☆10 二度と現れない最強の魔人 様 t24 様
ご評価頂きまして誠に有難うございます!
6月はイベントの復刻があったものの、仕事などで中々手が付かず、そちらにおいては完走せずに終わり非常に悔しい思いをしました……
また中々モチベーションも上がらず、1月以上開けての投稿となりました。お待たせしてしまい申し訳ありませんが、今回の物語も楽しんでいただけたらと思います。
それではご覧下さい。
マルタを結構遠くまで吹っ飛ばした後、俺は彼女が吹き飛ばされたところまで来ていた。
理由は勿論、聞きたいことがあるためだ。
「うっ……」
「へぇ~結構強めにしたのに、まだ意識があるか」
「あ、アンタ……あれが結構強め? 本気の間違いじゃないの?」
「女の子には甘いところがあるからな。まぁ根っからの外道には容赦しないが」
「あらそぅ……あれでも手心は加えたのね」
「まだそれだけ元気があるなら、もう何割増しかでやっても良かったか?」
「やめて頂戴……これでも現界するので精一杯なんだし、後少ししたら私は座に帰るわ」
「そうか。なら俺はアンタが帰る前に聞かないといけないことがあるな」
「そう、奇遇ね。私も本来の目的はそれを伝えるためでもあるの。まぁアンタを叩きのめせれば1番良かったんだけど」
「そうだろうな。まぁ俺は、アンタがただ俺達を襲う為だけにここに来た訳でない事は知ってたがな」
「ふふっ……やっぱり出鱈目すぎるわあなた。千里眼でも持っているの?」
「そんなんじゃねぇよ。ただの勘だ」
「何よその勘……怖すぎるわ」
「まぁんなことはどうでも良い。それで伝えに来たことが、俺の思い描いている勘とどれだけ合っているか答え合わせといこうか」
「……それすらも勘で当てるとか化け物並ね。まぁ良いでしょう。それで私が持ってきた情報というのは……」
そしてアルジは、マルタが持ってきた情報と自分の思い描いていた勘もとい前世での知識が合っているかをすり合わせていた。その結果……
(あぁ、なんら変わった所はなかったな)
基本的にマルタが言った情報は、前世でやっていたfgoと変わらなかった。
「その顔だったら……どうやらあなたの思い描いていた勘と同じようね。はぁ〜……私って何のためにここまで来たのかしら? 骨折り損もいい所だわ」
「そんな事はねぇだろ?」
「えっ……?」
「だってオメェ……俺と殴り合ってた時笑ってたろ? それも狂気とか関係なく心の奥底から」
「っ! ……そうね。聖女になって控えてはいたけれど、久々に本気での殴り合いができて私、楽しかったわ」
「あぁ、今のアンタの顔見てても分かるよ」
「そう……あぁ、もうそろそろ限界ね」
そう言うと同時に、マルタの身体から金色の粒子が溢れ出る。マルタの霊基に限界が訪れ、座に戻ってしまうのだ。
「最後にアンタと本気で殴り合えて……楽しかったわ。確かに今の私の記憶は、座にある記録に置き換わってしまうのが残念でならないけど」
「……その気持ちは持っているんだな?」
「えっ? えぇ、そうね。でもそれを聞いてどうするの?」
「そんなの、決まっているさ」
アルジは右手に自分の魔力を集中させた。そして……
「あっ⁉︎ な、何を……」
「これは俺の直感だ。俺は……アンタがここでいなくなる事を良しとしない」
「な、何を言っているの⁉︎ 私はアンタの敵よ⁉︎ それに狂化が付与されてる! そんな私をまさか治すっていうの⁉︎」
「あぁ。それもアンタの狂化を取り除き、この世界に現界した時の状態までな」
「そ、そんな……無理よ! 私の中の狂化は、聖杯によって付与された物なのよ⁉︎ それを、いくら私を倒せた魔術師だからと言って出来るわけないじゃない⁉︎」
「無理かどうかは俺がやって俺が決める事だ。だからアンタは黙って俺がやる事が無理かどうかみてな。それに……」
「俺がここで何かを諦める事をあの子が許したとしても……自分自身が俺を許せねぇ」
「っ‼︎」
マルタはアルジの言葉を聞いて、何故か自分の芯が熱くなるのを感じた。アルジが呟いたその台詞は、自分に当てられたものではない事を容易に感じ取る事ができた。
それでも彼の決意が、誰に対してのものか分からないけれども……
(あぁ……なんて高潔な精神なの)
その時のアルジの姿が、彼女にとってはとても眩しく見えてしまった。
それからマルタは、黙ってアルジからの提案を受け入れていた。数分後、彼女の中から狂化のステータスはすっかりと消え去り、本来の彼女の姿がそこにあった。
「んっ……なんだか今までよりも調子が良いみたい。狂化を受けていたときは確かに力が増した感じはしたけれど、今だったらそれ以上に動けそうだわ……って、あら?」
マルタの身体がふらつく。アルジはそれを咄嗟に支えた。
「さっきまで霊基も消えかけてたからな。直接魔力を流し込んだからって直ぐ動けるわけじゃあねぇんだ。取り敢えず今は休んどけよ」
「……そうね。なら……お言葉に甘えて……すぅ……」
マルタはアルジに支えながら瞳を閉じ、眠る。それをアルジはお姫様抱っこをして立香達の元に戻った。
立香達は、アルジが戻ってきた時に驚く。それはそうだろう……何せ先程まで敵として戦っていたマルタをあまつさえお姫様抱っこをしながら歩いてくるものだから。
『えぇっ⁉︎ 今一体どういう状況だい⁉︎』
「うるせぇぞロマン。マルタが起きる」
『そ、そんな事言われても……だってさっきまで敵だったサーヴァントだよ⁉︎』
ロマンがその場にいる皆が思っている事を代弁した。
「確かにな。だが俺は……このままマルタが座に還るのは違うと思った。だから俺は、ここでマルタを生かす。そしてこの時代の修復を手伝わせる」
「でも先程までマルタさんは狂化を受けていたはずです! そんな状態では……」
「そこのところを俺が考えずにすると思ってるのか? 既に解除済みだ。その反動と俺の魔力を流し込んだから、それを適応させる為に今こうして休ませてる」
「って事は、もうマルタはアルジのサーヴァントって事?」
「正確には違う。マリー達と同じ様な状態だ」
「そ、そうなんだ……」
「あぁ。まぁそんなこんなで今回は俺も疲れた。風呂に入ったらすぐ寝るからな」
と言ってアルジはマルタを一旦テントの空いている場所に寝かせた。勿論布団セット込みで……
それからアルジは先程の宣言通り、風呂に入り就寝した。
side マルタ
マルタが目覚めたのは、アルジが寝て数時間後の事だった。
「あれ……確か私あれから……」
(あぁ、そういえばあの男の子に救って貰ったんだっけ?)
「名前は……アルジ、だったかしら?」
そう言いつつも、彼女は布団から起き上がる。
「……さっきまで敵だった私にここまでするのかしら?」
(助けられた時から薄々気付いていたけれど……お人好しにも程があるんじゃないかしら?)
「と、とにかく彼に1度お礼を言わないとね」
マルタはそう呟いて動き出す。1度アルジに会ってお礼を言う為だが、アルジはすぐに見つかった。といっても……
「すぅ……」
「……あどけない表情で寝ているわね」
アルジは今日の疲れがたたって眠っていた。それもそうだろう。今朝はジャンヌ達と合流し、そこから次の街では狂化されたサーヴァントとやり合い、そして先程のマルタとの戦闘である。
現に今もアルジはこの周辺に結界を張っていることから、眠っている今でも魔力を供給している。無論、回復速度の方が速いが自然と疲れは出てしまっている。それを本人は口に出しても表情としてはあまり出さないが……
(な、何かしら……こんな安らいだ顔で寝ているのを見ると私も……)
マルタは急に眠気がさしたのか、アルジの隣で横になる。しかも自然な形で布団の中に入り込んでいた。
(温かい……サーヴァントとして召喚されて、これはおかしな表現かもしれないけれど、凄く眠たいし……今目を閉じたらまた夢の中にいきそうね)
そう思いながらもマルタは再び夢の中へと誘われた。
side out
side マリー
(今日もアルジは頑張っていたし、ふふふっ♡ 今日はどんな風に労ってあげようかしら?)
マリーはそう思いながら、足取りはとても楽しげにアルジの元まで向かっていた。そしてマリーがアルジの眠るテントに入る。
「すぅ〜……」
「んん……」
「あらあら……まさか今日味方にしたサーヴァントまでてごめにするなんて……アルジったら」
そんな事を言いながらもマリーの顔はどこか嬉しそうである。
「なら私は……反対側に入って……えいっ♡」
マリーはマルタとは反対側に陣取り、アルジの腕に抱きつく。
(あぁ……とても温かい。マルタがついアルジの布団の中に入って眠ってしまうのも分かるわ……)
「それにしてもアルジったら、本当にあどけない表情なんだから」
(本当のこの子は……いつもこんな感じで過ごしていたんでしょうね)
アルジと会ってまだそこまでの時間は正直過ごしていない。それにアルジが好きだった女の子の敵討ち……話によればまだ生きているとの事だけど、それ以前のアルジの話は聞いた事がない。
(できれば……アルジが生まれてどんな風に育ったのかも……聞いて、みたいわ……)
「また時間が……あったら……アルジの話を……すぅ〜」
最後まで言えなかったものの、マリーもその温もりに包まれながら眠りについた。
(はっ? これは一体どういう状況だ?)
翌日、両隣にマルタとマリーがアルジの腕を抱きしめながら寝ていた事に対して、当然の事ながらアルジは困惑した。
side out
アルジがマルタを打ち倒し、そのままマルタを仲間にした翌日の事。アルジたちはリヨンに辿り着いていた。目的としては、邪ンヌが使役する邪竜ファヴニールを打ち倒す為に、この街にいるジークフリートと合流する事が目的だ。
ただマルタによると呪いを付与されているらしく、現時点ではファヴニールを倒す事が叶わない様で、さらにリヨンには狂化が施されたサーヴァントもいるとの事だ。
そして今そのサーヴァントであるファントム・ジ・オペラと戦闘を開始している。しかしながら戦闘を行なっているのは立香達のグループであり、アルジのグループはというと……
「力になりたいところだが……今は呪いに蝕まれて十分な力が出せそうにない。すまない……」
ファヴニールを討ち取ったジークフリートを探して保護していた。しかし彼には呪いがかけられており、十分な力が出せない様子だ。
「気にするな。俺達も元からそれは織り込み済みだ。それにいざとなったら俺がファヴニールをぶっ倒してやる」
「マスターであり人の子である君がか?」
「あら? アルジはそんじょそこらの魔術師とかただの人では無いわよ? なんたって私のタラスクを片手で止めて……しかもそのまま打ちのめしたんだから」
「……それは凄まじいな。ならファヴニールも君に任せても問題なさそうだな」
マルタが誇らしげにそう言う。自慢の宝具を片手で止められると言う事は、英霊としては屈辱的に思う者もいるだろうが、ここにいるマルタはそんな顔とは真逆であり、まるで我が子の功績の様に語る。
「馬鹿を言うな。お前はこの時代にはいない邪竜を倒す為にも呼ばれた筈だろう? だからそいつを倒すのはお前の役目だ。今は呪いで弱っているだろうが、それを治したらアンタには活躍してもらうんだから、どうか気張ってほしい」
「……あぁ。そうだな。私はその為にもこの時代に呼ばれた。なのに呪い程度でここまで意思が弱くなってしまっていたとは……君に叱咤されて目が覚めたよ。すまない」
「そこはお礼を言うところだろ?」
「そうだな。ありがとう」
「あぁ。そんなこんなであっちも決着がついたな」
アルジ達が話していると、立香達もどうやらオペラを倒した様だった。そしてアルジはただボケッと立って話していたわけではなく、リヨン周辺で飛び回っていたワイバーンや徘徊していたゾンビ達を打ち倒していた。これによりリヨン周辺は開放される。
だがそこに一体の大きな影が迫り、アルジ達の前に現れる。それは……
「まさか、マルタが夜中に抜け出して戻ってこないから私直々に見に来てみれば……寝返っていたとはね」
「お、おいおい……アイツが乗っている竜っていうのが……」
「まぁファヴニールだろうな」
「で、でかい……」
そこに邪ンヌが現れた。それも大きく、頑丈な黒闇色の鱗を持ったファヴニールを伴ってだ。
『ま、まさかここに来てファヴニールだって⁉︎ 今ジークフリートが呪いにかかって力が出せないこんな時に⁉︎』
『ちょっ、ちょっとそれって不味いんじゃ⁉︎』
『確かに不味い状況だね……でも』
管制室で状況を見守っていたロマン達が不安な声を上げた。先ほどまでオペラと戦っていた立香達も、初めてまともなサーヴァント戦を行なっている事もあり少し疲弊していた。それでもなんとか邪ンヌ達に向き合っていた。その瞳は、例え相手が強大であっても負けないという風に。
「あら、誰が来たかと思えば元私の上司じゃない。こんな所まで来てどうしたのかしら?」
そしてファヴニールの強大さも諸共せず、それどころか軽口を邪ンヌに返すマルタがいた。その隣には勿論アルジ達もおり、先程まで戦っていた立香達のりも前に立つ。
「っ⁉︎ へぇ〜……狂化を施されたアンタって意外と従順だったと思っていたけど?」
「まさか……ただ上っ面を偽ってただけよ。狂化されていなかったら誰がアンタに従うもんですか!」
「……いちいちむかつく言い草ね。今すぐ踏み潰してあげても良いけど?」
「やれるものならやってみなさい。私が逆に鉄拳制裁をお見舞いしてあげるわ」
正に一色触発の状況だった。そして邪ンヌの苛立ちを察してか、邪ンヌと一緒に伴って来たサーヴァント達も現れる。
「白髪の小僧、昨日ぶりであるな。昨日の借りを返しに来たぞ。それも最初から本気でな」
「そうね。今度は一瞬たりとも油断しないわ」
「今度こそ私の剣技で君を倒して見せよう」
昨日アルジ達に煮湯を飲まされた3体のサーヴァント、そして……
「マリー王妃……こんな所でお目にかかれるとは。さぁ、あの時の様にまた僕が貴女の首をはねて楽にしてあげましょう」
アルジと同じ白髪であるものの、どこか優しげのある顔をしていた。だが発言は危険人物そのものだと……聞いていたアルジ達皆に伝わる。
「そこにいるのは、シャルルじゃない。あなたもこの時代に召喚されていたのね」
「はい。そして今度も貴女を殺してしまう立場で」
「フランスで有名な処刑人の家系……サンソン家。しかもマリーと縁があるという事は四代目……シャルル=アンリ・サンソンか」
「そこの君は……初めて見る顔だけど、どうやら僕の事も知っている様だね。いかにも、僕がサンソン家四代目のシャルル=アンリ・サンソンという。まぁ短い間だけどね」
シャルルはそう言うと、丁寧なお辞儀をした。
「さぁ、軽めの挨拶も終わった所だし、早速目の前の有象無象を蹂躙しなさい。特にそこの白髪の奴を念入りにね」
邪ンヌがそう言うと、シャルルを交えた4人がアルジ達に向かう。
「相手もやる気か」
「あら? もしかして怖いかしら?」
「まさか。呆れてんだよ。昨日あれだけやったにも関わらず何も学ばずに突っ込んでくるところとかな」
「ふふっ。私もあっちにいた時はそう見えたのね。確かに滑稽に見えてしまうわ」
「でも今は違うだろ?」
「えぇ。私は貴方の指示通りに動くわ」
「俺が指示することなんてない。そもそも俺はアンタに回路は擬似的に繋いでいるが、マスターって訳じゃない。まぁ例えアンタのマスターとして、指示する事があるとすれば……」
「生きて帰って来い、ってぐらいだな」
「……はい。私は、貴方が言ってくれたその願いを叶えます。全力で」
「もぅ、アルジったらマルタとばかりイチャついてちゃダメでしょ? 私にも指示を出して頂戴」
「それなら僕にも出してほしいかな? “マスター”」
「モーツァルト……わざとマスターのところ強調しやがったな」
「まぁ良い。全員……生きて戻って来い」
「「「 分かったわ(よ)マスター!」」」
「よし……それじゃあこっちも迎え撃つ!」
アルジを先頭に、邪ンヌ達を迎え撃つ。アルジにその命令を下されたマリー達の顔はとても生き生きしていた。
どうやらマルタさんもアルジに堕とされてしまった模様! それに負けじとマリーも果敢にアピールしていく! (本人がどう思って行動しているか分からないが……)
さてアルジさんはこの2人のアピールにどう立ち向かうのか‼︎
「いや、だから俺はオフェリア一筋だと……」
次回もお楽しみに
今作品ではヒロイン多数で出しておりますが、プロローグ時点で既に2人ヒロイン出しています! そこで質問ですが、読者の皆様でしたらヒロインの中でどなたを正妻にしますか⁉︎
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ルヴィアさん
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オフェリアさん
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まだ見ぬ他のサーヴァント