機動戦士ガンダムSEED パトリックの野望   作:UMA大佐

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前回のあらすじ
親プラント国「あっち(ZAFT)につくわ」
連合「激オコスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム」

(執筆欲がサンライトイエローオーバードライブして禁断症状を発症したので)
初投稿です。


第41話「第2次ビクトリア攻防戦」その3

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ビクトリア基地防衛前線 第8防衛ライン 塹壕

 

「誰か!弾を、弾をくれ!」

 

「なあ、誰か俺の腕を知らないか?さっきから見当たらないんだ。どこにもないんだよ、さっきまでここにくっついてたはずなのに」

 

「ファ○ク!また一人イカレやがった!」

 

「まだモルヒネある!?」

 

「ボーイ、君の腕は少しの間お散歩にいってしまっただけさ!もう少ししたら帰ってくる!だから……帰ってくるまで生き残れ!そおら、また敵さんがおいでなすったぞ!」

 

「弾よこせっつってんだろうが!あのクソどもより先にハジかれてえか!」

 

戦場は混沌に満たされていた。

ZAFTの攻撃が始まってわずか3日ほどしか経っていないのにも関わらず戦線に崩壊の兆しが見られ始めているのは、ZAFTの戦略ドクトリンが基本的に「電撃戦」を主としていることにある。

人的資源を始めとした国力に乏しいZAFTにとって一つの戦闘の長期化はすなわち軍全体を劣勢に追いやるものであり、絶対に避けなければならない。だからこその電撃戦。

時間を掛ければ敵が体勢を整えて反撃してくる。ならば、敵が体勢を整えるよりも先に押しつぶす───。

ジャイアントキリングの定番戦法だが、この戦闘ではそれが成立した。

なりふり構わず友好国や占領地域から兵を供出させ、過去に攻略に失敗した基地であることやカオシュンでの敗退を考慮し、十分以上の戦力を用意した。敵の増援の妨害もほぼ完璧。

そうして始まったこの戦闘、多大な被害を出しながらも開幕戦を制したZAFTはそのままの勢いで陸上戦艦による進撃を開始した。

連合軍の歩兵や補給基地への襲撃などによる妨害はあるが、全体の侵攻を押し止めるものにはなり得なかった。ノリにノった今のZAFTは一つや二つの拠点を失ったところで痛くも痒くもない。

こうして塹壕で敵歩兵(アフリカ共同体の人間が中心)と銃撃戦を繰り広げたところで、それが何の足しになるというのか。

塹壕の中の兵士達を絶望的な空気が包んでいく。

 

「南西より”バクゥ”接近!」

 

「ああ、くそ!MS隊と戦車隊は何やってんだ!」

 

「……もう嫌だ!死にたくない!」

 

鋼鉄の猟犬の接近報告を聞き、ついに一人の兵士が塹壕を飛び出て後方に逃げ出す。その姿からは、大人の男としての矜持も兵士としての誇りも感じられなかった。

 

「バカ、戻れ!……ああ、くそ!全員伏せろ!」

 

逃げ出した兵を連れ戻そうと動き始めていた隊員達は、しかし分隊長の言葉を聞き、すぐさまその場に伏せる。

瞬間、轟音がその場に響き渡り、衝撃と砂埃が彼らを襲う。”バクゥ”の発射したミサイルが塹壕の近くに着弾したのだ。塹壕から飛び出ていれば、今頃は肉塊と化していたことだろう。

塹壕から逃げ出した兵士の姿は見えなくなっていた。たぶん、ミサイルに吹き飛ばされて肉塊ないし肉片となってどこかに散らばっている。

この後、彼らは駆けつけたMS・戦車混合部隊の援護を受けてなんとか撤退することに成功した。その時の心情を従軍記者に聞かれた分隊長はこうコメントしている。

 

「あの時、あの場所で一番安全だったのは、間違いなく塹壕の中だった。嘘みたいだろ?敵歩兵がうじゃうじゃ押し寄せてくるわ、周りにはミサイルが降り注ぐわの塹壕がだぜ?だけど本当なんだよ。───そこにいれば、少なくとも生き残る可能性が0.1%はあったからな」

 

 

 

 

 

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ビクトリア基地 会議室

 

「……今日までの3日間で、いったい何人死んだ?」

 

「非戦闘員を除いても3万人は超えてます。また、非戦闘員や避難が間に合わずに巻き込まれた民間人も含めたら……おそらく、10万人は超すでしょう」

 

ダンっ!と大きな音が鳴る。報告を受けたブリットが、テーブルに拳を打ち付けた音だ。

この会議室の中には今、10を超すかどうかの人間が存在していた。本来であれば30人は参加しているはずなのだが、皆ZAFTの攻撃によって命を落としたか、参加出来ないほどの重傷を負ったかで不参加であった。

将兵の大量喪失に加え民間人の犠牲者多数。加えて、ほとんど低下していない敵軍の侵攻速度。

完敗だ。これ以上ないほどに、ブリット達は敗北したのだ。であれば、すべきことは一つ。

 

「……遺憾ながら。誠に遺憾ながら!当基地を放棄する。各部隊に撤退準備をさせろ」

 

ブリットの発言は、認められる人間と認められない人間の2種類を生み出すものだった。

 

「司令!それでは今日までの戦いは、散っていった者達の思いはどうなるのです!?あと数日しのげば……」

 

「宇宙は敵の策略に嵌まり制宙権喪失、地上は半ば包囲されてしまい、海は完全に押さえ込まれている。───いったいどこから援軍が来るというのかね?」

 

「っく、しかし!」

 

ブリットになおも食い下がろうとするレイブス・ラバルベス少佐はこの場でもっとも若い将校であり、それ故に戦闘の継続を望む。

ここで撤退してしまえばこれまでの犠牲はどうなるのか、ZAFTや本格的に反旗を翻した親プラント国にやられっぱなしでよいのか。

たしかに、レイブスの言うこともわかる。このままでは、奴らにやりたい放題されて終わってしまうのだから。

しかし、だからこそブリットは決断したのだ。これ以上被害を増やさないためにも、逃げることが最適解。

 

「悔しいだろう、辛いだろう。……今は耐え、再起の時を待て。時には勇気ある撤退が求められることもある」

 

「……」

 

ブリットはレイブスを静かに説き伏せた。レイブスは血気盛んな青年将校ではあるが、けして無鉄砲ではない。現に、歯を食いしばりながらも撤退を受け入れて席に座る。

生き延びれば、必ず後の連合にとって有益となるはずだ。その未来を絶やしてはいけない。

 

「他に異論のある者はいないか?……いないようだな。それではこれより、撤退作戦の計画を組み立てる」

 

部屋の壁に取り付けられたモニターに、ビクトリア基地周辺の地図が映し出される。両軍の戦力配置が色分けされ、連合は青、ZAFTは赤で表されるが、すでに基地は全方向が包囲されかかっていた。

西に敵本隊、東にはついに上陸した敵援軍が向かってきているため、撤退する方向としては論外。北はもっとダメだ。敵の勢力圏に向かって撤退するバカがどこにいる。

必然、南に脱出することが決定される。当然ZAFTはそれを見越して戦力を配置しているため、基地の残存戦力のほとんどを使って包囲網を早期に突破する必要がある。

ここで問題となるのが、撤退までの時間をどう稼ぐかである。

敵部隊を突破するにしても、すぐにとはいかない。ちんたらしていれば、すぐに東西から援軍がやってきて袋叩きになってしまうだろう。

ここで考えられる方針は二つ。一つは先ほど挙げられたように、残存戦力を一極集中させること。これは残存戦力に乏しい連合軍にとっては、早期に突破して被害を少なくするか、あるいは突破に失敗して一気に殲滅されるかのどちらかの比較的ギャンブル性の高いものとなる。

もう一つは、部隊を複数に分けてそれぞれ包囲網をくぐり抜けるように撤退させるというものだ。こちらは戦力を分散させることになるが、部隊がまとめて撃破されるという事態にはならない。

どちらを採るべきかで会議室が騒がしくなり始めたころ、一人の青年が手を挙げる。

 

「ニエレレ司令、よろしいでしょうか」

 

手を挙げたのは、レイブスとは正反対に表情が読み取りづらい金髪の男性。

マキシミリアン・ランダス中佐。2週間程前にビクトリア基地に赴任してきた、ユーラシア連邦所属の軍人である。

ユーラシア連邦が開発した『MSを打倒するための新型戦車』のテストのためにやってきた彼と部下達は、しかし他の兵士達からは敬遠されていた。

彼らは”テスター”が配備され始めたころから発足したと言われる「通常兵器地位向上委員会」という非公式団体への所属を公言している。

委員会とは言うが実際にやっていることはハイスクールのクラブのようなもので、仲間内で考案した(彼ら曰く)通常兵器の構想案を開発部にリクエストしたり、通常兵器の有用性を周囲にアピールするといった些細なものが主だった。

問題はその熱意を過剰に発露してしまう人間が多く所属していることであり、通常兵器のアピールをしていたのにいつの間にか上層部への不満を叫び出したり、MSをこき下ろしたりし始める者が多いのだ。

簡潔に言うと、面倒くさい人間が多いのである。

そういう理由もあって、ブリットはマキシミリアンやその部下達に良い印象を持ってはいなかった。

 

「なにかね、ランダス中佐」

 

「ここは一極集中、一点突破で撤退するべきです。我々にはそのための手段があります」

 

ブリットはマキシミリアンと親しいわけではないが、それでも彼が自信を持って発言していることがわかった。

 

「ほう、聞かせてもらえるかね?」

 

マキシミリアンの話した作戦は、普通に考えればあり得ない、好意的に解釈しても珍しいと表現するしかない代物だった。

何よりその作戦の実行をためらわせたのは、その作戦の重要な役割を担うのが、マキシミリアン達がテストを行なっていた『新型戦車』だということだ。

 

「バカな、テストも完了していない戦力を作戦の中枢に組み込むなど正気か!?」

 

「私はもっとも成功確率の高い作戦と、それに必要な戦力を申し上げたまでです。我々が開発した『彼ら』ならば、必ずこの作戦を完遂させられます」

 

「いや、しかし……」

 

ブリットは決断出来ない。彼はこの場でもっとも高い地位にある者。故に、軽率に結論するわけにはいかなかった。

マキシミリアンの策はとんでもない代物であったが、落ち着いて考えて見れば一定以上の有効性があることが認められた。ひっかかるのはやはり、作戦の中核を担う『新型戦車』の存在。

戦車とは何か?

大砲を備えた車両。鋼鉄の装甲を纏った兵器。─敗北した、兵器。

地球連合軍で運用されているリニアガン・タンクは優秀な兵器だ。かつてモーガン・シュバリエがやってみせたように、連携と戦略次第ではMS部隊と渡り合うことも出来る。それは間違いない。

だがそれは十分な数を揃え、練度の高い兵士を搭乗させることでなし得たものだ。

試作兵器の数は3両。練度はともかく、数が足りない。

どうしようもなく、この世界では戦車とは『敗北者』なのだ。

その戦車に命運を賭けることを、迷い無く決断することは出来ない。

 

「司令、なにも私は自分達の成果を見せつけたいから言うのではありません。これよりも有効な作戦があるならば迷い無くそちらを選びます。───他に意見はないのですか?」

 

マキシミリアンは周りを見渡すが、手を頭に当てて考え込む者やマキシミリアンの提示した『新型戦車』のデータを食い入るように見つめる者ばかり。

実際、ブリットにもわかっていた。マキシミリアンの作戦こそが現段階の最適解であり、もっとも多くの兵士を脱出させうる方法なのだと。

結局より成功率の高い作戦が提案されることはなく、マキシミリアンの提案した作戦が採用された。

作戦名はなく単に撤退作戦と呼ばれるだけに止まったが、後の歴史家達はこの戦いのことをこう評することになる。

───『古く、そして新しい時代の始まりを告げた戦い』と。

 

 

 

 

 

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ビクトリア基地 第08格納庫

 

「モーリッツ、ジェイコブ、ヘルマン!いるか!?」

 

その場所では、常に重機の動作する轟音が鳴り響いていた。故にマキシミリアンは声を張り上げたが、その轟音に遮られてしまいお目当ての人物に声を届けられなかった。

現在この格納庫には、マキシミリアン率いる『第14機甲小隊』の試験している『新型戦車』が3両存在していた。マキシミリアンが探しているのは、その3両に車長として乗り込む3人だ。

声が届かないなら仕方ないと歩き出すが、その足取りは確かなものであった。マキシミリアンには彼らの居る場所の検討がついている。

戦車バカ共のいる場所など、戦車の中以外はない。

 

1号車の上に立って搭乗口をのぞき込んでみれば、やはりその場所には車長の姿があった。

モーリッツ・ヴィンダルアルム。この『新型戦車』1号車の車長であり、彼もまた「通常兵器地位向上委員会」に所属する兵士だった。

彼は一心不乱にキーボードを叩いていたが、陰が刺したのを感じて上を見上げる。

 

「ランダス中佐、どうしました?……ひょっとして、出撃ですか!?」

 

モーリッツは希望を秘めたまなざしでマキシミリアンを見つめるが、マキシミリアンはため息をつく。

 

「出撃と言えば出撃だが、喜ばしいものではない。───ビクトリアは放棄される」

 

笑顔から一転、呆然とした表情になるモーリッツ。数瞬後、彼はうつむき、右手をアームレストにたたきつける。

彼もまた悔しいのだ。戦場に立てなかったことが。相棒を戦場で働かせてやれなかったことが。

調整はほぼ終わっていた。この戦闘が始まる前に何度か行なっていた試験運転の甲斐もあり、今ならば想定した通りの力を発揮出来ると断言出来る。

あと少し、あと少しだったのに!

 

「敵軍の侵攻速度が余りにも速すぎた。援軍も望み薄。今回は敗北を認めざるを得まい。だが、戦闘は帰るまでが戦闘だ」

 

「……中佐。もしや我々の出撃とは」

 

「察しが良いな。先ほど決議された撤退作戦において、お前達は中核を担うことになる。危険で、未知数な任務だ。だが……『肝心な時に間に合わなかった愚図』よりも、『遅ればせながらも多くの将兵を救った勇士』の方がまだマシだろう?」

 

深呼吸。吸って、吐く。それだけの動作のはずなのに、モーリッツには何故か難しく感じられた。

喜びを抑えられない。湧き上がる感情を押しとどめられない。

我々は、戦える。

 

「ジェイコブとヘルマン、それと各車両の搭乗員を集めてくれ。第6会議室を借りられた。───今の最大限を、取りに行くぞ」

 

「イエッサー!」

 

彼らは理解していた。自分達が弱者であることを。

彼らは理解していた。弱者でも人は殺せるし、たくさん殺せば英雄になれることを。

彼らは理解していた。戦争に英雄は不要であると。

 

だからこそ彼らは信じていた。英雄でなくともいいことを。

必要な時に必要なものを必要な分使えば、物事の99.9999%は上手くいく。

英雄ではない、『我ら』の魂を見せつけてやるだけでいいのだ。

この、『鋼鉄という名の魂(ノイエ・ラーテ)』と共に。

 

 

 

 

 

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ビクトリア基地包囲網 南方戦線

 

正直、うんざりしている。

こちらに向かってくる敵部隊を見て、若きZAFT兵はそう思った。

いや、向かってくるというのは正しい表現ではない。向かっているのは我々だ。あの『壁』を破壊するために、向かっている。

“ザウート”を駆る彼の目には、まさしく壁と呼ぶにふさわしい敵MSの姿があった。

両手だけに止まらず両肩にまでシールドを装備しているその機体には、おおよそ他の武装が見えなかった。

本当に、盾しかないのだ。間違いない。

おそらくこのMSは連合軍の撤退作戦にかり出されたのだろうが、朝9時から11時まで、占めて2()()()()()()こちらからの攻撃のほぼ全てを受け止めている時点で何かがおかしい。

撃っても撃っても装甲が削れている気がしないが、その機体表面にいくつも付けられた弾痕を見ればそれがPS装甲に包まれていないことがわかる。

つまり小細工無し、単純にむちゃくちゃ堅い。それが、それだけが、それこそが目の前のMSなのだ。『切り裂きエド』の乗るMSを『赤壁』と呼ぶ人間もいるらしいが、目の前のあれの方がよっぽど壁らしい。

それだけならば放置すればいいだけなのだが、その壁の後ろに隠れるようにして他のMSが攻撃してくるのがうっとうしい。

まさしく『自走防壁』と呼ぶにふさわしい有様だが、それにも限界が近づきつつあった。

いくら厚い壁だろうが動けなければ大したことはない。そして、後ろに隠れるMSの数もその数をすり減らし、現在は『壁』を含めてたった3機のMSが孤独な戦いを続けているだけだ。

もう決着はついたようなものだというのに、何故戦いを続けるのだろうか。投降すれば、命は助かるというのに。

少なくとも彼は本気でそう思っていた。他のパイロット達は『壁』からパイロットを引き釣り出して八つ裂きにでもしてやろうかと考えていたが。

だからこそ、気付かなかった。彼らは別に沖縄戦の日本兵(玉砕大好きメン)ではないということを。

目の前の壁は非常に堅く、ZAFT兵達はストレスを蓄積させていた。未だにZAFT内に蔓延る優生学(プライド)もあり、連合側が何かを企んでいることを気付けなかった。

何十発目かになるキャニス短距離誘導弾発射筒の衝撃を受けて、ついに『壁』の右腕は限界を迎え、肘から先が落下する。装甲は耐えられても、内部の機体フレームは耐えられなかったのである。

”ジン・オーカー”がキャニスを構えて接近する。近づいて一気に吹き飛ばすつもりなのだろう。

彼はそれを傍観していた。もう敵に打つ手はない。やっと終わった。

そう、()()()した。むしろ、これが始まりだというのに。

 

 

 

ガボンっ!

 

 

 

『壁』に接近した”ジン・オーカー”の上半身が消失する。ほとんどの兵士には、そうとしか見えなかった。

間もなくして、放心状態から復帰した兵士達は気付く。───敵からの攻撃を受けたのだと。

 

「撃たれた!?どこから───」

 

目をこらして辺りを見渡すと、『壁』の後方、つまりビクトリア基地のある方向から何かがやってくるのが見える。

───それは、戦車と言うにも、いささか大きすぎた。

ごつくて、重そうで、風格があった。

それは、正に、戦車(陸の王者)だった。

 

 

 

 

 

「敵機撃破、次弾装填!お前ら、陸の王者が誰なのかをあいつらに知らしめるぞ!」

 

『アイアイサー!』

 

砲手と運転手のノリのいい声を聞き、モーリッツは口端をつり上げる。そうだ、そうでなければ。

”ノイエ・ラーテ”。正式名称は『71式戦車』。

これこそが『通常兵器地位向上委員会』期待の星。『MSを正面から打倒する』ための戦車。

マキシミリアンの立てた作戦は、ざっくり言うなら『あえて1カ所に集めた敵部隊をノイエ・ラーテで突破、敵の包囲網に穴を開けてそこを全軍で突破する』というものだった。

ハッキリ言って、馬鹿げている。

わざと敵を集めるのはともかく、そこを強硬突破するなどどうやったら思いつくのか。

作戦会議でそう問われたマキシミリアンは、淡々と返した。

 

『防備の薄い場所を狙うなど誰でも考えつくことでしょう。そしてそこを我々が狙えば、敵はそこで時間を稼ぐだけでいい。ならばあえて逆、もっとも厚い場所を突破すればいい。一番守りの堅い場所を突破してしまえば、あとは楽に撤退出来るとは思いませんか?』

 

『そもそも突破出来るだけの戦力がないと言う話だ!この基地の実働戦力は、すでに開戦前の半分を下回っているのだぞ!』

 

『そうですね。我々に余力はほとんど残されていない。そして敵もそう考えているでしょう。───だからこそ、この作戦は有効なのです』

 

『……”ノイエ・ラーテ”の性能は、保証出来るのかね?』

 

『もちろん。あれはそもそも、そういう用途も考慮して作られていますから』

 

『そういう、とは?』

 

『───()()()()()()()です。その点だけでいうなら”ノイエ・ラーテ”は、現在の連合軍で最強の兵器と断言します』

 

そしてこの撤退作戦が始まった。

基地で試験運用されていた”重防護型テスター”はその装甲を遺憾なく発揮し、南方に布陣する敵戦力の30%超を1カ所に集めることに成功した。

あとは、自分達がそれを突破するだけ。ここで言う『自分達』とは、爆走する3両の”ノイエ・ラーテ”のことだけではない。

MS、戦車、戦闘ヘリ、戦闘機。ビクトリア基地の保持していた、あらゆる戦力のことを言う。”ノイエ・ラーテ”の通った後を大軍が疾駆する。目的はただ一つ、生き残ること。

乾坤一擲、しくじれば皆まとめてお陀仏の作戦だが、モーリッツは笑顔を絶やさない。

その笑顔は5割が虚勢、4割威嚇。そして残り1割は心底からの喜びで構成されている。

全員が全力を出さなければ、最善を尽くさねば死ぬ。そんな戦いの先駆けを任されているのだ。

───嬉しくならない戦車乗りなどいない!

 

「さあ来い、ブリキ人形ども!俺達が『戦争』を教えてやる!」




だめだ!UMA司令官は爆発する!(書きた過ぎて)

こらえられなくなって、投稿です……。
だって仕方ないじゃん!このまま黙って見てたらメスガキに侵略されちゃうし!
今度こそ、8月までは書かねえからな!今度こそ!
例によって後書き長いから、飛ばすの推奨。

重防護型テスター

移動:5
索敵:D
限界:140%
耐久:550
運動:1
シールド装備

武装
タックル:200 命中 80

形式番号GAT‐X0HD
”テスター”に防御特化の改装を施した姿。HDとは「ヘヴィディフェンス」の略。
レセップス級の主砲を余裕を持って耐えられる防御力を求めて現地改修された機体であり、異常な程の防御力を誇る。つまり、『フェンリル対策(フェンリルの主砲はレセップスのそれ)』である。コスト度外視で作られているため、現時点では1機だけしか製造されていない。
増加された全ての装甲がファインセラミックス装甲で作られており、MSに採用された装甲材の中ではPS装甲に次ぐ堅さを誇る。
さらに5層構造式になっており、1層目の表面にはラミネート化がされている。そのためビーム兵器に対しても高い耐性を持っているし、第1層だけモジュラー式空間装甲であるため、ラミネート加工が削れて使えなくなった第1層に限ればパージすることでデッドウェイト化を避けることが出来る。これは両手に一つずつ装備した大型重連層防盾甲型『スパルテル』と両肩に装備した乙型『アルミナ』も同様。
圧倒的な防御力を誇るが、火力と機動性は皆無に等しい。壁にするのがいいだろう。
それ以外では使い道がないが、それだけなら他の追随を許すことはない。
ちなみにスラスターを全力噴射することで突進することも出来るが、仮にそれを並大抵のMSに実行した場合、『潰れたカエル』になる。
守りを極めし者。後に変態どもがこの機体のデータを見たとき、全員が「beautiful…」と述べた。

『あのぽんづ』様のリクエスト。
本当は超大質量タックルとかも書きたかったんだけど、泣く泣く断念。
非力な私を許してくれ……(泣)
詳しい情報は活動報告のリクエスト募集のところにあるので、そちらも参照するのをオススメする。
ちなみに作者はこのリクエストを見たとき某『極振りラノベ』を連想した。

”ノイエ・ラーテ”については……ごめんなさい、待ってください。
次回詳しく書きます。
提案者様の熱意がやばすぎて生半可な描写が出来ない。
おかしい。これはおかしい。
こんなに戦車活躍させちゃっていいのかな……?
『ガンダム』なんだよ?

というわけで、次回は「どきっ☆真夏の重戦車祭り~(バクゥの頭が)ボトリもあるよ~」です。

誤字・記述ミス指摘は随時受け付けております。

あー、すっきりした。
俺はリアルに戻るぞ、ジョジョー!

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