☆9 タクミスター 様
☆3 烈怒 様
評価いただいてありがとうございます!
えぇ……今回もですが……支離滅裂な展開となってしまいました。読み難かったり、こんな事ありえないだろう⁉︎ 矛盾している⁉︎ と思われるかもしれませんが、私も書いていましたらこの着地方法しかなかった事を告げさせていただき、お詫び申し上げます……
とりあえずは……まぁご覧になってみて下さいください。
俺はいつの間にか人様の大切な戦いに、わざとでは無いけど介入してしまった様だ。
(あぁ……これだったら近道せずに来たらよかった……)
それも過ぎた事だし仕方がない。オフェリアをゆっくりと下ろして、作った鉄血メイスも消した。
「先程の鈍器がお前の武器ではないのか?」
「ん? あぁ……確かに使えない事はないが、今まで使った事が無かったからな。って……まさか俺と戦えとか言わないよね?」
「何を今更……そちらから先程の戦いに介入してきたのだろう?」
「わざとじゃないんだけど……見逃してくれたりは……」
「する訳がない。何しろこの地に足を踏み入れたのだ。元より1人たりとも逃さん」
「はぁ……まぁそうなるよなぁ……仕方がねぇ。やるぞ、アスタロト」
そして先程も使ったナイフを持った。
「って事で悪いがオフェリア……危ないから向こうに行ってて欲しい」
「……分かったわ。怪我はし無いでね?」
「それは奴さん次第だが……何とかやってみるよ」
それを聞いたオフェリアが向こうにいる4人組に合流した。
「それが貴様の武器か……」
「あぁ。今はこれを使わせてもらうし、ヤバそうになったら別の奴を使わせてもらうさ」
「フンッ……そんな時間など与えないがな。さて、では始めるとするか」
「正直面倒なんだけどなぁ……テメェの方から来るなら火の粉ぐらい払わねぇと」
そう言って次の瞬間に両者は己の武器をぶつけ合っていた。
side キャスター
思えばこの洞窟に入ってからおかしかった。最後に残ったあいつ……あのいけすかねぇアーチャーが騎士王を守る為に待ち伏せているだろう事は分かっていた。だが接敵してみればどうだ……奴は既に満身創痍。それでも奴とは戦ったが……全快の時と比べると動きがまるで違った。どうやら俺達とやる前に誰かと戦った後の様だが……去り際にアイツは「余計な奴に目をつけるんじゃなかった」と言っていた。
一体なんの事だと思ったが、一緒に行動している盾の嬢ちゃんが言うには多分オフェリアっていう嬢ちゃんが関係しているらしい。その嬢ちゃんが何らかの方法でサーヴァントと契約して、そのサーヴァントがあの弓兵に手傷を負わせたと……
聞く限り味方の様だから、騎士王の所で運良く合流できればこの事態は最低でも治る事が出来そうだ。にしてもそのサーヴァント……すごく気になるぜ!
それで騎士王の所まできたが、まだそのオフェリアの嬢ちゃん達は来ていないようだ。だからこそ今仮契約してるマスターの指示で盾の嬢ちゃんと一緒に闘っていたんだが、アイツいきなり宝具を撃ってきやがった! どうにか楯嬢ちゃんの宝具で凌げたが、そこから奴は2発目を放ってきた。
(2発目のチャージが早過ぎる! これは流石に今の嬢ちゃんじゃ防げねぇか⁉︎)
そう思った俺は咄嗟に宝具を出して防ごうとした。だがその時だ……上から轟音と共に何かが降って来た。それは何かの鉄の塊で丁度騎士王が放った宝具の射線状だった。それと騎士王の宝具がぶつかる。これだったら何とか楯の嬢ちゃんでも防げるだろうと思って衝撃に備える様に言ったんだが……そこからは一向に宝具は襲ってこなかった。
その理由は簡単だった。上から突然降って来た鉄の塊が奴の宝具を防ぎ切ったからだ。それに見たところ形も崩れていないし、欠損したところも見受けられ無い。
(騎士王のあの一撃を受けて武器が壊れないとか……一体どんなサーヴァントだよ⁉︎)
そう思っていると、鉄の塊が降って来たところから1組の男女が現れた。お姫様抱っこしている男と、抱っこされている女……多分抱っこされている方があの男のマスターなんだろう。現に盾の嬢ちゃんがオフェリアって口にしていたし……
(となるとあの男がさっきの鉄の塊を……にしては体格とか想像と違うな。それにあの男からはサーヴァントの気配が全くしねぇ。普通の人間の様に感じるが……)
『い、一体何がどうなっている状況だい⁉︎』
そこにDr.ロマ二っていう奴から通信が飛んできた。その答えについては正直こっちが聞きたい方だが……っていつの間にか目の前で戦闘が始まっちまってるし。
(あの騎士王と対等にやってやがる……それも奴の獲物は何の変哲もないナイフ……よくあんなリーチの短い奴で戦えるな)
そしてオフェリアって嬢ちゃんもこちらに合流して来た。そこから盾の嬢ちゃんの姿が変わっていた事に驚いてたのと、仮のマスターである嬢ちゃんに挨拶していた。それでもう1人の大人びた嬢ちゃんがこっちに来ていることにも若干だが驚いていた様だが……そろそろあの騎士王と戦ってるサーヴァントについて聞くか。
「なぁ、確か……オフェリアの嬢ちゃんだったか?」
「えっ? えぇ。確かに私はオフェリアだけど……あなたは?」
「俺はクーフーリン。今回はキャスターとして現界している。そんでそこの嬢ちゃんを仮マスターとして契約してる」
「そんで早速だが……今騎士王と戦ってる兄ちゃんについてだが……」
「えっ? あの黒ずくめのサーヴァントってアーサーなの?」
「あぁ。そんな騎士王の野郎と正面きって……しかもあんなリーチの短いナイフでやり合ってる兄ちゃんについてだが……あいつはどこの英霊だい? さっき上から鉄の塊を降らしたのも多分あの兄ちゃんなんだろうが……あんな物が載ってる逸話なんてほぼ聞いた事がねぇし、それにあれを収めてナイフでってなるのが益々分からないんだが……」
「そうよ! 私も全然分からないんだけど? 一体どんなサーヴァントなのよ?」
「それは私も思いました。あの方は一体どんな英霊なのですか?」
「わ、私も気になるなぁ〜」
とまぁ俺達4人はオフェリアの嬢ちゃんに聞いた。聞いた訳なんだが……
「えっ? アルジは私のサーヴァントではないわよ?」
「「「……えっ?」」」
「だ、だったら彼は何なのよ⁉︎」
「彼の名前はアルジ・ミラージ。私と同じ魔術師で、それ以外は私たちと同じ様な人間よ」
「お、同じ人間っ⁉︎ あんな戦い方してっ⁉︎」
「まぁそれについては……私も今日初めて見たけれど」
「にしたってただの人間が騎士王と渡り合えるか普通?」
「でもこれだけは言えるわ。彼はそこいらにいる様な魔術師じゃない。物凄い力を持った魔術師よ」
「オフェリアさん……それって説明になっていないです……」
「で、でもでも! あの人が介入してくれてこっちが戦いやすくなったって事だよね⁉︎ ならあの人を攻撃主体にしてマシュを防御に徹底させれば勝てるんじゃない?」
「た、確かにそうですね! では「ダメよ」な、何でですか⁉︎」
「そ、そうよ! ここは数で押し込んだら勝てるじゃない‼︎ 幸いこちらにはサーヴァントが2体いるのよ⁉︎」
「……なら所長。だったら何故先程からキャスターである彼が動いていないんですか?」
オフェリアの言葉に3人の視線がクーフーリンに刺さる。クーフーリンの顔はいつになく真剣だった。
「キャスター……どうして加勢しないの?」
皆が思い浮かべたであろう疑問を、マシュとキャスターのマスターである立香が聞いた。
「……俺だって加勢してやりたいさ。だがあの2人の戦いを見てみな……介入する余地がねぇんだ」
「そ、それって……」
「あぁ、つまりあの2人の攻防はほぼ互角……悔しいが援護すらできねぇ」
「だ、だったらこのまま黙ってみてろって言うの⁉︎」
「あぁ。逆に今動いたらアイツの邪魔をしちまう。だからここは待つしかねぇ」
「えぇ。私達もさっき来る前に武器を持ったガイコツ達に襲われたわ。その時も彼が突撃して私が援護していたんだけど……はっきり言って私が彼に助けられていたわ。正確に言うなら私が援護しやすい様に彼が動いてくれていたの」
「そ、それって……」
「そう。だから彼の戦闘技術は並のサーヴァントを軽く凌駕しているのよ」
「つまりそーいうこった。今入っちまうのは逆に邪魔になっちまうんだよ」
「そ、そうなんだ……」
結論として彼女らは、キャスターの言う様にただ見るだけしか出来なかったのである。
(アルジ……無事に帰って来て)
その中に1人だけ……彼の無事を祈っている彼女を除けば。
side out
「貴様……さっきから何のつもりだ?」
「はっ? 何が?」
「さっきから剣ばかりを狙って私を狙っていない事に気付かないと思ったか?」
「本体なんて武器さえ壊せば後でどうとでもなる。だからだが?」
「フンッ、甘いな。あまり人を傷付けたくない。出来れば傷付けずに武器だけ破壊して無効化したい……私が過ごした時代ではまずそんな甘えた思考の者は存在しない。どれだけ優しい者でもな」
「お生憎さま、俺はあんたが思い浮かべている様な優しい人間じゃないんでね」
「だからこそ益々解せない。そして腹立たしい。真剣勝負で本気を出してこないもの程な!」
「んな事言われても知るか!」
「……そうか。ならばこっちも手段を選ばない。アーチャーが言ってた様にあの女を狙ってみるか」
「んなっ⁉︎」
「フッ、隙ができたな」
「しまっ⁉︎」
アルジは少しの隙をつかれて騎士王から離される。幸いナイフで塞いで見せるも、次に騎士王に目を向けたら宝具を放つ準備をしていた。
「卑王鉄槌。極光は反転する……光を呑め!
騎士王は宝具を放つ。しかしそれはアルジに向かって放たれたものではなく……
「オフェリア⁉︎」
闇の本流がオフェリア達がいるところに向かって突き進み、着弾した。騎士王の元に届くのは、着弾した衝撃で生じた爆風と、爆風に乗せられた熱だった。
side アルトリアオルタ
(これで奴は本気になるだろう)
アーチャーが傷付いて帰って来たときは少しばかり驚かされた。聞けばこの世界に迷い込んだ異物を排除しようとしたが、逆に返り討ちに遭ってしまったと……それも奴が得意なスタンスで仕掛けたにも関わらずだ。
そしてこうも言っていた。「君も奴には関わらない方が良い。その方が身のためだ」と。
(だが、あんな軟弱な思考を持っている者がアーチャーに手数を負わせたなど……)
だからこそアーチャーが言っていた事を実行した。それは、奴の後ろにいる片目を眼帯で覆った少女への攻撃……アーチャーもそうしたがために傷を負ったと言っていた。
(ふむ、アーチャーが言った様に、あの少女を庇うために移動したか)
宝具を撃った直後までそこにいたはずの奴の姿が影も形も消えている。あの少女を庇うために動いたのは明白だ。
(だがあの距離を数秒で移動したとしても、先の鉄の塊を呼び出す時間などあるまい。奴は傷を負い、そして助けようとしたものも倒れ伏せている……)
結局はアーチャーの勘違いか。確かに奴にはまだまだ余力があった。だが今の私には大聖杯のバックアップがある。先の宝具も特大の力を込めて放った。あの煙が晴れたとてそこに立っている者などいないだろうな。
(だが何だ? 何か違和感の違和感を感じる)
それは騎士王として戦場に立ち続けた者の直観か……先程から体のどこかで騒めきを感じていた。
そして騎士王の感じた違和感は……煙が晴れた直後に明らかとなった。
「っ⁉︎ なにっ⁉︎」
騎士王が見たもの……それは大きな盾、それもどこも傷が付いていないものをこちらに向けているアルジの姿と、その後ろで彼に庇われ、これまた無傷の状態の5人の姿だった
「テメェ……わざとオフェリアを狙ったな?」
(っ⁉︎ こ、この圧は⁉︎)
騎士王が感じる圧……それを放っているのは、騎士王の宝具を大きな盾で塞ぎ切ったアルジだった。彼は盾を消しながら騎士王を睨みつける。
「もう良い……ここからはテメェを本気で叩きのめす」
(アーチャー……貴様が言った事は正しかった様だ)
目の前の異質な存在に……アルトリアオルタは剣を構えるしかなかった。
side out
side オフェリア
「オフェリア……」
「な……なにかしら?」
「今の俺は……怖いか?」
今のアルジは……雰囲気が違っていた。いつもならば優しげな雰囲気なのに……今はそれが最初から嘘だと言う様に荒々しい雰囲気に変わっていた。それにこちらを見る目も……青から赤に変わっていた。そしてアルジのさっきの質問に私は答えれなかった。
「そっか……そうだよな。今の俺は……誰にも見せた事ない、残虐性が表に出てる」
「俺は怒っている……アイツが俺にとって大切な者を……オフェリアを傷付けようとしたから。でも今の俺は……大切に思っている者から見ても怖いって……そう思っちまうんだろうな」
(……あっ)
確かに今の彼は近寄りがたい様な……そんな怖い雰囲気を出していた。でも私は気付いた。彼の手が僅かに震えていた事に……誰かから自分を拒絶されるのが怖いという様に私は見えてしまった。
「俺は今からアイツを完膚なきにまで叩きのめす。それを見たら……もっと怖いって思っちまうと思う。それでも……」
アルジは下を向いて瞳を覗かせない様にしていた。でも……分かる。分かってしまう。彼は……
「……大丈夫よ」
「オフェリっ⁉︎」
オフェリアはアルジを優しく抱きしめた。ここに例え他の人がいたとしても、そして敵が目の前にいたとしても、そんな些細な事は今の彼女には関係なかった。今の彼女の中にあるものは……
「確かに今の貴方はとても怖いわ。でもそれは……貴方が自分じゃなくて、他の誰かのためを思って……傷付けられそうになったのを怒っているんでしょう? だったら私は……貴方のその怒った姿も見たい。残虐な所も含めて……誰かが貴方を否定しても、私は……私だけは貴方を肯定し続けるから!」
(それが……私を救ってくれた……大好きな貴方だから‼︎)
「……ありがとう、オフェリア」
怖い雰囲気を出していた彼がほんの一瞬……いつもな笑みを浮かべた。
「じゃあ……行ってくる」
「えぇ、行ってらっしゃい」
名残惜しいと感じたが……オフェリアはアルジを送った。
side out
俺は今……高揚していた。奴に対して怒っているのに……これは多分オフェリアにさっき慰められたからだろうな。
(自分でも凄くダセェなって思う。でも今は……その事が……)
「いきなりなにをするかと思えばただの惚気か。それで……別れを済ませたか?」
「別れ? あぁ……確かに済ませた。テメェを倒してこの世界とおさらばするってな! だから……」
「さっさと俺達の道をあけやがれぇっ‼︎」
「っ⁉︎ 来るか!」
アルジはオルタに真っ直ぐ飛んでいく。オルタは剣を構えてはいるものの……
(クッ……奴はどこだ⁉︎)
さっきまで真っ直ぐ飛びかかってきていたはずのアルジの姿が消えていた。
「っ⁉︎ そこか!」
それを自分の直感を信じて剣を振るう。それは確かにアルジの振るったナイフとぶつかるが……
(っ⁉︎ 押し返された⁉︎)
咄嗟の事で反応は遅れたかもしれない。だがナイフと剣ではそもそもの質量が違い過ぎる。そして己が持つ筋力についても……サーヴァントとして昇華され、また大聖杯からのバックアップを受けている己の方が遥かに有利な筈だ。
それなのに……
(何故こうも押されている⁉︎)
先程から何号も打ち合っている中、オルタは自分が後退していっていることに気付く。そして……
ピキキッ!
「なっ⁉︎」
「はぁっ‼︎」
アルジはナイフのその一振りでオルタの剣を破壊した。
「ば、馬鹿な⁉︎」
思考が一瞬止まった……そこを……
「テメェが受けている聖杯からのバックアップを、俺は叩き潰す!」
「がぁっ⁉︎」
アルジはオルタの腹にナイフを思いっきり突き刺した。そして
「さっさと英霊の座に帰やがれぇっ‼︎」
対物ライフルを呼び出して、腹に突き立てたナイフに照準を合わせ至近距離で引き金を引いた。対物ライフルの弾丸に押されるかたちで岩壁に激突した。血などは出ていないものの、オルタからは金色の粒子がこぼれ出ていた。
「……まさかここまでとはな。アーチャーの言った事を素直に守るべきだったか」
オルタは一言そう呟き、そこからグランドオーダーなる聖杯を巡っての戦いがやってくる事を示唆して消えていった。そしてキャスターも強制送還され、帰る前に今度はランサーとして召喚してくれと仮であるマスター立香に頼んで帰っていった。
(ふぅ……さて、後はあそこにある聖杯を確保すれば……)
「いや、まさか君たちがここまでやろうとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ」
そう思っていた矢先、ある人物が介入する。それは……
「れ、レフ⁉︎ 今までどこにいたのよ⁉︎」
それは今のカルデアの所長であるオルガマリー、その補佐を担う副所長の立場であるレフ・ライノール本人だった。
そこから話はどんどん進んでいき、今回カルデアを爆破したのはレフである事、そして過去の文明を根絶やしにして来たのは自ら悪魔の手によっての事であると明らかにした。そしてオルガマリーを事故に見せかけて殺し、その場にいた魔術師達も殺そうとした事も……
正直アルジにとっては……ゲームでやっていた内容でもあるから知っていた。そう……元からこうなる事は知っていたのだ。だが……
「さて、このまま君を殺すのは容易いが……それでは芸がない。だから……」
「君の宝物であるカルデアスに触れて消えるがいい。それが私からの慈悲だ」
レフがそう言った途端、オルガマリーの身体は浮かび上がり、異次元に繋がれたカルデアスに吸い寄せられていく。
「いや……いや、いや、助けて! 誰か助けて‼︎ わた、私……こんな所で死にたくない‼︎」
「だって……だって私まだ褒められていない! 誰も、私を認めてくれていないじゃない……!」
「誰も私を評価してくれなかった! 皆私を嫌っていた‼︎」
「まだ私……何も出来ていないのに‼︎」
「生まれてからずっと、ただの一度も、誰にも認められてもらえなかったのにー‼︎」
「フハハハッ! そこまで言うと本当に惨たらしく思うねぇ人類は! さぁ、さっさと私の前から消えてくれたまえ」
「誰か……誰か助けて‼︎」
オルガマリーは、いよいよカルデアスに触れて消滅する……
正にその時だった。
「分かった……助けてやる」
ポツリと誰かが呟いた。その瞬間……
「なっ⁉︎ き、消えただと⁉︎」
レフの目の前から一瞬のうちにオルガマリーは消えた。それは本人の希望でもあった。あったはずなのに……
「私は一瞬も目を離していなかった……いなかったはずだ。そして次の瞬間には無様にカルデアスに消滅する様を見れたはずだ。それなのにっ!」
(触れる前に消えただと⁉︎ い、一体何が起こってっ⁉︎)
レフがオルガマリーの姿を探す。そしてすぐに見つかった。見つかったのだが……
「な、何故そこにいるぅっ⁉︎」
なんとオルガマリーは立香達の元まで戻っていたのである。そしてそれをした人物は……
「俺は今からあんたを助ける。これは一か八かの賭けだ。この賭けに……アンタはのるか?」
彼女の目の前に、彼女と同じ白髪の少年が立っていた。
「ど、どうして……」
「アンタが言ったんだろう? 助けて欲しいって。それでどうなんだ? 俺は今からアンタに無謀な事して助けようとしてる。それに賭けて俺に命預けるか? それともこの世界の崩壊と一緒に死ぬか? 選べ」
「き、キサマッ⁉︎ 何を勝手に話を進めている‼︎」
「……分かった。上等じゃない! あなたに私の命を預けます! だから私を助けなさい‼︎」
「分かった。失敗したって文句言うなよ⁉︎」
「そんな事許さないわ! 失敗した時は化けて出てあなたに一生取り憑いてやるから‼︎」
「ハハッ! さっきの泣き喚いてる顔よりよっぽどいい顔になったな!」
「うるさい! 良いからさっさと始めなさい‼︎」
「私を差し置いて勝手に話を進めるなぁーっ‼︎」
あのいけすかねぇ阿呆が何か喚いているが……関係ねぇ。俺は背中に呼び出したデモリッションナイフを手に取った。そして……
「オルガマリー・アニムスフィアが死んだという事実を、俺は叩き斬るっ‼︎」
デモリッションナイフを展開しながらオルガマリーに振るうアルジ。当然その刃はオルガマリーの身体を斬った。だが傷どころか衣服すら斬り裂かれた様子は見られない。しかしながら斬られたと同時にオルガマリーは倒れた。
「しょ、所長ーっ⁉︎」
「あ、アルジさんっ⁉︎ 所長が倒れてしまったのですがっ⁉︎」
「あぁ、多分問題ねぇ。確証はねぇが……」
「それって大丈夫とは言わないよ⁉︎」
藤丸立香のツッコミは正に的を射ていた……
一方カルデアスの管制室では……
「所長代理! 所長の身体が急に現れました‼︎ しかもバイタル値全て正常です‼︎」
「な、なんだってぇっ⁉︎」
急にオルガマリーの身体が現れた事に驚いていた……
「き、キッサマーッ‼︎ たかだかの人間風情が私の邪魔をするなどと‼︎」
「はぁ? 俺が何しようが俺の勝手だろうが! それと……」
「お前だよな? オフェリアを傷つけた野郎は?」
「っ⁉︎」ゾクリッ
アルジの醸し出される雰囲気に……レフは異様な寒気を覚えた。まるでカエルが蛇に睨まれる。今まさにレフはこれを体感していた。
「……やるぞ、アスタロト」
(なっ⁉︎ あ、アスタロトだと⁉︎ まさか悪魔がただの人間に力を貸すと言うのか⁉︎ それも自分達を裏切ってだと⁉︎)
レフは見当違いな事を思っていた。しかしながら彼が知っている悪魔は、自分達72柱に属する者しか知らない。ましてや彼がカルデアスの外の世界から来たことも知らないのである。そのために悪魔の名前を言われれば、自分達のうちの誰かが裏切ったのかと思うしかないのである……
「貴様は……正直ここでは倒せない事は知っている。今ここにいるお前は本体の末端なんだからな。だが……」
「逆を言えば貴様の五感はあっちと繋がってるって事だ。だから……倒せない代わりに八つ当たりをさせて貰うぞ! この世界が消えるまで‼︎」
アルジはデモリッションナイフを携えてレフの元に一直線で飛ぶ。そしてレフは……急な展開で頭がついていかない。
「ハァァァァッ‼︎」
「なっ⁉︎ グァァァァァッ⁉︎」
レフは斬られた。何回も何回も滅茶苦茶に斬られ、次には下に叩き落とされていた。地面に叩きつけられ、身体がバウンドした。そこにアルジの追い討ちで斬り上げられて、レフの身体は今度は天井に向かう。
天井にあたるかと思えば、また先回りしていたアルジが対物ライフルの銃口をレフの身体に押し当て、引き金を引いた。上からまた地面に叩き付けられたのである。そこにまた数発ライフルの弾丸が浴びせられる。その衝撃で砂煙が立ち込み、それが晴れるとボロボロの状態で白目を向いたレフがうつ伏せで倒れていた。しかしそれも少しで、レフの身体は金色の粒子を放ちながら消えたのである。
「チッ! 逃げやがったか‼︎」
アルジは舌打ちを鳴らすも、まぁ今回はこの程度にしておこうと思いオフェリア達と合流した。
「ドクター! 早く帰還させて下さい! このままではレイシフトするよりも早くここが崩壊します‼︎」
『分かっているよ! それでもこっちのレイシフトより先にそちらの空間の崩壊の方が若干早いんだ! だから意識だけはどうかしっかり保ってくれ! それさえあればこちらで拾えるから‼︎』
と、Dr.ロマ二が言う。
(あっちで俺の扱いがどうなってるか分らねぇが……オフェリアが無事でいてくれるのなら)
「要するにこの空間の崩壊よりも先にオフェリア達がそちらに戻れば良いんだよな?」
『そ、そうだけど……って、さっきから思ってたけど君は誰だい⁉︎』
「本当に今更だな! まぁそんな説明は後だ! といっても俺がそちらに行けたらな話だがな‼︎」
「あ、アルジ……それって……」
「なぁに。無事に戻るさ。俺も……そして君も」
そう言ってアルジはデモリッションナイフを構えて……
「この世界の崩壊を……俺は叩き潰す‼︎」
崩壊しかけている大地にナイフを突き立てた。すると、冬木の世界で起きていた崩壊現象が若干止まったのである。
「いつまでももたねぇ! やるなら早く転移させろ!」
『わ、分かった! 恩にきるよ!』
ロマ二がそう返事をした瞬間、オフェリア達の身体から光の粒子が溢れる。
「や、やったー! 私達助かるよ!」
「ほんとですね先輩‼︎」
立香とマシュは無事帰り着ける事に安堵していた。しかしオフェリアだけは……
「ま、待って! アルジには私達と同じ現象が起きていないわ⁉︎」
「「えっ⁉︎」」
『そ、そんな! こっちではちゃんと拾えているはずなのに⁉︎』
「そんなの、俺がこの力を行使しているからに決まってんだろ。万能だって思われるが、どんな状況でも同じって訳じゃねぇんだよ」
「だ、ダメよ! 貴方を置いてなんて行けないわよ‼︎」
「大丈夫だって! ちゃんと戻るからさ‼︎ だからあっちで待っといてくれ……オフェリア」
「……分かったわ。あっちに戻ったら……私の言う事何でも聞いて貰うんだから‼︎」
「分かってるよ! それじゃあ……少しばかしお別れだ」
「うん! 待ってるから!」
その言葉を皮切りにオフェリア達はカルデアに帰還した。それを見送ったアルジは……
「さて……魔術を解除っと」
デモリッションナイフを引き抜くと、先ほどまで停止していた崩壊現象が進んでいく。それも無理やり止めたからか先程の倍の速さで……
「これは……こっちの崩壊の方が早いかな……」
(まぁ……それでも……)
「オフェリアと約束したからな。無事に戻るって……それまで俺は何があったとしても死ぬことなんて出来ねぇ」
「だから俺は……生きて帰る!」
そう思いながらアルジの意識は段々途切れていった。
(んっ? ここは……)
次に意識が浮上すると……そこはいつか見た真っ白い空間だった。
「あの崩壊に巻き込まれて……俺は死んだのか?」
(あ〜あ……オフェリアと約束したのにこれじゃあ格好つかねぇな……)
「いぃえ、貴方はちゃんと生きているわ」
「えっ? お、オフェリア⁉︎」
「そうよ? さっきまで一緒にいたのに、もう私の顔を忘れたの?」
アルジの目の前にオフェリアの微笑む顔があった。そして今のアルジの状況といえば……簡単に言えばオフェリアに膝枕されていたのである。
「あの……なんで俺オフェリアに膝枕されてるの? っていうか重いだろうしどくかr「ダメよ。このままでいなさい」えぇ〜……」
「私との約束忘れたの? 無事に帰ったら私の言う事をなんでも聞いて貰うって」
「い、いや……そんな訳ないけど……」
「なら、しばらくは私の好きな様にさせて。ね?」
綺麗な笑みをされながら言われたアルジ。それだけで頬が熱くなるのが分かる。
「ふふっ……頬が赤いわ。可愛いわね♡」
「ばっ、バッカヤロ⁉︎ 可愛い訳ねぇよ⁉︎」
「そんな反応も初めて見た。貴方の初めてを知れて嬉しいわ」
オフェリアは笑いながらアルジの顔を撫でる。そうされるアルジは恥ずかしさとくすぐったさでオフェリアから目を逸らしていたが、逃げる様子がないので約束通り好きにさせている。
「ねぇアルジ……目を閉じて?」
「な、なんで?」
「良いから。私との約束よ?」
「……分かったよ。目を閉じれば良いんだろ?」
そう言ってアルジは目を閉じた。それから少し経って、アルジの頬に冷たい感触が包み込み……
「っ⁉︎」
「んっ……///」
次の瞬間にアルジはオフェリアにキスをされていた。キスをした彼女自身も頬は赤くなっているが、それを知らずにやられた主人からしてみれば物凄く身体の熱が上がり、頬も先ほどよりも赤くなっていた。
「……は。うふふっ……キス……しちゃった」
「な……んなっ……な、何やってんだよ⁉︎ そ、それは好きな相手と「好きよ……」……えっ?」
「私……アルジの事……とっても大好きよ。心のうちから……愛してるわ」
「オフェリア……」
「やっと言えたわ……なかなか言えなかったけど……ようやく」
オフェリアがそう言うと同時に、彼女の身体が透け始める。
「……そろそろ時間ね」
「はっ……何を言って……」
「私も……勿論貴方も無事にカルデアに戻ったわ。でもね……」
「私……レイシフトされた時からもともと瀕死だったの。だから……戻ったらまた倒れちゃって……」
「でも貴方が戻ってこれたか心配だったから……それだけは確かめないとって思っていたら、ここで貴方を膝枕していたの。もう少し貴方といたいんだけど……」
「な、ならもっといても良いじゃねぇか⁉︎ 俺だって……あれから別れて何があったかとか話したい事がいっぱいあるんだよ‼︎」
「そうね……私もまだまだ話し足りないわ。それでも今の私に限られた時間はここまでね。……もしかして泣いてくれているの?」
オフェリアが言うように、アルジは目の辺りを腕で隠していた。しかしながら頬を伝う涙は隠せない……
「……腕をどけて」
「やだ! こんな……男がこんなみっともない姿を……それもこんな俺を好きになってくれる相手に見せる訳には……」
「良いのよ? 私はアルジの泣いているところも見たいの。だから……」
オフェリアはアルジの手をどけた。アルジからの抵抗で動かないと思った腕は……少ない力で簡単にどかせることができた。
アルジの目からは、誰から見ても明らかな様に止めどなく涙が溢れては頬を伝っていった。それを彼女は微笑み、彼の頬に手を伸ばす。そして優しく触れる。何度も何度もアルジの存在を確認する様に……
「私……少しの時間だったけど、この時間を貴方と共に過ごせて良かった。再び貴方と会えた事が限りない奇跡なのに……ここで貴方と2人きりで触れ合えるこの時間も……すごく幸せだわ」
「でも、もうそろそろ貴方と過ごす時間も終わってしまうわ……。貴方が目覚めると同時に私の意識も無くなるの」
「だけど大丈夫。私はまだ生きてるって感じるから。貴方が目覚めた時に私の姿を見てどう思うかは分からないけど……それでも生きてるから」
「だから……また会う時までさよなら。私はいつも貴方の事を応援してるわ。それと貴方は無頓着かもしれないけど……これからも貴方の事を好きになる人はいると思う。でも貴方の事を1番好きで愛しているのは私だから」
「だからまた会うその時まで……待ってて」
「ま、待てよオフェリア! 勝手に色々言ってそのまま消え去ろうとするなよ‼︎ まだ俺は……君に答えすら返していない! 満足な回答なんて出来てないんだよ‼︎ だから行くな! 行くなよ‼︎」
「オフェリア‼︎」
消えゆく彼女に手を伸ばす。後もう少しで届いたその手は彼女を掴むことはなく……それと同時に意識は覚醒した。彼はその時……見知らぬ天井に向けて手を伸ばしていた。
「おや、意識が覚醒したと思ったら、何か叫びながら手を伸ばすなんて……よっぽどの夢を見ていたんだね?」
アルジが寝かされていたベット。そこから身体を起こして辺りを見回すと、女性が1人そう言いながら傍に備え付けられた椅子に座っていた。
「……あ、アンタは?」
「私かい? 私はこのカルデアで2番目に召喚されたレオナルド・ダ・ヴィンチというものさ。気軽にダヴィンチちゃんと呼んでくれたまえ!」
「……ここは?」
「おっと、私の自己紹介をスルーするとは……なかなかだね君。それとここは医務室の一室さ。こちらの世界に戻ってきた時どこにも傷は無かったけど、なかなか意識が戻らなかったからね。だからここで寝かせてたという訳さ」
「そ、そうか……っ⁉︎ ま、待て! 俺はあれからいつまで寝てた⁉︎」
「う〜む、ざっと1日くらいだね」
「オフェリアは……オフェリアはどうなったんだ⁉︎ ちゃんと帰ってきたんだよな⁉︎」
「うん。君がいう様にオフェリアくんは無事このカルデアに戻って来たよ。それと立香ちゃんとマシュもちゃんとね。それも君のおかげだ。私からもお礼を言わせて欲しいな」
「そんな事はいい! それよりも……今オフェリアはどこにいる?」
「……君のその表情を察するに、君とオフェリアくんは並々ならぬ仲のようだね。それで彼女についてだけど……」
「お、オフェリアに何処か大きな怪我があるのか⁉︎」
「うぅん、そんな訳じゃないよ……ただ……昏睡状態なんだ」
「こん……すい?」
「うん。こちらでもバイタルの確認は取れている。その値も正常値なんだ。だけど何故か目覚めない……なんでそうなっているかは調べても全然分からないんだ」
「っ⁉︎ そ、それで今オフェリアはどこに⁉︎」
「彼女なら……」
それを聞いたアルジはとある場所に駆け出した。そしてダヴィンチちゃんが言ったその場所の部屋に入ると……
「……嘘だろ?」
確かにそこにオフェリアはいた。だがそれも、治療用のコフィンの中に入っての状態で……
「オフェリア……聞こえるかオフェリア……俺……ちゃんと帰ってきたよ? 君との約束を果たす為にちゃんと……」
コフィンに手をついて必死に呼びかける。だが彼女からの反応はない。
「約束したじゃねぇか? 戻ったらオフェリアの言うことなんでも聞くって! それに……オフェリアに返事も何も返してねぇんだぞ‼︎」
「俺は……俺は‼︎ ……君の事を……こんな俺の事を良くしてくれた友人ってぐらいにしか思ってなかった。こんな人相の悪そうな俺でも……優しくしてくれる友人だって!」
「でも君に言われて……好きって言われて……愛してるって言われて……俺は……」
そう言いながらもコフィンの中にいる彼女の顔を見るが……それでも反応は無く……
「グッ……ウゥッ……ウァァァァァァァッ……っ‼︎」
その時に彼に出来た事……それは崩れ落ちて泣く事しか出来なかった……。
それから時間は経ち、考えつく方法で彼はオフェリアの目を覚まそうとした。しかし……この世界の抑止が働いているのか。それともこの世界に本来いないはずのアルジがいる事で別の何かが影響を及ぼしているのか……それはアルジにも他の人にも分からない。分からないが、ただ1つだけ言える事がある。それは……
(オフェリアにこんな事をした奴……タダじゃすまさねぇ‼︎ 復讐してやる‼︎)
少年は決意した。自分を愛すると言ってくれた彼女を……こんな風にした者に対する復讐を。
隠して彼は、これからレイシフトをして人理を救済する旅に同行する。全ては彼女を取り戻す為。そして……復讐するために……
とまぁ……2話はこの形で終わらせて頂きました。
そのままオフェリアさんと行動するのも思案したのですが……それだったら原作とズレが生じますし(今の時点でズレているが)、私が考えているシナリオ上これからの展開が難しくなると思いましたので、あえてこの展開に致しました。
これからオフェリアさんの活躍が見れる! そう感じたファンの皆様には申し訳ありませんが……何卒お付き合いのほどをお願い致します。
簡単な解説
・デモリッションナイフ
ガンダムアスタロトの主武装。折り畳みの大剣になっており、折りたたんだまま攻撃する事も可能。また、相手の意表を突いて展開しながらの攻撃もできる。
尚、白い空間の中でアルジとオフェリアが別れる際、Uruさんが歌っているフリージアが流れていたりすると……ちょいと悲しい雰囲気になるのではと個人的に思います。
「ヴェァァァ……俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……っ!」
今回はこの辺りで失礼しようと思います。それではまた……
今作品ではヒロイン多数で出しておりますが、プロローグ時点で既に2人ヒロイン出しています! そこで質問ですが、読者の皆様でしたらヒロインの中でどなたを正妻にしますか⁉︎
-
ルヴィアさん
-
オフェリアさん
-
まだ見ぬ他のサーヴァント