月鋼 ー復讐者の人理救済ー   作:橆諳髃

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23話までに新しく評価して下さった読者の皆様

☆10 明太子が好きなスクランブルエッグ 様
☆9 朧月412 様 タスクフェルス 様
☆1 dinosan 様

ご評価いただきありがとうございます! これからも頑張って投稿していきます!

さて、今回は第3章の始めを書いて行ったのですが、そこへいく前にぐだぐだイベントを挟み込んでいます。なのでぐだってる感ありますがどうかお許しを……という事でスタートさせていきます!




本編1部 第3章 封鎖終局四海オケアノス ー復讐者は嵐でさえも斬り開くー
23話 復讐者のぐだぐだな1日と次なる特異点へ


 

 

 

 第2特異点での戦いが終わって数日……アルジはいつもの様に自分をマスターだと慕って契約(彼は未だに仮契約と言っているが……)しているサーヴァント達と模擬戦をし、戦闘力向上に努めていた。

 

 新しく加わったブーディカ、アルテラ、嫁ネロ達も加わってアルジ対彼女達計8人でやっていたのだが……未だに誰もアルジに攻撃を加えられた者はいない。

 

「ぬぅ……8人がかりでやっても攻撃を当てられないとはな……」

 

「あの特異点でも凄いな〜とは思ってたけど……ここまでの差があると自信無くしちゃうな」

 

「やはり一筋縄ではいかないか……これが悪い文明に傾くと考えると……」

 

 セプテムから新しく入った3人は苦しい顔をしながら呟く。一方のオルレアン組は……

 

「……ようやく今のアルジの速度に慣れたわ」

 

「そうね。あともう少しで当たりそうな気がするわ」

 

「僕は何回やっても無理っぽいな〜って思いながらやってたんだけどね!」

 

「あらそう? でもアマデウスの援護もなかなか様になってきたのではないかしら?」

 

「それを言うならマリーこそ、魔力の質があの時よりも高くなってる気がするね。これからあの時のファヴニールも1人で倒せるんじゃない?」

 

「あの時のファヴニールくらいだったら聖杯使わなくても私の魔力で呼べるわよ?」

 

「えっ⁉︎ 呼べるの⁉︎」

 

「でも今はアルジと特訓中だし……」

 

「少し話は聞こえていたが、邪ンヌの呼び出すファヴニールとやりあうって?」

 

「えぇ。でも良いのかしら? 今はアルジと特訓中だし……「別に良いんじゃあねぇか?」えっ? 良いの?」

 

「あぁ。俺はあくまでも邪ンヌやマリー達がどんな敵に襲われても対応できる様に……傷付かないようにとしているだけだ。もし今の力が当時のファヴニールに通用するかどうかを試したいのなら、それは全然構わない」

 

 まぁするならダヴィンチとかに許可は貰ってくるからその時は言えよ、とアルジの言葉もあったため、マリーはファヴニールと力試しという名目で戦ってみたいとアルジにお願いした。

 

 それに対してアルジも二つ返事で了承しダヴィンチなどに許可を取る。それから話はとんとんと進んでいき、結果としてはマリーが当時の力同等のファヴニールに余裕で勝利した。

 

 そんなやりとりがあった帰り道……

 

(日に日に強くなっているな……)

 

 あくまでも自分は仮契約と称しているが……それでも自分の事を慕ってくれているサーヴァントが強くなる事は嬉しいと感じる。

 

「あんな思いは2度とゴメンだからな……」

 

 ボソリと呟くその台詞には悔しさが滲み出ていたが、現在1人でいるためにその言葉に返す者はいない。

 

「ゴフッ……⁉︎」

 

 アルジがそう思いながら歩いていると、近くで吐血を吐く様な……とにかくそんなものが聞こえた。聞こえた方向に歩を進めると、見知らぬ女性がうずくまっている。

 

 様相としては和服……江戸時代の召し物だろう。上がピンクで下が赤紫色の袴を着ており、腰には刀を差している事から武士という事は分かる。

 

 だが口を押さえている手から血が溢れている事が分かるほど重症の様だ。

 

「(コイツは……いや、今はそんな事よりも)おい! 大丈夫か⁉︎」

 

「あ、あなたは……いえ、お構いなく! これはいつもの事で……」

 

「んな事言ってる場合かよ⁉︎ とにかく運ぶぞ!」

 

「えっ? きゃっ⁉︎」

 

 アルジは構う事なく運んだ。それもお姫様抱っこで……

 

「ちょっ⁉︎ そんな事したらあなたが血で汚れてしまいます! 私は1人で歩けますから……」

 

「んな事言って急に倒れたらどうすんだよ⁉︎ それにもうこの形で運んじまってるんだ。それからだと俺も寝覚めが悪りぃから……だから我慢しろ」

 

「っ⁉︎ は、はい……」

 

 そこから女性はアルジに言われるがまま黙って運ばれた。

 

 

 

 

 

 

「気分はどうだ? いくらか落ち着いたか?」

 

「は、はい! その、見ず知らずの私なんかを助けて頂いてありがとうございます! それであなたが良ければこの恩を返させて頂きたいのですが……」

 

 女性を自分の部屋まで連れて行き、取り敢えずベットの上に座らせた。そして水と薬を用意して、体調は落ち着いた様だった。

 

 因みに薬はアルジが即興で作ったもので、製法は企業秘密である。

 

「恩? 別に俺は俺がしたいと思った事をしただけだからな」

 

「ですがこれでは私も……ですね……なんかこうむず痒いというか……と、ともかく! 何かあなたの役に立てる事はありませんか⁉︎」

 

「役に立てる事……な……因みにアンタは何が出来るんだ?」

 

「そうですね……1番得意なのは斬る事です!」

 

「きる……野菜とかか?」

 

「そ、それも得意ではありますが……」

 

「ふむ……(つっても正体知ってるしな……)」

 

 アルジはfgoの知識を持っている為に、目の前にいる女性が誰なのか分かっていた。といっても本来語り継がれている歴史では男なのだが……

 

「そういえばアンタの名前を聞いてなかったよな? 俺はアルジ、アルジ・ミラージだ。奇妙な縁にはなったがよろしくな」

 

「アルジさん……ですね? 私は「あっ……悪い、ちょっと待ってくれねぇか?」ど、どうしたんですか?」

 

「いや、俺から自己紹介を振ったのもなんだが……アンタをここに運んでて後回しになっている事がある。寄るところがあってな。そんなに時間はかからねぇからここでゆっくりしてな。アンタの名前はその後で聞くから」

 

「そ、そうだったんですね……それは間の悪い所で……」

 

「気にするな。それにあそこでアンタを知らぬフリしてってやったら……俺が自分の事を許せねぇからな」

 

 それじゃあ安静にしとけよ、とアルジは部屋から去り、オフェリアの所へ向かう。今日あった事を彼女に話す事はレイシフトを除き……彼の日課となっていたから。

 

 

 

 

 

 

 

side ???

 

 

 

 

 

 

(とても……優しい人ですね)

 

 私はいつの間にかここに呼ばれた。何の為に呼ばれたか分からない……けど

 

(もしかして……あの人が私のマスター、なのでしょうか?)

 

 幸い聖杯戦争の知識はあるので、その関係で呼ばれたのだろうかと思う。アルジさんとは魔力的な繋がりは感じなかったものの、それでももし彼が戦いに巻き込まれて助けを求めるのであれば……

 

(見ず知らずの私を助けてくれた恩を……返したいですね)

 

 といっても彼は彼女の助けがなくてもそんじょそこらの戦闘はこなせる。というより圧倒できる。

 

 ただそれを知らない彼女は……過去何をしていたにしろ心根が優しい者に変わりは無い。

 

(にしても、アルジさんから貰ったお薬を貰ってからいつもより調子が良いですね? もしかして高名なお医者様なのかな?)

 

 そんな的外れな事を考えながらベットの上で安静にしていると、扉が開いた。

 

「あれ? 随分早かったですねアルジさん。何か忘れ物でも……」

 

 そう言いながら振り向くと、そこにはアルジではなく……

 

 

 

 

 

 

「ノブーッ!」

 

「ノブノブッ‼︎」

 

「ノッブァーッ‼︎」

 

 何やら2頭身で黒い軍服を纏った奇妙な生き物が複数体いた。

 

「っ⁉︎ 何者ですか⁉︎」

 

「ノブッ!」

 

 奇妙な生き物は、これまた火縄銃が簡単にデフォルメされた物を彼女に向けて放った。

 

 それを圧倒的な瞬発力をもって避ける。

 

(はっ⁉︎ つい避けてしまいました! アルジさんの部屋に穴が……これは後で謝って直すしか無いですね……それにしても問題は)

 

 彼女は奇妙な生き物に改めて意識を向ける。

 

(いつの間にか数が増えている。私が壁の穴に意識が向いた瞬間に外にいたものが入ってきた……敵の数が分からないのは少し厳しいですが)

 

「取り敢えずあなた達を斬り伏せます!」

 

 そう宣言したと同時に彼女の装いは変わった。ピンク色の着物が白く薄い物に変わった。

 

「新選組1番隊隊長……沖田総司! 参る‼︎」

 

 目にも止まらぬ速さで生き物を斬り伏せる。そうした際生き物は涙目になりながら消えていくのだが、彼女はそんな事お構いなしにどんどん倒していき、最終的には1匹? もいなくなった。

 

「ふぅ〜……なんとかなりましたね。それにしても本当にいつもよりも調子が良いです! やっぱりアルジさんはっ⁉︎ ゴフッ⁉︎」

 

 またしても彼女は吐血した。それも先程とは比べ物にならない程だ。

 

(あぁ……アルジさんの部屋……私の血で汚しちゃった……謝らないと……)

 

 そう思いながら、彼女の意識は朦朧としていく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

(いつもの時間より少し遅くなっちまったな……)

 

 まぁ目の前で苦しんでいる奴を放っておいてオフェリアの所に行ったら……それこそ軽蔑される。それに俺自身が許せねぇし……

 

「にしても、今日は何の話をするかな……」

 

 そう呟きながらオフェリアが眠っている治療用コフィンの部屋へと入った。

 

「ノブーッ!」

 

「ノブノブッ‼︎」

 

 だが先客がいた様で……黒い帽子と黒い軍服を着た2頭身の生き物が複数体騒いでいた。その内1体は治療用コフィンの上で飛び跳ねて「あぁっ⁉︎」悲報……アルジがブチギレる。

 

「……領域展開」

 

 セプテムの特異点で初めて見せたアルジの宝具……オフェリアを傷付けた張本人(分体)であるフラウロスに対して行った。そこにはかなりの怨み憎しみが宿っていたが、今回も同じくらいアルジの癇に障った。

 

 宝具の効果がその部屋を埋め尽くし、そこに陣取っていた生き物共々引き摺り込む。それを感じ取り、一目散に逃げようとしたものも領域の侵食に呑まれてしまった。特にコフィンの上で飛び跳ねていたものはいの一番に巻き込まれた。

 

 全ての生き物が領域に取り込まれて数分……中からアルジだけ出てくる。出終わった後、領域は完全に消滅した。そしてアルジはまるで何事もなかったかの様にコフィンに近づきオフェリアに話しかける。

 

「急に叫んで悪りぃ……うるさかったよな」

 

 コフィンに手を付き、反省した顔をしながら語りかける。

 

「本当ならもっと楽しい話とかしたかったけど……悪りぃ。ちょっと心配事があってすぐ戻る。それが終わってからまた来るよ」

 

 アルジは眠っているオフェリアにそう告げて部屋から出て行く。出て行った後、コフィンの側に透明な少女が立っており、笑みを浮かべていた。まるでアルジを見送る様に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が急いで部屋に戻ると、さっき助けた女性が先程よりも口から血を流して倒れていた。

 

「おいっ! 大丈夫か⁉︎」

 

 すぐ駆け寄って彼女の容体を確認する。

 

「あ、アルジさん……ごめんなさい。今度は部屋を汚してしまって……」

 

「んな事どうでも良い‼︎ それよりもアンタの身体だろ‼︎」

 

 アルジは彼女をお姫様抱っこしてベットに横たわらせる。

 

「プライバシーは重々承知だが、身体の状態を見るぞ」

 

「そ、そんな……これはいつもの「いつものじゃあねぇだろうが!」っ⁉︎」

 

「さっきの時はそこまで顔が赤くなかったし息苦しくもしてなかった。魔力切れとかが原因でなってるかなんて分からねぇ……それでもアンタに渡した薬がその要因になってるってぇなら俺に責任があんだよ」

 

「だから……完全に今の症状を治せる保証なんてどこにもねぇけど……アンタの身体の状態を見させてくれ……!」

 

 必死な様子で彼女に頭を下げるアルジ。その様子に彼女は……

 

(あぁ……この人は真っ直ぐな人ですね……)

 

 その姿勢がとても好ましく思えた。もしも自分が生きた時代にアルジがいたら……

 

「私のこれは……英霊になってもなお、歴史や人々がそうであろうという逸話からの体質、一種の呪いです。聖杯に願ったとしても……これを打ち消す事はできません。それでもアルジさんは……」

 

「聖杯で治せないからって……俺がそれを放ったらかしたり、諦めたりする理由にはなんねぇ。だから俺は何回でも言おう。諦めているかもしれないアンタに……見させてくれと」

 

「……ふふっ、アルジさんは頑固……なんですね」

 

「あぁ……自分でもそう思ってる」

 

「……分かりました。あなたがそうしたいと言うのなら……どうぞ、私の身体を見て下さい」

 

「ありがとう」

 

 アルジは彼女のステータスを確認する。すると……

 

(コイツが原因か)

 

 彼女のステータスに病弱というものがある。生前の病、そして人々が抱いた心象によって付与された一種の呪いである。本来ならばそれも正常に見れる様にはなっているが……

 

(テレビの砂嵐の様に文字化け起こしてやがる……という事は)

 

 やはり俺が投与した薬の影響だろう。平常時であれば問題はないが……格好からみたところここにも変な……チビノブの奴らが来たんだろう。それを迎え撃つために戦って……

 

(何にせよ俺が投与した薬が原因だ。なら……)

 

「急で悪いが……俺の血を飲んでくれねぇか?」

 

「あなたの血を……?」

 

「あぁ。アンタが持つその苦しみを断ち切る為に。そして……傲慢かもしれないが、アンタの願いも叶える為に」

 

「っ⁉︎ 最初から……私の事を……」

 

「知識としてだけだが……知ってたよ」

 

「……そうですか。分かりました。それに私は既にアルジさんに助けてもらっていますし、それに対しての恩を返せてはいないのですが……」

 

「今の私を……できればで良いです。戦えるまでの身体に治してくれませんか?」

 

「元より俺はそのつもりだ。それに……それ以上に治せたらって思ってる」

 

「ふふっ……さっきも言いましたが、私のこれは一種の呪いです。だから、治せなかったとしても、今のこの状態が戻らなくてもあなたを恨みません。アルジさんの……真っ直ぐなその気持ちが、私は嬉しかったので」

 

「ありがとう。じゃあ……始めるぞ」

 

 アルジはいつものナイフを取り出し、左手の親指の腹を少し傷付ける。そこから少量の血が出てきたのを確認すると、それを彼女の口元へ……

 

「では……」

 

 彼女もそれを受け入れ、アルジの血を舐めとる。

 

「っ⁉︎ んっ……くっ……」

 

 なめとった瞬間、彼女が何かに耐える様子だった。アルジと魔力回路が繋がった瞬間である。

 

「来い」

 

 アルジが左手にデモリッションナイフを呼び出し、展開する。展開したと同時に、デモリッションナイフを中心にして空間が広がった。

 

 その空間は……ただただ青く、地と空の境界線が分からないほど綺麗な場所だった。足元はいつの間にか澄んだ水で満たされ、空も綺麗な水色で、その水色に雲が優雅に漂う。そんな場所に2人は立っていた。

 

「俺は願う……」

 

 アルジがデモリッションナイフを両手で構えながら言葉を紡ぐ。

 

「彼女が今この時より……歴史や後世に語られた人々の心象によって植え付けられた呪いから解放される事を願う」

 

 身体に魔力を纏う。

 

「彼女の願いがこれから世界で……無事に叶う事を願う!」

 

 身体を伝ってデモリッションナイフにも莫大な魔力が纏わりつく。

 

「だから……」

 

 

 

 

 

だから力を貸せ! アスタロト‼︎

 

 叫んだ瞬間……先程まで纏っていた物とは比べ物にならないほどの魔力が噴き出る。その魔力は……周りの景色とは真逆で真紅に輝いていた。

 

「んっ……うぅっ……」

 

 それと同時に彼女の方にも変化が見られる。彼女の背後から何やら黒い粒子が集い始め、それが段々と形をなしていく。

 

『繧?a繧阪♂縺峨♂縺」縺」縺」窶シ‼︎』

 

 それは誰が見ても悪魔という程の姿をしていた。その悪魔は、何を叫んでいるのかは分からないが、アルジに対して激昂している事はアルジでも感じた。

 

「テメェがいるだけでこの子が苦しんでいる。その場所がいくらテメェにとって良いところであったとしても、この子を傷付けてまで居座って良いところじゃあねぇんだよ‼︎」

 

『縺サ縺悶¢荳狗ュ臥ィョ縺?≦縺?▲縺」縺」窶シ‼︎』

 

 彼女の呪いとも言うべき(悪魔)がアルジに襲いかかる。だが……

 

「彼女に抱かれた呪いを叩き斬る!」

 

『縺舌≦縺?≦縺」縺」縺」竅会ク⁉︎』

 

 そんなものはお構いなしとまず一太刀入れる。それによって病はのけぞった。そして……

 

「彼女のこれからの明日が輝く為に! 彼女の未来を斬り開く‼︎

 

『縺ゅ▲窶ヲ窶ヲ縺ゅ≠縺ゅ=縺√=縺」窶ヲ窶ヲ……』

 

 アルジに斬られた病は、身体を構成していた黒い粒子を霧散させて消え去った。彼女に巣食っていた呪いとも呼べる病は、今ここに絶たれたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……うぅん……あ、あれ? ここって……」

 

「気が付いたか?」

 

「あ、アルジさん……わ、私どれくらい気を失って……」

 

「あぁ、ざっと10分ぐらいだな」

 

「そ、そうなんですか? 私……アルジさんの血を飲んでから記憶が全然定まらなくて……」

 

「別に良いんじゃあないか? それよりも体調はどうだ?」

 

「た、体調ですか? あっ……なんかいつもより身体が軽い様な……」

 

「そうか、なら良かった」

 

「少し動いてきても良いですか?」

 

「あぁ、なんならトレーニングルームに行って試すか?」

 

「で、でしたら是非!」

 

 そしてアルジは彼女を伴ってトレーニングルームへ赴く。仮想敵をいくらか作り出して彼女の現在……病弱という呪い(スキル)が無くなった今が、果たしてどれだけの力になるのかを……

 

「では……行きます!」

 

 彼女の目の前に凡そ数百体の敵が出現する。人間サイズ同等のものもあれば、ワイバーンからファヴニールと同じ大きさのドラゴン……はたまた過去のデータから再現したサーヴァントまで……

 

「シッ!」

 

 だがそれも……今の彼女の前では何の障害にもならない。敵の攻撃は、持ち前の俊敏性で悉く避けられ、見失った間にいつの間にか斬り伏せられる。

 

 味方を巻き添えにしかねない広範囲な攻撃も……全くもって意味を成さなかった。

 

 そして最後の1体を斬り伏せる。

 

「どうだ? 体の調子は……っ⁉︎」

 

 アルジが彼女に問うと、彼女は泣いていた。これは予想外の反応だった為にアタフタする。

 

「す、すみません……生前の頃よりも身体の調子が良かったもので……それに、こんなに激しく長時間動いても吐血どころか気怠さも無いのが……こんなにも気持ちが良いものなんだって」

 

 涙を流しながらも、嬉しそうな笑みでアルジに言う。

 

「アルジさん、あなたには返し切れない程の恩を頂いてしまいましたね……」

 

「……俺は別に恩を売ろうなんて思っちゃあいねぇよ」

 

「それでも……私はあなたに助けられました。だから決めました。私の一生をかけて貴方の傍に寄り添う事を」

 

「はっ? 寄り添う?」

 

「はい。多分知っていると思いますが、私はサーヴァントとしてここに呼ばれました。どうやら聖杯戦争とは無関係の様ですけど、でも私が呼ばれたのは何か意味があると感じて」

 

「それで俺の傍に?」

 

「はい」

 

「……その意味が俺の傍にいるって当てはまる事はないと思うが」

 

「そんな事はありません。もし呼ばれた意味が何も無いのであれば、私自身がしたいと思った事をするまでです」

 

「でもアンタの願いは最後まで戦い抜く事じゃあ無かったのか?」

 

「確かにそうですし、今もその願いに変わりはありません。でも今私の中にもう1つ願い事が出来たんです……本気で、貴方の傍にいたい。貴方の事を生涯かけて守りたいって」

 

(……はぁ〜、これはもぅあれだな)

 

「どう言ったってアンタの意見は変わらない様な気がするな」

 

 アルジも何を言ったとしても変わらないのだと悟った。

 

「えぇ、アルジさんがどう断っても……私の事を拒絶したとしてもついて行きますよ」

 

「分かった、降参だ。といっても俺はアンタの正式なマスターって訳じゃあねぇ。ここには俺以外にもマスターと呼ばれる奴はいるから、そっちが良かったらいつでもそっちに行ってもらって構わねぇよ」

 

「いいえ、私はアルジさんが良いんです」

 

「……まぁ何はともあれあれだ。よろしくな」

 

「っ! はい!」

 

 アルジと彼女は握手をした。

 

「そういえば私の名前をちゃんと言ってなかったですよね? では改めまして……」

 

「新選組1番隊隊長、沖田総司です。これより我が剣の全てを……貴方に捧げます」

 

「俺は先に名乗ったが、念の為もう1回言おう。アルジ・ミラージだ」

 

「はい! これから末永く! よろしくお願いしますね‼︎」

 

「末永く……ね」

 

 沖田の発言に少し顔を引き攣らせるアルジだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そういえばアルジさん! どこも怪我はしてないですよね⁉︎」

 

「怪我? 何の事だ?」

 

「いえ、私が今の格好をして倒れていた理由なんですが……アルジさんの部屋に2頭身の奇妙な生物が入ってきて……」

 

「あぁ……黒い軍服と軍帽被ったやつか」

 

「やっぱりアルジさんも狙われて……大丈夫でしたか?」

 

「別になんとも。逆に全て返り討ちにしてきたぐらいだな」

 

「えっ? 返り討ちに……?」

 

「あぁ。俺には……大切な人がいるんだが……とある事件に巻き込まれてな」

 

「用事って、もしかして……」

 

「あぁ、お見舞いにな。今は治療用のコフィンの中で意識がない状態なんだ。俺がどれだけ手を尽くしても……目が覚めなくてな」

 

「だから、今日起こった事や違う年代で体験した事を話したりして……本来彼女が体験するはずだった事を伝えてるんだ」

 

「そう……だったんですね」

 

「あぁ……だがそこにアイツらがいた」

 

「それも……その内の1匹はあろう事か俺の大切な人が眠るコフィンの上で飛び跳ねているときた。だからそこにいた奴らは返り討ちにして、あるところに閉じ込めておいた」

 

「あ、アハハ……それは……私も許容できないですね」

 

 アルジの、一瞬だけ垣間見た恨みの顔……それを見て沖田も少したじろぎはしたものの、アルジのその言については完全に肯定していた。

 

「だから俺は……こんな下らない事を引き起こした首謀者に対してこれから復讐しに行く」

 

「なら私もお供します」

 

「……危なそうな時は、まぁ俺が助けてやるよ」

 

「なら私も……アルジさんが危ない目に遭いそうな時は身体を張って守りますね!」

 

 沖田の言に、あまり無理はして欲しくないんだがと思いながらアルジ達は元凶の元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでその大元ってどこにいるんですかね?」

 

「大体の場所はあの生物に吐かせたから分かってる」

 

「……えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その元凶がいる場所では……

 

 

 

 

 

 

「いざ、____三界神仏灰塵と帰せ! 我が名は第六天魔王波旬、織田信長なり‼︎」

 

 とある所で世界の風景が一変する。それまでは昔の市場の様相であり、行き交う人々も活気に溢れていた。

 

 しかしながらそれもとあるサーヴァントにより辺り一面は燃え、寺の本堂と思しき所も業火に包まれていた。

 

 それを仕組んだのは悪しき心を強く持った織田信長であり、この世界を構築する事でカルデアへ進出するという狙いを持っていた。

 

「こ、これって宝具⁉︎」

 

 立香が驚きの声をあげる。

 

「確かにこれは儂の宝具の一部と言ってもいい。何せこの空間……あの時の本能寺と同じじゃし……にしてもあやつ、まさか儂の奥底に刻まれた風景を魔力で構築するとは」

 

 誤解しない様に言っておきますが、ここはぐだぐだな環境下であり、この場には良信長さんと悪信長さんがいます……そして今回の主犯は悪信長さんという訳で……

 

「フハハハハッ‼︎ 見よ! この圧倒的力を‼︎ この力を持ってお主達のカルデアとやらを……」

 

 我が物に……と言おうとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見つけたぞ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ⁉︎ な、なんじゃこの圧は⁉︎」

 

 悪信長が焦った表情を見せる。同時に……

 

 

 

 

 

 

バギンッ‼︎ドゴーンッ‼︎

 

 

 

 

 

「「な、なんじゃーっ⁉︎」」

 

「こ、これはっ⁉︎」

 

「まさかっ⁉︎」

 

 

 

 立香と悪信長の中間点上空が鏡の様に割れ、そこから黒光の鉄の様なものが一直線に地に落ちるのを見た。地面に鉄がぶつかったと同時に激しい音と土煙が辺りに舞う。

 

 それが少しずつ晴れていくと、2人分の影がそこに佇んでいるのが見える。やがて土煙が完全に晴れると……

 

「悪事はそこまでですよ」

 

 戦闘に特化した様な白い着物を纏った女性が刀を向けながら悪信長に言う。その隣には……

 

「テメェだな……俺の大切な者に手を出したド阿呆は」

 

 地に突き刺さる鉄血メイスを強く握りしめたアルジが鋭い眼光を放ち悪信長を睨み付けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(な、なんじゃこやつらは……)

 

 目の前の2人に初見でそう思った。1人は澄み渡る様な闘志を纏い静かにこちらを見つめている女性。見ただけで自分と同じ存在(サーヴァント)だと思った。だが……

 

(隣の男は……一体何者じゃ⁉︎ 下手をすれば儂の魔力を上回っておるではないか⁉︎)

 

「オイ……」

 

「っ⁉︎」

 

 ただ自分を呼びかけるその声音だけで萎縮してしまいそうな……

 

「テメェ……なんの為にこんな阿呆な事をやらかした?」

 

「な、何の為にじゃと?」

 

「2度は問わん。簡潔に答えろ」

 

「ふ、フンッ! 決まりきった事……この力をしてカルデアとやらに進出する為よ!」

 

「……そうか。まぁんな事をしたところでテメェに怒りなんて湧かなかったろうさ」

 

「えっ?」

 

 アルジの事だからてっきりそれで怒っているものだと……その場にいたりつかは思った。だが次の一言で「あぁ〜、いつものアルジだ〜」と思った。それは……

 

「だが! テメェのしでかした事で……オフェリアにまで害を及ぼすとはどう言った了見だ!

 

「お、おふぇ? な、何を言うて「惚けるな雑種‼︎」ざ、雑種じゃと⁉︎」

 

「コイツを放ったのは紛れもないテメェだろうがぁ‼︎」

 

 アルジはいつのまにかできていた空間の歪みに手を突っ込むと、そこからあの2頭身の生物を取り出した。それもその生物の頭をガシリッ、といった強い擬音が聞こえる程強く片手で持ち上げて悪信長に見せつける。

 

「あぁっ! それってチビノブだ!」

 

「まぁ……今更名前なんてどうでも良い。問題は……コイツが! オフェリアの眠るコフィンの部屋の中に複数いて馬鹿騒ぎしてやがった‼︎ コイツに至ってはオフェリアの眠ってるコフィンの上で暴れやがって……」

 

 言葉を連ねていく内にチビノブと呼ばれる生物を掴む手に更に力を込める。当のチビノブに至っては呻き声も出せず、顔色も土気色になっていた。そして……

 

「これは全て……テメェの監督不足だろうが‼︎ だから今この場で罰してやる‼︎ 私怨だなんだと言われてもな‼︎

 

「そこは私怨って認めるんだね……」

 

 完璧な私怨である事に変わりはないが、本人もそれを自覚している。立香だけはいつもの雰囲気でツッコミ的な台詞を言う。

 

「きゅ、急にしゃしゃり出たかと思えば訳のわからぬ事を! こうなったらよく分からなん貴様達諸共儂の宝具で穴だらけにしてくれるわ‼︎」

 

 悪信長の魔力が高まっていくことが分かる。同時に悪信長の周りに魔力で生成された火縄銃が何丁も顕現されていた。

 

「見よ! これが魔王の三千世界(さんだんうち)じゃ‼︎」

 

 悪信長からの高火力とも取れる攻撃が立香達を巻き込む様にアルジ達へと放たれる。だが……

 

「よし……テメェら出番だ」

 

 アルジの一声と共にまたいつの間にか出来ていた歪みから多くのチビノブ達が涙目になりながら出てくる。

 

「先程の事……許して欲しければあの宝具を撃ち消せ」

 

「ノ、ノブッ⁉︎ ノブブノブブッ⁉︎」

 

「あっ? 出来ない? ならこの場でお陀仏になるか?」

 

「ノ、ノブ……」

 

 チビノブ達はアルジの提案に出来ないと答えるも、やらなければどの道存在が消えるしかない。そして……もし仮にあの宝具を撃ち消して尚且つ生き残れたのなら先程の罪は水に流されるのだ。なら……

 

「ノ、ノッブゥッ‼︎」

 

 1体のチビノブが発した勇気ある声が周りにも伝播した。そして自らが攻撃手段として活用している銃を悪信長に向け照準を合わせる。

 

「心火を燃やしてぶっ潰せ‼︎」

 

 アルジの号令と共にチビノブ達は攻撃した。本来であれば宝具とは比べ物にならない程弱い火力だ。

 

 だが、何故かアルジの号令と共に打ち出された弾丸は……悪信長が放った宝具の銃撃と同等の威力だった。

 

「「な、なんじゃとっ⁉︎」」

 

 これには宝具を放った悪信長だけでなく、立香と共にいた良信長も驚きを露わにする。

 

「いくぞ!」

 

「はい‼︎」

 

 アルジの合図と共に隣に控えていた沖田も悪信長に駆ける。

 

「一歩音越え、二歩無間、三歩絶刀‼︎」

 

「くっ⁉︎ 宝具か‼︎」

 

 悪信長は今手元にある刀と火縄銃で防御耐性に入る。だがそれも……

 

「『無明三段突き(むみょうさんだんづき)‼︎』」

 

「ガッハァッ⁉︎ く、くろうてしもうたか……じゃがそちはセイバー、儂はアーチャークラス……クラス相性でまだ儂の体力は尽きておらぬぞ!」

 

 沖田の宝具により刀は折れ、火縄銃も壊れてしまった悪信長。だがクラス相性で若干耐久が残り、口から血を出しながらも新しく火縄銃を生成して沖田の頭に照準を合わせる。

 

「残念じゃったな、ピンク髪のセイバーよ」

 

「いえ、残念なのはあなたの方です」

 

「なんじゃと?」

 

「だって私は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うおぉぉぉっ‼︎

 

 

 

 

 

 

「ま、まさかっ⁉︎」

 

「えぇ、そのまさかですよ。私は……1人であなたに挑んだわけではないですから!」

 

 気付いた時には既に遅く、眼前に先程チビノブ達に檄を飛ばしていたアルジがデモリッションナイフを折り畳んだ状態で迫っていた。

 

「くぅっ! たかが魔術師が儂を滅ぼせると思うな‼︎」

 

 バックステップしながら自らの左右に火縄銃を複数生成。アルジに向けて乱発する。

 

 相手はたかが魔術を使える人間……傷を負っていようがサーヴァントの身である自分がやられるはずがないとたかを括っていた。

 

 ただそれが敗因になるとも知らず……

 

「しゃらくせぇ‼︎」

 

 アルジはそれら全てを一凪ぎで霧散させた。

 

「う、嘘じゃろ⁉︎」

 

(しかしあのリーチでは振ったとしても掠りもせんわ!)

 

 次の攻撃に移ろうと悪信長が思っていた時だった。

 

「人前では……」

 

「ぬ?」

 

「帽子を脱げぇぇぇっ‼︎」

 

ガゴンッ‼︎

 

「ガァァァッ⁉︎」

 

 悪信長が顕現していた火縄銃が消える。

 

(あ、あの距離から何故……)

 

 そう思いながらアルジの方を見ると

 

(そ、そう言う事……じゃったか……)

 

 悪信長はデモリッションナイフを見て理解した。先程とは刀身が全く違うと言う事を。斬る瞬間に折り畳んでいた物を展開しながら斬ったのだと。それもサーヴァントである自分が斬られるまで悟らせなかったアルジの実力を……

 

「ぐっ……今回はどうやら儂の負けじゃの……じゃが直に第二、第三の儂がくる事じゃろう……」

 

「あっ、おい待て‼︎」

 

「さらばじゃ……」

 

 そう言い残して悪信長は消え、その力の残滓は良信長に吸収された。

 

「おおっ! 失ったはずの力が戻ってきたぞ! これで悪信長の企みも消え失せ、儂の力も元通りに! これにて一件「落着な訳ねぇだろ?」ノブゥ⁉︎ な、何故じゃ?」

 

「んなもん決まってるだろ? 一時的にアンタの霊基が2つに分かれていて、それでなんだ? 良信長と悪信長か? まぁどうでも良いが……アイツがやらかした清算がまだなんだよ。清算しないまま消えて、それで消えた方の力がアンタの元に戻ったっつぅことはだ……」

 

「責任はアンタが取るしか無いだろ?」

 

「は、はぁっ⁉︎ な、何を訳がわからぬ事を⁉︎ そもそも儂その事について関係が「はっ?」っ⁉︎」ビクッ!

 

 関係がない、と言おうとした信長はアルジの一睨みで押し黙る。

 

「そもそもテメェがちゃんと管理していればこんな面倒な事にはならなかっただろうが? 違うか?」

 

「じゃ、じゃが……」

 

じゃがも何もねぇんだよ! 分かったらそこに直れ‼︎

 

「り、立香ぁ〜……た、助けてくれぇ〜」

 

「信長!」

 

「た、助けてくれるか!」

 

 信長さんは立香さんが助けてくれるだろう、と完全に信じきっていました……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫! 骨はちゃんと拾っておくね‼︎」

 

「はい! では行きましょう先輩」

 

「ノブゥッ⁉︎」

 

 立香とマシュは信長をそこに残して退散した。

 

「そ、そんな……殺生な……」

 

「さて……」

 

「っ⁉︎」ビクッ‼︎

 

「そんじゃあまぁ……HA•N•SE•I……してもらおうか?

 

「い、いやじゃーーーっっっ‼︎」

 

 その後、信長さんはアルジさんにコッテリとお仕置きを喰らってしまい、3日間塞ぎ込んでしまったといいます……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなグダグダな1日が終わった夜の事……

 

「あの……アルジさん」

 

「ん? どうしたか?」

 

 明日に備えて眠ろうとしたアルジの部屋を沖田が訪ねていた。さっきの戦いぶりとは違い、なにやらもじもじしている様子だ。

 

「その……ですね。今日初めて会ったのに……貴方には助けられてばかりで、それでお礼をしたいな、と思っています」

 

「お礼? 別に俺はいらねぇよ。君を助けたのだって、俺がやりたかったからやったまでだ。だからいらねぇよ」

 

「その……アルジさんと契約している皆さんからも、マスターは頑固だから譲らない様にとアドバイスを貰っていますので、ですから! 例えアルジさんが断ったとしても全力でお礼をします‼︎」

 

「(アイツら……余計な事を……)ハァ……まぁ本人が引かないっていうなら、まぁ……」

 

「そ、そうですか! や、やりました‼︎」

 

 沖田はアルジの返事を聞いて非常に喜んでいた。何せその場でピョンピョンと飛び跳ねているのだから。

 

「それで、お礼って……」

 

「え、えぇ! では今から貴方にお礼を……」

 

 そう言ってアルジに近付いていく沖田の顔は、物凄く赤くなっていた。

 

 熱でもあるのかと心配するアルジだが、どうやらそうではないらしい。そして……

 

「あの……今日は私が貴方を寝かしつけてあげます……」

 

「……はっ?」

 

 その内容に思考が停止するアルジ。それを隙だと考えた沖田は、自慢の俊敏性を生かしてアルジのベットに引き摺り込む。

 

「はっ……って何やってんだよ⁉︎」

 

「み、見て分かりませんか? そ,添い寝をしようと……」

 

「な、なんでそんな事になってんだよ⁉︎」

 

「その、私も色々と考えたんですが……私の命を救ってくれて、願いまで叶えてくれた貴方に返せる物を……私は持っていません」

 

「だから……さっきも言いましたけどそれとは別で、いつまでも貴方の傍にいたいな……って思って」

 

「……気持ちはすげぇ嬉しい。だがさっきチラッと言ったかもしれねぇが俺には「それも知ってます!」知ってるのか……」

 

「はい。貴方からもあの時聞きましたし、詳しい話は皆さんからも。それでここにくる前に……オフェリアさんの部屋に行ってきました」

 

「っ⁉︎」

 

「別にやましい事はしてないですよ⁉︎ ただ……アルジさんのお世話になりますって報告と、今日添い寝しても良いですかって……変ですよね。眠っている人に許可を貰おうなんて……でもそうしないといけない気がしたんです」

 

「それで……信じてくれないかもしれないんですけど、私の前に透けた状態ですが、オフェリアさんが現れてくれて、微笑んでくれたんですよ。私の思い違いかもしれないです。でもその時、「よろしくね」って、声は聞こえなかったですけど」

 

(……全く。お人好しにも程があるだろ)

 

 それはアルジにも言えることではあるが、アルジからすればオフェリアの方がお人好しに見えてしまうのだろう。

 

「そうか……まぁオフェリアがそう言ったのなら、俺からどうこう言う事はねぇよ」

 

「っ! はい‼︎ じゃあ、今日も遅いのでもう寝ましょう!」

 

「あぁ」

 

 そしてアルジ達は眠りに付く。

 

(にしても……今日は魔力を使いすぎたせいか眠い)

 

 最初はチビノブ達を倒す為に宝具を使用し、その後沖田の呪いとも呼ぶべきスキルを解呪するだけでなく、全く新しいスキルとして昇華させた。そこから直ぐに悪信長を打ち倒すなど、短期間で特異点を攻略するのと同じくらいを消費したのだ。そのためアルジは意識も早く手放した。

 

 一方、アルジが規則正しい寝息をしている事を確認した沖田は……

 

(あぁ……確かに皆さんが言ってた通り……尊い♡)

 

 アルジのいつもとは違う表情を見てそう思った。そして……

 

「あぁ……髪もこんなにフサフサで、ツヤも良くて、触ってるこっちも気持ちよくなってきますね」

 

 起こさないように優しい手付きで撫でていく。それが無意識に気持ち良いと感じたのか、アルジは沖田に抱き付いた。

 

「っ⁉︎/// あ、アルジさん⁉︎」

 

 唐突な事で驚きの声をあげるが、それでも起きる様子は無さそうだ。

 

(い、いきなりで驚きましたけど……でも)

 

「とても……愛らしいです♡ んっ……はぁ〜……私もそろそろ寝ましょうかね。アルジさん、おやすみなさい」

 

 沖田はアルジのおでこにキスをして、アルジの頭を胸に抱き抱えるように眠りについた。

 

 翌日、アルジさんの部屋から今まで見た事ない女性サーヴァントとアルジさんが一緒に出てきたところをエミヤさんが目撃し、それについてまた注意をしようとしましたが、これまたいつもの如くどこからか飛んでくるブーメランに頭を撃ち抜かれたといいます……

 

 

 

 

 

 

 

 それからしばらく経ち、第3特異点へと向かう準備が整った為ブリーフィングが行われた。立香が契約しているサーヴァントがあまりにも大所帯になった為、戦闘の際には一時的に特異点から立香が契約したサーヴァントを召喚するという形に収まり、マシュは聖杯を回収する役割がある為、そのまま立香と共に行動する事となった。

 

 アルジの方はマリーとそのサポートにアマデウス、清姫と、今回の微小特異点でサーヴァントとなった沖田を連れて行く事に。

 

 各自今回の場所が今までと違ってほぼ海上での戦闘になる事の注意を踏まえコフィンに搭乗していく。そしてアルジ達は次の特異点となるオケアノスへと旅立って行った。

 

 そして今回もやはり……

 

「……またこのパターンかよ」

 

 2度ある事は3度あると言わんばかりに、アルジは立香達、そして自分と契約しているサーヴァント達とまた別行動を取ることとなる。そればかりか……

 

(なんで海上メインなのに使えと言わんばかりに自動車があんだよ……)

 

 その景色に場違いな軽自動車が、アルジの近くに鎮座していた。それも日本で1980年代に登場し、当時の若者を中心に人気だった車種。スプリンタートレノの86である!

 

「……いや、30年前の車をこの時代でどう使えと? 確かにこの時代からしてみれば最先端だが……周りはほぼ海だぞ?」

 

 アルジはそう疑問を口にしながらも、使える物は最低限使うか……といった思考に切り替えた。後にこの思考がいい方向にもたらすと言う事を彼はまだ知らない。




今回はぐだぐだから第3章のプロローグに繋ぐ形で書きましたが、結構グダリましたね……

それに他作品のセリフも出しました。小説情報でその所も書こうとしたのですが、エラーが出てしまったので申し訳ないですが「その他」でまとめさせていただいております。

という事でここから解説に入らせて頂きます。



・沖田さんのスキル変更

病弱A→明日も貴方(アルジ)の傍でEX

聖杯でさえ覆す事ができない呪いともとれるスキルを、アルジが彼女の願いを叶えたいが一心で、呪い(絶望)願い(希望)へと昇華させたもの。病弱が無くなった事により沖田さんの能力は更に向上した。その為耐久も並のセイバークラスよりも高くなっており、俊敏性にも磨きがかかっている。

fgoのスキル内容としては、スター集中度のアップはそのままながら、スター大量獲得と無敵貫通状態(3ターン)付与するものになっている。




・「彼女の未来を切り開く‼︎」

機動戦士ガンダムOOの主人公である刹那・F・セイエイの台詞より

今回はオリ主が沖田さんの病弱スキルを治す為に放った一言の為、未来を〜の前に彼女が付け加わったもの。


・心火を燃やしてぶっ潰せ‼︎

仮面ライダービルドの登場人物である猿渡一海の台詞より

本来は「心火を燃やして、ぶっ潰す」である。本来ならばもっとシリアスな戦闘シーンで見られる(と作者は思っている)が、今回はぐたぐたな空間な為と、良い台詞が思いつかなかった為にこの台詞を採用。

尚、仮面ライダーファンの方々の中には、「こんな所で使っていい台詞ではない!」と思われた方もいるかと思います。その方々につきましてもですが、中途半端な所で使ってしまい申し訳ないと思っています。


・「人前では帽子を脱げぇぇぇ‼︎」

機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズー月鋼ーの主人公であるアルジ・ミラージの台詞より

アルジ・ミラージにとって初のモビルスーツ戦で放った台詞。トリアイナと呼ばれる機体がまるでテンガロンハットを被っている様に見える為、デモリッションナイフを展開させながら台詞を言い放った。


・透明なオフェリアさん

本日もアルジを想っての行動……大変素晴らしいの一言に尽きません! (多分後でアルジさんにツケを回す予定……何を隠そう彼女もアルジさんを独り占めしたいから)




と言う事で本日はこれまで! 第3章、4章は比較的短くいく予定です! ではまたの機会に会いましょう!
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