰でいる。

彼は今……非常に、憤っていた。

 

(俺を止めると言っておきながら……そのために戦場に留まったと、言っておきながら……!)

 

キラ・ヤマト。月に住んでいた頃からの親友。

面倒くさがりで、いつも追い詰められてから自分を頼りにくるような、弟分のような存在。

家族以外では……否、今となっては家族よりも心を許せるだろう人間が。

自分のことを『邪魔』と言い捨て、自分ではない誰かと殺し合っている。

 

「俺を……無視するのか……!?」

 

アスランには、もうキラが何を考えているのか分からなかった。

当然だろう。彼にとってキラは可愛い弟分であり、そこから変化していない。

キラが”ストライク”……『ガンダム』に乗ってから、何を見て、何を経験し、どう成長したのかを、アスランは知らないのだ。

今ある現実と、確かな過去とのギャップ。そこから生じる摩擦が、アスランの脳を苛み。

 

「───ふざけるなぁ!」

 

感情を爆発させるアスラン。同時に、彼は自分の頭の中で何かが弾けるような感覚を覚えた。

”ズィージス”がビームライフルとシールドを放り投げ、原型機である”イージス”から受け継いだ両腕のビームサーベルを展開して”アクセルストライク”に斬りかかる。

 

<な、アスラ───>

 

「キィィィィィラァァァァァっ!」

 

咄嗟に腕部に取り付けられたシールドブースターで剣戟を受け止めるキラ。

先ほどまでとは動きのキレが違う”ズィージス”に戸惑いつつも、彼は瞬時に意識を切り替えて戦い始める。

 

「お前は……俺の、俺が、相手だぁっ!」

 

<黒い”ストライク”を……いや、今は君を倒す!>

 

 

 

 

 

「うーん……なんかもう滅茶苦茶になってきたなぁ」

 

打って変わって手持ち無沙汰になったヘキサは、腕組みをしながら「むむむ?」と唸る。

正直に言ってしまえば、ここでの自分の戦いは最初から『無駄』だ。経験値を積む、という点では意味が有るかもしれないが。

人類の大量殺戮。彼女の遺伝子に刻まれた使命に則るならば、わざわざ死のリスクを冒してまでこんな場所で戦う必要など無い。

───だって、『創世』の光が地球に降り注げば、それだけで彼女の目的は概ね達成されるのだから。

そうと分かっているにも関わらず、彼女が戦場に立っている理由は一つだけ。───好奇心だ。

 

「どうしたら……もっと滅茶苦茶になるかなぁ?」

 

今の彼女は、見た目通りの子供のように高揚していた。

常人とは著しく異なる出生の自分が、『ガンダム』という高性能MSを乗り回し、因縁の相手と互角に戦う。───ああ、正にチープ(ありきたり)な英雄譚のようではないか!

まるで自分が主人公になったかのような全能感は、しかし彼女の心を満たすには足らなかった。

───もっと、もっと、ハチャメチャな世界を。そして、そんな世界の破滅を彼女は望んでいる。

 

<───ぜぁぁぁぁぁぁぁぁっ!>

 

「んぅ?」

 

呑気な声を挙げながらもスロットルを機敏に動かし、攻撃を回避するヘキサ。

裂帛の声を挙げながら斬りかかってきたのは、先ほどまでニコルと戦っていた”デュエルダガー・カスタム”。

 

<はぁっ、はぁっ、はぁっ……目障りだ、黒いの!>

 

狂犬のように殺意と闘志を振りまきながら攻撃を浴びせてくる”デュエルダガー・カスタム”を、ボンヤリと思案しながら()()()()ヘキサ。

正直なところ、目の前のMSに対する興味をヘキサは持ち合わせていなかった。

 

「いや、もう何をするよりも勝手に自滅しそうな感じじゃん……病院行ったら?」

 

<っ……ふざけるなぁ!>

 

ヘキサの言葉は事実だった。”デュエルダガー・カスタム”……スノウ・バアルのコンディションは目に見えて悪化しており、その動きから鋭さは失われている。

感覚(センス)』もなんら警鐘を鳴らしてはいない、いつでも殺せる相手だった。

 

<くそっ……あいつと同じ『ガンダム』で……似たような動きで……あいつは、戦いを楽しんだりはしないんだぞっ!>

 

「……へぇ?」

 

僅かに目を細めるヘキサ。───随分と、あの『完成品』は好かれているようだ。

水を差されたような気分、とはこういうものだろうか。ヘキサは胸に生まれた不快感をどう対処するかを思案し。

邪悪な笑みを浮かべた。

 

「ふふっ、お兄さんはザラたいちょーと遊ぶのに夢中みたいだし、あたしも遊ぼうかな」

 

───ズタボロにした”デュエルダガー・カスタム”を、(キラ)の前でグチャグチャに潰したら、彼はどんな顔をするだろうか?

 

 

 

 

 

”アークエンジェル”艦内通路

 

「くそっ、またドローンだ!」

 

「キリが無いよ!?」

 

「撃て撃て、撃ちまくれ!」

 

MS隊が激戦を繰り広げている最中、”アークエンジェル”艦内でも激戦が繰り広げられていた。

不時着した”アークエンジェル”にはドローンが侵入してきており、人間を無差別に攻撃していたのだ。

 

「よっし、1つ落とした!」

 

幸いにも、今の”アークエンジェル”には陸戦隊が配属されており、彼らの活躍もあって死傷者は少なかった。

その一員であるグラン・ベリアも奮闘し、これが初の実戦ではあるが既に複数のドローンを撃破している。今もまた、機関銃内蔵型のドローンをアサルトライフルのフルオート発射で撃墜したところだ。

 

「サイ、こっちは落ち着いた! 次はどこに行けば良い!?」

 

<格納庫に向かってくれ、人手が足りない!>

 

「了解!───行くぞお前ら!」

 

「う、うん」

 

「よっしゃ!」

 

第2艦橋に移動したサイからの指示に従い、グランは訓練生時代からの舎弟2人と共に移動を開始した。

 

(多目に弾薬を持ってけって言われてたが、正解だったな)

 

歩みを進めながら、グランは戦いが始まる前に先輩隊員に『おそらく敵はドローンが中心になるから、弾薬は多目に持っていけ』と言われたことを思い出していた。

その理由は、戦い始めてすぐに分かった。───ドローンがやたらとタフなのだ。

人間であれば、1発でも銃撃が命中すれば、倒せなくとも動きを止めることは出来る。しかしドローンには痛みが無い上に、1発や2発の弾丸を受けた程度では破壊できない頑丈さがあるのだ。

死を恐れずに向かってくる機械の兵士を相手にするには、通常の規定通りに弾薬を持っていたのではすぐに弾切れに陥ってしまう。そのことは、今の連合軍歩兵では常識となっていたのだ。

人手不足なZAFTの苦肉の策、などとバカに出来ようも無い。

 

「……クリア。ここまで来れば、格納庫まではすぐだ」

 

<気を付けてくれグラン、格納庫は広いから、どこから敵が来るか……ん?>

 

「どうしたサイ?」

 

<……は、え、なんで!?>

 

動揺した声を漏らすサイを、グランは訝かしむ。いったい何が起きたのか。

そして、次に放たれた言葉に仰天する。

 

<格納庫内に非戦闘員が残ってる……アリアだ!>

 

「はぁ!?」

 

 

 

 

 

“アークエンジェル”格納庫

 

「そんな……まさか、このことだったんですか……?」

 

格納庫の一角にて、アリア・トラストは端末の画面を見つめて(おのの)いた。

何故、避難命令が出ているにも関わらず非戦闘員の彼女がこの場所にいるのか。それは、彼女が作戦前に言われた言葉が原因だった。

 

『あの装備……欠陥品だよ』

 

ラディアナ・フォールン。『黒衣の女』と呼ばれる、謎の多い女性科学者。そして、自身の原型(オリジナル)

彼女は、”ストライク”が現在装備している『アクセルストライカー』を欠陥品と呼んだ。

戦いが始まる前の僅かな時間、アリアは懸命にその根拠を探していたのだが、ついぞ明らかにすることは出来なかった。

それもその筈、その欠陥は実戦で、かつ()()()()()()()()()()()()()()使ってみて始めて分かることだったのだ。

 

「早く、このことをキラさんに……!」

 

「おい、お前! そこで何をしてる!?」

 

後ろからの怒号にビクリと肩を震わせるアリア。

振り返れば、そこには先日配属されたばかりの陸戦隊員が息を切らして立っていた。

たしか、グラン・ベリアと言ったか。キラが訓練生だった時に知り合ったと聞いていた青年だ。

 

「避難命令が出てるだろうが、聞いていなかったのか!?」

 

避難命令が出ていたことは知っていた。が、『アクセルストライカー』の欠陥を暴くためには持ち歩き式の端末では性能が不測していたがために、アリアは格納庫に密かに残って高性能PCを使っていたのだ。

ともかく、やるべきことはやった。後はキラに伝えるだけだ。

 

「ちょうど良いところに! 今すぐキラさん……”ストライク”に通信を繋げないといけないんです、手伝ってください!」

 

「バカを言うな、こんな所で……!?」

 

言葉を中断し、いきなりグランはアリアの腕を掴んだ。

なにを、とアリアが思う間もなくグランは思いっきり腕をひっぱり、物陰に飛び込む。

直後、アリアの立っていた場所で爆発が起きる。人間を殺すには十分な破壊力……自爆タイプのドローンだ。

 

「あっぶねぇ……こんな状況で、キラに通信なんか出来るか!」

 

「でも、それだと……」

 

「どの道、キラだって戦いながらゴチャゴチャ言われたって何も出来ねぇよ!」

 

「は、離してください!」

 

「うるせぇ、黙ってろ!」

 

グランは抵抗しようとするアリアを無視して脇に抱きかかえ、仲間の元へと走り始めた。

10代前半の女子としても小柄なアリアには抜け出ることは出来ない。そして、拘束を逃れたとしてもドローンが飛び交うこの状況で単独行動をするのは自殺行為だ。

もはや、アリアに出来るのは祈ることだけだった。

 

 

 

 

 

キラとアスランの戦いは、ピークを迎えていた。

アスランの急激な戦闘力の向上があれど、それはあくまで両者を対等に持っていくに留まった。そうなれば、後は互いの機体特性の違いが勝負を分ける。

変形機構を活かした一撃離脱を得意とする"ズィージス"と、対MS戦に特化した高機動機の"アクセルストライク"。

軍配が挙がったのは、後者だった。

 

「アスラン……これで!」

 

〈このままでは……!〉

 

背中のスラスターや腕部に取り付けられたシールドブースター、それらを最大出力にして、"アクセルストライク"は"ズィージス"に切り込んだ。

『フラガラッハ』の一太刀が、遂に"ズィージス"の左腕を斬り飛ばす。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

続けて、右腕を斬り落とそうとする"アクセルストライク"。

体勢を崩した"ズィージス"には、これを防ぐ術は無かった。

 

「───なっ!?」

 

勝利を確信したキラを、衝撃が襲う。

───何が起こった? 別の敵からの攻撃か?

そうでは無かった。原因は、外部には無かった。

 

「左腕が!?」

 

───突如として、左腕に取り付けられたシールドブースターが、左腕を巻き込んで爆発を起こしたのだ。

 

 

 

 

 

「あ~あ、だから言ったのに」

 

何処ともしれない暗い空間。女───ラディアナ・フォールンは肩を竦めた。

案の定、自分のコピーであるアリアは、せっかくの贈り物である解説ビデオを活用しなかったようだ。

 

「シールドとブースター、2つの機能を併せ持つ装備というのは聞こえが良いが、昔から複合機能持ちというのは失敗フラグなんだよ」

 

ラディアナが見いだした欠陥、それは『シールドとブースターが互いに熱の影響を与え合う』というものだった。

シールドには耐ビームコーティングが施されているが、通常のシールドよりも面積が狭い為に排熱効率が悪い。その熱が、ブースター側にも僅かに伝播してしまうのだ。

加えて、ブースターも盾で覆われているがために発生する熱の逃げ場が少なく、熱を貯めやすくなっている。

 

「そんな状態が続けば、遠からず破綻するのは明らかだ。まぁ、一度でも実戦で試していれば判明することではあるけどね」

 

そもそも、と前置いて。

ラディアナは嘲笑(わら)った。

 

「敵エースを相手にするんだ。その時点で無理をさせているのに、更に機体に無理をさせる?───ナンセンスってものだよねぇ?」

 

 

 

 

 

(何だか分からないが、今なら!)

 

いきなり左腕が爆発した"アクセルストライク"を前にして、アスランが黙って見ている筈も無い。

"ズィージス"の残った右腕からビームサーベルを発振しようとするが、アラート音に気づく。

 

「エネルギーが……」

 

"アクセルストライク"も"ズィージス"も、とっくに限界を超えていたのだ。

鮮やかな赤色から、急速に灰色に染まっていく"ズィージス"。PSダウンを起こした機体では、離脱することすらままならないだろう。

アスランは一瞬で決断した。

 

「キラぁぁぁぁぁぁっ!」

 

〈アスラン、何を───!?〉

 

"ズィージス"を変形させ、"アクセルストライク"に組み付かせる。

機体が固定されたことを確認したアスランは、すぐさまコクピットを脱出した。───自爆コードは既に入力している。時間は無い。

パイロットスーツの飛行装置を起動しながら、アスランは味方に通信を試みる。

 

「ニコル、受け止めてくれ!」

 

〈わ、分かりました!〉

 

「撤退するぞ! "ズィージス"の自爆を目眩ましに……」

 

アスランが言い終わる前に、"ズィージス"が光に包まれ、"アクセルストライク"を巻き込んで自爆した。

爆風に煽られ、アスランの体はグルグルと空中で回転する。

 

「へぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

一風変わった悲鳴を挙げながら、アスランは墜落していった。

このまま行けば、地面に赤い染みが一つ増えることになる。

受け止めるよう要請されたニコルの"アイアース"が手を伸ばすが、ギリギリ届かない。

哀れ、アスランは地面に真っ逆さま───。

 

〈───思いきりが良すぎるわ、馬鹿者ぉっ!〉

 

間一髪のところで、"アイアース"の掌にアスランは受け止められた。

"アイアース"ではあるが、ニコルの機体ではない。イザークだ。

ジャンとの戦闘の真っ最中だったが、いきなり無茶をしだしたアスランをフォローする為に離脱したのだ。

"アイアース"のPS装甲にも無数の傷が付いており、『煌めく凶星"J"』との戦いの苛烈さを物語っていた。

 

「イ、イザーク……」

 

〈俺が近くにいなければ貴様、潰れたトマトになるところだったぞ。よく覚えておくんだな!〉

 

「すまない……」

 

素直に謝罪するアスランに、イザークは鼻を鳴らす。───いつもそうであれば、少しは楽になるのだが。

 

〈では撤退する。───貴様も、何時までも遊んでいるな、ヘキサ!〉

 

 

 

 

 

「はーい」

 

気の抜ける声でイザークに返事をしながら、ヘキサはトリガーを引く。

近距離から発射されたビームが"デュエルダガー・カスタム"の両脚を焼却し、既に両腕も失っていた鉄の巨人が地面に落ちた。

残酷な程の実力差。スノウ・バアルはヘキサ・トリアイナにとって、敵にすらなれなかったのだ。

 

「もう少し楽しめるかと思ったんだけど……な!」

 

そのまま"ブラックストライク"は"デュエルダガー・カスタム"の頭部を踏みつけ、体重を掛けた。

ミシリ、メキリという不快な音と、接触回線を通じて聞こえてくるパイロットの悲鳴が、ヘキサを愉しませる。

 

〈いや、いや、いや、ぅぅぅぅぅぅ……!〉

 

「もう泣いてんじゃーん、そんなんで戦場に出てきたの?」

 

本当はもう少し虐めたいところだが、時間も押している。───終わらせてしまおう。

"ブラックストライク"が、右腕のビームスマートガンを"デュエルダガー・カスタム"の胸部に突きつける。

後は、トリガーを引くだけで、この怯える哀れな少女の命を終わらせてやれる。

 

「バイバイ、お姉さ───」

 

〈───させねぇ!〉

 

横からの斬撃をヘキサは回避する。

ムウ・ラ・フラガの駆る"パーフェクトダガー"だ。部下を守るために、彼は"ブラックストライク"の前に立ち塞がってみせる。

 

「運は良いみたいだね、お姉さん?───貴方はラウの獲物だから手は出さないよ、おじさん」

 

〈何っ!?〉

 

「それじゃ、今度こそバイバイ!」

 

ビームスマートガンを地面に撃って目眩ましとしつつ、"ブラックストライク"は"ザラ隊"と共に撤退していく。

最後にヘキサは、チラリと"アクセルストライク"の方に視線を向けた。

PS装甲のおかげで損傷は少ないが、爆発の衝撃でパイロットが気絶しているのだろう。ピクリとも動かない。

それでいい。自分達の因縁は、もっと劇的に決着すべきなのだから。

 

「死なないでね?───全てが終わる、その時まで」

 

 

 

 

 

「退いていく……か」

 

ムウは溜息をついた。

周りを見回せば、他のZAFTも撤退していくのが見える。おそらく、全体の決着が付いたのだろう。

連合軍の勝利だ。しかし、ムウはそれを素直に喜べない。

傷ついたMS隊、墜落した母艦。そして、失われた仲間の命。

 

「勝ちは勝ち……とは、言いたくねぇ気分だな」

*1
エドワードが乗ったのが1号機。3号機の登場は未定




前回の更新から半年経過してるとかマジ?(絶望)
今年こそは完結に向けて、投稿ペースを上げたい……。

次回からは宇宙、マウス隊に視点が移ります。
こんなに出番の少ないオリ主とか初めてじゃない?

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