また前話からの続きから書き連ねていきます。
そして今回のサブタイトルから既にネタバレ気味ではありますが、読んで頂ければ幸いです。
side 邪ンヌ
「……なんなのよアイツは」
そう小さく呟いたのは邪ンヌだった。ファヴニールに乗って配下のサーヴァントと共にオルレアンに戻るところであった。しかし皆覇気がない。それもそのはずで……
『グゥゥゥ……』
邪ンヌが乗っているファヴニールがボロボロだったのだ。至る所の鱗は剥がれ、翼膜も少し破れているところがある。
(あんな人間がどうして……)
それは約1時間程前に遡る。
「さぁファヴニール! 目の前にいるそいつを踏みつけなさい‼︎」
『グルァァァッ‼︎』
黒い巨体、ファヴニールの腕がアルジを叩き潰さんと振るわれる。
「アッハッハッハッ、あんたらの要であるマスターが潰されちゃうわよ‼︎」
邪ンヌは、主にアルジに付き従う3体のサーヴァントを煽る様に言った。しかしそのサーヴァント達はその言葉には耳も貸さずに目の前の敵に集中していた。
(はぁっ⁉︎ なんでこいつら焦りもしないのよ⁉︎)
そんな事を思っていた矢先だ。
「ふふっ、そんな事で私のマスターが潰されるわけないわよ」
「そうだね。アルジは色々と規格外だし」
「私達はアルジを信じているもの。それにアルジも私達を信じてくれているわ!」
そんな言葉を返される始末。それも3体で4体と戦っている中余裕の表情で……
(本当に何なのよこいつら⁉︎)
「でも! そんな減らず口もここまでよ‼︎」
ファヴニールの腕がアルジに振るわれた。その振動は、背後で邪ンヌが連れ立ってきたワイバーン達と戦っていた立香達の元にまで届く。立香達も不安そうに目を向けていた。
「フンッ! どうって事ないわね‼︎」
ファヴニールが腕を振るって数秒、アルジの方から何も動きがない事に邪ンヌは勝ち誇っていた。邪ンヌの勝ち誇った台詞に、立香達も焦りを見せた。
まぁそれも……
「はぁ……そんな攻撃で俺が潰されるとでも?」
「なっ⁉︎」
ひとりでにファヴニールの腕が持ち上がった。否、持ち上げられた。
「全く……伝承に残っていたファヴニールの力を直に味わおうと“わざと”避けずに受け止めてみたが……見当違いだったか」
ボギッ
『ガァァァッ⁉︎』
「う、嘘でしょ⁉︎ ファヴニールの指を……ただの人間が、ただの魔術師がただの腕力だけでへし折るなんて⁉︎」
「……前から言っているはずだ」
ファヴニールの巨体がアルジの腕力だけで徐々に浮き上がる。
「俺は普通の人間ではないと」
そのままアルジはファヴニールを町の外まで腕力のみで投げ飛ばした。しかも使ったのは腕一本である。
そこからは圧巻であった。アルジは呼び出したナイフでファヴニールを斬りつける。それはファヴニールの硬い鱗ですら防ぐ事が出来ないほどの斬撃であり、翼膜もそれに巻き込まれる形で傷付いていた。
そこから辛うじて脱出出来たのは、一重についてきていたサーヴァント達が途中で割り込んで来たからだ。ヴラド達はアルジから邪ンヌを守る為に宝具などを駆使してアルジを引き離す。
その行動が功を奏したのか、邪ンヌは何とか戦線を離脱。サーヴァント達も撤退した。
しかし彼らは知らない。アルジがわざと途中から手を抜いて逃した事を……この時は全然思いもしなかったのだ。
side out
「私達がもう少しあの場にたどり着けていたのなら、逃す事も無かったはずなのですが……最低でもあの場にいたサーヴァントの1騎は倒せたと思います」
「まぁ過ぎた事は仕方ねぇさ。どの道最後にはあいつらと殺り合うんだ。だからその悔しさとかはその時まで持っとけよ」
「そう……ですね。そうする事にします! 今はジークフリートさんの呪いをどうにかしないといけませんから」
『それだったらここから二箇所の地点で、サーヴァントの反応をキャッチしたよ。ご都合主義みたいな感じでいったら、この地点のどちらかでジークフリートの呪いを解除できるサーヴァントに会えるかもしれないね』
「そうだな。それで、どうやって別れる?」
「だったら私とジャンヌで少し遠い所に行ってみようかしら! こっちとしても人数が少ない方が動き易いし、何より連れ帰ってくる時も大所帯じゃ無い方が動けると思うわ! それとジャンヌとももう少し話しておきたい事もあるし」
「そうだな。それじゃあ遠い地点のところはジャンヌとマリーに任せる。後はここから近い場所に行くか。取り敢えずこれ渡しとくから、なんかあったら連絡してくれ」
「分かりました」
アルジはジャンヌに通信機を渡す。
「マリー」
「どうしたのアルジ?」
「これは俺の勘だが……嫌な予感がする。危なくなったら直ぐに俺を呼んでくれ。その時は直ぐに駆けつけるからな」
「ふふっ、アルジったら心配性なんだから。でも、分かったわ」
そうしてアルジ達とマリーは別行動に移った。
それから数時間後……
(……予想はしていたが、生で見るとこれほど過激だとは)
「せ、先輩……多分この方達もはぐれサーヴァントだとは思うのですが……」
「で、でもこれどうやって声をかけたら良いんだろう?」
「……仕方がない」
「あ、アルジどこいくの?」
「そんなもの決まっている……
あの中に飛び込んで仲裁してくる」
そう言ってアルジさんは街中のど真ん中で戦っているサーヴァント達の仲裁をしに行きました。
side ???
この感情は、何と言うのでしょうか? 簡単に言い表すのなら、怒りと答えるのでしょうが、何故か目の前のサーヴァントを見るととてつも無く腹が立ちます。
というのも、私とキャラが被っているのです! 竜属性というのも、お姫様属性というのも、西洋と東洋では少し違いますが大体被っています‼︎ ただ似ていないところとすれば、目の前の子の方が歌がド下手と言ったところでしょうか?
「ちょっとぉ‼︎ 今さっき私の事貶したでしょう⁉︎」
「はっ? いきなり何を言っているのですか?」
「惚けないでよ! さっき心の中で私の事貶したんしゃないかって聞いてるのよ‼︎ それも私とキャラ被ってるし‼︎」
「それは私の台詞です。嫌だというならあなたが変えてください」
「誰が変えるものですか‼︎」
そう言いながら私達は、街中だというのに争い事をしておりました。私としては不本意なのですが……
「もぉっ! こうなったらこれで行くわ‼︎」
「そちらがその気でしたら私も本気を出して差し上げます!」
相手が宝具で攻撃しようと感じ取った私は、自分の宝具をぶつけようとしました。ただその時……
「そこの2人! こんな街中で争い事を起こすな‼︎」
本当はその声を無視しても良かったと思うのですが……その時何故か……
(あぁ……何故だか懐かしい感じが致します……)
それは……あの時の初恋。安珍様に出会った時と同じような感覚でした。
(もしかして……貴方は安珍様の生まれ変わりでしょうか?)
私はそれを聞きたいが為に、戦闘の手を止めました。
side out
取り敢えずこれ以上被害が出なくて良かった。そう思いつつも俺は2人を近くに来る様に呼んだ。
片方は戦闘の邪魔をされたせいか不機嫌な表情を出していたが、もう片方は……
(何でそんな笑顔でいる? 敵意は感じないが……少々不気味だな)
まぁ何はともあれ……
ゴチンッ‼︎×2
「い、イタイです……」
「イッタァーッ⁉︎ な、何するのよ⁉︎」
「テメェらが街中で暴れてたのが悪いんだろうが! 悪いと思うなら、街中で急に宝具を出そうとした自分の稚拙さを呪え‼︎」
「な、なぁんですってぇ⁉︎」
「うるさい」ゴチンッ!
「ま、また殴ったわね⁉︎ 親にも拳骨落とされた事ないのに‼︎」
「怒られないで立派な人間になれると思うな!」
「あんた何様よ⁉︎」
「自分は自分だ。だが誰かが何か間違いを起こしているのなら、今回の様に注意して宥めて諭すのも人間の役割の一部だと思っているが?」
「あ、あんた歳幾つよ⁉︎」
「今年で17だったか?」
「何でそこで疑問形なの⁉︎ ってそれが事実だったら私よりも年下じゃないのよ‼︎」
「注意するのに歳とか関係あるかよ! 分かったらお前ら周りの人に謝れ」
遠くからこの様子を見ていた立香達は、また始まったよとばかりの苦笑を浮かべていた。最もそんな事はアルジに関係ない事だが……
「な、何でアンタにそんな事いw「町の皆様、この度はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」な、アンタ何を……」
「私も頭に血が上っていたのです。それで町の皆様に迷惑をかけたのは事実。謝るのは当然の対応です。それに……」
「安珍様にそうお叱りを受けたのでしたら、素直に謝らざるを得ませんから」
「……」
(俺が不気味に思っていた感覚はこれか……)
本来ならば立香の事を安珍と呼ぶ筈だが……まさか俺が介入した事でその役回りが回ってきたって事か……
(それでも俺は安珍ではないし、嘘をつかずに接するが……)
取り敢えず話しかけるか。
「安珍……とは俺の事か?」
「はい! まさしくその通りでございます‼︎ 貴方は、私が待ち焦がれていた安珍様本人! 若しくは生まれ変わりでございましょう‼︎」
「……俺は安珍本人でもなければ、生まれ変わりでもない」
「……えっ?」
俺がそう受け答えをすると、目の前のサーヴァントから笑顔が消えた。いや、笑顔は消えていないが、目が笑っていない。まぁ関係なく否定するが……
「そういえば名前を聞いていなかったな」
「そ、そうでしたね……では改めまして。私の名前は清姫と申します。以後お見知り置きを」
「そうか……アンタがあの安珍・清姫伝説の清姫か」
「はい、その通りです」
「それじゃあ次は俺の名前だな。俺はアルジ・ミラージ。生粋の外国籍だ。最早日本との関係も、ここにいる立香以外無いわけだが……」
「そ、そんな……でも今私が抱いているこの感情は正しく……」
「だが君は嘘が嫌いな筈だ」
「っ⁉︎」
アルジがそう言い当てた瞬間、清姫は驚く。
「君は……その安珍って奴に自分の想いを裏切られて嘘が嫌いになった。そして相手が嘘をついている事も直ぐに分かる様になった……違うか?」
「……いえ、その通りです」
「なら、俺が今まで嘘を言ったかどうかもハッキリと分かるな?」
「っ⁉︎ そ、そうです。あなた様は確かに……私に対して嘘を一言も仰っていない」
「ですが! ですが……なら今私が抱いているこの感情は何なのですか⁉︎ この感情は正しく……安珍様に出会った時と同じ感覚なのに、でもあなた様は安珍様ではない⁉︎ それも嘘ではなく誠なのに……わ、私は……」
「清姫‼︎」
「っ⁉︎」ビクッ
アルジは目の前の人物が安珍、若しくは安珍の生まれ変わりでない事実と、その事実を知った上で自分の中に渦巻く感情の矛盾で錯乱している清姫に、強い瞳を向けながら清姫の両肩に手を置いた。
「清姫……俺の目を見ろ」
「あ、あなた様の目を?」
「そうだ。目の前の現実と、心の中で抱いている感情に多分混乱していてどうして良いか分からない。多分アンタの中はそうなっている筈だ」
「でも俺は、アンタの中に渦巻いている感情が嘘ではなく、誠から出ている事だと思っている」
「えっ?」
「確かに俺が本当は安珍って奴の生まれ変わりで、昔の記憶も覚えていたのなら、俺は素直にアンタに謝罪もするし、その責任だって取ってやる」
「だが俺は……アンタが分かっている様に安珍本人でもなければ安珍の生まれ変わりでもない。だから軽々しくアンタが今抱いている感情に対して責任を取るなんて軽々しくは言えない」
「それでも、アンタが感じている感情自体は否定しない。その感情自体に間違いなんてないのだから……」
「なら、ならこの感情は一体何なのですか⁉︎ あなた様が安珍様でないのなら……この感情も……嘘……に……」
「そんな訳ねぇだろ?」
「ど、どうして……」
「そんなの決まっている。抱いている感情が似ていたとしても、抱いている対象が違うからな」
「っ⁉︎」
「分かったか? まぁだからこそ俺とその安珍って奴を混同してしまった事は何となく分かる」
「そんな訳で……だ。あんまり思い悩むなよ。清姫は……そんな思い悩んでいる顔よりも笑っている顔の方が綺麗に見えると思うぜ?」
「っ⁉︎///」ズキュゥーンッ‼︎
清姫の中で何かが撃ち抜かれる音が響いた。
一方……
「あ、あああアイツ人前で何って事してくれてるのよ⁉︎ 見てるこっちまで恥ずかしくなってくるわよ⁉︎」
「むぅ……アルジがまた女を拐かしたわ……」
「ね、ねぇマシュ……これって……」
「は、はい……この状況は要するにあ、あれな現状だとお思われます!」
『お、落ち着くんだ皆! ここは僕の恋愛の師匠であるマギマリに聞いて対処するべきだと思うんだ‼︎』
『いや逆にあなたが落ち着きなさい⁉︎』
「全く……アルジの坊主もやるねぇ〜」
「……いや、あれはそもそも天然の類だろ? 本人も彼女を落とした事に気付いている様子が無いし【パコンッ】っ⁉︎ だ、誰だ私の頭にブーメランを投げた奴は⁉︎」
とまぁ、目の前のやりとりに女性陣は主に頬を赤らめ様子を窺っており、男性陣は戸惑うもの(1名)や、やりとりを見てその様子を楽しむもの、また自分の発言がブーメランだと気付かず発言している者がいたが……
とにかく早い話アルジはまた知らぬ間に女の子の心を掴んでしまったのである。
「あぁ……漸く分かりました……この感情に対する答えが」
「そうか」
「はい。私は……
安珍様より貴方様の事が好きになってしまいました♡」
「……俺の事がか?」
「はい。これは紛れもなく……私の真の想いです」
「……すまないが、俺には好きな人がいる」
「……そう、ですか」
「あぁ、だかr「それでも」……?」
「それでも私は、この感情を諦めたくありません。だからこそ私は……正室でなくとも貴方の側室になれればと思っています。一瞬でも構いません! 私の事を……愛して頂けるのならば私は、貴方様にずっと付いて行きます‼︎」
「……清姫の気持ちは分かった。だが俺も、自分自身の好きな人に告白の返事を返していねぇから、その結果次第だ。それでも良いか?」
「っ‼︎ はい! 貴方様のお返事……お待ちしております‼︎」
とまぁ、最終的には保留の形でその場は収まる。だがそれと同時に……
「っ‼︎ マリーが危ない」
「あ、アルジどうしたの⁉︎」
「マリーの所に邪ンヌとファヴニールが来てるみたいだ」
「「「っ⁉︎」」」
「そ、それは急いで救援に行きましょう‼︎」
「いや、俺が行ってくる。立香達はここで待っててくれ。これを機に敵がいつ襲ってくるか分からないからな」
「私も何かお力になれませんか? 私の宝具でしたら徒歩よりも早く目的地に着けると思うのですが……」
「気遣いはありがたいが、清姫もここで待機しててくれ」
「で、ですが……貴方様は人の身です! 私達サーヴァントよりも身体の作りなどは……それにもしもの事があれば私は……」
清姫が何かを言い出そうとするが、口に出る事はなく俯いた。だがそれも……
「清姫、俺なら問題ない。さっさと終わらせて帰ってくる。俺が嘘を言っている様に見えるか?」
「っ⁉︎ いいえ……貴方の言葉に嘘など見当たりません……」
「なら信じて待っとけ」
アルジはそう言いながら清姫の頭を3回ほど、安心させる様に触れた。
「じゃあ俺は救援に向かう。また何かあれば無線機で呼んでくれ」
その言葉を残してアルジはマリーたちの元へと飛び出して行った。
「ねぇ……あれ最早人間やめてない?」
「私の将来の殿方に対してなんたる言い草ですか⁉︎ だからあなたは品性のかけらも無いトカゲ娘だと言ったのです‼︎」
「何ですってぇ⁉︎ またやるって言うんなら今度こそ容赦しないわよ‼︎」
アルジが飛び出して直ぐ、そんな一面があったとか無かったとか……
※また喧嘩に発展しそうになったので立香達が必死に止めに入りました。
さて、アルジくんがまた知らずのうちに女性を堕としてしまいました。しかも今回は即行で告白されています! といってもアルジくんは一途なので最終的に断ってしまうかもしれませんが……
「作者がそうやって書いてるくせして何いってんだよ? しかもあのやり取り不自然過ぎるだろうが! 1月以上書かなかったつけが回ったな」
……作者である私にまで説教してきた…と言うわけで、次話はもう少し早く更新出来ればと思っております。
今作品ではヒロイン多数で出しておりますが、プロローグ時点で既に2人ヒロイン出しています! そこで質問ですが、読者の皆様でしたらヒロインの中でどなたを正妻にしますか⁉︎
-
ルヴィアさん
-
オフェリアさん
-
まだ見ぬ他のサーヴァント