機動戦士ガンダムSEED パトリックの野望   作:UMA大佐

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前回のあらすじ
この中に、本気で敵と遭遇しないで平和にテストできると思ってたやつ、おりゅ?



ポケモン、FE、スマブラ、艦これ・・・・
時々、ドラえもんに出てくる「時門」が欲しくなる今日この頃。


第7話「shadow of abnormal  ~変態の影~」

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「ついに、ここまで来たか・・・・」

 

ユージは、自室で独りごちる。

あの不意の遭遇戦からおよそ一週間、OS開発は劇的に進んだ。もともと、最後のピースが不足していたために向かったのだ。それが揃っただけでなく、実戦のデータを取ることもできた。

加えて、嬉しい誤算があった。エドワードが撃破した”ジン”は的確にコクピットだけを破壊することに成功しており、残弾が残った良状態のライフルもまとめて鹵獲することに成功したのだ。機体自体は既に鹵獲できていたものが存在するのだが、ライフルを手に入れることができたのが大きい。

マヤ達は弾薬不発事件を経て、手に入れた”ジン”のライフルを参考にしながら、これまで以上に品質チェック・検品に力を入れるようになっていた。弾薬は元のイーゲルシュテルンのものに戻し、代わりに銃のロングバレル化などの再設計を施したことで、結果、威力・精度はそのままに安全性を高めることに成功した。

パイロット達、特にアイザック達新兵も、何かが変わっていた。実戦を経験したことで、自分達が何をしているのか、改めて理解したのだろう。部隊内の雰囲気はそのままに、どこか動きがしっかりとしたものになっていた。実際、新兵組はステータスも以前より向上していた。

 

アイザック・ヒューイ(ランクC)

指揮 4   魅力 8

射撃 9   格闘 10

耐久 7   反応 9

 

カシン・リー(ランクC)

指揮 3   魅力 10

射撃 10   格闘 7

耐久 6   反応 10

 

セシル・ノマ(ランクD)

指揮 9   魅力 6

射撃 7   格闘 2

耐久 4   反応 10

 

といった具合だ。全員、1ランクほど上昇しているのがわかる。この分なら、原作開始時点、ようはヘリオポリス襲撃の頃にはB・Cランクに上がっているかもしれない。モーガン達も、目に映らないだけで成長しているはずだ。こんな”能力”などなくても、それくらいはわかる。

だからこそ、だろうか。当初の任務を完了しつつある我々に、このような指令が下ったのは。

ユージは机の脇に置かれた紙、つまり第08機械化試験部隊に与えられる新たな任務について思う。その脇には、正式な少佐の階級章も置かれている。明日、部隊全員に正式に発表するこれは、今までの任務よりも遙かに危険なものだ。

隊の皆は、ついてきてくれるだろうか?自分は何かができているのだろうか?

運命は、変わっているのだろうか?

そんなことを考えながら、ベッドへと向かう。時間は有限であり、睡眠もまた、時間を削って行う「義務」だから。

義務を果たせ、ユージ・ムラマツ。あの日、散っていった部下の死が無駄でないことを証明しろ。

自分に言い聞かせながら、ユージは眠りへと落ちていった。

 

 

 

 

9/1

プトレマイオス基地 

 

「久しぶりだよなあ、部隊全員が集まるなんて」

 

「そうなんですかい?」

 

「ああ、コジローのおっさんは途中配属だったけな。研究者・通信士も含めて全員が集まったのなんて最初の時くらいなんだよ」

 

そんなことを話しながら通路を歩くのは、エドワードと、MS整備兵見習いとして途中から配属されたコジロー・マードック。彼らは今、招集命令に従って最初に使われていた第3会議室へと向かっていた。

ちなみにこの2人、意外と仲がいい。お互いに細かいことは気にしない性格だったことや、第08隊のパイロットの中で最も”テスター”を破損させるエドワードに、整備士総出で抗議に行ったときから、良く会話するようになり、現在にいたるというわけだ。

 

「最初の時は、酷かったんだぜ?レナ教官が、『コーディネーターなんか』とか言い出してさ。殺伐、剣呑って言葉がピタリと当てはまるような感じだったんだ」

 

「うーわ、中々想像できやせんねぇ」

 

「だろ?だけど、それをここまで持ち直させてくれたのがムラマツ隊長さ」

 

そう言いながら、あのときのユージの言葉を思い出す。

 

「憎しみの対象をはき違えるな、ってさ・・・・。レナ教官に言ったんだよ。隊長は、そこんところわかってるんだろうな。自分だって、部下を殺されてるってのに」

 

「レナ中尉は、隊長にキレなかったんすか?」

 

「そりゃあ、キレてたさ。それを言いくるめてみせたから、すごいってのさ。今まであの人に、そんなことを言えたやつは一人もいなかったからな・・・・」

 

懐かしさすら感じる。ほんの一ヶ月前のことだというのに。

そんなことを話しながら歩いていると、目的地のドアの前にたどり着く。

 

「ういーす、エドワード・ハレルソン少尉、ただいま到着・・・・あっ」

 

「どうかしましたかい、しょう、い・・・・・」

 

ドアが開いた先に広がっていたのは、自分達以外のメンバーが既に席に座っている光景。

そして、既にモニターの前に置いた椅子に座っているユージの姿。その傍らには、ジョンの姿もある。エドワードが慌てて、敬礼を行う。

 

「も、申し訳ありません!まさか遅刻など・・・・」

 

「いや、ジャストだ少尉、軍曹。たった今、予定時刻となった。だが・・・・次からは5分前行動を心がけるように」

 

部屋の中に架けられた時計を顎で指しながら、ユージは言う。その顔には苦笑を浮かべているが、レナからは突き刺さるような視線が送られる。その左隣に座るセシルは少しトラウマを思い出してしまったのか引きつった表情を浮かべており、右隣のカシンは苦笑いだ。

 

「は、はい!直ちに着席いたします!」

 

「お、同じく!」

 

そういって二人が席に着いたことで、ユージが話し始める。

 

「さて、諸君。今日までの一ヶ月と10日間、よく頑張ってくれた。この短期間にこれだけの成果を挙げてくれるとは、私も考えられなかった。まず、我々の任務であるOS開発の進展について、マヤ中尉!説明を頼む」

 

「はい。それでは、我々の開発したOSについて、説明をさせていただきます」

 

マヤがそう言ってモニターの近くまで歩いて行くと、モニターに様々な画像が映し出される。

 

「今日までの実験・テストの結果、歩行を初めとしたMSの基本動作、宇宙でのAMBAC(可動肢の動作によって反作用を起こし、姿勢制御をすること)を含む機動データ、そして戦闘機動。様々なデータが集まりました。そのデータを用いて作成したOSですが先日、ヘリオポリスでGの開発に携わっているカトウ教授に送信したところ、『まだ改良の余地はあるがこれならGのOSとして用いても、十分に動かせるだろう』と、お墨付きをいただきました」

 

おおっ、という声が上がる。自分達の成果が、認められたのだ。無理もない。

 

「このことをムラマツ隊長からハルバートン准将に報告していただいたところ、『第08機械化試験部隊の任務は無事、達成されたものとする』という言葉をいただいています。皆さん、今まで本当にお疲れ様でした」

 

今度は対照的に、部屋が静まる。

当然だろう、任務が達成されたということは、自分達はまた別の任務に就くことになる。隊のメンバーとも、別々の部署になるのだろう。それは・・・・。

 

「ここからは、隊長。お願いします」

 

「うん、ありがとう中尉」

 

しかし、ユージが話し始めた辺りから、にわかに活気づき始める。

 

「さっきマヤ中尉が話したとおり、我々の任務は完了した。本来なら、隊は解散することになっていた。本来ならな」

 

モニターに、何かのマークが浮かび上がる。

それは、ネズミのようだった。ネズミが牙をむきながら、今にも飛び出してきそうな雰囲気を見せている。

 

「我々『第08機械化試験部隊』に与えられたシンボルマークだ。どうやら、ハルバートン准将は我々を徹底的に使い倒してくれるらしい。

我々の任務は、『試作MSに用いるOSの開発』から更新され、『MSパイロットの教導』、並びに『実戦を含む様々なシチュエーションでのデータ収集』となった!先日のZAFT部隊との戦闘で戦果を挙げて見せたことで、上層部はMSの有用性を確かなものと認めた!そして我々は今や、連合軍内で唯一MSを用いての戦闘に長けている部隊となっている!今後は他の部隊のMSパイロット候補生の教導と、データ収集は建前の実戦が我々を待っている!今までとは比較にならない危険度を伴う任務だ、辞退したいというなら止めはしない!私が他の隊への転籍を都合しよう!辞退する者は手を挙げろ!」

 

その言葉を受けても、手を挙げる者はいない。全員、覚悟を決めたのだ。

どこまでも、この隊で戦い抜くことを。

 

「そんなもん今更だぜ隊長!俺は人呼んで”切り裂きエド”!怖じ気づくかよ!」

 

「調子のいいやつめ・・・・だが、俺もだ。まだまだ俺”達”はやれるぜ」

 

「ここが僕の居場所です・・・・抜けろと言われても抜けませんよ!」

 

「私も・・・・私も!ここで戦います!それが、戦争を終わらせる近道になると思うんです!」

 

「よく言ったわカシン。ええ、こんなふざけた戦争はさっさと終わらせる!」

 

「えっと、戦争はやっぱり嫌ですけど、この部隊でなら大丈夫だって思うんですよねぇ・・・・はい。私も、続けたいです」

 

口々にそんなことを言ってくる部下を見て、思わず目頭が熱くなる。だが、隊長である自分はしっかりしなければ。

 

「ありがとう、皆ありがとう・・・・!今日は良い酒を食堂にそろえている!今日は目一杯リラックスして、明日以降の任務に備えてくれ!詳しい活動日程は、明朝0900に再びここで通達する!」

 

おーっ!という声で騒がしくなる会議室。

その光景を見ながら、ユージはかつての部下を思い出す。

 

(ラナン、ダニエル。俺の新しい部下は、お前達にも負けないくらい最高の仲間になってくれたよ)

 

 

 

 

9/7

暗礁宙域内

 

「くそっ、どうなっている・・・・!」

”ジン”の中で、年若いZAFT兵はぼやいた。どうしてこうなった!?

自分達は、つい1週間程前から頻発し始めた、いくつもの部隊が消息を絶ち始めた事件の調査に来ていた。なんでも、連合の新兵器が実戦投入されたのではないかとのことだ。

馬鹿馬鹿しい、何が新兵器だ。下等なナチュラルなどが何をしようが、大したものなわけがないのだ。

そう思っていたのが1時間前。暗礁宙域に自分達の乗ってきたローラシア級が侵入したとき、異常が起きた。突如、どこからか攻撃されたかのような振動が起き、ついでサイレンが鳴り始める。

そこからは激動の時間だった。船から飛び出した自分の周りを旋回し始める連合の”メビウス”。2機の味方も、同じように”メビウス”に囲まれていた。いつものように楽々と撃墜しようと剣を振るが、当たらない。

回避に専念したなら、こうも当てづらいものか!

そして気づくと、母艦が見えなくなっている。僚機も一緒に、いつの間にかこんなところまで来ていたのか。

彼の不幸は、何と言ってもその傲慢さだろう。ナチュラルのやることなど、という。

だから気づけなかった。

自分達が、分断されたことに。

見下していた”メビウス”達に、おびき出されたことに。

瞬間、僚機の片方が突如爆散する。

撃たれた!?どこから、何に!?

そうこうしている内に、もう一機も爆散する。誰も、何が起きているのかがわかっていなかったのだ。何もできずに、やられていく。

 

「こんな、バカなことがあるか!いや、夢だ!悪夢に違いない!そうでなければ、そうで・・・・!?」

 

現実逃避していたZAFT兵だが、彼もまた突然の死を迎える。

彼が最後に見たものは、ネズミのようなマーク。そして。

モニターが映し出した”ジン”ではないデュアルアイの人型が、こちらに向かって何かを振り下ろす姿だった。

 

 

 

 

 

「よし、これで最後か?」

 

「はい、エドさん。他に敵影は確認できません。後はアイク達が上手くやってくれていることを信じましょう」

 

鋼鉄の斧を”ジン”から引き抜きながら発したエドワードの問いに、カシンは答える。

彼らはこの暗礁宙域で、ZAFTを待ち伏せての奇襲作戦を実行していた。一戦したら、場所を移動する。そしてまた待ち伏せる。この作戦を実行するのは今回で、3度目になる。運良く、今までの戦闘がZAFTの後方に伝わった気配はない。情報の秘匿性が保たれていることを、最大限に活用する戦術だ。

そして彼らが搭乗しているのは”テスター”だが、その外見にはそれぞれ差異がある。

エドワードが乗る機体は、先ほど”ジン”を切り裂いた鋼鉄の斧を装備している。

一方カシンの機体は、バックパックにかぶせるように、大砲がついたユニットを装備しているのがわかる。

 

「無事ですか、エドさん、カシン?」

 

そう言いながら近づいてくるアイクの機体も、その右手に保持しているのはいつものライフルではなく、MSサイズのバズーカだ。ライフルは、後腰部にマウントしている。ローラシア級を攻撃したのも、このバズーカによるものだ。彼は先ほどまでMSと分断したローラシア級の拿捕に取りかかっており、それが無事に完了したことからこちらに合流したのだ。

彼らの機体の差異には、当然理由がある。

今現在、マウス隊の研究スタッフは派閥を形成していた。MSの強化の方向性に関しての意見の相違からだ。

『MSの汎用性は腕があることから武装の持ち替えが容易な点に発している。よって新たな武装を開発するべき』とする、マヤを中心とするグループ。

『それはそうだが、それなら腕以外の、背中とかに別の武器も付ければもっと強くなる』という、かつて『G』の研究で『ストライカーシステム』という新技術を研究していた人物を中心とするグループ。

『近接戦!とにかく近接戦を強化して一撃で破壊するのだ!』おなじみ、変態技術者集団。

それぞれの意見の正当性を証明するために、”テスター”各機に異なる改造を施したのだ。

ちなみに”テスター”は全機一人乗り用に改造されており、残りのメンバーはプトレマイオス基地でパイロットの教導に取り組んでいる。

シフトを組んで交代制で任務に当たっているのだが、意外や意外、一番人気なのはセシルの教導だ。

『ビクビクしていて最初はやりづらいが、説明は一番的確でわかりやすい。あと、かわいい』

だそうだ。ちなみに一番の不人気はエドである。

 

『全機、無事か?直ちに帰投せよ。この宙域から早急に離脱する。大物の拿捕にも成功したからな』

 

通信が飛んでくる。

新たにマウス隊に配備された、ドレイク級ミサイル護衛艦”ヴァスコ・ダ・ガマ”の艦橋から、ユージが話しているのだ。その隣には”コロンブス”もあり、ローラシア級を牽引しながら撤収の準備を進めている。

 

「よし、いこうぜ。乗り遅れたらたまったもんじゃねえ」

 

「「了解」」

 

”テスター”が全機、無事に帰投する姿を見てユージは安堵する。

今日もまた、上手くやれた。あとはこれを、どれだけ続けられるか・・・・。

だがユージは、忘れていたのだ。

何を?ZAFTの動向?違う、そんなものではない。もっと、身近なものだ。

 

「ふふふふ、やはり近接戦は華になる。これまでの戦いでそれは証明できた。本当はブーメラン機能も付けたいのだが・・・・」

 

「ならば、次に進むべきだということは確定的に明らか」

 

「ふひっ、楽しみですな。あれをお披露目するときが・・・・。それはそれとして、もっとでかくしません?」

 

「おい、ドリルしろよ」

 

変態共が、これ以上おとなしくしているわけがないのだ・・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

開発部から、新兵器の開発プランが提案されました。開発部からの報告をご覧になりますか?

 

 

 

「テスター強化案1」資金 2000

近接戦でも良好な能力を示した”テスター”に、重装甲化を初めとする様々な近接戦能力強化を施す。

「テスター強化案2」資金 2000

ZAFTの新世代機”シグー”に対抗するべく、”テスター”をベースとして高機動型MSのテストベッドを開発する。

「テスター強化案3」資金 1500

ZAFTでは既に水中用MSが開発され、実戦に投入されている。これに対抗して、我が軍でも試作水中戦用MSを開発する。

「テスターの砲戦仕様強化」資金 1500

”テスター”に、砲撃戦能力の強化を目的とした強化を施す。

「電子戦型テスター開発」資金 1000

”テスター”に偵察能力を初めとする特殊装備を装備させる。




というわけで、マウス隊の新たな任務が始まりました!
マウス隊のマークは、”テスター”の左肩にペイントされてます。
最後に出てきた開発プランを見てティンっ!ときたそこの君!
・・・・お願いだから、感想欄ではぼかしてね?(ネタバレ防止)



あと、これは感想欄でツッコまれたことなのですが。
自分の感想返しが雑になってきている、ということに関して。
・・・・本っ当に、申し訳ありませんでしたぁ!リアルでのゴタゴタが積み重なって、倦怠感から感想返しを怠っていたこと、心からお詫び申し上げます!
これからの感想返しの基準ですが、
○「おもしろかった」といった旨の、いわゆる「ただの感想」にはこちらの気分で返事するかどうかを決める。
○本作品への様々な「質問を含む感想」に対しては、基本的に返答。できる範囲でだけど。
という風になります。でも、感想はきちんと全部目を通しています!返事がなくても、きちんと皆さんの言葉は見ています!
こんな作品ですが、これからも「パトリックの野望」を応援お願いします!
先日、ついに本作の評価バーに色がついたこともあって、作者のやる気はうなぎ登り中ですので!はい!

誤字・記述ミス指摘は随時受け付けております。

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