機動戦士ガンダムSEED パトリックの野望   作:UMA大佐

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おら、ようやく開発パートやぞ!


第3話「何が出来るかな?」

C.E 7/28

 

あれから一週間が経ち、『第08機械化試験部隊』の隊員達は、それぞれの担当する業務に励んでいた。

研究職は試験に用いるMSの設計。

通信兵は自分達の移動拠点となるマルセイユ三世級輸送艦『コロンブス』の機材の調整と、後述のパイロット候補生達のデータ取り。

そしてその候補生達は、与えられた鹵獲ジンを用いてのMSに対する様々な習熟を。

皆、自分の与えられた職務を全うしている。そんな中、ユージは何をしていたのか?その仕事は多岐に渡るようで、実際の内容は一貫したものだった。

研究内容をまとめて、報告書を作りハルバートンに提出する、予算の使い道についてスタッフと協議、パイロット候補生達の状態チェック、etc.

つまり、彼の仕事は部隊全体の動きを把握し、仕事を円滑に進めるためのテコ入れを行い、それらを逐次報告することだ。

それは、紛れもなく、中間管理職さ。

そしてこれは、部隊結成から一週間が経過した時点での、ユージが実施した現場視察の様子を記したものである。

 

 

 

「ふむ、意外と早く出来上がるモノだな」

 

「はい、G計画のデータやジンを回してもらえたことが幸いしました。既に設計自体は完了して、後は作って組み上げるだけです」

 

研究チームリーダーのマヤ・ノズウェル中尉の言葉を聞きながら、ガラス越しに『それ』を見る。

それは、『腕』。そして『頭』だった。

試作MSの部品となるそれらは、今は多数のケーブルを繋がれたまま近くの研究員によって動作チェックが行われている。

腕部は装甲が付いておらずフレームがむき出しだが、時々指が動いていることから、それが動くのだということが見てとれる。

頭部はぱっと見動いているようには見えないが、あの中ではMSを動かすための機材やセンサーが多数積まれているのだという。

ユージは、プトレマイオス基地『第4開発実験室』にまず、視察に来ていた。普段はこの場所でMSの開発が行われており、今は実験スペースをガラス越しに覗ける通信室にいる。

 

「足は出来ていないようだが、上手くいきそうか?」

 

「MSの自重を支えかつ、関節を動かせるモーターの調達に手間取りまして。Gほどではありませんが、きちんとしたものが明日には手に入りますよ」

 

「それは朗報だな。この任務最大の敵は時間だからな、できるだけ早い方がいい」

 

「同感です。それと、こちらが平行して開発されている武装のデータです」

 

そう言ってマヤはタブレットを見せてくる。必要なことを効率よく伝えてくれる能力を見込んでチームリーダーに任命したのだが、功を奏したようだ。

 

「まず、75mm突撃機関銃。口径こそ『イーゲルシュテルン』の弾薬の規格を応用したのでジンの76mm重突撃機銃と同程度ですが、対MSを考慮して火薬量を増した改良型弾薬を採用しており、ジンのモノを上回る威力が期待されています。設計は傑作アサルトライフルのAK-47を参考に、整備性を高めたものとなっています」

 

タブレットに、銃器の設計データが表示される。ジンのものと違い、比較的なじみのあるデザインだ。

 

「ふむ、何かの資料で見た程度のにわかからの質問なのだが、AK-47は整備性が高い代わりに集弾率が低かったのではなかったかな?」

 

「確かにそうですが、あくまで参考にしただけであってそのまま流用などはしてません。少なくとも、3点バースト程度の連射なら問題は出ません」

 

「それはいい。次のも見せてくれ」

 

「はい、こちらをどうぞ」

 

今度はタブレットに、折り畳み式ナイフのようなものが表示される。

 

「対装甲コンバットナイフ、『アーマーシュナイダー』。超振動モーターによって刃身を高周波振動させることで切れ味を増し、物体を破壊する装備です。既に実用化され、一部のMSが運用している資料が見受けられたために採用しました」

 

「プログラマーも言っていたが、我が軍のOSの方向性は基本的に射撃戦がメインになると言うしな。あくまで近接戦は最終手段というわけだ」

 

「はい。それに取り回しもよいです。スカートアーマーにでも懸架させればいいでしょう」

 

原作でも、ストライクガンダムの腰部に格納されてそれなりの戦果を出している。

ユージはそのことを思い浮かべながら、『防御用装備』の欄に目を通す。

 

「最後に、MS用機動防盾か。性能は?」

 

「それにつきましては、むしろライフルのカウンターウェイトとして設計しました。一応MSと同じ装甲材を用いていますが、精々気休めがいいところでしょう」

 

「すまないな、なんとか対ビームコーティング技術資料を工面できればよかったのだが」

 

「所詮、実験機ですからね。実戦を想定していない以上、問題はありませんよ」

 

「そうか、なら良いが・・・・ん?」

 

ユージは、タブレットの画面の端に『近接装備案』というフォルダが表示されているのを発見する。

 

「ノズウェル中尉、これは?」

 

「えっ?・・・・あ"""っ」

 

マヤはタブレットを覗きこむと、あからさまに顔を強張らせた。

 

「見るにアーマーシュナイダー以外にも近接装備の構想があったようだが・・・・」

 

「こっ、これはバグです!そんなものありませんから!はいっ!(昨日消したはず・・・・まさか再インストールした?あのアホども!)」

 

ユージは彼女の慌てている様が気になり、質問を重ねてしまう。それがパンドラの箱だと気づかずに。

 

「・・・・いいんですか?」

 

「せっかく部下が考えてくれたモノなんだ。せめて案くらいは目を通したい」

 

そう言うとマヤは、何かを諦めた顔でタブレットにそのファイルの内容を映し出す。

 

「・・・・これは、いったい?」

 

「・・・・『MS用回転式破斬剣』、らしいです」

 

「私の目には、チェーンソーに見えるんだが」

 

「安心してください、私もです」

 

これを発案したやつは、B級ホラーの見すぎだ。間違いない。まさか、こんなのが他にもあるのか!?

 

「・・・・斬艦刀『善我尊掘刀』。40mサイズの実体剣、対艦刀で実現出来なかった『敵艦への有効打となりうる近接装備』を再設計したものとする・・・・」

 

「彼の目には、取り回しの『と』の字も映ってませんでしたよ・・・・」

 

遠い目をするマヤ。先ほどのチェーンソーが『ごり押し is ジャスティス』なら、こちらは『大きさ=破壊力』と言えるだろう。とりあえず、発案したやつは今度呼び出すことを決めたユージだった。というかネーミング。まさか自分と同じ転生者?ユージは訝しんだ。

 

「・・・・次。

おお、これは中々良さそうじゃないか。『対MS用実体斧ウコンバサラ』。シンプルだが悪くない」

 

「そう思いますよね。私も最初は、引っ掛かりそうだったんですよ・・・・」

 

何かを言いたげなマヤは、内容をよく見ろと促す。

 

「ん?・・・・なにかな、この各所に設置されたスラスターは」

 

「それだけじゃありません、高度な通信機器も取り付けてあるのが、わかりますね?なんでも、投げたらブーメランのように自動で戻ってくる機能をつけたいらしいです」

 

比較的まともそうな外面で誤魔化そうとするあたり、狡猾ですよねアハハ、と空笑いをする。

最後の一つを説明したら、壊れるんじゃないか彼女?

 

「・・・・これ、は」

 

「・・・・はい、ドリルです」

 

「・・・・正式名称は?」

 

「『スーパー・ドリル』」

 

「・・・・私が、バカだったよ」

 

「ご理解いただけて、ありがたく思います」

 

とりあえず、研究が一段落着いたら彼女は特に労おう。ユージはそう決意した。

 

 

 

 

 

 

「結構、動かせるようになってきたんじゃないかアイク?3日前までは、俺みたいにおっかなびっくりしか動かせてなかったのによ」

 

「ありがとうございます、エドワード少尉。だいぶ、このOSのクセがわかってきましたからね。まだ戦闘は出来そうにないですけど」

 

所変わって、輸送艦”コロンブス”の艦橋。そこでは、プトレマイオス基地領域内の宇宙空間を移動する人型の機械の稼働データ収集作業が行われていた。第08部隊に与えられたジンは今、複座式に簡易改造を施されており、アイザックとエドワードを乗せて真空を飛んでいた。先程の会話は、その二人に依るものである。アイクというのは、エドワードがアイザックに対してつけた愛称だ。

 

「おいおい、エドでいいって言ったろ?」

 

「す、すいません。中々愛称というものに慣れなくて」

 

エドワードの方が年上かつ先任少尉であることも相まって、緊張が抜けないようだ。だが、エドワードのラフな性格であればそう遠くない内にアイザックが愛称で呼べる日が来るだろう。

 

「まあ、いきなりは難しいか・・・・。それより、このOSのクセって?」

 

「えっと・・・・管制!予定に無い操作をしても良いですか?」

 

『こちら管制、トルーマン軍曹。機体に問題が発生しない範疇であれば許可します』

 

「了解。それじゃあ・・・・よっと」

 

そう言ってアイザックが何らかの操作を行うと、ジンの右腕が肘をまげ、ピースサインを取る。そして次々と右手は取る形をサムズアップだったり小指だけを立てたものだったり、と変えていく。

 

「へぇ、そんなことも出来るのか」

 

「はい。ただ、これらの操作が行えること自体が複雑化を助長してるんです」

 

「そりゃ、いったい?」

 

「やれることが多すぎるんですよ。少しスロットルをいじるだけで色々な行動に派生させられるんです。戦闘には使えないアクションにも。たぶん、コーディネーターでもこれを扱える人とそうでない人がいるんじゃないでしょうか」

 

「それなら、ナチュラルに扱えないって言われるのも当たり前か」

 

「そうですね。おまけに操作方を理解したとしても、今度はそれを実戦で使いこなす判断・情報処理能力が必要になってきます。ここから必要なアクションだけを抜き出して自分達のものに組み込もうとしても、かなりのバグが発生すると思います。ひょっとしたら、わざとかも」

 

「なんでそう思うんだ?」

 

「扱える人が少ないなら、敵に奪われても安心でしょうから」

 

「なぁるほど。そりゃそうだ。頭良いな、アイク」

 

「よしてくださいよ、少尉。研究者の人達なら、もっと早く気づいてるでしょうし」

 

そうはいうが、アイザックは少し照れているようだ。誉められ慣れてはいないのだろう。

 

「仲、良さそうですね」

 

「・・・・エドは、誰にでも慕われやすいからね。仲間を作りやすいのよ」

 

そういう会話をしているのは、カシンとレナの女性陣だ。彼女達は、艦橋からジンの動きを観察している。中からと外からでは得られる情報も違う。乗れる機体が無いことからも、そうなるのは当然だった。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

会話が途切れる。レナは言わずもがな、カシンも以前までの配属先で、あまり良い扱いを受けていなかったことから、中々関係は進展していないようだ。

 

「・・・・そろそろいい時間ね。食堂にでも行きましょうか」

 

「え・・・・一緒に、いいんですか?」

 

「・・・・同僚と昼食を共にするくらい、当たり前でしょ。あっちも、そろそろ戻ってくる頃合いよ」

 

「そ、そうですね。それじゃあ、ご相伴に預かります」

 

しかし、これらの会話から察せられるように、進展自体はしているようだ。そう遠くない内に、会話からぎこちなさは消えているだろう。

艦橋でその様子を見ていたユージは、そう思った。今隣にいるジョンとも、最初はそうだったのだから。

 

(ああ~、新鮮な男同士の友情なんじゃ~)

(ふぅ、やっぱり気丈系と儚げ系は至高の組み合わせだぜ)

(今日のメニューは何かな。お腹空いてきた)

(なんでこんなアホどもと同じ部署なんだ・・・・!能力があるのが更に腹立たしい)

 

まさか、通信兵達がこんなことを考えているという思考に至らなかったのは、幸せだっただろう(胃痛的に)。

 

 

 

 

 

モーガンとセシルはその間、何をしていたのか?その答えは、プトレマイオス基地内のトレーニングルームにあった。

 

「おら、あと5分だ!そのままのペースで走り続けろ!」

 

「ひぃ、はぁ、むちゃくちゃ、ですぅ!」

 

「返事はハイだけで良いんだ!時間を伸ばされてぇか!」

 

「ひゃ、ひゃい!ごめんなさいぃ!」

 

「パイロット候補生のクセして、体力が無いなんざ問題外だ!これからもみっちり、倒れない程度にしごいてやるから覚悟しておけ!」

 

「ひぃん、あんまりですよぉ!」

 

「あと7分!」

 

「無言で延ばされたぁ!?」

 

この始末である。

順調なはずなのに、ユージはこの一週間気が完全に緩むことはなかった。胃薬の効果も、なんだかなくなってきたような?

 

 

 

そんな部隊だったが、8月4日。ハルバートンが彼らの開発室を訪れる。

ついに連合初のMS、その実機が完成したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

開発部から、新兵器の開発プランが提案されました。開発部からの報告をご覧になりますか?

 

『データ収集用の試作MS開発』必要資金2000

 

我が軍におけるMS運用戦術、その基礎となるMSを開発する。この機体を用いて、MS戦のデータの本格収集を開始する。

 




遂に、我がss初のオリジナルMSが次回登場します。
長年秘めてきた、我が妄想が遂に具現化する!

最後に、本ssでユージの目に映っていたジンのステータスを載っけておきます。

ジン
移動:6
索敵:D
限界:130%
耐久:50
運動:14
武装変更・可能

はい、ほぼ本家ザク2のコピペです。表示されなかった部分は、本ssではマスクデータ扱いってことにしてください。武装は、装備されていれば表示される。という感じになります。ちなみに、メビウスはセイバーフィッシュのほぼコピペ。

誤字・記述ミス指摘、また質問は随時受け付けております。

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