機動戦士ガンダムSEED パトリックの野望   作:UMA大佐

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「何時までも待つ」と言われてしまったので、初投稿です。

これまでのあらすじ:連合宇宙軍とZAFT宇宙軍が衛星軌道上でドンパチしているそうですよ?


第137話「Legna」1

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ZAFT軍超大型空母”ゴンドワナ”艦橋

 

「”ショーペンハウアー”の損害が増大しています!」

 

「下がらせろ、穴埋めには”バーク”を遣る」

 

「10時の方向よりミサイル接近、数30!」

 

「可能な限り迎撃、あとは無視しろ。どうせ回避などできん」

 

「”アークエンジェル”級2隻、敵艦隊の両翼に確認出来ました!」

 

「監視を続けろ。……ええぃ、もっと押し込めんのか」

 

焦れったそうに、歯がゆそうに、クロエ・スプレイグは爪を噛んだ。

地球衛星軌道上の支配権を賭けたこの会戦が始まって数時間が経過しているが、戦況は芳しくない。

本来のクロエの計画では、地球のビクトリア基地からMS隊を満載したコンテナを敵艦隊中枢に向けて射出。いきなり自陣に現れたMS部隊に敵が混乱している隙に一気にケリを付ける速攻戦となっていなければならなかった。

 

(第8艦隊……これほどまでに、固いか)

 

しかし、そうはならなかった。

敵主力たる連合軍第1艦隊は混乱状態にあるが、『智将』デュエイン・ハルバートンの率いる第8艦隊が、クロエ率いるZAFT軍主力を押しとどめているからだ。

前線で戦っているZAFTのMS隊は十分な訓練と実戦経験を積んだ、『精鋭』と呼んで差し支え無い練度だと、クロエは記憶していた。エースパイロットと称えられる者も、何人かいたのを覚えている。

それでも突き崩せないのは、敵もまた、連合軍最精鋭と言われる存在だからである。

 

「四の五の言ってられないか……『奴ら』を出せ」

 

 

 

 

 

「馬鹿、また誘われて……ちっ!」

 

一方その頃、”ジン”を駆るベテランのZAFT軍兵士は、目の前でビームに撃ち抜かれ、火球に変えられた部下の姿に舌打ちをしていた。

───あいつは迂闊だったが、それ以上に上手い!

 

<どうする、このままだとジリ貧だぞ!?>

 

「迂闊に攻め込んでも同じことだ!」

 

焦りを隠せない戦友からの通信に、同じく焦りを隠せない声で返事をする。

第8艦隊の戦術はシンプルなもので、前衛をMSが担当し、戦艦が後方から砲撃を行なう。言葉にすれば、それだけだ。

しかし、そのシンプルさ故に練度の高さが明らかになる戦術だった。

第8艦隊は、連合軍がMSを実戦投入した時から今に至るまでを最前線で戦い続けてきた。練度の高さなど言うに及ばない。

 

<このままじゃ、突入した部隊が……今ならいけるかっ!>

 

堪え性の無い若者が駆る”ゲイツ”が、隙を見つけて敵陣を切り崩さんと前に出るのが見える。───それが、()()()作られた隙だと気付かずに。

 

”ゲイツ”のレーザー重斬刀を”ダガー”が盾で防ぐ。距離を取った一瞬、すかさず別の”ダガー”がビームライフルで”ゲイツ”を撃つ。

”ゲイツ”も同じく盾で防ごうとするものの、最初に攻撃を防いだ方の”ダガー”が頭部バルカン砲を”ゲイツ”の頭部に向けて発射。

メインカメラを破壊されてはたまらないと、機体をひねる”ゲイツ”だが、その時には2機の”ダガー”からビームライフルを向けられている。

 

あっという間に2対1の絶対絶命シチュエーションだ。

 

「下がれ、下がれぇっ!」

 

<くっ、すまない!>

 

慌ててこちらもマシンガンを撃ち込んで敵を牽制する。狙われていた”ゲイツ”はなんとか危機を脱して後退するが、少しでも援護が遅れていれば撃ち抜かれていただろう。

先ほどから、似たような状況の繰り返しだ。

ZAFTとてやられっぱなしというわけではないが、第8艦隊は被弾した味方のフォローも上手く、被害を最小限に留めながら陣形を崩さない立ち回りをしている。

分かっているのだ。大気圏内からの奇襲を成功させたZAFTだが、その実、時間が経てば経つほど連合軍側が有利になるということを。

第8艦隊の後方、第1艦隊が奇襲から立ち直れば今の拮抗は崩れる。後は数で勝る連合軍に押し切られるだけだ。

 

「うおっと!」

 

どうしたものか、と一息吐く暇も無い。横合いから飛んで来たビームを避けつつ銃を向けるが、下手人は既にその方向にいない。

連合軍の宇宙用MA”コスモグラスパー”の編隊が戦場を飛び回り、ZAFTのMS隊に攻撃を浴びせているのだ。

MS以上の加速性能を誇るMA、その利点を最大限に活かした一撃離脱戦法だが、やられる方はたまったものではない。

 

「クソッタレのハゲタカどもが……あん?」

 

必死に攻撃を避けている男だが、モニターがある文章を映していることに気付く。

それは、ZAFT兵達にとって間違い無く朗報の筈だった。しかし、男は顔を顰める。

 

「『”レグナ部隊”出撃、A-6地点に向けて進行中』……あの実験部隊かよ、アテに出来るのか?」

 

 

 

 

 

「よーし、いいぞ! ZAFTの連中、てんてこ舞いだ!」

 

”ジン”や”ゲイツ”を翻弄しながら、戦場を何機もの”コスモグラスパー”が飛び回る。

この戦争でMSを歩兵とするなら、MAは騎兵。MSを凌駕する加速性と十分な火力を以て敵陣を攪乱し、進軍を支える存在だ。

 

(ざまあ見ろ、お前らが見下したMAに手も足も出せない気持ちはどうだ!?)

 

幾つもの”コスモグラスパー”小隊、その1つを率いる男は攻撃的な笑みを浮かべながらミサイルを発射した。

標的となった”ジン”はマシンガンを撃ちながら回避しようとするが、別の”コスモグラスパー”から放たれたビームに胴体を撃ち抜かれ、敢えなく火球となる。

 

「はんっ、新人類を名乗る癖に目ん球別方向に向けるくらい出来ねぇのか!?」

 

撃破された”ジン”を嘲る小隊長。彼は、戦前からMA”メビウス”のパイロットとして活躍するパイロットだった。

厳しい訓練を乗り越え、狭い関門をくぐり抜けた者がなれるエリート。……その筈だった。

それが、MSの登場によって瞬く間に塗り替えられた。

 

(MAではMSに勝てない? キルレシオは1:3から1:5?───ふざけるなっ!)

 

MAはけしてMSの活躍を華々しく彩るための噛ませ犬などではない。そういった怒りが彼を奮い立たせている。言動が攻撃的になるのも、無理の無い話だった。

逸る衝動のまま、彼は新たな標的を求めた。

 

「ん……これは?」

 

レーダーに表示された3つの光点は、敵本隊の方向から向かってきていた。つまりは敵だ。

それだけならば小隊長が意識を向けることは無かっただろう。しかし、その3つの光点は”ジン”や”ゲイツ”と比べても明らかに()()()表示されていた。

これは、その光点の持つエネルギー量が大きなものであることを表している。

 

「『大物』が出てきたか……お前達、分かっているな!」

 

<先制攻撃、そして離脱でしょう?>

 

「そうだ!」

 

彼の選択は、不明敵機に対する対応として間違ったものではなかった。

”コスモグラスパー”による一個小隊、つまり4機による攻撃を受ければ何かしらのリアクションを引き出せる。

不測の事態が起きても、”コスモグラスパー”の加速性能ならば安全に離脱することも出来る。そう考えてのものだった。

───だから、そう。彼らは()()()()()()()()()()。単に()()()()()()のだ。

小隊から発射されたビームやミサイルが、敵部隊の戦闘を進む赤い機体に直撃する。

 

(バカな……()()だと!?)

 

ビームと実弾(ミサイル)、その両方が命中したというのに、その機体にはダメージが見られない。

距離が縮んだのでよくよく見れば、奇妙な風体の機体だった。

もしも(かに)が手足を折りたたんで体を丸めたらこうなるだろうか。デコボコで歪な球体、といった感じだ。

───普通では無い。()()()()()()()()M()S()()()()

 

「ヤバい……全機、さんか……!?」

 

手を出してはいけない相手に手を出してしまった。そう気付いた男は隊に指示を出そうとするが、それは無為に終わる。

赤い機体は奇妙な外見と、通常のMSより一回りほど大きな体躯を持っていた。

その影に隠れていた別の機体は、背中から伸びる羽根のような部位から4機の()()を射出する。

それらは鋭利な先端───砲口を”コスモグラスパー”小隊に向けた。

 

(まさか、『ゼロ』と同じ?)

 

小隊長が想起したのは、かつて戦場に投入されたMA”メビウス・ゼロ”。

あれも本体から分離した砲塔が多方向から敵機を攻撃する、というものだった。

果たして、男の想像は現実のものとなる。

 

<避けられ───>

 

<隊長……ぎゃっ!?>

 

<ちくしょうっ───!>

 

「お前達……くそがぁっ!」

 

砲塔から発射されたビームが”コスモグラスパー”小隊を撃ち抜いていった。

間一髪で回避に成功した小隊長は、怒りのままに前進を続ける。

せめて一矢でも報いなければ。ありふれた怨嗟の念は、別方向から飛来したビームに撃ち抜かれて消える。

爆炎に包まれる刹那、小隊長の視界には、背中に戦闘機のようなものを背負ったMSの姿が映っていた。

 

(バカな……MAは……MSに、劣ってなど……)

 

 

 

 

 

「ちっ、あんな小蠅如き、いっぺんに墜とせねえのかよ」

 

<す、すいません……当たると思ったんですけど……>

 

気弱げな女の声に、男……バーバル・ブーレは舌打ちを悪態を吐いた。

 

(あんな女が『赤』で、俺が『緑』……見る目が無いぜ、上層部もよ)

 

バーバルは苛立たしげに()()()()()()()

彼はヘルメットを被っていなかった。否、それどころかパイロットスーツすらも身に纏っていない。

ZAFTの緑の制服のまま、彼はMSに乗り込んでいた。

───低脳な地球人如きを相手にするのに、パイロットスーツを着るのは臆病者の証だ。

余りにも傲岸不遜、しかし実力は間違い無い男。つまるところ、ZAFTのバーバルはそういう男(厄介者)だった。

 

<そんなに文句を言うなら、君が墜とせば良かっただろうに。武器くらいはあるんだろう、その機体でも?>

 

<嫌ですわね、自分では何もしない癖に文句だけは言うなんて>

 

「壁になってやってるだろうが、あぁっ!?」

 

そんなバーバルに苦言を呈する、気取ったような口調の男女の声。

気弱な赤服女もそうだが、こちらの男女───兄妹と聞いている───も気に入らない。

大した戦果を挙げているわけでも無いクセに、実戦で活躍したことのあるバーバルを「野蛮」と見下しているのだ。

実際に会ったのは3日前だが、初対面時からバーバルはこの兄妹を敵視していた。

なお、その間に挟まれた気弱な女性が死にそうな表情を浮かべていたが、彼らがそれを気にするわけも無かった。

 

(まぁいい……どうせこんな現場を知らねえ()()()()()()共なんざ、適当な所でくたばるだろう)

 

<よ、予定ポイントに到着しましたっ>

 

「へっ……蹂躙してやらぁっ!」

 

蛮性を隠そうともしないバーバルの声を切掛に、3機のMSがそれぞれの戦場に向かって飛んでいく。

彼らは『レグナ部隊』。Legna(レグナ)、即ちAngel(天使)に反する者達。

───古き者達(ナチュラル)の遣わす忌まわしき天使(ガンダム)達を駆逐するために組織された実験部隊が、『第8艦隊』に牙を剥いた。

 

 

 

 

 

<なんだ、あの機体はっ!?>

 

<MS……なのか?>

 

<敵なのは間違い無い、包囲しろ!>

 

困惑と共に、連合軍(ナチュラル共)のMSが散開していく。

バカな奴らだ。バーバルはその姿を鼻で笑いながら、スロットルを押し込んだ。

回避も迎撃も存在しない、ただの前進。───ただそれだけなのに、止められない。

殺到するあらゆる攻撃が、単純な()()に弾かれていく。

 

「そんな豆鉄砲が、この”オーサム”に効くかよぉ!」

 

バーバルの駆るMSは、『ZGMF-X04A“オーサム”』。ZAFT軍の開発した、()()()MSである。

その開発コンセプトは、「1機のMSに持たせ得る防御力の追求」。

このコンセプトを満たすために、”オーサム”の建造には、通常のMSに用いられる4()()の量のPS装甲材が用いられた。

実弾は勿論、元から低出力のビーム程度ならば弾けるPS装甲。それが4倍ともなれば、MSレベルの火力で撃破するのは極めて困難だ。

 

「くくくく……大丈夫かぁ、そんな()()()()()()機体で?」

 

防御においては最高の”オーサム”。

ならば、攻撃は? その疑問の答えは、余りにも単純かつ暴力的な方法で示された。

 

<く、来るなっ!>

 

<バカっ、避けろ!───がぶぇっ!?>

 

経験の浅いルーキーが乗っているのだろうか、”ストライクダガー”が迫り来る”オーサム”に対して必死に効かないビームを連射する。

その様子を見て取った”ダガー”が、”ストライクダガー”を突き飛ばして盾を構える。

”オーサム”の繰り出した攻撃は、()()()()()。ただ真っ直ぐに進むだけ、ただそれだけの行動が、1機のMSをスクラップにしてみせた。

構えた盾は突進を防ぐどころか、盾を装着した左腕ごと胴体にめり込み、パイロットごとコクピットを圧壊する。

大型トラックに跳ねられた人間のように”ダガー”は吹き飛び、間もなく爆発した。

 

「はーっはっはっはっは! 最高だ、最高だぁ!」

 

その有様を見て、バーバルは哄笑を挙げる。

そうだ、これだ。この光景こそが、自分の求めた物だ。

他人などは自分を引き立たせるためのものだ。そこに味方も敵も無い。

こんな不格好なMSを任せられた時は不満しか覚えなかったものだが、実際に乗り込んでみればこの通り。

───誰も自分を傷つけることも、止めることも出来ないのだ。

 

「もっと楽しませろよ、劣等種共ぉ!」

 

 

 

 

 

「さて……いくよ、アンネ?」

 

<いつでもよろしくてよ、アーチボルドお兄様>

 

背中に戦闘機が接着したようなMS、”リグレッション”を駆るのは、アーチボルド・グールド。そして、彼の妹であるアンネ・グールドだ。

”リグレッション”の開発コンセプトは「MSとMAの連携戦術の有効性検証」。

本体であるMSを兄が、そして背中のMAを妹が操縦することで、この機体の性能は100%発揮される。

 

鈍間(ノロマ)め、墜ちろ」

 

”リグレッション”が構えた『M1000X シャルーア高エネルギー長射程ビーム砲』から、破壊エネルギーの奔流が放たれる。

標的となった”ダガー”は咄嗟に盾を構えるが、量産機の装備で防ぎきることが出来る威力ではなく、盾ごと左腕を破壊されてしまった。

左腕を失った”ダガー”の後退を支援するために前に出るMS小隊の姿を見て、アーチボルドは鼻を鳴らす。

 

「ふん、流石は『第8艦隊』といったところか? 逃走速度と仲間意識は大した物だ」

 

<でも無意味よ。数分、死ぬのが早いか遅いかでしかないもの>

 

「その通りだ。───パージ!」

 

ここからが”リグレッション”の本領だ。

『シャルーア』を背中のMA”ファトゥム-0”にマウントし、”リグレッション”は1機のMSとMAに分離する。

 

<分離した!?>

 

動揺するMS小隊に、スマートな外観になった”リグレッション”が迫り来る。

分離した”リグレッション”は右手に『MA-M20 ルプス・ビームライフル』を備えており、『シャルーア』ほどでは無いが十分な威力を持つメインウェポンだ。

これを射かけながら、左手に『MA-M01 ラケルタ・ビームサーベル』を装備し、”リグレッション”が手近な”ストライクダガー”に斬りかかる。

 

<うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?>

 

「まず1機」

 

<よくもチャドを!>

 

<盾も持たずに!>

 

哀れな”ストライクダガー”を切り裂いた”リグレッション”に、他のMSが銃を向ける。

たった1機ではあるが、明らかに自分達よりも高い性能を持つであろう機体に警戒を怠ることなく、包囲射撃をしようとした彼らは、しかし単純なミスをしてしまった。

”リグレッション”は、『1組のMSとMA』なのだ。

横合いから射かけられたビームにまた1機”ストライクダガー”が撃ち抜かれる。

分離した”ファトゥム-0”がマウントされた『シャルーア』で攻撃したのだ。合体時よりも威力は低下するが、何の防御もしていないMSを仕留めるくらいは容易い。

 

<お兄様に射かけるなど、許される罪ではなくてよ>

 

「ありがとう、アンネ。後は任せてくれ」

 

妹に礼を述べながら、アーチボルドは”ストライクダガー”を撃ち落とした。

最後に残された”ダガー”は果敢にもライフルを捨て、ビームサーベルを抜いて”リグレッション”に斬りかかる。

 

「───無駄だ」

 

最後の足掻きとも取れる攻撃を、アーチボルドは一蹴する。

迷い無く近接戦を仕掛けるだけの腕前はあったが、それはアーチボルドも同じ事だ。ただ依怙贔屓(えこひいき)に核動力搭載の試作機を任せられているわけではない。

何より、機体性能が違う。

”リグレッション”と”ダガー”が交叉し、一瞬の後に上半身と下半身を両断された”ダガー”が爆発した。

爆炎を背景としながら、”リグレッション”と”ファトゥム-0”が再度合体を果たす。

 

<お見事です、お兄様。初の実戦だというのに、なんと華麗な戦いぶり……>

 

「当然の結果だよ、アンネ。父上が過保護過ぎただけのことさ」

 

陶酔したような妹からの賛辞に、同じくアーチボルドは高揚した調子で返答する。

彼らの父親は『プラント』最高評議会メンバーであり、国防委員であるヘルマン・グールド。

ザラ派の重鎮でもある彼のことを、しかし子供達は密かに見下していた。

 

『自分達は自他共に認める優秀な存在だ。我が子可愛さとは言え、それを安全な後方で腐らせておくなどあり得ない』

 

たしかに最高評議会メンバーになるだけの能力もあるが、所詮はパトリック・ザラの腰巾着でしかない。

どこまでいっても№1になれない父親と自分達は違う。そう考えていた彼らを待っていたのは、後方でのテストパイロットの座。

───能力を発揮し、戦果を挙げる機会を奪われた。

彼らの高揚には、ようやく訪れた機会に対する喜びも含まれていたのだ。

 

「さあ、狩りを再開しようじゃないか。幸いにも獲物はごまんといる」

 

<ええ、お兄様。大から小まで、より取り見取りですわ>

 

 

 

 

 

(どうして、こんなことに……!)

 

ピティス・シェーミンは泣きそうになりながら戦場を飛び回っていた。

ただのテストパイロットだった筈の彼女が、何故実戦に駆り出されているのか。そこには、平地のように低く海岸のように浅い理由があった。

 

 

 

 

 

『ああ、ピティス君。ちょっといいかな?』

 

『はい?』

 

『君、近々起こるだろう大規模戦に駆り出されることになったから。達者でね』

 

『……はいっ!?』

 

 

 

 

 

(人を、戦場に、放り込む態度じゃ、ない!)

 

当時の上司からの、あんまりにもあんまりな辞令。然りとて、それを拒否出来るような立場ではないピティスは、可哀想な人を見る視線に囲まれながら最前線までやってきた。

そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、同僚は誰もが仲間意識皆無な問題児ばかり。

───帰りたい。その一心でピティスは戦っていた。

 

<あの機体……『ガンダム』だと!?>

 

<普通の機体じゃないのは確かだ、油断するな!>

 

「なんで、こっちに来るのよぉーっ!?」

 

悲鳴を挙げながら、ピティスはトリガーを引く。

彼女の駆るMS”リベレーション”が命令に従い、右手に持つ『ルプス・ビームライフル』からビームを発射するが、あっさりと盾に防がれてしまう。

お返しと言わんばかりに数条のビームを射かけられ、思わずピティスの口から更に悲鳴が漏れる。

───死にたくない。

ピティスの思念に応えるかのように、”リベレーション”の背部ウイングから4つのパーツが射出された。

 

「貴方達が……来るなら!」

 

射出されたパーツ……『ドラグーン』の子機が、”ダガー”達にその砲口を向ける。

ピティスはこの装備を使うのが苦手だった。()()のが、ではない。

そもそも『ドラグーン』を扱うのには特殊な才能が必要であり、ピティスが”リベレーション”のテストパイロットに選ばれたのも、その才能の持ち主であることが判明したからだ。

 

「疲れるんですよ、これ!」

 

ピティスが言うや否や、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『マルチロックオンシステム』。複数の火器を連携して扱いつつ、10を超える敵機を同時に補足するシステムだ。

次々と敵機をロックオンしていく“リベレーション”。

 

「───これで!」

 

そして、トリガーが引かれると同時に”リベレーション”本体の持つライフルも合わせて5条のビームが”ダガー”達に突き刺さった。

 

<うわぁっ!?>

 

<これは……まさか───>

 

<母さ───>

 

次々に爆発していくMS達。

───あれは敵だ。さっきまで自分の命を奪うために襲い掛かってきた。しょうが無いことだったんだ。

そう分かっていても(思おうとしても)、ピティスの息は荒くなり、吐き気に耐えられなくなりそうになる。

それでも、ヘルメットを脱いで楽になりたい気持ちを堪えてピティスはスロットルを前に倒す。

 

(死にたく、ない……死んだら、吐くことも出来ない……!)

 

 

 

 

 

連合宇宙軍第8艦隊 旗艦”メネラオス”艦橋

 

「提督、Cエリアに現れた不明機体群により、被害が拡大しています!」

 

「”イングラハム”中破!」

 

「”タットノール”に支援させろ!……提督、このままでは」

 

副官であるホフマン大佐からの不安げな言葉を制しながら、険しい顔を見せるハルバートン。

 

(難しい戦場だな……)

 

突如として現れたZAFTの新型らしきMSにより、拮抗していた戦場が崩れ始めている。

ハルバートンの思惑としては、後方の『第1艦隊』が奇襲による混乱から立ち直った後に反撃に打って出るつもりでいた。

『第1艦隊』に奇襲をかけた敵部隊の数は多くなく、もう少しで態勢を立て直せる、という所であのMS達が現れたのだ。

 

(突出した戦力で防衛網に穴を開け、そこから一気に食い破るつもりか)

 

妹弟子だという向こう側の指揮官は、程々の戦いに収める気は無いらしかった。戦力的に劣勢であっても、勝利を狙いに行く姿勢は何処か清々しさを感じさせる物がある。

自分(ハルバートン)にはそういう物は無い、という自嘲があった。

何処までいっても凡人だし、失敗する可能性の高い策を実行に移せる大胆さも無い。

 

(だが、人には向き不向きがある)

 

大きな何かを成し遂げることは出来ないハルバートンは、しかし。

───()()()()()()()()に対する支援だけは十分にしてきた。そういう自負があった。

不意に、通信士が歓喜の声を挙げる。

 

「『第08技術試験隊(マウス隊)』より入電───『これより戦列に加わる』とのことです!」




不肖、帰ってきました
一週間以内に次回投稿します。
以下、レグナ部隊について解説。



○レグナ部隊
『ガンダム』を倒すために結成された特殊MS隊。MSは全て、核動力MSとなっている。
……と言えば聞こえは良いが、実際のところは「役目を終えて解体待ちだった試作機群を、急遽引っ張ってきた急造部隊」。
ZAFT艦隊司令のクロエも正直なことを言うと「アテに出来ない」と思っていたが、膠着状態を打破するためにやむなく出撃させた。
とは言え、なんだかんだ高性能なMSなのは間違い無いため第8艦隊を苦戦させている。

○ZGMF-X04A オーサムガンダム
『最高(Awesome)』。
防御力特化ガンダム。弱点はそれ以外の全部。
装甲マシマシの結果、AMBACの稼働率は低下しており、総合的には”ジン”並の機動力しか発揮出来ない。
火力についても『ルプス・ビームライフル』2丁を備えるのみであり、他に出来ることは本編中に見せたタックルしかない。
あくまで「MS単機の防御力を(ZAFTなりに)追求した試作機」なので、実戦投入は考慮されていなかった。
見た目のイメージは『クロスボーンガンダム』に登場する”トトゥガ”。

○ZGMF-X07A リグレッションガンダム
『回帰(Regression)』。
MSとMAの連携戦術の有効性について検証するために開発されたガンダム。
通常時は高火力ビーム砲による火力で敵部隊に打撃を与え、白兵戦時にはMSとMAのに分離して迎撃する、という戦い方をする。
しかし、
「わざわざ合体させる必要があるのか」
「MAのパイロットを別のMSに乗せた方が総合的に戦力が向上するのではないか」
といった意見が開発チーム内からさえ続出。
これらの意見に対して有効な回答を導き出すことが出来なかったため、試作機止まりになってしまったという経緯を持つ。
しかし全てが無為に終わったわけでもなく、この機体のデータは後に開発される『ZGMF-X09A”ジャスティス”』の開発に活かされた。
見た目のイメージは”スーパーガンダム”こと”ガンダムMark2ディフェンサー”。

○ZGMF-X08A リベレーションガンダム
『解放(Liberation)』。
『マルチロックオンシステム』の試験運用を行なうための試作機であり、開発当初は『プロト・フリーダム』とも呼ばれていたガンダム。
当初はZAFTの『ファーストステージシリーズ』の集大成とも言える『ZGMF-X10A”フリーダム”』の前身として試験運用が行なわれていたが、試験運用中に急遽『ドラグーン・システム』を搭載される。
多数の敵機を同時に補足出来る『マルチロックオンシステム』と多数の砲塔を操作する『ドラグーンシステム』の相性は良好だったが、ある問題に突き当たる。

『こんなもん使える奴いねーよ!』

ただでさえ優れた空間認識能力と情報処理能力を求められる機能2つの同時使用は、操縦者に多大な負担を強いる諸刃の剣であった。
実際、テストパイロットのピティスも含め多数のメンバーが「これを実戦で十全に扱うにはエースオブエース級の腕前があっても困難」と結論付けており、”リベレーション”も解体される予定だったが、例に漏れず実戦投入される。
『マルチロックオンシステム』使用時には『ドラグーン』の制御をセミオート化することで操作難易度を低下する処置がされているが、『ドラグーン』の挙動が単調化してしまうという弱点もあり、いずれにせよ今大戦中に本機の性能が100%発揮されることは無いだろうと目されている。
見た目のイメージは固定武装をビームサーベル以外全部外した代わりに"ストライクフリーダム"の翼を2枚くっつけた"フリーダム"。



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