機動戦士ガンダムSEED パトリックの野望   作:UMA大佐

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前回のあらすじ
welcome to ようこそ!『バクゥパーク』!
今日もどっかんぼっかん大暴れ!(連合が)

さてさて、前回は完成した"デュエル"の処遇について、たくさんの感想が送られてきましたね!
ハルバートン提督は、どちらを選んだのでしょうか?


第16話「『ガンダム』、その証明」前編

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連合軍宇宙拠点「セフィロト」 小会議室

 

「……」

 

その部屋の中は、静まり返っていた。この場所には現在、4人の男女がいる。普段の彼らを知っている者からすれば不自然極まりないことに、静かに椅子に座っている。

彼らは、待っているのだ。自らに審判が下される時を。

そして、時は来た。部屋のドアが開き、彼らは現れた。

ユージ・ムラマツとマヤ・ノズウェル。

自分達の上司である彼らが、審判を下すのだ。自分達が作り出した『ある機体』に対しての。

 

「……私は、技術畑の出身ではない」

 

ユージが話始める。その表情から読み取れる情報は、今のところ皆無だ。

 

「私はただの管理職であり、技術的なことに対しては素人同然だ。君達の方がずっと、そういったことには詳しいんだろう。だから、私は君達を裁くようなことはしない」

 

ユージは一拍置いて、続きを話始める。

 

「ならば君達になにかを言う資格があるのは、君達が作り出した機体に乗った者だけなんだと思う。というわけで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3機作られた"ベアーテスター"に乗って、唯一生還したパイロットからの報告を読み上げていこうと思う」

 

審判がどうとか言ったが、ただの反省会だった。ここに集まっているのは"マウス隊"屈指のイカれ野郎共、通称"変態四人衆"とその上司であるユージ達だった。

彼らが今行おうとしているのは、水中戦闘を目的とした試作MS、"ベアーテスター"の最終評価である。

三つの心が一つになったりするようなロボットの第三形態をモチーフに作られた機体は、果たしてどのような成果を出したのか?

 

「……『水中での活動に問題はない。武装も問題なく扱えた。カタログスペックは発揮出来ている』」

 

変態達は目を輝かせるが、ユージは『だが』と続ける。

 

「『二度と乗りたくない』……だそうだ」

 

「「「「何故だっ!?」」」」

 

「明白でしょうが、このバカ共……!」

 

マヤが怒りをあらわにするが、それを止めようとする者はいなかった。ユージは重ねて、パイロットからの報告を読み上げる。

 

「詳細が載せられている、読み上げるぞ。『味方は”グーン”にあっさりと背中を取られて撃破された。地上で”ジン”に戦車隊がやられている光景が、水中で再現されたような感覚を覚えた。難しいことを言っているのかもしれないが、せめて人型だったらもう少し楽だったと思う』……何か言い訳はあるか?」

 

それに答えたのは、”大きさ=破壊力系変態”。何か釈然としていなさそうな彼の言う分には、

 

「どいせ動けぬ故よって火力ぱうわーを増し増し、なるほどミサオル積まねばならばタンクにするしか無いと思った」

 

翻訳すると、『どうせ動けぬならば、その分火力を増した方が良い。ならばミサイルなどの武器を多く積載できるタンク型の方が効率がいい』ということだろう。

この男は、後の時代の連合軍がやらかしたミスをしたというわけだ。

ここで言う『ミス』とは、"ザムザザー"や"デストロイ"などのMAの存在だ。いずれの機体も、MSに懐に入られて接近戦で仕留められている。悪い意味で時代を先取りしてしまっている。

 

「なぜ少しでもそこで、『”メビウス”や戦車隊が蹂躙された理由』について考えられなかったのよ!?いくら火力と装甲があっても、それ単体では”グーン”以下の機動性しか無いなら、懐に入られて結局過去の焼き直しじゃない!」

 

「俺は謙虚だkら、自分んのギルティは認めざるを得ない」

 

言語機能に障害をきたしているような話し方で自分の非を認める男。他のメンバーもどこか申し訳なさそうにしている。流石に多少は自分達が暴走していたという自覚があるようだ。

そんなにゲッ○ーを作りたかったのか……。ユージはそう思いながら、続けて話す。

 

「ところで『メインウェポンであるはずの肩部大型魚雷が、想定していたよりも微妙な威力・性能だった』ともあるが、何か心当たりはあるか?」

 

「何?きちんとMS一機は確実に破壊できる性能だったはずですが……」

 

ユージから端末を借り受けて、記録映像を閲覧する”ごり押し系変態”。火力に関しては一家言持つ彼にしては本当に珍しく、全くの予想外なことだったようだ。

 

「ふむ……ん?何か、弾速が遅いような……?」

 

「あ、それでしたら私がいじってますよ」

 

手を挙げたのは、”ドリル系変態”。小柄な彼女は、自分が”ベアーテスター”のメインウェポンへ細工したと宣言した。

 

「やっぱりゲッ○ーミサイルといえば、地上・水中問わず発射出来る万能性だと思うんですよねー。だから、地上でも使えるようにミサイルに積む推進材の配率をいじっちゃいました」

 

ギルティ。彼女を除くその場の全員が、そう判断した。

 

「下手人を引っ捕らえろぉ!」

 

「「「イエッサー!」」」

 

ユージのかけ声に応じて、他の変態が”ドリル系”を拘束する。

 

「君はアホですか!それは将来的な構想にしようとは言っていたが、今試行するべきではないでしょう!」

 

「妥協したものに何の価値があるんですか!私はやりますよ!ドンドンやりますよ!」

 

「黄金の鉄のブロックのナイトでもかばえない!反省すろ!」

 

「弾速が無いなら、威力も低下するわな!納得だよ馬鹿野郎!勝手に俺の作った武器をいじるな!」

 

「ちょっと!離してください、セクハラです!てか、同志でしょう!?少しはかばうそぶりを見せても良いんじゃないですか!?」

 

「「「我らの絆は、親友以上で他人未満!自分に益がないなら切り捨てるのみ!」」」

 

「あんた達は最低です!」

 

「……マヤ君。今度休暇が取れたら、飲みに行かないか?良い場所を知っているんだ。大声で愚痴を漏らしても問題のない店でね」

 

「是非とも、同道させて欲しいものですね。この後の始末書を済ませてから、ですが」

 

”ドリル系”をしばらく反省房に入れておくことを決定した辺りで、基地内にアナウンスが響く。

 

『ユージ・ムラマツ中佐、デュエイン・ハルバートン少将からの通信が届いています。至急、通信室に向かってください』

 

それを聞いたユージだが、呼び出された理由にまるで覚えがない。

”第08機械化試験部隊”としての任務は(先の一件を除いて)順調だし、個人的にも問題を起こした訳でもない。

 

「私はこれから通信室に向かうが、そこのアホの始末はしっかりするように。いいな?」

 

「私が見ておきます。やはりこのアホ共から目を離しているのは危険だと、わかりましたから」

 

「頼む」

 

そう言ってユージは部屋から出て、通信室へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ところで唯一生還したパイロットとは、いったい何者なのです?僚機を全滅させられていながら、“グーン”を2機も撃破したのでしょう?」

 

「そういえばそうね。報告書の内容にばかり気を取られていたから、名前を覚えていなかったわ。えーっと、何々……『ジェーン・ヒューストン』というらしいわ。珍しいことに女性パイロットね」

 

「なるほd、アンダースタンした」

 

 

 

 

 

 

 

12/2

プトレマイオス基地 MS格納庫

 

「これが、『G兵器』……全身灰色ですけども、これがフェイズシフト装甲なんですか?」

 

「そうだ。今はディアクティブモードだが、起動すれば設定された電力量に応じた色に変わる。機体名は”デュエル”。強固な装甲と機動力、そしてビーム兵器を標準携行することの出来る、高性能試作機だ。我々に下された任務は、この機体の稼働テストだ。結果如何によっては、そのまま実戦投入することすらあり得る」

 

格納庫内には、ユージや”マウス隊”パイロットの宇宙残留組、そしてマヤがいた。変態共は”セフィロト”で留守番を言い渡されている。変態共にうかつに”デュエル”に触らせてはいけない、そう考えたユージの采配だ。

先日の通信で、ユージはハルバートンからこの任務を行うように言い渡された。

なんでもヘリオポリス側からの上申で、「『G兵器』の雛形となるこの機体だけは、なんとしても稼働データが欲しい。テストパイロットを派遣するか、そちらで試験して、データだけでも送ってはくれないか」と言われたらしく、ヘリオポリスで実験することによる秘匿性の消失を嫌ったハルバートンは、月基地への搬入とその付近でのテストを選択したらしい。地球を挟んだ反対側の方向に位置するヘリオポリスからよく無事に輸送できたものだと思ったが、詳細を知らされてユージは納得した。なるほど、それなら成功するだろう。

そしてその稼働テストを担当するのが、今回の”マウス隊”の任務だ。

ユージの目に、”デュエル”のステータスが映し出される。流石、『ガンダム』といったところか。その数値はそれまで見たどの機体よりも上だ。

 

デュエルガンダム

移動:7

索敵:C

限界:170%

耐久:300

運動:32

シールド装備

PS装甲

 

武装

ビームライフル:130 命中 70

ゲイボルク:160 命中 55 間接攻撃可能(ビームライフルと選択式)

バルカン:30 命中 50

ビームサーベル:150 命中 75

武装変更可能

 

 

「誰が操縦するんですぅ?」

 

「一応、交代で君たち全員に操縦してもらうことになる。最初はアイク、君からだ」

 

「僕からですか?」

 

「ああ。どうせ全員一度は乗るんだ、面倒だから名前順にした。二番目にカシン、最後にセシルだ」

 

「わかりました。いつからテストするんですか?」

 

「1時間後だ。基本操縦は”テスター”とそこまで変わらないから、マニュアルには軽く目を通すだけでも十分だと判断した」

 

「うえ、そんなすぐにやるんですかぁ」

 

「それだけ、”デュエル”は期待されているってことさ」

 

そして1時間後。

ハンガーにたたずんでいた”デュエル”の鉄灰色の装甲に、色が現れる。白色を基調として、肩や胸部が青く染まる。青と白はPS装甲の中でも出力が高めの色であり、これは”デュエル”が白兵戦を基本に運用されるからだという。

足を踏み出したその機体はスムーズに装備を手にして、カタパルトに足裏を接続する。

 

「”デュエル”は、アイザック・ヒューイで行きます!」

 

射出される”デュエル”は、しばらく宇宙空間を慣性のままに進んだ後に、急停止する。

アイザックは戦慄した。今までの機体とは、比べものにならないレスポンスを実感する。以前に試乗した”ジャガーテスター”以上だ。

 

「アイク、まずはいつもやっているように動かしてみてくれ」

 

「は、はい。基本動作を試してみます」

 

ビームライフルを構えた右腕を、前に突き出してみる。

手足の関節部を曲げてみる。

頭部を動かしてみる。

レスポンスの良さもそうだが、可動域も広い。今までは文字通り人型の機械を動かしているようなものだが、今の気分を例えるなら、自分がそのまま巨人になったかのような。そんな感覚を覚えるアイザック。

一通りの動作を終えた後は、宇宙空間での活動能力、つまりAMBAC機動を実行する。

”テスター”とは比べものにならない機動力だ。”ジャガー”と同等以上の機動力を感じる。

AMBACとは、平たく言えばMSが手足を動かすことによって発生する反作用姿勢制御を行うというものだ。スラスターで加速し、AMBACを行うことでMAよりも機敏に宇宙空間を動き回ることが出来る。それが宇宙空間でMSを最強たらしめたのだ。

”デュエル”はそれを、今までのどのMSよりも機敏に実行してみせる。”ジン”は元々、作業用パワーローダーを前身としたMSだ。それ故にどこか機械臭さを感じさせる動きだったが、『G兵器』はそこから更に発展させて、より人に近しい動きが出来るように設計されている。連合脅威のテクノロジーといったところか。

 

「すごい、すごいですよこのMSは!これなら”ジン”がいくら来ても簡単に撃破できる!」

 

「それは何よりだが、一度バッテリー残量を確認してもらえるか?」

 

「バッテリー…?あれ、結構減ってる?」

 

”テスター”系列の機体を使っている時よりも、心なしかエネルギー残量の減りが早い気がする。もっとも目で見る限りには、誤差と捉えられてもおかしくない量ではあったが。

 

「やはりな。アイク、”デュエル”は確かに現時点では最強のMSだ。しかし、無敵ではない。実弾に対して最強の防御力を誇るフェイズシフト装甲だが、起動している間は何もしなくてもエネルギーを消耗するという弱点を抱えている。”デュエル”に備わっているビーム兵器も強力だが、使用するためのエネルギーは”デュエル”本体のバッテリーから給電される。使えば使うほどに稼働時間は減っていくんだ。”テスター”タイプよりもずっと気を遣って戦う必要があるということだな」

 

ユージの言葉に、熱狂していた心が平静を取り戻していく。

強力な武器には代償が付きものということか。もしこの機体が実戦に投入されることがあれば、今まで以上に慎重に動かす必要があるというわけか。

 

「了解しました、隊長。次は何をすればいいですか?」

 

「ああ、少しその場で待機していろ……来たか」

 

”デュエル”のレーダーが反応する。こちらに接近するのは、どうやらMSのようだ。

 

「MS?あれは……”ジャガーテスター”?」

 

”デュエル”の前方に現れたのは、見慣れた機体。

純白の装甲に、アサルトライフル。背中にはグレネードランチャーを装備しており、左腕にはシールドを装備している。おそらく、その裏にはアーマーシュナイダーが懸架されていることだろう。

 

「これから、目の前の『彼』と模擬戦闘を行ってもらう。ビーム兵器は低出力の訓練モードに設定しろ。実弾はすでに模擬弾を装弾してある。『彼』の機体にも同様の処理を施してあるから、万が一の心配もない」

 

「決着はどう付けるんですか?」

 

「事前に、それぞれの武装と装甲のデータが登録されている。それを元に機体状況をシミュレート、撃墜判定が下された方の負けだ」

 

それを聞いて、目の前の『彼』が操る”ジャガーテスター”が、いつでも戦闘を行えるように体勢を変える。

 

「誰が乗っているかは、教えてくれないんですか?」

 

「ああ。終わってからのお楽しみというところだな」

 

それを聞いてから、アイザックも戦闘態勢を整える。

よくわからないが、ユージの言葉からは何か含みがあるような気がした。つまり目の前の機体には、“ジャガーテスター”であっても自分の操る”デュエル”を撃破しかねないようなパイロットが乗っているということだ。

おそらく、この模擬戦の結果次第で”デュエル”が実戦に耐えうるかどうかを決めるのだろう。操縦桿を握る手に力が入る。

 

「お手柔らかにお願いします」

 

『……』

 

無言が帰ってくるが、掛かってこい、と言われたような気がした。

 

「それでは、模擬戦を開始する。終了条件はどちらかの撃墜判定が下るか、制限時間を超過した場合とする。……始めっ!」




はい、ということでハルバートンが選択したのは『デュエル輸送』ルートでした!
資金3000は、輸送を成功させた理由と密接に関わっています。どこにそんなに使ったんでしょうね?

ちなみに、「テストパイロット派遣」ルートを選択した場合は。
イベントで襲撃してくるクルーゼ隊をマウス隊が撃退し、イベント後にアークエンジェルとガンダム5機がヘリオポリスに配備され、有能艦長マリューさんも正式に士官として登録されます。
しかし、ラスティ・マッケンジーのような原作キャラが死亡しなかったり、キラ達の参戦フラグが消滅します。ムウさんも第7艦隊所属なので、ハルバートン編である本作では参戦しません。また、原作でのアークエンジェル隊によるエース抹殺イベントが消滅します。
原作「ギレンの野望」のように徴兵イベントでも、キラ達は参戦しません。だって、彼らはオーブ国民ですから。原作みたいにやむなく入隊とかでもなければ、絶対に参戦しません。
その他にも様々なイベントが消滅するので、言うなれば早期攻略向けのルートといったところですね。”マウス隊”パイロットもいるので攻略に支障が出るほどではないですけど、それでもキラやムウは強力なキャラクターです。ミゲルを初めとした強キャラが普通に最終決戦にも参加するので、長期的に見れば「輸送」ルートを選んだ方が良いですね。
ちなみに、これらのプラン提案後に一定ターン放置すると、原作通りにガンダムが4機奪われます。「輸送」ルートでもキラ達の参戦フラグは残るので、原作を再現したい場合以外はおとなしくどちらか選んでおきましょう。




それにしても、いきなり現れた”ジャガーテスター”のパイロット……いったい何者なんだ。
とりあえずヒントに、『条件が同じなら、確実に現時点のアイクを撃破出来る人』とだけ言っておきます。

誤字・記述ミス指摘は随時受け付けております。

追記
ユニットステータス集に書いていた一部機体のデータを修正しました。明らかに弱すぎたり強すぎたりといった機体に修正を加えています。

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