月鋼 ー復讐者の人理救済ー   作:橆諳髃

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読者の皆様、あけましておめでとうございます! 本年も何卒よろしくお願い致します!

そして漸く3章書き終えました。本来ならば年末までに仕上げる予定だったのですが、仕事やイベントなども重なってしまい、中々投稿できる機会がありませんでした。

お待たせしてしまった読者の皆様には大変申し訳なく思います……

それと毎回恒例新話までにご評価頂いた読者の皆様方についてのご紹介です。前話遡ってご紹介していますが、数ヶ月経ってという理由や読者の名前などが変わっていたりなどの理由で重複や漏れがあったら申し訳ありません……


☆10 CLOSEEVOL 様
☆9 酒狐仁 様
☆7 ガルグイユ 様
☆1牛鍋SMASH 様 ドルメル 様

長く期間が空いたにも関わらず、ご評価頂きまして誠にありがとうございました! これからも励みにして出来る程度書き進めていきます!

という事でお待たせ致しました。本編どうぞご覧下さいませ。


26話 復讐者は嵐でさえも斬り開く

 

 

 

 

 

 ヘラクレスを倒してからイアソンと邂逅するのは意外と早かった。イアソンと戦う前にヘクトールと戦闘にはなったものの、立香達は特に苦戦する事なく撃破した。

 

 そこからはイアソンとメディアとの戦闘へと移行した。まさかのまさかでイアソンはメディアに自らに聖杯を入れられるとは思っていなかったものの、原作と違うのは最初からその覚悟があったかどうかである。

 

 そのためイアソンは魔神柱へと変貌はしたものの、自らの意思でカルデアに攻撃を仕掛ける。それに対して立香達もこれまでの経験を活かして対峙した。そこにアルジについて来たサーヴァント達もいる事から、原作よりも苦戦する事はないだろう。

 

 しかし問題は別のところにあった。

 

『なんでか分からないけど君達が乗る船周辺に別の魔力反応を複数感知した! それに急に天候も嵐に変わり始めてる‼︎』

 

「そんな⁉︎ 魔神柱とメディアを相手するのにこっちは精一杯なのに!」

 

『近くにこの天候に変えた元凶はあるようだけど、立香ちゃん達から見たら遠いみたいだ。これはイアソン達を倒しても、変な嵐が干渉してレイシフトが万全に作動しないかもしれない!』

 

「ど、どうすれば良いの⁉︎」

 

 立香達はアタフタしていた。それもそのはずで、イアソン達を倒せば聖杯を回収できる。そして時代の修正がかかり始めたのを確認できればそこからレイシフトで戻り万事解決。そこまでが基本的な流れだ。

 

 だが今回はそんな簡単に進む事はない様子で、例え聖杯を回収できたとしてもこの嵐の大元を何とかしなければ時代の修正が働かない様だ。

 

 だから……

 

「その大元のイレギュラーとやらは俺に任せろ」

 

「アルジ⁉︎ でもこんな嵐じゃあ……」

 

「忘れたか? 俺には86がある。日本のメーカーが産んだ素晴らしい作品だ。そんじょそこらの嵐には負けない」

 

(それに俺はどの道86に乗らないと海上を移動できないからな……)

 

「へぇ〜、アンタがあのヘンテコな乗り物でこの嵐を突っ切って大元をなんとかしてくるってかい? なかなかそれも浪漫があるもんだねぇ!」

 

「まぁそういう訳で、立香達はイアソン達を倒して聖杯回収に専念すれば良い。沖田さんとマリー、アマデウスは立香達のサポートに回れ」

 

「えぇ! この沖田さんに任せてください‼︎」

 

「そうね! ここは私達に任せてちょうだい!」

 

「アルジの戦いを近くで見れないのは残念だけど……まぁ確かに僕とマリーは相性が良いしね。ここは任されたよ!」

 

「あぁ、頼む。清姫と、アン、メアリーは俺と一緒に嵐の中を突っ切って大元を倒しに行くぞ」

 

「あぁ♡ 旦那様との共同作業……精一杯頑張ります♡」

 

「マスターと一緒に行動出来るのはとても喜ばしい事です。張り切らせて頂きますわ!」

 

「でも生前でも経験した事ない嵐になりそうだけど……どうやってこの嵐の中を?」

 

「この86に乗ってこの嵐を突っ切る。それにメアリー達を乗せて嵐に紛れた奴らを叩く。俺が運転手で、メアリー達には攻撃を任せる。まぁ俺も攻撃に加わるがな」

 

「それじゃあ時間が勿体無いし……行くぞ」

 

 そしてアルジは86を召喚し、清姫達を乗せて嵐の海を走行した。86が海上を移動し始めたのと同時に、嵐の海に紛れていた敵が姿を表す。

 

(あれは……)

 

「あれはもにたー越しですが、旦那様が第二特異点とやらで相対したものと似ていますね……」

 

 清姫の言う様に、アルジが第二特異点で出会した脇侍と呼ばれたロボットに似ている。しかし違うところがあるとすれば、装甲の分厚さと鎧姿だろう。脇侍よりもしっかりとしている様に見える。

 

 そしてそれと一緒に出てくる小型のクラーケンが複数体……

 

(全く……俺もイレギュラーでこの世界にいる事自体おかしな事だが、それだったらコイツらはアリなのか? この世界のアラヤとかは一体どんな差配してんだよ……)

 

 アルジはいつもの顔をしつつ心の中ではこの世界のアラヤに対して呆れていた。ただ、アラヤ自身もアルジという異物を排除しようと別世界から招いた訳だが……完全に人選ミスである。

 

「それで僕達はどうする? 僕の攻撃手段は基本的にカトラスしか無いから近付かないと難しいよ?」

 

「私は勿論こちらの銃で対応しますわ」

 

「では私も自らの炎で燃やし尽くして差し上げましょう。その撃ち漏らしをあなたが担当するという事で良いのでは?」

 

「えぇ〜……それだったら僕の出番あまりないじゃん?」

 

「そんな事もない様だぞ? あれを見てみろ」

 

 アルジが指差した方向には、何故か宙からも同じようなロボットが顕現していた。それも複数箇所から……

 

「あぁ〜、なら僕は86(この)上で奴らを切り刻んでくるかな」

 

「大体は決まったな。それじゃあここから……上げていくぜ‼︎」

 

 アルジが86のギアを一気に上げ、先程の速度が生温いくらいに海上を走る。それによって最初に犠牲になるのは……偶然86の目の前に出て来てしまったロボットやクラーケンだった。86が通り過ぎた後は原型を留めない残骸が嵐の海へと沈んでいく。

 

 それだけではない。清姫の攻撃により、86周辺の海上は炎の海と化して有象無象を焼き払う。その炎は海すらも蒸発させるほどのため、こちらも基本的に敵側の原型を留めていない。

 

「さぁ〜て! 私も張り切って参りますわよ‼︎」

 

 清姫の攻撃範囲外の敵に対しては、アンの狙撃が次々と敵を屠る。その狙いは正確そのもので、相手の頭部や心臓に当たるところを的確に撃ち抜く。敵がその攻撃に気付いて慌ただしく動いて狙いを定めない様にする物の、そこはサーヴァントとしてこの時代に召喚され、尚且つアルジの魔力供給によって黒髭の元に着いていた時よりも更に強化されている為、そんな事をしても関係なく海の藻屑となった。

 

「もぅ〜あんまり僕の出番ないじゃ〜ん……もっとマスターにカッコいいところ見せたいのに……

 

 86の上でそう呟くメアリー。だが丁度86の上に湧いて出た敵を一刀の内に屠っていた。確かにアンに比べると数は少ないものの、アルジはちゃんとメアリーの活躍も見ているのでそれを労うのは間違いない。

 

 そして当のアルジは86でロボットやクラーケンを木っ端微塵にしながら、オルレアン時に空を覆い尽くすほど現れたワイバーン群を屠った時と同じ武装を呼び出し、これも的確に敵を一度に数体、数十体と薙ぎ払っていた。

 

『アルジ、聞こえるかい?』

 

「ダヴィンチか、どうした?」

 

『立香達はそろそろイアソンとメディアを倒しそうでね。もうじき聖杯の回収も済む頃合いなんだ。だからアルジ達の進捗具合を確かめたくてね』

 

「今は大体敵を合わせて数千はいった筈だが、未だに大元が見つからねぇ」

 

『そうか……私達の方でも出来うる限り探してはいるんだけど……磁気の乱れが酷くて協力できそうにないんだ』

 

「まぁそもそもこちらとしては自力d「マスター! 前方数百メートルのところを見てみて‼︎」……いや、どうやら大元は見つかったらしい。さっさとケリを付けてくるから待っててくれ」

 

 了解、とダヴィンチからの通信が終わり、アルジはその大元へと走らせる。メアリーが示した方向には強大な渦が出来ており、その中心には超大型のクラーケンが居座っていた。そしてその頭頂部にはいい年したオッサンの様なイカが踏ん反り返っている。

 

 それを見て……

 

「「「えぇ〜……」」」

 

 清姫達は皆同じリアクションの様子で、その存在が目の前に見えただけで心底気持ち悪いという様な……ともかく心情は皆一様にそうだった。

 

 そしてアルジは……

 

(あんな奴がいるせいで……オフェリアが助かる道が遠のくと……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巫山戯るなよ雑種風情がっ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 その殺気を感じ取ったのか、先程まで余裕で踏ん反り返っていたイカ男が驚いた様子で辺りを見回す。アルジの殺気を感じ取ったのは生物的本能によるものか、見回すところを窺うあたりアルジ達にはまだ気付いていない様子で……

 

「メアリー、中に戻ってきてくれ」

 

「ん? どうしたのマスター?」

 

 86の上にいたメアリーを呼び戻したアルジ。メアリーは疑問に思いながらも86の中へと入った。

 

「それで、わざわざ僕を中に呼び戻してどうしたの?」

 

「……アイツみたら無性に腹が立った。知っているかもしれないが、俺は大切な人を助ける為にここにいる」

 

「それなのに……訳わからない奴があんな所で踏ん反り返って、我が物顔のオッサン顔ヅラして居座っている所見たらよ……」

 

「アンナ奴のせいでオフェリアの救いを阻まれてると思ったら……俺自身がアイツをブチのめしたくなって仕方ねぇ

 

「……うん、そうだね。確かにクラーケンとかは僕達が生きていた頃も悪魔だなんだって怖がられてたよ。でもあのイカ頭に対しては……もうなんって言ったらいいか嫌気しか感じなくて」

 

「私も同感ですわ。一刻も早く目の前から消し去りたい程に。視界に入れるなら……まぁ遠慮したいですけど黒髭さんの方がマシですわね」

 

「旦那様……あの様な不届き者を退治する準備、清姫はいつでも出来ております」

 

 俺を除く3人がほぼ同じ見解だった。ゲームであったから絶対に有り得なかったイレギュラーの介入、それも多分俺をこの世界から消し去る為の人選で送り込まれたお邪魔虫ども……。

 

 そして多分だがそんな奴等を送り込んだガイアかアラヤか、ともかくこんな外道を送り込んできた存在……

 

(どこまでも彼女の幸せを……オフェリアの平穏を邪魔するというのなら……)

 

例え世界の意思だろうがなんだろうが関係ない!それら諸共必ず復讐してやる‼︎

 

 とにかく先ずは目の前のイカ野郎だな。

 

「でもマスターがこの運転席? を離れたら誰が運転するの?」

 

「それをメアリーに頼みたい。俺があのイカ野郎をぶちのめしている間に、邪魔な有象無象をコイツ(86)で叩きのめしてほしい」

 

「でも、幾らライダークラスだからってコレの操り方分からないんだけど……」

 

「それを俺の魔術にのせて伝えたいんだが……」

 

「……ならキス」

 

「はっ? ただ単に魔術にのせて伝えるだけなんだが?」

 

「だから! 僕に……キスしながら教えて?」

 

「め、メアリー⁉︎ それはずるいですわよ‼︎」

 

「だ、旦那様とキスなんて……それもこの特異点で知り合ったばかりのどこの骨とも分からない方々と、私の目の前で……」

 

 1人は羨ましがり、もう1人はまるで今にも血涙を出しそうな勢いでメアリーに嫉妬して睨み付ける。だがメアリーはそんな事知らんこっちゃないと上目遣いにアルジに懇願を続ける。やがて……

 

「〜〜〜っあぁもぅっ! 分かったよ! やればいいんだろ‼︎」

 

(やったぁ♡)

 

 アルジは根負けし、その様子をメアリーは表情には出していなかったものの内心凄く喜んでいた。

 

「じゃあマスター、んー……」

 

 目を瞑りながら唇を突き出す。アルジはそれを顔を赤くしながらも、優しく応えた。

 

「んっ……」

 

(あっ……仮登録した時の比じゃない。凄い魔力の量が送られてくるのが分かる。それに……とっても温かくて優しい♡)

 

 メアリーはアルジから86の運転技術を魔力にのせてもらいながら、アルジの根底にある優しさを感じ取れた気がした。

 

 そのやりとりは数秒で終わり、アルジの方から離した。

 

「あっ……(そんな……もう終わり……)」

 

 出会った当初は、黒髭よりも物凄くマシなマスターだなとしか思わなかった。だがあの夜……どういう因果か、自分が持ってきた果実のジュース一杯で何故か酔ってしまったアルジを見た。

 

 そしたら何故か……アルジの事が愛おしく思ってしまって、今こうして我儘のようにねだってキスをしたら……これからどんなマスターに呼び出されたとしても、もうアルジしか見れないし考える事ができない。

 

(もっと……してほしかったな……)

 

 アルジとのキスが終わって寂しい……そう感じていた時、不意に頭に優しく誰かの手が置かれて優しく撫でられていた。その誰かは……

 

「……君がそう思ってるのなら、来いよ。気が向いたら」

 

「っ‼︎///」

 

 顔をあさっての方に向け、ぶっきらぼうにだがアルジはメアリーに告げた。それに対してメアリーは、顔を赤く染めながらも内心凄く嬉しいと思った。

 

「もぅ! マスターとメアリーだけずるいですわよ‼︎」

 

「わっ⁉︎」

 

「なっ⁉︎」

 

「んっ……はむっ……」

 

「んなぁ"ぁ"ぁ"っ⁉︎」

 

 アルジの側にいたメアリーを少し押し退けたアンは、アルジの顔を素早く両手で包んで唇を奪った。それも見るからにディープである。

 

「はっ……んっ……マスターは、やっぱり甘美です。生前では感じれなかったこの気持ち……私もこの世界での事が終わりましたら、貴方のお側に駆け付けますわ♡勿論メアリーと一緒に……」

 

(そして最後には私達が貴方の事を独り占めしますわ♡)

 

「っ⁉︎/// きゅ、急すぎんだろ……心臓に悪過ぎる……」

 

「フフフッ、それはごめんなさい。でもこれは私の正直な気持ちですから……受け取って下さいな」

 

「……分かってる。アンも心変わりしてなかったらメアリーと一緒に来い」

 

「やったねアン!」

 

「えぇっ! 言質は頂きましたわ‼︎」

 

「まぁそれはさておいて、俺は今からあのいけすかないイカ野郎をぶちのめしてくる。清姫も一緒に来てくれ」

 

「……分かりました、旦那様」

 

 清姫はブスッとした顔をしながらアルジと一緒に86の上へと上がる。

 

 

 

 

 

 

 

「旦那様……あの2人にはして私にはして下さらないのですか?」

 

「……何をって、こればかりは流石に聞かなくても分かる。確かに不平等って奴だよな」

 

「だから……来い」

 

「っ‼︎ マスターっ♡」

 

 そして清姫はマスターに勢い良く飛び付いて唇を奪う。アルジも清姫があまり負担がかからない様に受け止めて、清姫のなさがままにされる。

 

「んっ……んっ……はぁ♡ あむっ……はむっ……」

 

 そのやりとりが数十秒交わされ、終わった頃には清姫は蕩けきっていた。

 

「俺がやりたい事……分かったな?」

 

「はぁ……はぁ……はい。アルジ様が行おうとしている事……この清姫、全力であたらせて頂きたく思います。ですから……」

 

「……はぁ〜。続きなら帰ってからだ」

 

「っ‼︎ はい♡」

 

 そして86はイカの人? に近づきつつあった。86については既にメアリーが操作しており、操作自体も特に問題はない。ただ86自体を動かす魔力についてはアルジから渡されている為、基本負担はアルジであるが。

 

 そうこうしているうちにアルジ達はイカの人の視界に入る。

 

「な、なんだお前達は⁉︎」

 

「視界におさめて気付くなんて……テメェやっぱりただのイカだな」

 

「なっ……わ、ワシの事をイカだとぉっ‼︎ ただの人間が何を言う‼︎」

 

「お前の言うただの人間はテメェが気付くよりも前にテメェという存在を察知していたんだが? たかが知れるなぁ? 我が物顔でこの嵐を巻き起こしている割には」

 

「き、貴様ぁっ‼︎ この儂をカルマール公爵と知っての口の聞き方か‼︎」

 

「お前みたいな奴が? イカ頭で太っているお前がか? 馬鹿馬鹿しい……そもそもテメェみたいなデブにカルマなんて格好が付く名などに合わないし逆にダサさを感じるが? もう少しまともな公爵はいないのか?」

 

「お、おのれぇ……ワシをここまで愚弄するなど……あの忌々しい人間どもを思い出すわ‼︎」

 

「忌々しい人間ども……あぁ、確か巴里華撃団だっけ?」

 

「っ⁉︎ な、何故貴様がその名前を知っておる⁉︎」

 

「そんなん親切に俺が言うとでも思っているのか? この雑種風情が」

 

「ざ、雑種だと⁉︎」

 

「それもそうだろう? 何せあの存在達に勝てず、それで何故かわからないがこの世界に来て、まぁテメェが考えている事と言えばこの世界を根幹にして自分好みの世界を作る事だろうさ」

 

「まぁ? 俺がいる時点でそんな事はさせねぇし、どこのガイアかアラヤかがテメェをこの世界に引きずり込んだか知らねぇが……テメェがこの世界に居座っている時点でどうあろうと修正力は働かねぇ」

 

 イカ頭ことカルマールは矢継ぎ早に言われていくことに何も口が挟めない。それもそのはずで……目の前に立っている人間が、自分から見たらちっぽけな人間の筈なのに……

 

(な、何だこの悪寒は……た、確か先程もこれに似た様な感覚を……)

 

「取り敢えずは……」

 

「っ⁉︎」

 

 カルマールは次の一言を聞いて、何故この世界に降り立ったのか分からないが、この世界に来たのが間違いだと思い知らされる。

 

 テメェも復讐対象だ

 

「〜〜〜っ⁉︎ く、クラーケンよ! 我が眷属よ‼︎ 深海へと潜ってあの男から身を隠せ‼︎」

 

「んな事させるかよ! 清姫‼︎」

 

「はい‼︎ 私の勇姿……どうかその目でご覧下さいませ‼︎ 『転身火生三昧(てんしんかしょうざんまい)‼︎』」

 

「な、なんじゃあれはっ⁉︎」

 

 清姫の宝具が発動された。清姫は蒼焔を纏った龍となり、その姿はとても美しいものに見える。そして清姫はカルマールが操るクラーケンを周りの海域ごと巻き込む様に攻撃する。

 

 攻撃されたクラーケンは清姫の蒼焔に苦しみ、気のせいかクラーケンの周りの海域も蒼い炎に包まれていた。

 

「さて、次は俺か」

 

 アルジはというと龍の姿に変えた清姫の背に立っていた。この世界では乗り物でなければ海上に出る事は出来ないが、どうやら誰かに背負われている状態などであれば移動は可能な様だ。

 

 そうだと分かったアルジは、清姫が纏う蒼焔を自らの足元に魔力で固定。試しに清姫から飛び出すと、いつもの様に宙へと立つ事が出来た。理論としては分からないが、誰かの魔力が自分の足元にある状態であるならばこの世界でも海上を移動できる。

 

(まぁ今更だがな。ともかくとして……)

 

「あのイカ野郎をブチのめす! 来い! ダンタリオン‼︎

 

 その声に呼応してアルジの周りを青い魔力が囲い、形を形成していく。その姿は、アスタロトよりも細い身体で、色合い的には全身黒色だった。

 

ダンタリオン! パーフェクトカウル‼︎

 

 そこから更に装備を纏う。ヘラクレスを倒すときに使用したT、Bブースターを背と腰に展開。瞬く間に四肢に装着され、最後に頭上からアイギスが顕現し、胴体と頭部分を覆った。そしてアイギスが装着された時、ダンタリオンの頭部はより屈強な風格へと形を変え、カルマールが操るクラーケンの前へと悠然と歩んでいき……

 

「まずは一発‼︎」

 

「なにぃっ⁉︎」

 

 クラーケンの頭部をダンタリオンの右ストレートが穿つ。意外に脂肪分が多いのかクラーケンは少しのけぞる程度だったが……

 

『私もいる事もお忘れなきよう』

 

《キシャーーーッ⁉︎》

 

 蒼焔の龍となった清姫の攻撃がクラーケンの背中部分に加えられる。それと同時にクラーケンがその場から動けない様に固定した。

 

「テメェへの恨みはまだこんなモンじゃねえぞ‼︎」

 

 そこに浴びせられる怒涛のラッシュ。カルマールには奇跡的に当たっていないものの、クラーケンには相当なダメージが入っている。

 

「ぐぅ〜っ⁉︎ おのれ人間めぇっ⁉︎」

 

「ウルセェよっ‼︎」

 

「ぐおっ⁉︎」

 

 カルマールを乗せたクラーケンはアルジのアッパーカットによって宙へと殴り飛ばされる。そのままの速度で行けば上空1kmまで吹き飛ばされるところであるが、それを逃すアルジではない。

 

 クラーケンが吹き飛ばされる直線上に先回りし、右腕にケラウノス、左腕にバイデントを装着して交互に殴りつける。ケラウノスで殴る時は殴った瞬間に引き金を引いて至近距離での射撃をお見舞いし、左腕で殴る時はバイデントの先で突き刺す様に確実にダメージを与えていく。

 

 他世界から呼び込まれたカルマールが召喚したクラーケンには自動再生能力が付与されているものの、アルジに与えられたダメージに修復が追い付かない。

 

「ウォォォッ‼︎」

 

 アルジの覇気とも取れる雄叫びと共に、バイデントとケラウノスが蒼く光る。その状態でアルジはバイデントを一振りした。クラーケンは多大なるダメージを負わされながらも、負けじと巨大な触手でアルジに攻撃を試みる。

 

 だがそれも蒼い光を纏ったバイデントにはなすすべもなく、逆に切り裂かれた触手が再生する事はなかった。

 

 それに驚きを隠せないのかクラーケンの動きが一瞬止まると、アルジはすかさずクラーケンに接敵して、クラーケンを打ち上げる様にケラウノスを下から上へと振り上げた。

 

 クラーケンが数百m浮き上がったところでバイデントをケラウノスの銃口にはめ込んだ。所謂バイデントを弾丸代わりに撃ち出す体勢になった。

 

「コイツを喰らえっ‼︎」

 

 ケラウノスから勢いよくバイデントが撃ち出された。それはクラーケンの口部分を貫き、触手に至っては完全に消滅していた。クラーケンを貫いたバイデントは嵐をものともせず突き進み、分厚い雲さえも貫通した。

 

 バイデントが通過した空は、そこにだけポッカリと穴が開いたみたいになり、そこからは元の陽光が一筋の光として海上を照らした。しかしながら未だに嵐はおさまる気配はない。やはりクラーケンをなんとかしなければならない様だ。

 

 ただそれにもアルジには関係なく突き進む。ダンタリオンの装甲を解除してクラーケンへと突撃するアルジ。その手には、いつもの様にデモリッションナイフが展開された状態で携えられていた。

 

『旦那様! 私の魔力も持っていって下さい‼︎』

 

 清姫に分け与えられていた魔力がアルジに集い、デモリッションナイフはそれに呼応するかの様に蒼焔の魔力を纏う。その魔力の唸りは、まるで本物の龍がデモリッションナイフに纏わりついているかの様に生きて見えた。

 

「な、なんだその禍々しい力は⁉︎」

 

 カルマールはアルジが持つデモリッションナイフが纏う魔力を感じ取りそう口にした。

 

 だがその発言は、アルジに対して火に油を注ぐ様な行為であり……

 

「あっ? テメェがそんなこと言うのかよ? テメェこそ俺から見たら醜い姿してるっていうのに。そんな奴が……」

 

そんな奴が俺の大切な存在(ひと)を侮辱するな! 俺の大切な人の力を貶した奴は誰であろうと……例え別世界に行ったとしても復讐してやるっ‼︎

 

「ぬぉっ⁉︎」

 

 アルジの復讐対象宣言にカルマールは漸く自らの過ちを知った。それはかつての世界では絶対に感じなかった事で……

 

(ワシは……来る世界を誤ってしまったのか……)

 

 アルジから発せられる魔力を目の前にカルマールは、ただそう思うしかなかった。

 

 まぁ今更後悔したところでアルジが手を止める事はないが……

 

「龍の焔に焼かれて海の藻屑になれっ! 龍浄蒼焔牙(リュウジョウソウエンガ)‼︎

 

 アルジの放つ一振りの衝撃波……それは正に蒼焔を纏った龍そのもので、カルマールが駆るクラーケンを丸呑みにしてクラーケンが陣取っていた巨大な渦の中に消えていった。

 

 それから数秒後、大きな衝撃と共に蒼い魔力の柱が分厚い雲を突き抜けて空の果てまで登り続ける。その光景は龍が天へと舞い戻るかの様に……

 

 やがて打ち上がる魔力が無くなり、それが分厚い雲を通り過ぎた瞬間、先程まで荒れていた海はまるで何事もなかったかの様に穏やかな様相を見せ、空も晴天へと戻った。

 

「これでこの世界も修正に向けて動き出すだろうな」

 

「マスターっ!/旦那様‼︎」

 

 そこへ86に乗ったアンとメアリー、そして宝具を解除した清姫が合流した。アンとメアリーについては、アルジと清姫がカルマールに集中しやすい様に周りの有象無象を攻撃していた。

 

合流したと同時に、まずは清姫が金の粒子となって退去が進み始める。

 

「そ、そんなぁ〜……まだ旦那様に褒めてもらってないのにぃ〜……」

 

「んな事言っても仕方ねぇだろ? カルデアに帰ったらちゃんと労うから」

 

「そ、そうですよね! 分かりました! この清姫、旦那様の熱い抱擁を心待ちしておきます‼︎」

 

 そう言いながら清姫はカルデアへと戻って行った。

 

「へぇ〜……マスターって、もしかしてハーレム志望だったりする?」

 

「それとも自然と女のサーヴァントの方を口説くのかしら?」

 

「ハーレム志望じゃねぇよ! た、確かに他の奴からは口説いてるって言われるが……」

 

「……はぁ〜。まぁ良いや。それで、ボク達もそろそろ還る頃合いだね」

 

「まぁ! ホントですわ! もう少しマスターとゆっくりお話をしたかったのですが……」

 

「そう、か。そう言ってもらえるなら、俺も嬉しいんだろうな」

 

「「っ‼︎///」」

 

「ん? 2人ともそんなに顔を赤くしてどうした?」

 

「い、いや! 何でもないよ⁉︎」

 

「そ、そうですわ! 何でも、ありません……」

 

「? そうか」

 

 アルジのふとした時にこぼした笑みに、2人は顔を赤らめる。アルジは、既にではあるがまた女性サーヴァントを堕としたようである。

 

「で、では私達はこれにて! でも、直ぐに貴方様の元に行きますから‼︎」

 

「うん! だから待っててねマスター‼︎」

 

 その言葉を残して2人は座へと還り付いた。

 

 そしてこれは完全なる余談ではあるが、いつかどこぞのサーヴァントがアルジの事を英霊の座で、言い方を悪くすればとても残酷な存在だったと語っており、ほぼほぼの英霊の中では周知となっていた。勿論それを流したのは反転した腹ペコ王とシャドウサーヴァンとなってしまったエミヤなのだが……

 

 それについてアン達は間違った知識だとして、アルジがどれだけ良い人であったのかを語った後にアルジの元へと向かった。そしてこうも宣言した。最後には必ず自分達がアルジを掻っ攫うのだと。

 

 それを聞いた他の英霊達は、数人は少なからずともアルジに対して興味を抱く様になった。殆どが女性サーヴァントであったのだが……

 

(おやおや……これは良い事を聞きましたね♪ 最初は残虐だのと噂になっていましたし私も鵜呑みにしてはいましたが……これは一度会って確かめませんと……それに)

 

「イケ魂の気配をものすごーく感じました! 早く会ってみたいものですね♪」

 

 とあるケモ耳サーヴァントはその様に口にしたと言います……

 

 

 

 

 

 もはや恒例となっている特異点が終わった後のブリーフィングを終えたアルジ達は、これからの特異点に向けて戦力増強をしていた。立香はいつも通りオケアノスで会った面々を召喚。中にはメディアもおり、特異点であったわだかまりなどは既にない。

 

 そしてアルジはというと、本人は希望しなかったものの勝手に召喚サークルが周りだした。結果はというと、やはりオケアノスで大きな縁を結んだアンとメアリーが召喚され、早々にアルジは2人に抱き付かれる。

 

 それを見た邪ンヌやマルタ達が引き離そうとするといったいつものパターンとなり、それを微笑ましく見るマリーや笑いながら作曲活動をするアマデウス。アルジの周りは、本人が意図したものではないものの賑やかになっていったり

 

「賑やかなところ申し訳ないが……私もアルジのサーヴァントとして来たのだが……」

 

 そこにいつの間にか召喚されたアタランテ。どうやらアルジのサーヴァントとして自らカルデアに来た様だ。

 

「はっ? アンタ誰よ? って、あぁ……私がバーサーカー状態を付与して召喚した奴じゃない。で? 何の様でアルジのところに来たの? まさかアルジにこの前コテンパンにされた腹いせに嫌がらせしにでも来たの?」

 

「あらそうなの? だったら……」

 

「「私達が直々に座に送り返してあげるわ」」

 

「ヒィッ⁉︎ そ、そんなつもりは毛頭ない! それに私が来たのは……マスターへの恐怖心を克服する為だ」

 

「恐怖心? こんなにマスターは優しいのに、どこにそこまでの恐怖心を抱く事があるの?」

 

「そうですわ。見ず知らずで魔力が切れそうなところを救ってくれたマスターのどこに恐怖を持つというんですか?」

 

「そ、そうだな……私としてはあんな形で知り合ってさえなければここまでにはならなかったのだが、だが私もこのままではいけないと思った。特にお前達が座に還ってアルジというマスターの人間性について力説していたのを聞いて……このままでは英霊としての矜持も、ましてや生前の誇り失ってしまいそうだと思った」

 

「……お前ら座に還ってそんな事してたのか?」

 

「うん! だってこんなにも優しいマスターが誤解されたままなのは嫌だし」

 

「それに貴方は本当にお優しい方ですから。だから見てもいない方々が貴方の事を悪く言うのは我慢なりませんでしたので」

 

「ま、まぁそんな訳で……これからよろしくお願いしたいのだが……ダメだろうか?」

 

「はぁ〜……全く、別に自分の恐怖心を克服したいからって理由で俺の所にいたらダメなんて事はない。入る者は拒まないし、やり方が違ったから抜けると言ってこっちから追うことも無い。俺の目的を邪魔にしないのであれば、アンタなりに振る舞え」

 

「っ‼︎ あぁ! よろしく頼むマスター‼︎」

 

 隠して第三特異点で縁を結んだアンとメアリー、そしてアタランテが新たにアルジのチームとして加わった。

 

 

 

 

 

 

 一方のとある暗闇の空間では……

 

 

 

「グゥゥゥっ……な、何とか命だけは助かったか」

 

(まさか来て早々こんな間に合うとは……)

 

「ほぅ、まさか儂以外にも招かれた者はいたという事か」

 

「お、お前は何者だ⁉︎」

 

「儂の名前は天海。徳川様の世を再び再興する為に立ち上がった者だ‼︎」

 

「天海……その名前からして極東の者か?」

 

「貴様がどこの誰だかは知らぬが、そう言った呼ばれ方もするか。して貴様の方こそ何者だ?」

 

「ワシはカルマール公爵。オーク巨樹を復活させ、パリや全世界を手中に収めようとした存在だ。だがあのにっくき人間どものせいで野望はつゆと消えたがな」

 

「貴様も人間に滅ぼされたのか?」

 

「あぁ、名前は今でも覚えておる。あの憎っくき大神と呼ばれる人間の名前はな!」

 

「っ! 貴様もそやつらに滅ぼされたのか?」

 

「貴様もという事は……お前もか⁉︎」

 

「そうじゃとも。あの若造どもにな。まぁ儂の場合はそれ以外にも要因はあったが……

 

「ん? 最後に何か付け足さんかったか?」

 

「何にも言っとらん。それでどうじゃ? 同じ世界で同じ若造どもに倒された者同士が、何故かこの世界に呼び込まれておる」

 

「という事は……この世界は我らが物にしても問題はないのではなかろうか?」

 

「……ほぅ、つまりワシと同盟を組みたいと言うのだな?」

 

「話が早くて助かる。戦力は随時整える事は出来るが、何故か訳の分からないただの人間にしてやられる始末でな」

 

「人間? っ! それならばワシも人間にやられたぞ! 名前は分からなかったが……あの若造め! 今度会った時はワシの本気を見せてくれようぞ‼︎」

 

 という様に、変な所で変な者同士が同盟を組んでいた。この人選をしたアラヤ……同情はするが紆余曲折を経てアルジにどの様な形であれコテンパンにされる事だろう。

 

 

 

 

 

 

本編1部 第3章   封鎖終局四海オケアノス ー復讐者は嵐でさえも斬り開くー   完




はてさて、これにて3章も書き終わりました。終わり方などは読者の皆様も物足りなかったと思う方もいれば、なんかfateにはいない世界線の奴らがいてまるで意味がわからんぞ!

といった状態の方もいるでしょうが、オリ主が最強な以上噛ませ役は必要だろうと思い、私が書きやすい他作品のボスキャラ……という名のこの作品では踏み台キャラとして相応しい働きをする方々にそれ相応の踏み台としてご活躍頂いております。皆様のご協力には感謝の意を表したいと思う所です。

「貴様か! 儂らがこんな不当な扱いを受ける原因は‼︎」

「即刻ワシらの扱いの改善を要求する‼︎」

いえ、あなた方の意見を取り入れる事は決してありませんので、どうかこの作品、また私が他で書いている作品でも踏み台キャラとして精一杯頑張って下さい。でしたらここらで……

「「おい待て! まだ話w」」ガシャンッ‼︎

はい、という事で今回の詳細についてです。


・ダンタリオンパーフェクトカウル

ダンタリオンがハーフカウルT/Bとアイギスを装着した姿。胴体以外黒色の装甲で分厚い。機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズの物語が始まる数100年前の厄災戦時、天使と呼称されるモビルアーマーを倒す為に製作された装備とあって、モビルアーマーと真正面から殴り合う事が可能。ただのパンチでも計り知れない程の威力を持ち、またそれぞれのハーフカウル装甲のバイデントとクラウノスをそれぞれの腕に装備する事で遠近どちらともの戦局で有利に戦う事ができる。

龍浄蒼焔牙(リュウジョウソウエンガ)

清姫が宝具を使用した時、アルジに貸し与えられていた魔力を一時的に返還。その際に清姫の魔力の一部である蒼焔もアルジのデモリッションナイフに付与された事で、ナイフ自体にも清姫の宝具展開と同じ様な姿の龍が纏い、威力が格段に向上した一振り。

名前の由来としては蒼焔の龍の牙で邪悪なる存在を浄化する、と言った具合で付けられる。




以上が詳細です。これにて3章も閉幕し、次回は早速4章に行きます。話数としては……1、2話程で終わらせる予定です。モードレットがファンの方々には申し訳ないのですが、何卒よろしくお願い致します。
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