機動戦士ガンダムSEED パトリックの野望   作:UMA大佐

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第138話「Legna」2

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”コロンブスⅡ”艦橋

 

時は僅かに遡る。

“アークエンジェル”を旗艦とする降下部隊の支援を終えた『マウス隊』は、MSの簡易整備を行なっていた。

 

「MS隊の損耗は極めて軽微。弾薬や推進材とかを補給すれば、いつでも再出撃が可能よ」

 

「そうか……」

 

「……何か、懸念でもあるの?」

 

うん、とユージは頷く。

なんと言えば良いのか、()()()()()()()()()()、という予感があるのだ。

作戦は全体的に順調に進んでいる。僅かな誤差はあれど、このまま行けば順当に連合軍の勝利に終わるだろう。

───こういう時にこそ、何かが起こるんだよなぁ……。

 

「そうね、私達の参加した戦いで順風満帆に終わったことの方が少ないし、何か起きると見た方がいいかも……」

 

「それじゃ俺達がトラブルメーカーみたいじゃないか……」

 

「否定出来るの?」

 

「出来ないな……っ!?」

 

溜息を吐きかけたユージを、言い知れぬプレッシャーが襲う。

転生者であるユージには「戦場に存在する兵器と搭乗者のある程度の能力が分かる*1」という特殊能力があった。

わざわざ「ステータスオープン!」とかを言う必要は無く、使おうと意識すればそれだけで良い能力だが、時折ユージの意思を介在させずに発動する時がある。

 

(強敵襲来、ってわけか……!)

 

 

 

オーサムガンダム

移動:5

索敵:D

限界:170%

耐久:1200

運動:18

PS装甲

Nジャマーキャンセラー(毎ターンEN10%回復)

 

武装

ビームライフル:160 命中 60

タックル:300 命中 50

 

 

 

バーバル・ブーレ(ランクB)

指揮:4 魅力:5

射撃:9 格闘:10

耐久:12 反応:10

 

 

 

リグレッションガンダム

移動:8

索敵:B

限界:190%

耐久:400

運動:40

PS装甲

Nジャマーキャンセラー

分離機能

 

武装

ロングビームライフル:250 命中 75

ビームライフル:160 命中 70

ビームサーベル:160 命中 70

 

 

 

アーチボルド・グールド(ランクC)

指揮:7 魅力:10

射撃:11 格闘:8

耐久:6 反応:11

 

アンネ・グールド(ランクD)

指揮:5 魅力:9

射撃:9 格闘:5

耐久:5 反応:11

 

 

 

リベレーションガンダム

移動:7

索敵:C

限界:200%

耐久:300

運動:40

PS装甲

シールド

Nジャマーキャンセラー

 

武装

ビームライフル:160 命中 70

ビームサーベル:160 命中 70

ドラグーン・システム:180 命中 75

 

 

 

ピティス・シェーミン(ランクD)

指揮:5 魅力:8

射撃:10(+2) 格闘:4

耐久:5 反応:11(+2)

空間認識能力

 

 

 

「……は?」

 

一瞬、ユージの思考が停止する。

『原作』で見たことの無い機体や人物。それは別に大したことではない。

ユージの思考を停止させたのは、ステータス欄に並ぶこの文字列。

Nジャマーキャンセラー。Nジャマーの影響を無視して核分裂エンジンを稼働させられる、C.Eにおけるトップメタとなりうる装置だ。

それが、今、目の前に来ている。

 

「……マヤ、どんな手を使ってもいい、万全の状態でMS隊を出撃させろ」

 

「どうしたのよ急に。言われなくてもやって───」

 

「頼む、今回だけ120%の力を出すつもりでやってくれ。」

 

「……何か、見えたの?」

 

「ああ、出来れば鹵獲したい。……Nジャマーキャンセラーだ」

 

耳打ちをされたマヤは、顔色を変えた。

現在『マウス隊』が開発している新型MSは、どれもが最高峰の性能を誇る機体だが、従来のバッテリーでは対応出来ない電力消費量が最大の問題だった。

Nジャマーキャンセラーがあれば、その問題を解決出来る。『マウス隊』にとっては喉から手が出るほど欲しいものなのだ。

返事も無く、マヤは早足で艦橋から退出していく。事の重大さを知り、自分もMSの整備作業に参加するためだろう。

 

(頼んだぞ、マヤ。……いざとなれば、俺も出撃する必要があるかも、な)

 

核動力MSという、脅威であると同時に最大の福音とも言える敵を前にして、ユージは深く艦長席に座り込んだ───。

 

 

 

 

 

そして、時は現在に至る。

3機の核動力MSの登場によって、戦線の膠着状態は崩れかけていた。

ZAFTのMS隊が、特に守りが薄くなった場所に目がけて殺到する───。

 

「ミサイルストームっ!」

 

そこに、延べ180発のマイクロミサイルが殺到する。外付け強化装備『グリズリー・ユニット』を装備した”デュエル”がミサイルを斉射したのだ。

マイクロミサイルとは言え、小艦隊にも匹敵する量のミサイルの雨霰に翻弄されるZAFTのMS隊。

だが、その実行犯である”デュエル”のパイロットであるアイザックの標的は、別にあった。

 

「見つけた……あれがZAFTの新型!」

 

人型というよりは、丸まった甲殻類を思わせる異形のMS───”オーサム”。

防御に特化したこの機体を止められるのは、『グリズリー・ユニット』を装備した”デュエル”のみ。

ユージの下した判断は正しかったと、アイザックは確信する。

 

(こいつのプレッシャーは、尋常じゃ無い……!)

 

その圧倒的装甲と体躯を以て連合を蹂躙する”オーサム”に、”デュエル”は正面から突撃する。

それに気付いた”オーサム”が、胴体と同じく異形の両腕に持たせていたビームライフルを向けようとするが、それが放たれるよりも先に”デュエル”が到達する。

 

「いけぇ!」

 

<んがぁっ!?>

 

”デュエル”の両肩に取り付けられた巨大な鋼腕『ギガントマキア』が、”オーサム”の胴体に全力の右ストレートを叩き込む。

MSやMAをスクラップするための装置を、PS装甲材を用いて強化した『ギガントマキア』。

それが『グリズリー・ユニット』の誇る大推力を以て叩きつけられたのだ。”オーサム”はその衝撃に吹き飛ばされる。

───まずは、この異形を味方から引き離すのが先だ。

吹き飛んだ”オーサム”に追いついた”デュエル”が、『ギガントマキア』でその機体を拘束する。

 

<な……んだそりゃ!?>

 

「これ以上は、やらせない……!」

 

拘束から抜けようとする”オーサム”と、そうはさせまいと『ギガントマキア』の出力を上げる”デュエル”。

その光景を見ていた『第8艦隊』に所属するMSパイロットは、後に「MS同士というより、もはや怪獣大戦争だった」と語った───。

 

<気持ちよくぶっ殺してたところなんだ、邪魔すんじゃねぇよカス!>

 

接触回線によって聞こえてきた敵兵の声を聞き、アイザックの額に青筋が走る。

 

「それは良かった……君みたいなクズの邪魔をするのも、僕の仕事なんだよ!」

 

 

 

 

 

「なんだなんだ、随分ゴテゴテした『ガンダム』じゃないか!」

 

<既に少なくない被害が出ているわ、油断せずに行くわよ!>

 

「ああ!」

 

”エールソードダガー”を駆るエドワードの目に映るのは、1機のMS。

MSとMAが合体した”リグレッションガンダム”は、エドワードの姿を捉えると、すぐさま長大なビームライフルを両手で構えて発射した。

その狙いは正確だったが、エドワードと、”エールランチャーダガー”を駆るレナはそれを軽々と回避する。

 

「正確な射撃だが、素直すぎるな!」

 

たしかに狙いは正確だ。しかし、幾多の実戦をくぐり抜けてきたエドワード達に単純な射撃は通用しない。

お返しにとエドワード達が反撃を返すと、”リグレッションガンダム”は背中のMAを分離し、2機で攻撃を仕掛ける。

MAの背部に設置されたミサイルポッドがミサイル吐き出すが、エドワードはそれを頭部バルカン砲で迎撃しながら突き進んだ。

回避行動を捨てて突っ込んでくる”エールソードダガー”の姿に動揺しながら、”リグレッション”はビームサーベルを抜く。

 

「俺と斬り合うつもりか、良い度胸じゃないか!」

 

背中に懸架された対艦刀を引き抜き、“エールソードダガー”は更に突き進む。

袈裟懸けに振り下ろされた対艦刀を”リグレッション”がビームサーベルで受け止めた。

ジリジリとつばぜり合い*2をする2機のMS。得意の近接戦に持ち込んだエドワードは、しかし驚愕に目を見張る。

 

(片手で、対艦刀とつばぜり合いをするのか!?)

 

”リグレッション”は右手にビームライフルを持ったまま、左手のビームサーベルで対艦刀を受け止めていた。

流石に質量差もあって今は体勢を維持するのに集中しているようだが、このままでは自由な右手で反撃を仕掛けているのが目に見えている。

エドワードは咄嗟に機体を操作し、”リグレッション”を蹴り飛ばして距離を取った。

 

「気を付けろレナ、パワーも結構なもんだぞ!」

 

<MAの方も、機動性は中々のものよ。手強いわね……>

 

レナの方も、”リグレッション”から分離した”ファトゥム-0”の対処に手を焼いていた。

と言うのも彼女の機体”エールランチャーダガー”の主兵装は2門のビームキャノンだ。

連射性能に優れるタイプだが、如何せん固定兵装だけあって撃ちたい方向に正面を向かねば撃つことは出来ない。

砲撃戦仕様の装備で機動性に優れるMAを捉えるのは難しく、エドワードの近接戦に邪魔をさせないよう牽制をするしか出来なかったのだ。

 

「さて、どうすっかな……ん?」

 

どのように戦うべきか、エドワード達が頭を悩ませていると目の前である光景が映る。

分離して飛び回っていたMAが、再び”リグレッション”の背中に合体したのだ。

 

(どういうことだ……)

 

再びロングビームライフルでの攻撃を繰り出す”リグレッション”の攻撃を回避しながら、エドワード達は思考を巡らせる。

───何故、()()()()()()()()

たしかにロングビームライフルの威力は驚異的だが、自分達を相手に回すなら分離して2対2の状態を維持した方が良かった筈だ。

数的拮抗を捨ててまで、再度の合体をするだけの理由があるのか?

 

(まさか……)

 

<───エド、気付いているわね?>

 

「合体のことだろ!?」

 

<ええ。おそらくだけど、あれは合体()()()()()()()()()()()のではないかしら?>

 

「……そうか!」

 

レナの言わんとすることを、エドワードは理解した。おそらくは合体機能こそがあのMSの長所であり、短所でもあるのだ。

そう思わせるための演技を相手がしている可能性もあるが、エドワードは自らの直感に従ってその可能性を切り捨てた。

───あの敵の動きは素直過ぎる。反応は良いが、実戦経験は少ないと見た。

勝機を見いだした2人は改めて敵機に向き合った。

 

「さて、仕切り直しといこうじゃないか!」

 

<ええ!>

 

再び分離する”リグレッション”と”ファトゥム-0”。

迎え撃つ2機の”ダガー”からは、たしかな風格と自信を感じられた。

 

 

 

 

 

───どうしてこうなったのだろう。

本日何度目かの自問自答をしながら、ピティス・シェーミンは必死に襲い来る敵機からの攻撃を回避する。

現在、彼女は2機のMSと戦闘していた。

 

「見るからに強いっぽいぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」

 

だってそうだろう。赤い『ガンダム』───クライン派が秘密裏に連合軍に返還した”イージス”───と、重装甲(フルアーマー)の”ダガー”のコンビなんて「私達は強いです」と言っているようなものだ。

そして最大の問題は、そのコンビが本気で自分(ピティス)を墜としに来ているということ。

ピティスは必死に『ドラグーン』を操作して攻撃しているが、2機は多方向からの同時攻撃を完璧に捌いて反撃を繰り出す。

 

(連合軍怖い……初見の筈の『ドラグーン』を避けれるって、どんなパイロット!?)

 

 

 

 

 

<なるほど、隊長殿の慧眼には恐れ入る! こいつは俺達じゃなきゃ手を焼いていたところだな>

 

「オールレンジ攻撃……一応、模擬戦で戦った経験はありますけど、厄介ですねぇ……!」

 

目の前の敵機、”リベレーション”のパイロットが戦慄しているとは露知らず、モーガンとセシルは冷静に敵を分析していた。

連合軍にも“メビウス・ゼロ”というオールレンジ攻撃を行えるMAが存在するが、そっちが有線で操作されるのに対して此方は完全に無線だ。

本体に接続される有線式よりも更に多角的かつ自由に攻撃を行えるこの新兵器は、一般兵であれば対処は難しいだろう。

───だが、彼らは『マウス隊』だ。

 

「でも、使い方が雑ですぅ……ただ撃ってるだけじゃ、私達は墜とせませんよぉ!」

 

如何にオールレンジ攻撃と言えども、考え無しに撃つだけでは敵が増えただけでしかない。

そして『マウス隊』として戦ってきたセシル達には、自軍側が数で劣る状態での戦いなど慣れたもの。

初見こそ驚いたが、慣れてしまえばむしろやりやすい相手とさえ言えた。

 

(それにしても、本当に隊長さんの戦略眼はすごいですねぇ……)

 

ZAFTの新型3機に対して、誰がどう対処するかを決定したのは隊長であるユージだった。

軽く見ただけで敵機の特徴を見抜き、対応出来るパイロットとMSを向かわせる慧眼は毎回驚かされる。

今回も、『空間認識能力』を持つモーガンと、高い情報処理能力を持つセシルの2人を、ドンピシャで相性のいい”リベレーション”にぶつけてみせた。

 

(ちょっと当たりすぎて怖い時もありますけど、それに救われてる身としては何とも言えないんですよねぇ……)

 

そこまで考えて、セシルは思考を中断した。───今、考えるべきことはそうではない。

問題は、どうやって敵機を()()するかだ。

本来なら高性能の敵MSを生け捕りにするというのはかなりの難易度なのだが、ここまでの戦いで敵パイロットの腕前はある程度測れた。

ならば、後はどう仕掛けるかだ。

 

「モーガンさん、援護をお願い出来ますかぁ?」

 

<どうするつもりだ?>

 

「”イージス”のMA形態で、一気に詰めます」

 

<任せろ>

 

セシルの言わんとすることを理解し、“フルアーマー・ダガー”が前に出る。

両肩のガトリング砲『ザライスンレーゲン』の連射はPS装甲にはダメージを与えられないが、秒間50発×2の弾幕に晒された”リベレーション”が一瞬怯む。

その一瞬の隙が、致命的だった。

 

<───んぁっ!?>

 

”リベレーション”のパイロットは、何が起きたか分からなかっただろう。

ガトリングの衝撃から立ち直って反撃しようとしたら、いきなり大きな衝撃に襲われたのだから。

”リグレッション”は今、MA形態に変形した”イージス”のクローによって拘束されていた。

モーガンが陽動している隙にセシルは”イージス”を変形させて”リグレッション”側の視界から離脱、別方向から突撃したのだ。

”リグレッション”側からは、突如アラートが鳴ったと思ったら今の状態になっていた、としか形容出来ないだろう。

 

<なにが……ひっ!?>

 

「───投降してください、そうすれば命までは取りません!」

 

自分が置かれた状況を認識したのだろう。怯える女性の声を聞き、セシルは少し眉を顰めつつ投降を勧告した。

───人手不足は、何処の軍も共通なんでしょうか……。

女性の声は自分とそう変わらない年齢のものに感じられた。20代前半、いや、下手をすれば未満。

如何に『プラント』では15歳で成人扱いになるとはいえ、若者が『ガンダム』のパイロットに駆り出される状況が好ましい筈は無い。

戦場では余計な思考だ。セシルは頭を振って思考を切り替える。

 

「こちらは何時でもビームを撃つ用意があります。速やかに武装を解除して……」

 

<───もう、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!>

 

「え、ちょっと……!?」

 

突如として、”リベレーション”が暴れ始める。これまでの戦いの中で蓄積されたストレスと間近に迫った死への恐怖で、パニックを起こしたのだ。

拘束が完璧なものでは無かったこと、そして核動力MS特有の機体パワーに振り回されたことで”イージス”のクローは”リベレーション”を取り逃がしてしまった。

 

「くぅっ……!」

 

<大丈夫か、セシル!?>

 

「はい、なんとかぁ……」

 

セシルは急いで”イージス”を変形させて姿勢制御を行ない、”フルアーマー・ダガー”の近くに戻る。

モーガンが陽動を掛けてくれたというのに、せっかくのチャンスを不意にしてしまった。申し訳無さはあるが、それを詫びるのは後にしよう。

パニックになった敵が、何をするか分からないのだから。

 

<なんでこんなことになるのよぉぉぉぉぉぉぉ! 神様仏様、私が何かしましたかぁぁぁぁぁぁっ!?>

 

「……」

 

───すごく、やりづらい。モーガンは瞑目し、セシルは引きつったように苦笑いをした。

セシルは『マウス隊』に入隊させられたばかりの頃の自分を思い出していた。

元は親の臑を齧って月面基地の事務員をしていた筈が、何がどうやらという内にMS開発の最前線、そしてエースパイロットの1人として数えられる始末。

アイザックという恋人や頼れる仲間達に出会えたことは幸運だが、最初はヒンヒンと泣き言を言っていた自分を想起し、セシルは遠い目をする。

その時期のセシルのことを知っていることもあって、歴戦の軍人であるモーガンも、ただの泣き言と切って捨てることが出来ないでいた。

 

「あの……モーガンさん……どうしましょうかぁ……」

 

<どうって……戦うしかないだろ>

 

<撃たないでよぉぉぉぉぉぉ、来ないでよぉぉぉぉぉぉぉ! お父さん、お母さん、ポチオ君*3、助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!>

 

((───やりづらいっ!))

 

端から見れば、4機の『ドラグーン』を操る”リベレーション”と、それと対峙する2機のエース機の激闘に映っただろう。

しかし戦っている本人達には、どうしようもない微妙な雰囲気が漂っていた───。

 

 

 

 

 

連合宇宙軍第1艦隊旗艦”ペンドラゴン” 艦橋

 

「周辺の敵戦力、減少しています」

 

「艦隊の損害は如何ほどか?」

 

「MS隊の損耗はありますが、艦隊行動は十分に行えます」

 

よろしい。『第1艦隊』の司令官であるウィリアム・B・オルデンドルフは頷いた。

大気圏内から射出されたMS隊による奇襲という、前代未聞の事態に見舞われた『第1艦隊』は、混乱から立ち直りつつあった。

かつての『第1艦隊』はZAFTのMSと、Nジャマーによる電波攪乱の前に太刀打ちすることが出来ずに敗れ去った。

 

(あの時は「たかだか義勇軍相手になんという無様を!」と憤ったものだ)

 

───だが、今は違う。

MSを始めとする新兵器の存在を織り込んだ上で再編し、歴戦の提督であるオルデンドルフによって鍛え上げられた『第1艦隊』は、前よりも更に勇壮に生まれ変わった。

直弟子であるリーフ・W・ウォーレスも、彼女なりのやり方で戦っていた。

 

「……」

 

無言で、しかし恐るべき速度で艦長席に備え付けられたコンソールやキーボードを操作するリーフ。

現在、彼女の脳内は膨大な情報で埋め尽くされていた。

 

(11から13番の仰角を30°から60°に推移、18番は45°へ……命中(ヒット)。3から8番はランダム制御を維持。直援MS隊(ラウンズ)は一度帰還させて推進材と弾薬の補給を……)

 

彼女の視界外で、1機の”ゲイツ”が対空機銃の直撃を受けて爆散する。

それを為したのは、リーフだった。

 

現在、彼女は”ペンドラゴン”の()()()()()()()()射角を制御していた。

高い『空間認識能力』を持つ彼女は、”ペンドラゴン”周辺に存在する全てを立体的に認識することが出来る。

加えてティーンエイジャーらしからぬ高度な情報処理能力も有する彼女ならば、複数の対空機銃を制御することも可能だった。

彼女に認識された敵機は、本来オートで弾幕を作り出す筈の対空機銃によって作為的に追い立てられ、気付かぬ内にリーフの作り上げたキルゾーンに囚われる。

踏み入った者の命を刈り取る常識外の能力もあって、未だに”ペンドラゴン”に傷を付けられた者はいない。

 

「───オルデンドルフ師、障害は排除されました。残存する敵機も、引き上げていくようです」

 

「よろしい。───では、提督として言うべきことを言うとするかな」

 

状況は整った。

クロエ・スプレイグには感謝しなければならない。かつての愛弟子として、そして今は敵軍の司令官としてその成長を見せてくれたことを。

そして、新たなる弟子のリーフの()として立ちはだかってくれたことを。

今から実行する作戦は、オルデンドルフではなくリーフが発案したものだった。

 

『……正気か、と問う私が老いたということなのだろうな』

 

『確実性があるかと問われれば、頷けません。ですが、通ればこの戦争の勝利は確実なものとなります』

 

かつてこの作戦について聞かされた時のやり取りを思い返す。

自ら立案した作戦の確実性を無いと断じつつも、リーフの眼には自信と闘志が満ちていた。

老兵は死なず、ただ去るのみ。

───だが、そうする前に(みらい)を目指す若者の背を支えることくらいはしてみせねばなるまい。

責任を担うべき大人として、オルデンドルフは高らかに宣言した。

 

「全艦に通達、これよりプランLを発動───敵艦隊を、殲滅する!」

*1
「ギレンの野望 アクシズの脅威V」準拠

*2
この世界では対艦刀にシールドと同じ耐ビームコーティングが施されており、つばぜり合いが出来るものとする

*3
ピティスの実家で飼われている柴犬




艦隊戦の描写難しい……。
今更ですが作者はミリタリーとか全然知らないなんちゃって野郎なので、おかしな所があっても生暖かい眼で見守るか、個人メッセージでこっそり教えるくらいに容赦していただけると幸いです。

ちなみにマウス隊の中でカシンが登場してませんが、砲撃戦特化の”バスター”に乗っている彼女では核動力MSの相手は難しいと判断したユージの采配で艦隊の防御側に回されています。

感想、心よりお待ちしております。
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