月鋼 ー復讐者の人理救済ー   作:橆諳髃

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 新話までに評価して下さった読者の皆様

☆10 もとパンケーキ 様
☆9 白川 剣心 様
☆8 RX-105 様
☆0 灘太郎 様 稀人 様

 ご評価頂きましてありがとうございます! 辛口なご評価をして下さった読者の方もいらっしゃいますが、そういったご意見も真摯に受け止めてこれからも書かせていただきますので、何卒よろしくお願いいたします!

 それでは、どうぞご覧下さい!




31話 復讐者、インドの兄弟に契約を持ちかけられる……

 

 

 

 

 

 エレナがマハトマを感じると言って今も尚砲撃が飛んで来る場所を目指していた時、アルジはというと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(全く……こっちにもケルトが来るとはな)

 

 立香達の援護をしながら自分に襲いかかってくるケルトの軍勢を相手にしていた。その為キャノン砲の半分を立香達の援護に回している状態だ。

 

 だがアルジも遠方にいる味方、それも直接目が届かない地にいる者達の援護と同時に、その方向とは全く逆側の敵の対処をする事は初めての事だった。グシオンリベイクシリーズの腕を操作するのでさえ脳内のキャパシティーを割いているのにも関わらず、それ以外にも立香達が戦っている敵を魔力感知で正確に位置を把握している事もあり、自分に襲いかかってくる敵に対しての攻撃は雑に感じられる。

 

「まぁこのままでも持ち堪えれるは持ち堪えれるし、立香の方には既に俺と契約しているサーヴァントが合流しているだろうから問題はないと思うが……」

 

(まぁ念の為にこれを使わせてもらおうか)

 

 そう思ったアルジが顕現させたのは、青とオレンジ色で彩られた小さな物。青い部分は持ち手が存在し、オレンジ色の部分はナイフの様に鋭い。そんな特徴をした物が2基、アルジから急速に離れていく。1基は立香の方へと飛び立ち、残った方はアルジの頭上200m程にとどまる。

 

 その後何が起こったかというと、立香達に対しての援護はそのままに、自分に対して襲いかかってくる敵をより正確に対処する様になっていた。

 

「久々に使ったが、感覚は衰えていないな」

 

 しかしながら1対複数では流石に敵もアルジに手が届く位置まで迫る。それに対しては右手のキャノン砲を捨てていつものナイフを装備し、襲いかかるケルトを切り裂いていく。

 

(移動が制限される中で近距離をナイフで凌ぐのは……出来なくはないが効率が悪い)

 

 その考えに至ったアルジが次に装備したのは、刀身が青で統一され、刃の部分を白色でコーティングされた両刃の大剣だった。

 

「沈めぇっ‼︎」

 

 その大剣をアルジは左手に備えていたキャノン砲も手放して両手に構え、それを一気に横へと振り抜いた。すると扇状に斬撃が飛び、それを受けたケルトは胴体が真っ二つとなり、活動を停止していく。

 

 それに怯えるケルトではないが、アルジは軍勢へと空かさずグシオンリベイクシリーズの腕に備え付けたキャノン砲で数を減らしていった。

 

 それから数分後……

 

(立香の方は終わった様だな)

 

 立香の方に飛ばした物がリアルタイムに伝えてくる。それに伴って立香の援護はもう大丈夫だと感じたアルジは、立香達の方に向けていたキャノン砲を、未だに襲いかかってくるケルトの軍勢に向け、引き金を引いた。

 

 そこからは想像通り、ケルトの軍勢はアルジに近寄る事が叶わず全滅していた。

 

「少し面倒だったが、コイツらも立香達の方に向かった奴らと合流したらキツかったろうからな……早々に潰せて良かったな」

 

「何やら大規模な軍勢を感じ取って来てみれば……まさか1人であの軍勢と対峙し、剰え傷つく事も無く全滅させるとは」

 

「……どっかから視線を感じると思ったが、そっちから姿を現すとはな」

 

 そこに現れたのは黒髪褐色肌の男であり、全体的に白い服装をした者だ。

 

「まさかあれだけの規模を相手取りながら私の視線にも気がつくとは……あなたは只者ではありませんね?」

 

「それは買い被りすぎだ。俺はそこら辺にいるただの魔術師で、その前に1人の人間だが?」

 

「あなたが……ただの人間? あれだけの武力を持ちながらそれは誰も信じないと思いますが?」

 

「あぁ、何回も言われたなその言葉は……それで、アンタは何者だ? (まぁ知っているが)」

 

「これは私とした事が失礼を……私はアルジュナ。アーチャーのクラスとして現界しています」

 

「インドの神話に出てくるあのアルジュナか……だが何故北米に現れた? 縁もゆかりも無いはずだが?」

 

「そうですね。私も何故ここに呼ばれたのか分かりません。分かりませんが……」

 

「歯切れが悪いな? 何か気になる事でも?」

 

「いえ……私が召喚されたという事は……」

 

「ここにいたか。我が宿敵よ」

 

(あぁ……そういう事か)

 

 アルジはどこからとも無く現れたもう1人を見て理解した。アルジュナが召喚されたという事は、対となる存在もそこに召喚されるという事。その人物こそがアルジュナの他にこの場に現れた第3者……

 

「カルナ……やはり現れましたか」

 

 それはアルジュナと同じくインド神話に名を連ねるカルナだった。彼の姿はアルジュナと真反対で、髪は白銀で肌は病的な程までに白く、全体的に黒の装いに所々黄金で作られた鎧を纏っていた。

 

「そうだな。お前が召喚されたという事は、必然的に俺も喚ばれる可能性が高い。ある程度の例外はあるだろうが、今回はその例に漏れずだったな」

 

「まぁ私も貴様との因縁は根深く感じる。何故この世界に誘われたのかよりも、貴様との因縁を優先した方が良いだろう」

 

「同感だな。俺達のこの縁は切っても切れない物だ。お前が望むのなら俺もそれに応えよう」

 

(何か勝手に話が進んでいるな……)

 

「との事ですから、あなたの事は気になりますが、ここにいると私達の戦いに巻き込まれてしまいますよ」

 

「そうだな。俺達のこの因縁に無関係な者を巻き込む訳にはいかない。俺としても出来る限りこの場から離れて欲しい」

 

「まぁ俺もアンタらの因縁云々に巻き込まれるのは面倒だからこうしたいんだが……俺はとある条件を課されてこの場から半径3mの範囲から動く事が出来ねぇんだよ」

 

 それを言った瞬間、2人は呆気に取られた表情となる。

 

「はっ? それは一体どういう事ですか?」

 

「まぁ言うよりも見せた方が良いだろうな」

 

 そしてアルジはその場から動いた。そしてきっちり3mまで進むと、アルジの行動を制限する見えない壁が出現し、それと同時に警告文が表示された。

 

「これは……」

 

「俺もアルジュナとの因縁で現界した記録はあるが……こんな物は初めて見たな」

 

「という事は……まさかあなたはその不利になる条件を背負って先程の軍勢と戦っていたのですか⁉︎」

 

「いやアルジュナよ、この男が戦っていたのは目の前の軍勢だけには見えなかった。俺がこの大陸の西側からこちらに来た時も別の地であの軍勢と、俺達と同じくサーヴァントである存在を従えた者が戦っていた。そこにどこからとも無く砲弾が飛んできては軍勢を正確に捉えていた。多分その砲弾もお前が放った物なのだろう?」

 

「ま、まさかそれもあなたがやっていたというのですか⁉︎ 目の前で自分が襲われているにも関わらず……」

 

 カルナは自分の推測を言い、それに対してアルジュナは驚愕していた。確かに自分達と同じ神話を生きた英雄であるならもしかしたらできる芸当かもしれない。だが、アルジがもし自分達と同じ過去の英雄であったとしても、その場から半径3m以内から出る事が出来ないと条件を加えられてしまえば、自分でも目の前の軍勢を相手取りながら遠方にいる味方に対して正確な援護など出来るだろうか?

 

(もしそれが事実なのであれば……彼は素晴らしいですね)

 

 もし彼が自分の友になってくれるのなら……確かにカルナとの因縁には巻き込んでしまうが、切磋琢磨しあえる関係に出来るだろう。そうしたら自分を取り巻く環境(因縁との終わりがない戦い)からも解放されるかもしれない。

 

 確かに自分は平和よりも戦いを望む傾向にある事は否定できないが、それでも数百数千年に渡って自分の中にそれ(因縁)が1番上にあり続けるのは、サーヴァントに昇華されたとしても疲れるものだ。

 

 そしてカルナは……

 

(自分を顧みずに他者を思い遣るその気持ち……相手には申し訳ないが、俺に通ずるものを感じてならない)

 

 アルジュナと同じくアルジの事を好印象に捉えていた。カルナはマハーバーラタにおいて後世の人々から施しの英雄と言われる。それは、自分が他者から何かを請われれば拒否する事なく施す事からその様に言われるのだが……そこまでとはいかなくとも、自分の危機的状況を顧みずに他者を優先して行動するその精神が彼の中に好印象を植え付けたのかもしれない。

 

 故に……

 

「ん、んんっ! にしてもそれでは困ったものですね……あなたがここから離れる事が出来ないのであれば、この宿敵と戦えないとは……」

 

「いや、それだったら別の所で戦えば良いだろう?」

 

「そ、それはそうですが……それだと何故か惜しい気がするんです」

 

「確かに……どことなくお前には俺との接点が感じられた。この感覚は……友、だろうか? ともかく、その者をそのままにしてアルジュナと戦うというのは、俺も惜しいと感じる」

 

「まさかカルナも私と同じ様に思うとは……腹立たしいと感じはしますが、その意見には同意しましょう」

 

「それでなのですが、あなたがその場から離れる事ができる条件などは示されていないのですか?」

 

「……なんか最初言っていたこととガラリと変わった気がするが? まぁここから出れる条件としては、この特異点に召喚されたサーヴァントと仮でも良いから契約をすれば、そのサーヴァントを中心にして半径50mの範囲まで行動できる様になる、ってもんだが」

 

「そうですか……なら私と契約しては如何でしょうか? あなたの様な強者が側にいてくれたのなら、私の願いにも手が届きそうな気がします」

 

「アルジュナよ、それはいくら俺でも容認出来ない。この者とは俺が契約しよう。俺はお前の事を好ましく感じている。その他者に対する思い遣りは、俺にも学ぶべき点があるはずだ」

 

「なっ⁉︎ カルナ‼︎ 私が先にこの者と契約しようとしたのだぞ! それを貴様は横槍を入れて‼︎」

 

「確かに貴様からは横槍を入れた様に感じただろう。だが俺は貴様がそう言う前からこの者と契約したいと考えていた」

 

「だが先程の行動は完全な後出しだ!」

 

「確かに後出しだろうが、だがあの者と契約したいという意志は俺の方が勝っている筈だ」

 

「それを言うなら私もそうだ‼︎」

 

 と、この様にいつのまにか2人のサーヴァントはアルジの目の前で口喧嘩を始めた。しかもこの2人はまだアルジの名前を知らない。それに目の前でガミガミと口喧嘩、そこからマジのやりあいに発展するのが面倒だと感じる。

 

 その為アルジは……

 

「おいおい2人とも……俺と仮契約を結んでくれるのは嬉しいんだが、まだ俺はアンタらに自分の名前を言っていねぇよな?」

 

「っ⁉︎ た、確かに……」

 

「俺とした事が、自分の欲に走りすぎたか。確かに俺達は満足な自己紹介をしていないな」

 

「まぁ俺もさっさと名乗れば良かったんだがな。という事でだ、俺はアルジ・ミラージ。変なあだ名を付けない限りは好きに呼んでくれて構わない」

 

「ほぅ、まさか私の名前とほぼニアピン状態とは。私は先程も名乗りましたが、アルジュナと申します。そこに立つカルナとは、生前からの因縁で結ばれた宿敵関係ですね」

 

「俺はカルナという。アルジュナが言った様に俺達は強く深い因縁で結ばれている。最早呪いといってもいいぐらいにな」

 

「アルジュナとカルナだな。分かった、それで俺と仮契約結んでくれるのはどっちだ?」

 

「「勿論私です/俺だ」」

 

「カルナっ! 貴様ぁっ‼︎」

 

「それを言うならこちらの台詞だ」

 

「おい、また口喧嘩を始めるつもりか? というかいい大人なんだからそこはジャンケンとかでも良いだろうが」

 

「じゃ、ジャンケンですか?」

 

「別に俺は強い方をサーヴァントにしようとかそんな事は思わねぇし、寧ろ俺は単独行動派なんだよ。ただこの条件が邪魔だからさっさとこの地に喚ばれたサーヴァントだったら、よっぽどの悪性でない限りは契約するさ。んで? ジャンケンで決めるのか? それとも死闘で決めると言うのなら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はどちらかが勝ったとしてもそいつにつく事はねぇし、逆に俺からしたら下らない理由で時間をとった事になるから……そうなる前にお灸を据えてやるが?

 

 

 

 

 

 

「「っ⁉︎」」

 

 その時2人は実感した。目の前の魔術師、いや人はただの人ではない事を。そして怒らせてはいけない存在だと……

 

 その為2人の判断は早かった。

 

「ま、まぁあなたがそう言うのでしたら……今回は平和的に解決をしましょう」

 

「そうだな……因縁の相手が目の前にいるとはいえ、少々俺も場の空気にのまれていた。すまない……」

 

「よし、ならジャンケンで勝った方が契約を結ぶって事で……勿論一本勝負な?」

 

 そしてアルジュナとカルナによるアルジ争奪戦が始まった。しかし決める方法はジャンケンだ……華やかさに欠ける事だけは分かるだろう。

 

 だがそのジャンケンは今……一本勝負である筈なのに既に20分以上経っていた。

 

「「あいこでしょっ! あいこでしょっ!」」

 

(俺は一体何を見せられてんだろ)

 

 ジャンケンにしろ死闘にしろ時間がかかる事が分かったアルジ。そしてあいこが500回程続いた後……

 

 

 

 

 

 

 

 

うぉぉぉぉっ‼︎ 勝った! カルナに勝ったぞぉぉぉっ‼︎

 

「くっ……不覚を取ったか」

 

(最早死闘に勝ったレベルで喜んでんな……)

 

 ジャンケンの結果アルジュナがカルナに勝利した。その際アルジュナは勝利の雄叫びをこれでもかという程あげており、カルナは意気消沈していた。それにしても物静かなイメージを持つアルジュナからは考えられない様な雄叫びである。

 

「さて、ではマスターアルジ。私と契約して下さい」

 

 ある程度勝ちを喜んだアルジュナは、さっきの態度から一変してアルジと契約を結ぼうとする。アルジもアルジで、この条件から抜け出されるのであれば最早どうでも良いと感じ始めた為、こちらもこちらでアルジュナに歩み寄った。

 

 そんな時だ。

 

 

 

『警告:この条件を解く為にはこの地に召喚された“女性サーヴァント”との契約が必要です』

 

 

 

 

 

 ……はっ?

 

「こ、これはどういう……」

 

「俺達も警告文は確認したが、その時にはその様な条件は組まれて無かった筈だ」

 

(たかだかの20分そこらで内容が変わった? なんで? 可笑しいだろこんなの……俺はちゃんとルールを守ってこの場から半径3m以内から出なかった。軍勢から攻められた時もルールは破っていなかった筈だ。それなのに……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 テメェの方からそのルールを改竄して破るって事だよな?

 

 

 

 

 

 それなら、こんなくだらない真似したガイア又はアラヤも俺にとっては復讐対象だ。世界がどうにかなりそうだからって抑止力を召喚する役割があったとしても……俺は絶対に、絶対に許しはしないっ‼︎だが……

 

(このルールがある以上……俺はこの場から動く事もままならない……)

 

 例えアルジであってもその条件は絶対のもので、怒りや憎しみがあったとしてもこれはどうしようもない。それはアルジにも分かっていた。

 

 そんな自分が惨めに思えたのか、アルジは膝をついて両手も地面に付けて項垂れた。

 

「こんなの……どうすればいいんだよっ……オフェリアを救う為にも俺は、こんな所で立ち止まっているわけにはいかないのに……」

 

「「……」」

 

 アルジの悲痛な顔を見てか、アルジュナとカルナもどう言葉をかけていいか分からず、先程までの空気も霧散していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら? どうかしたの?」

 

「っ⁉︎ アンタは……」

 

「わたし? 私はエレナ、エレナ・ブラヴァツキーよ! この辺りでマハトマを感じたからここまで来たんだけど……」

 

「マハトマ?」

 

「えぇ。さっきまでずっと向こうの方で軍勢に襲われていたんだけど、そこに私達と同じサーヴァントを連れた……マスターで合ってるわよね? その子達が加勢してくれたの。それでも結構敵が多かったからとても大変だったのよ。そんな時にね、山を越えた先から幾つもの砲弾が飛んで来たのよ!」

 

 エレナというサーヴァントはさるに興奮気味に話を続ける。

 

「しかもその砲弾は敵だけを正確に撃ち砕いていったの! それも私達が動いている中で! まるで次に相手がどこにいて何をするかが分かっている様にね! もはや予知なんて領域ではないわ‼︎ もう正にマハトマって感じよ‼︎ それでそんな芸当をやってみせたのは、あなたで間違いないわよね?」

 

「ま、まぁ……俺で間違いないが」

 

「ふふっ、なんでそんなに自信なさげなの? あなたは凄い事をやってみせたのよ! もっと誇らしくしても良いんじゃないかしら?」

 

「そう、か? だが俺からすれば普通の事をしたまでだが……」

 

「あ、あれが普通なの⁉︎ ならあなたの側にいたら、もっともぉっとマハトマを感じられるのね! 良いわ! 私があなたと契約してあげる‼︎」

 

「い、良いのか⁉︎」

 

「勿論! ただし、私にもっとマハトマを感じさせてちょうだい‼︎」

 

 と、アルジュナとカルナの時とは違いスムーズに契約までこぎつけたアルジ。まぁここから出られるのなら早く出たいと思ったアルジは早々にエレナと仮ではあるが契約を交わした。

 

 そして自身の移動制限もある程度緩和された。

 

「んっ……こ、これがあなたとの契約なのね(なんか……凄く気持ちが良いわ)」

 

「ど、どうした? 急に顔が赤くなったが、熱でもあるのか?」

 

「い、いいえ! 何でもないわ‼︎ それよりもあなたの事を紹介したい人がいるの! 彼も多分きっとあなたを見て興味を持ってくれると思うわ‼︎」

 

(多分エジソンの事だよな……そういえばエジソンは……)

 

 そこでアルジはfgoで知った第5特異点の事を思い出して……

 

「そうか。まぁ俺もそろそろここから動きたかったからな」

 

 エレナの提案に了承して移動を決意した。

 

「それじゃあこれに乗っていくわよ!」

 

 エレナは来た時と同じくUFOを顕現して乗る様にと促してくる。彼女なりの善意、というよりも効率性を重視してそう言ってきたのだろう。

 

 まぁそれを何となく分かった上でもアルジは……

 

「それよりも早い移動手段がある」

 

「えっ? そうなの?」

 

「あぁ」

 

 そう言いながらアルジはエレナをお姫様抱っこした。

 

「キャッ⁉︎」

 

「少し速度が出るかもしれねぇから、しっかり捕まってろよ?」

 

「えっ⁉︎ こ、心の準備がっ⁉︎ ってキャァァァーッ⁉︎」

 

 アルジはそのままエレナが来た方向へと飛び去って行った。

 

「……行ってしまったな」

 

「そうだな。我々のあの時間は何だったのか……」

 

「だが我々の関係性は変わらない」

 

「確かに変わりはない。お前が言おうとする事も分かる。だが……」

 

「あぁ、ここは一旦この場から離れるか」

 

「ここで死合をしてしまったら、またアルジが飛んで来て我々の事を止めに来るでしょう。今度は物理的に……」

 

「あいつから醸し出されるプレッシャー……まるで俺達と同じ様な神性を感じた。真の英雄は目で殺す……そんな言葉が当てはまるかの様だ」

 

 

 

 アルジが去った後、カルナとアルジュナもそこからすぐに立ち去った。

 

 

 

 

 

 

side ???

 

 

 

 

 

(少し様子を見て出ようとしたら出遅れてしまったか……)

 

 

 

 濃い紫色の長髪をした女性が岩陰から出て来る。

 

「にしてもあの者……フム、申し分ない力を兼ね備えているな」

 

 その女性は、アルジがこの場にいた時から見ていた。どこからとも無く取り出した長銃で見当違いの方向に向かって撃ち始めたかと思えば、彼自身にも敵が押し寄せてきて、ただそれも難なく撃退した事。

 

 カルナとアルジュナが戦闘行為に及びそうになった時も、威圧によって止めた事。更には先程仮契約を結んだサーヴァントを軽々お姫様抱っこして、魔術行使の痕跡すら残さず空を飛んで行った事などなど……まぁ空を飛んだのは彼の膂力で行ったものだろうと思っている。

 

(にしてもこれではどちらがサーヴァントか分からぬな……)

 

 音に聞こえていたが、まさか神代を生きたカルナとアルジュナを威圧のみで止めるとは……並大抵のサーヴァントではできない芸当である。ただ……

 

「あの者ならば……私を殺してくれるかもしれぬな。よし、あの者を追うとしよう」

 

 その一言を残して、その女性はアルジが飛んで行った方角へと向かった。

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから俺はエレナが来た方向を目指して飛んでいた。といっても空気を蹴っているから宙に浮いている訳じゃあないんだが……まぁそんなこんなでエジソンがいるであろう所まで着いた。着いたんだが……

 

「もぉーっ! あぁやって移動するなら最初から言いなさい! びっくりしちゃったじゃない‼︎」

 

 と、この様にエレナはプンスカと怒っている状態だ。まぁ確かにこの特異点を早く元通りに戻したいからといって何も言わずにあの行動を取ったのは間違いだったかもしれない……

 

「悪かった。移動する前にちゃんと言ってから行うべきだった」

 

「……本当に?」

 

「えっ?」

 

「本当に悪いと思っているの?」

 

「あ、あぁ。こんな俺の為に仮契約してくれたのに、そんな君に対して仇で返してしまったと思ってる」

 

「……そう。分かったわ。そもそも初めて会った時にあんな状態になっていたんですもの。あなたがそれ程までに何かを焦っているのは何か理由があるんでしょう?」

 

「……そうだな。俺はこの世界を早く……元に戻したい(そして……早くオフェリアを元に戻して、元の世界で彼女が幸せに過ごせる様にしたい)」

 

「そう、なのね。あなたには、私が思うほどに背負っているものがあってここにいるのね。でも、急にあんな行動をするなら先に言ってちょうだい。納得できるやり方なら、私もあなたのやり方に文句なんて言わないんだから」

 

「あ、あぁ。今度からそうする」

 

「分かればよろしい! じゃあこっちにいらっしゃい! 案内してあげるわ‼︎」

 

 そしてアルジはエレナに着いていった。着いていくと、大きな工場が目に入る。そこでは大勢の人がいて、何かを組み立てていた。それは大きな鉄砲や剣を持ったロボットだった。

 

 確かに今の世界は産業革命も始まって20年近く経った頃だ。まぁここで作られている物はそれよりも高性能な物だが……

 

(やはりここで働いている奴らは十分な休息が取れていない様に見える)

 

 医学的知識はそこまでないにしろ、人の動きを見れば何とか分かる。今俺がいる世界はケルト兵がわんさか湧いてくる意味不明な状態で、そいつらが何もしてこないのに襲って来る。そこに元々住んでいた人達からすればたまったものではない。だからこそ命からがらエジソンのところに逃げてこれたんだろう。

 

 エジソンも、本来なら善性を持っている人物だろうから、頼ってきた人達を見捨てるわけにはいかない。助ける見返りとしてロボットを作らせるというのも分かりはする。だが……

 

(だからといって……ほぼ休み無しで生産するのはブラック過ぎる)

 

 アルジはそう考えを纏めて、エジソンにどうO☆HA☆NA☆SHIするかを練っていた。

 

 

 

 

「え、エレナくん! 急に飛び出して行ったらダメではないか‼︎ 心配したんだぞ‼︎」

 

「ごめんなさいエジソン。でもあの光景を見てはいてもたってもいられなくて」

 

「ま、まぁ君に怪我がなくて良かった。ところで君が言っていたマハトマの正体とやらは掴めたのかね?」

 

「えぇ! じゃあ紹介するわね‼︎」

 

「アルジ・ミラージ。この世界に召喚されたただの魔術師だ」

 

「もぅ! あんな事をしておいてあなたがただの魔術師なんて事ないでしょ⁉︎」

 

(あ、あんな事とは一体……)

 

「で、アンタがあの発明で有名なエジソンか?」

 

「う、うむ! いかにも! 我こそこの地に召喚されたアメリカ大統王、エジソンである! 我が魂にはこれまで努めた歴代大統領の願いも込められている!」

 

「それで大統王と……まぁアンタがなんであれ、この世界を修正する為に呼ばれた事ぐらいは分かっている」

 

「へぇ、初見でそこまで分かっちゃうのね。ますますあなたのマハトマが気になるわ!」

 

「まぁ俺の中にマハトマ云々あるか分からないが……それよりエジソン、アンタは避難民を助ける代わりとしてここでロボットを作らせているのか?」

 

「い、いかにも……それがどうかしたかね? 我々とて慈善活動ができる程余裕がある訳ではない。だからこそこちらに避難した者達に働いてもらっているのだ」

 

「確かにあの軍勢だ。自衛手段は必要ではあるし、あの軍勢に太刀打ちできる程の数も必要だ」

 

「だが、あれでは避難した奴らが皆過労で倒れる! アンタは、希望を縋ってここに来た奴らを殺すつもりか‼︎」

 

「むっ⁉︎ そ、そんな訳がない! ただ……我々も奴らと戦うには数が足りないのだ! そう考えてしまうとだな……私にはこの方法しか思いつかないのだ‼︎」

 

「……あんたの言い分は分かった。確かにアイツらは元の存在を正さなければ無限に増殖する。それに対してアンタが取った方法は正解の1つなのかもしれない」

 

「だが……俺がこの場に来た限りはもうそんな心配はしなくていい!」

 

「なっ……君はあの者達に対する術を既に手にしていると⁉︎」

 

「まぁある意味はそうなるな。とりあえずこれを見てからこれからを判断すればいい」

 

「来い、ギャラルホルンの地上部隊」

 

 アルジがそう唱えると、周辺に複数の空間の歪みが生じた。そこから出てきたのは……アルジよりも少し大きな鉄の人形で、色合いとしては深緑色だった。持っていた物は人形と同じ大きさのハルバートと大楯で、誰が見ても近接特化の仕様だ。他にも銃と片手で震える斧を持つ人形もいた。

 

「コイツらを……1000体ぐらい出そう。そうしたら今の生産体制じゃなくても何とかなりそうだと思わないか?」

 

「こ、この鉄人形達は……一体どうやって?」

 

「それは企業秘密だ。まぁ製造法を知ったところでこの世界では作れない代物だがな」

 

「なんと⁉︎ この世界でという事は……」

 

「まぁ俺達がいた世界でも作れないだろうな」

 

「な、ならどうして君はこの鉄人形を作れる⁉︎」

 

「それも企業秘密だ」

 

「む、むぅ〜……そうか」

 

「それで、あの工場で働いている人達の労働環境は改善してくれるんだろうな?」

 

「あ、あぁ……君がその鉄人形を私達の為に戦力として貸し出してくれるというのなら……だがメンテナンスはどうすれば」

 

「メンテナンスはこっちで勝手にやる。鉄人形と言っても俺の魔力を通しているからな。一から作り上げるのは少し面倒だが、作った後は簡単にメンテできるようにしたからな」

 

「そ、そうなのか……」

 

「そういえばこっちに立香がいたと思うが……」

 

「あぁ、彼女ならナイチンゲールというサーヴァントと一緒に東の方へと向かったぞ!」

 

「入れ違いになったか……(まぁネロ達がいるのなら問題ないと思いたいが)」

 

「へぇ〜……あなたってこんな事もできちゃうのね!」

 

「ん? まぁ、こうでもしないとこの特異点を早々に元通りに出来そうにないし(立香達が自分達の手で聖杯を手に入れなければ成長出来ないからな)」

 

 こんな事さえ起きなければ立香も普通の人としての生を送っていただろう。そしてオフェリアも……魔術師として仲間達と切磋琢磨してと思う。幸せな形がどうであれ、俺は俺に関わった奴らが幸せだと、そう思って生きてくれるならそれで良い。

 

(人理が元に戻ったら俺自身どうなるか分からないが……俺がこの世界から違う所に行ったとしてもオフェリアには自分の気持ちを伝えないとな)

 

 そんな事を考えながらアルジは先程顕現させたギャラルホルン地上部隊を1000体出し、半分はエジソン達の防衛に充てて残りは進行してくるケルトの軍勢を殲滅しにいった。

 

 その影響か、ケルトの軍勢は大陸の中心よりも西側に侵攻する事が出来なくなったという……

 

 

 

 

 




 本日は新兵装を出させて貰いましたが、解説についてはまた話を進めていって頃合いがいい時に出そうと思います。

 いつもより短い後書きにはなりましたが、また読んで頂いたら幸いです。

久々のアンケートですが、第5章にて貴方が思うヒロイン候補は?

  • 殺菌!滅菌!除菌‼︎の三拍子が揃った婦長
  • 良くってよ‼︎ のエレナおばちゃま
  • お前となら全力で死合が……スカサハ師匠
  • まさかの鞍替え⁉︎ 女王メイヴ
  • いや!嫁ネロ一択だーっ‼︎
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