デュエル「ナイフを刺される事は無さそう。安心安心」
変態共『俺達やっぱり親友だ!』
12/10
『セフィロト』 通路
「”テスター”の強化?これ以上は無理と、君が言っていたじゃないか?」
”デュエル”が”マウス隊”に配備されて数日、ユージがいつも通りに書類を捌いて、休憩に飲み物を購入しようと通路を歩いていた時の話だった。
”マウス隊”の研究職員の中では最も階級が上の立ち位置にあり、ユージもよく技術面での質問をするマヤ・ノズウェル技術大尉から、そんなことを聞かせられたのは。
「確かに、これ以上”テスター”タイプの基本性能を上げるのは難しいです。ですが、さすがに”ダガー”が完成・配備完了するまでの期間、何の手も打たないというのは悪手だと思いませんか?」
「まあ、それはたしかに……」
マヤの言うとおり、”ダガー”の完成時期はともかくとしても、各地への配備が完了するまではどう見積もっても3月の中旬くらいになるだろうと言われている。
それでも大分早い方なのではないかとも思うが、実は既に各重要拠点では、ある程度の”ダガー”の部品生産は開始されていた。
”ダガー”は、現在ヘリオポリスで造られている”ストライク”の制式量産型MSとして位置づけられている。その”ストライク”も完成していないのに造ってもよいのかという話だが、ここで『G兵器』の特徴とも言える『フレーム共有』が生きてくる。
”ストライク”と基本フレームを共有する”デュエル”からデータが取得出来たのだから、腕部や脚部など今のうちから造れるパーツは造っておこう、という魂胆だ。そうすれば、”ストライク”が完成してから行うべきは、肝心の『ストライカーシステム』を搭載した胴体部を造ること、それだけに絞れる。
だが、それまでのおよそ3ヶ月をZAFTがおとなしくしていてくれる保証はない。むしろ、こちらがMSを配備したことに危機感を感じて新戦力を用意していると考える方が自然なのだ。
だが、”テスター”の性能は既に限界を迎えている。ユージもそのことに悩んでおり、いっそのこと”ストライクダガー”の開発と量産を上申しようかと思っていたところに、マヤが声を掛けてきたのだ。
「だが、どうやって解決するつもりだ?何か考えがあるから言ってきたんだろう?」
「はい。”テスター”用に武装を新造することで、戦線の維持を図りたいと思います」
「武装?」
こちらを見てください、と言ってマヤはユージにタブレットを手渡してくる。そこには、これまで開発された”テスター”用の武装データが記されていた。
「これまで私達は、アサルトライフル、バズーカ、ハンドミサイルランチャーなどを開発してきました。焼夷弾や拡散弾頭など、バズーカ用に弾を新造したこともあります。ですが、どれも実弾武装というジャンルに限られてしまっています」
「それはそうだろう、”テスター”と搭載バッテリーは、ビーム兵器を扱えるようには造られていない。まさかビーム兵器を造るわけにもいかないだろう?」
「その、ビーム兵器を造ります」
何を言っているのだ、彼女は?今まさに、ビームは使えないと言ったばかりだというのに。まさか、彼女も変態博士化が進んでしまったのかと危惧する。
ユージの反応に苦笑しながら、タブレットを操作する。
「何も、”デュエル”のようにビームライフルを持たせようというわけではありません。この結論に至ったのには、ZAFTと連合、両方にサンプルが存在していたからです」
「…!『バルルス』と”イーグル”か」
「ご名答です。
ZAFTが開発したMS用の対要塞用装備、『M69バルルス改 特火重粒子砲』。
そして、”イーグル”に搭載された胸部ビーム砲。どちらも、武装自体にエネルギーカートリッジが取り付けられています。この仕組みを応用して、外付けバッテリー式のビーム兵器を開発したいと思います」
そう、実はMSが扱えるビーム兵器自体は、『G』以前から存在している。
ZAFTの『バルルス』は銃尻に、”イーグルテスター”のビーム砲は増加装甲内部に、それぞれ機体外部にエネルギー供給器官備えることで運用を可能としていた。ただし外付けという措置を取っていることで、カートリッジ分のサイズ増加を避けられず、結果として著しく機体の汎用性の欠落につながることから、あまり使用されることはない。”イーグルテスター”の場合はそれほどサイズが大きくはないが、銃身が短いことや緊急用ということでバッテリーのサイズを小さくしたことで、有効射程の低下を招いている。
『G』でもない”テスター”に、どのようにビーム兵器を搭載するというのか?
「目標としては、『バルルス』の小型化といったところでしょうか。長大な割に威力もそこそこといった武器ですが、それでもダウンサイジングすれば使えるものにはなると思います」
「うん…まあ、延命処置には十分か?」
「言い方はともかく、“デュエル”のライフルと鹵獲した『バルルス』でサンプルは十分取れてますからね。あとは、ユージ隊長の決断だけですよ」
「開発費概算は…よし、これなら許可も降りるだろう。許可が降り次第、通達する」
「わかりました、それまでは”デュエル”の最適化作業を継続します。それでは」
「ああ。バカ共から目を離すなよ?」
「言われなくても離しませんよ」
変態4博士への愚痴り合いで何度か一緒に飲みに行ったりしていたら、距離が縮まってきたような気がする。気さくに話しかけてくるようになった、というべきか。
ジョンが右腕なら、彼女は左腕のような存在と言えるだろうか?そんなことを考えながらユージは、彼女が通路の曲がり道に消えていくのを見送った。
「いつの間にか、名前で呼ばれるようになっていたな……」
12/16
『セフィロト』 MS研究開発室
「「「「自信作です」」」」
「前置きを気にしてはもらえないかな!?」
いきなり「緊急事態です!」とウィルソンに呼び出されて、慌てて駆けつけたら
「ふっふっふ、あれからおよそ1週間…反省房から開放された我々は、ついに設計を完成させたのです」
「今度は皆でちゃんと報連相したから、変な機構も積んでませんよ!」
「その言い草…まさか自信作というのは」
「その、まさかだ!」
「これをmろ、とお黄金ではないごく普通の板を渡す」
ブロントさんの差し出してくるタブレットに映し出されているのは、一つのMS設計図。やはりと言うべきか、タイトルには「水中戦型MS案第2稿」とある。
「これによって期待が泳げるようになり、地上からの『はやくきて~はやくきて~』にぃカカカッと駆けつけるナイトがこうして生まれた」
「あー、『ご要望どおり、水中で高速移動できるMSが出来た、これで海軍への救援を果たせる』ということですね、これは」
「それはいいんだが…お前たち、昨日の今日でもう忘れたのか?」
「ああ、”ベアー”の一件で水中戦機に関しての信用がなくなっているということだろう?もちろん、忘れてなどいない。ただ、これは意地だ。俺たちが同じ轍を踏まないという、証明のつもりで作ったんだ。今回は、ハルバートン提督に報告することを嘆願したりはしない。すべて、隊長に任せるよ。とりあえず、見てくれ」
そこまで言われては、とユージはタブレットに目を落とす。
”ベアーテスター”の中で一番問題視されていたのは、なんといっても『劣悪な機動性』だ。それがどう変化したのかが、今回の注目点だろう。
「”デュエル”から得られた機体データを元に、水中戦用に機体強度を高めたフレームを設計しました。なので名づけるなら、”ポセイドンデュエル”といった感じになりますかね。手足の装甲は普通にチタン・セラミック複合材ですけど、胴体部にだけはPS装甲を用いています。胴体部はコクピットという大きな空間が存在するために水圧による負荷が他の箇所よりもかかりやすく、防御力を高めるためにもPS装甲を採用いたしました」
「PS装甲のカットにより、その瞬間”ポセイドン”は哀れにもペシャンコになってしむので深い悲しみに包まれた。全身をPSで固めるよりは動けるんですわ、おっ?」
「『PS装甲が切れたら途端に水圧でつぶされてしまう欠点だけは治せなかったのが悔しい。だが、全身PS装甲の機体よりも消費電力は少ないから少しは活動時間にも猶予を作れた』ってブロントさんは言っているね」
「なるほど、PS装甲すごいですね。それと、ブロントさんの言葉は一応私にもわかるから解説は挟まなくてもいいぞ」
「そうですか?」
「伊達に君たちの上司はやっていない。それはいいとして、問題は機動性だよ。さすがに、”グーン”以上のものはあるんだろうな?」
「もちろんです!『G』に搭載された超伝導電磁推進システムは、本来空気を吸排出して推力を発生させるシステムです。しかし、空気の代わりに水を吸排出することも可能なんです。元から
、水中でも活動自体は可能だったということから、我々は水中戦用に装甲の形状を調整するのと、スケイルエンジンを各所に取り付けるだけで済みました。いやー、『G』の設計者さん、やりますねぇ!おかげで、大した苦労もなく高性能高バランスの機体を設計できました」
一番の問題点が改善できたことを聞いて、ほっと息をつくユージ。変態どもも、さすがにゲッ○ーの再現には限界があるということに気が付いたようだ。
「これなら、十分使えるかもな。武装を見せてくれ」
「ああ。まずはハンドトーピードランチャー。これは”ベアー”の時点で有用な武器だと証明されているから、そのまま継続採用しました。先に説明しておきますけど、ストロングミサイル枠も別途設計してます」
「…実用性は?」
ウィルソンの、『どうせ突っ込まれるだろうから言っとくか』といった態度に若干イラッとしながらも、正直に説明しようという気概を買って大人しく聞くことにする。
「使い分けですね。基本はハンドランチャー、対潜水艦用の大型ミサイルに、このストロングミサイルを使うといった感じです。これらの武器は連合軍MSのウェポンコネクター規格に合わせて作っているので、使おうと思えば他の機体でも使えますよ」
「アサルトライフルとバズーカみたいな関係か、それなら特に違和感もないかな」
「それよりも、近接装備ですよ近接装備!」
「……」
やはりか。ここまできて、暴走するのか。
若干の呆れを感じていると、アキラが補足するように説明してくる。
「違う、違うんだ!決して趣味に走ったわけではないんだ。ただ、水中戦は他のどの戦場よりも特異な環境で、ちょっとだけもめるような形になってしまっただけなんだ!」
「どういうことだ、アキラ?」
「隊長、想像してみろ。水中で斧で切りかかって、それが”グーン”に有効だと思うか?」
そういわれて、考えてみる。
”陸戦型テスター”等に標準装備されてる物のような形の、斧。それを水中で。
一瞬の思考の後に、こう答える。
「無しだな。水中では勢いが殺されてしまって、斧のように重量を重視する武器など全く怖くない」
「だろう?そこで、我々はこう考えた。『勢いがつかなくても威力を出せる武器はないか?』と。そして、三つの武器形状が候補に挙がったんだ」
「べひんもすとりヴぃあさんは別物。さしものぐらっとんソードにも最強だが無敵ではないんだが?」
今回の件では大きさはあまりアドバンテージにはならない、水中には水中で適した武器がある、ということだろう。ブロームの言葉からは、『自分はあまり携われなかった』という深い悲しみが感じられる。
「まず、俺はMS用チェーンソーを考案した。チェーンソーなら、勢いはいらない。相手に押し付ける機体パワーだけだからな、必要なのは」
「私は、堅実にアーマーシュナイダーを押します。正直、水中戦では近接戦を意識する必要が薄いのではないかと思うんです。だったら、万一敵に密着された時を考えて取り回しのいいナイフを付けておいたほうがいいと思いまして」
「私は槍、いや、この場合は
アキラ、ウィルソン、アリアの順番でそれぞれの構想を語ってくる。彼らにしては珍しいこともあるものだ。
「自分たちでは海で実践できない以上、結論を出すことができません。隊長のお考えを聞かせてください」
最後にウィルソンがそう締めて、4人ともこちらの返事を聞く体制を取る。
さてさて、どうしたものか。ユージ的には、なんとかこの機体の開発プランを通してほしいものだと思う。”デュエル”を参考にしただけあって、そのカタログスペックは良好だ。これが作られれば、後の水中戦用MS開発の助けにもなるだろう。しかし、わかりきったことではあるが連合地上部隊からの信用は低下している。彼らから質問された、『水中での最適な近接武装』の答えも、門外漢の自分では答えられそうにない。
さて、どうしたものか。そこまで考えて、ユージの脳裏に閃くものがあった。あるじゃないか、我々への信用問題も、水中での実地試験も。
「…と、いうわけなんだ。協力してくれないか?」
<いきなり連絡してきたと思えば、やはりそういうことか。任せろ、水中戦用MSはどこの海軍でも欲されてるんだ。願ったり叶ったりだよ>
「すまない、こちらの尻拭いを任せるような形になってしまうな」
<なに、お前には以前”スカイグラスパー”のデータを都合してもらったからな。これくらい、お安い御用さ。”ポセイドンデュエル”の監修と実地テスト、こちらで引き受けるよ。こちらは”スカイグラスパー”の功績で信用があるからな、ここでテストしてからなら、と受け入れてもらえるかもしれん。考えたな>
「ありがとう、助かる」
<気にするな、仲間だろ?>
「はっはっは、いざというところで『俺とお前は仲間じゃなかったのか!?』とかいうことが無いといいんだが」
<どういうシチュエーションだそれは>
12/29
”ヴァスコ・ダ・ガマ”艦橋
「よし、試験飛行を開始しろ」
<了解>
ユージの目の前、”ヴァスコ・ダ・ガマ”の艦橋の外。そこには、3機のMSが存在していた。その内2機は、”デュエル”と”EWACテスター”だ。しかし3機目のMSは、今まで彼らが見たことの無いMSだった。
そのMSは緑色と茶色の装甲が各所に配置されており、”デュエル”のようにツインアイとV字アンテナを備えた頭部でありながら、”デュエル”よりも無骨さを感じさせる。
何よりも特徴的なのは、腰部から伸びたサブアームに懸架された二つの砲だろう。それぞれの砲の銃尻には、何かを接続するためのコネクターが備わっているのがわかる。
MSの名は、『GAT-X103 ”バスター”』。”デュエル”に次ぐ、『G』兵器第2号機が、先日この『セフィロト』に届けられたのだ。以前と同じように『サーペントテール』による護衛によって届けられたこの機体だが、劾との模擬戦は行われる予定はない。
”バスター”は中・遠距離からの砲撃支援を目的として設計された機体であり、必要なのは武装やセンサーが正確に作動するかどうかの試験が主。そして、試験は障害物が多めの『セフィロト』で行うのがベストであり、『セフィロト』で最も練度の高い”マウス隊”に試験のお鉢が回ってくるのは、当然の帰結でもあった。テストパイロットは、メンバーの中で最も射撃が正確なカシンが担当している。
それにしても、本当に武装が多い機体だ。ユージは、表示されたステータスを見ながらそう思う。
バスターガンダム
移動:6
索敵:B
限界:170%
耐久:320
運動:25
PS装甲
武装
インパルス砲:200 命中 50 超間接攻撃可能
ビームライフル:130 命中 65
対装甲散弾砲:180 命中 50
ガンランチャー:100 命中 55
ミサイルポッド:60 命中 40
機動性は”デュエル”どころか”シグー”未満だが、それでも一般的なMSよりはずっと高い。なにより、多少機動性が低くてもまったく気にならない火力が、本機にはある。
近接武装が無いことだけが懸念だが、他の機体と連携すればほとんど気にならないだろう。この機体は、そもそも前線に突撃する機体ではないのだから。
既に”デュエル”が幾度かの実戦に極秘裏に投入され、高い能力を示している。よって、同じGATシリーズの”バスター”も、試験を終了次第に戦線に投入されることが決まっている。高い火力を活かして、前衛の大きな助けになってくれるだろう。
他の3機は、ここから約1ヶ月後にロールアウトが予定されている。
”ブリッツ”は『ミラージュコロイド・ステルス』。
”イージス”はMA形態への変形を可能とするフレーム。
”ストライク”は『ストライカーシステム』。
それぞれの売りとなっている機能の完成に時間が掛かっており、遅れて参戦することになっているのだ。
<戦闘機動に関しては、問題ありません。続いて、武装の試射を開始します>
「了解ですー。いやー、すごいですねー。あれみたいなのが、量産されるんでしょー?もう、連合勝ったんじゃないですかー?あの2機以外に、もう3機あるんですよねー?」
「うん?ああ、そうだな。あれらの機体が量産されれば、勝利は目前だな」
『ガンダム』が自分の指揮する部隊に2機も配備されたことに軽く感動していたユージは、アミカからの軽口に対して生返事で返してしまう。
だが、彼は知っている。このまま順調に、とはいかないことを。
原作では、情報屋『ケナフ・ルキー二』からの情報を入手したクルーゼ隊が、ヘリオポリスにガンダム奪取のために攻撃を仕掛けてくることになる。ユージも出来る限りの働きかけはしているのだが、如何せん中立国のコロニーである故に護衛をおおっぴらに配置できないこと、ユージが以前に進言してから行われた調査でもスパイが発覚しなかったことなどから、あまり大きく状況を変えられなかったこともあり、ユージは原作通り、ヘリオポリスが襲撃されるだろうと目している。
ユージは悩んだが、どうしようも無いなら仕方ないことだったんだ、自分も部隊を預かる身で自由に動けないのだから仕方ないと自分を納得させた。実際、これ以上ヘリオポリスに対して働きかけることは、彼には出来なかった。それが、彼の限界でもあったのだ。
(せめて、”ブリッツ”だけでもなんとかしてくれたらな……)
彼が最も懸念しているのは、”ブリッツ”の存在だった。
原作ではあれがZAFTに渡ったことで、ユーラシア連邦のアルテミス要塞は陥落した。原作ではそのまま“ブリッツ”が”アークエンジェル”追撃を続行したが、あれが『セフィロト』への奇襲攻撃に利用されたらと思うと、ユージは恐ろしくてたまらなかった。ありとあらゆるセンサーに引っかからないステルスシステムなど、脅威以外の何物にもなり得ない。
加えて、原作通りならZAFTは確実に『ガンマ線レーザー砲 ジェネシス』を建造している。その存在は終盤まで『ミラージュコロイド・ステルス』によって隠匿されており、連合に驚愕と大損害をもたらした。あれが存在する時点で、ZAFTは一発逆転が可能となる。
ZAFTでも『ミラージュコロイド・ステルス』は研究されているが実用性は低く、少しでも動けばバレてしまう程度の物でしかない。
しかし"ブリッツ"の能力は、ZAFTの拙い『ミラージュコロイド・ステルス』技術の完成度を高めてしまい、結果として完全なステルス環境下で、安全かつ確実にジェネシスの建造を行えるようになるだろう。少しでもジェネシスの発見率を高めるためにも、絶対渡してはならないのだ。
ユージは、『ガンダム』を持っていながら何も出来ない自分が歯がゆくてたまらなかった。
そんな葛藤を抱えている最中であっても、世界は知らん顔で回っていく。
1月に入ったころから、ZAFTが太平洋・北回帰線戦線を活発化させた。ZAFTの戦略的目標が、東アジア共和国の保有する『カオシュン宇宙港』の攻略であることを看破した連合軍は、急遽MS部隊を含む近隣エリアの戦力をカオシュンに集結させ、防衛線を構築した。
本来の歴史では陥落してしまった重要拠点だが、原作とは異なる箇所が3つ存在した。
一つ目は、MS”テスター”やその陸戦仕様機が存在していたこと。
二つ目に、”スカイグラスパー”部隊が存在していたこと。
最後に。
ユーラシアでの教導任務に一段落つき、東アジア共和国での教導任務に就いていた、『月下の狂犬』モーガン・シュバリエが、防衛任務に就いたこと。
これらの要素が、どう運命に作用するかは。
まだ誰にも、わからないのだった。
開発部より、新兵器の開発プランが提案されました。開発部からの報告をご覧になりますか?
『”テスター”用ビーム兵器の開発』資金 1000
性能限界を迎えている”テスター”だが、新規にビーム兵器を開発し、装備させる。これにより、MS戦術の幅を広げる事ができる。
『水中型MSの再開発』資金 3000
”ベアーテスター”における失敗点を改善し、新たに水中型MSを開発する。
高い性能を持つ”デュエル”を元に開発したことで、ZAFTの”グーン”を全面的に凌駕するMSとなることが予想される。
次回、「カオシュン攻防戦」になります。
たぶん長いから前後編、最悪中編も含めることになると思います。
誤字・記述ミス指摘は随時受け付けております。