月鋼 ー復讐者の人理救済ー   作:橆諳髃

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新話までに評価を付けてくださった読者の方々

☆10 ササマル 様
☆9 斉藤 元 様
☆1 わんだ 様

ご評価頂きありがとうございます!

さて今回は、サブタイトルが長いのは良い物が思いつかなかったので……ほぼネタバレ状態になってしまいました。

それと現在fgoが新邪馬台国のイベント中なので書くのも遅くなってしまいました……そちらについても申し訳なく思います。

そして今回は……ピックアップで山南さん、千利休さんどちらともにも来て頂きました! それも利休さんは2体! 宝具やスキルも良い具合なので私としては大変嬉しい限りです‼︎

それでは物語を進めていきたいと思います!


32話 復讐者、自らの現状に不安を抱えるも、エレナに叱咤され大切な者を救いに行く

 

 

 

 

 

 

 

 ギャラルホルン地上部隊を半分はエジソン達の防衛に回して残りを東側に攻めるように指示を出した。それ以降ケルトの軍勢が西側に攻め込んで来た話は聞かない。

 

 それもそのはずで、アルジが顕現させたギャラルホルンの部隊は少数精鋭の部隊だ。ランクとしてはまだ上が存在するのだが、ケルトの雑兵にはこれで十分だと考えている。

 

(それにしても立香達の魔力とかが上手く把握出来ない……まさかあの制約……巧妙に隠していた文章があったのか⁉︎)

 

 アルジの考えた通り、あの制約には隠された文章が存在した。それも直接制約を見たインド兄弟にすら分からないほど巧妙に……

 

(……どれだけ邪魔したら気が済むんだ)

 

 正に神の悪戯としか言いようが無い。

 

「まぁネロ達の魔力は追えているから、まぁ大丈夫だろう」

 

「あら、こんな所でどうしたの?」

 

「エレナか。あぁ、こっちに来た仲間がどうしてるかと思ってさ」

 

「あぁ、立香って呼ばれてた女の子の事ね」

 

「最初の頃は頼りないところが多々あったんだ。元は魔術と関係ない家庭に生まれて、カルデアって所に見出されるまでは普通の、人としての生を送っていたんだ」

 

「だが最近は見違えるようになった。まだ甘いところはあるが、アイツ1人でも何とかこの人理を正してくれると思ってる」

 

「じゃあ、なんでアルジはここにいるの? 彼女だけでもそう出来るって信じているのに」

 

「確かに信じてる。だけど俺にも……譲れない事がある」

 

「……そう。さっきも感じた事ではあるけれど、あなたにはあなたなりの信念があるのね」

 

「信念……そうとも言えるかもしれない。ただ俺の心の奥底にあるのは……誰から見ても醜いと思えてしまう様な憎悪だけだと感じているが」

 

 アルジがエレナから顔を背けながらそう言葉にする。その時の自分の顔がダサいと感じたのか分からないが、なんとなく正面から見られたくないと感じて、そこからは一言も発さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

side エレナ

 

 

 

 彼と会ったのは、ただの気紛れだった。マハトマを感じるからと言って向かった先には、明らかに神代を生きたサーヴァントが2人いて、その2人が1人の男の子に向き合っていた。

 

 まぁその時には男の子はどこか悲しげな様子をしていて、サーヴァント2人はどうしたら良いか分からずに立っていたから、私が声をかけたの。それから仮での契約になったんだけど……

 

(あの子からは今まで感じた事が無いほどのマハトマを感じたわ!)

 

 契約した瞬間……私の体をとてつもない快感が襲ったの。とても……気持ちが良かったわ。その時はなんとか誤魔化せたけれど、またあんな快感に襲われたらどうなるかなんて分からない。

 

 それほどまでに、あの子の中からマハトマを感じたの。普通の魔術師と言っていたけれど、嘘が下手な子なんだと思う。まぁ本気でそう思っているなら、それはそれで自己把握が苦手な子なのかしら?

 

 まぁそこが少し可愛げがあるところじゃないかしら。それに制約で私の側から遠くに離れる事が出来ないって言っていたし、少しずつ彼の事を知っていくのが今は1番良いのかもしれないわね。

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 エレナと契約して数日が過ぎた。立香達はもう大陸の中央部分は横断して東側に入っている頃合いだろうか。まぁネロ達もいるし……って

 

(確かネロ達がメイヴを暗殺しようとしたのはいつだ?)

 

 確か後半に入る前だったと思うが……それよりフィン・マックールは出てきたのか?

 

(……まさか俺が介入した事で立香達とエンカウントしていない? という事は)

 

「アルジくん! ここにいたか‼︎」

 

 そこにエジソンがやって来る。まぁ俺の予想が正しければ……

 

「サーヴァントが2体私達の工場前に現れたのだ! 今はエレナくんが様子見で彼らと対峙しているのだが……」

 

「いつ戦闘になってもおかしくない……だな?」

 

「うむ! だから「分かった。行こう」おぉ! ではさっそk……あれ? アルジくん?」

 

 エジソンが案内しようとした時には既にアルジの姿はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とまぁエジソンから知らされてエレナの元に来たが……

 

(全く……律儀に相手側も待ってるなんてな)

 

「おぉおぉこれは、君がメイヴ殿の言っていた魔術師の1人かな?」

 

「フーム……あまり強そうには見えぬがな」

 

 最初に言葉を発したのがフィンで、もう1人がフェルグスと呼ばれる筋骨隆々の漢だった。肩に担いでいる螺旋剣が外から見たら非常に重々しく見える。だが螺旋剣って、時代錯誤半端ないな今更だが……

 

「それで、君はそこのレディに闘わせるのかな?」

 

「あら? これでも私はサーヴァントなのよ? あなたたちが私達を攻撃するというのなら、私だって全力をもって対抗してあげるわ!」

 

 エレナが一歩前に出ながらそう言った。自身の周りに多数の本を出して臨戦体制を取る。

 

「女ながらも勇ましく前に出るか! 嫌いではない、むしろ好きな方だ!」

 

 フェルグスがエレナめがけて一気に突撃した。その行動に少し驚いたエレナであったが、顕現させた本から魔術で編み出したビームで反撃に出る。

 

 だがフェルグスは螺旋剣、カラドボルグで全て弾いてみせた。エレナは少しは攻撃が掠ってくれるだろうと思ったが、全て弾かれた為に少しだけ呆気に取られた。その一瞬は歴戦の勇士であるフェルグスには事足りる程であり、すぐエレナの胴体にカラドボルグが突き刺さる……

 

 

 

 

 

 

 

 その筈だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ぬっ⁉︎」

 

「あ、あなた……」

 

 エレナとフェルグスの間にいつの間にか現れたアルジが、いつものナイフを持ってカラドボルグの一撃を片手だけで受け止めていた。

 

(まさか……俺の見立てが間違っていたか)

 

 エレナへの一撃を防がれたフェルグスはすぐさまその場を飛び退く。だがほんの一瞬だけアルジが早く、フェルグスの左腕を下から上へ一閃していた。深くはないがダメージを与えた事は間違いない。

 

「魔術師……名は?」

 

「アルジ、アルジ・ミラージだ。魔術師の前にただの人だが」

 

「フッ……ただの人が俺の攻撃を防ぐだけでなく俺に対して傷を付けるなど……だが」

 

「それでこそ戦いのしがいがある‼︎」

 

「まるで血に飢えた肉食獣だな。まぁ……」

 

「テメェは仮ではあるといえ、俺と契約しているエレナの事を傷付けようとしたんだ……俺に復讐される覚悟は……あるんだろうな?

 

(っ⁉︎ この威圧、まさか影の国の女王と同じ……いや、もしやそれ以上の)

 

 それ以上は思考できなかった。何故ならその時にはアルジに殴り飛ばされていたからだ。右頬に強烈な痛みが生じる。今は地面に仰向けになって倒れていた。

 

 大したダメージでは無いと相手に思わせる為に勢い良く起き上がったが、若干頭がクラクラする。

 

(英霊というものになって初めて人に殴られた。サーヴァントならば分かりはするが……)

 

「フェルグスが魔術師に反撃されるだけでなく殴り飛ばされる……ただの魔術師やただの人だと言っていましたが、目の前にいる存在がサーヴァントであると言われた方がしっくりきますね」

 

「御宅はいい。アンタもここを襲いに来たんだろ? つまりはエレナも傷付けようとしに来た……なら、俺がこのままテメェを逃す訳ねえだろ?」

 

「っ⁉︎ やれやれ本当に……来るべき時期とタイミングを間違えてしまいましたかねこれは。(これ程の威圧と目の前で見せつけられた武力……相手は何も変哲のないナイフしか武装らしきものは出していない)」

 

(ですがそれ以外にも武装はあるでしょうね。確かにあの小ささならどこかに隠して持ち歩けるでしょうが……)

 

「考え事をしている場合か?」

 

「っ⁉︎」

 

 アルジの持つナイフとフィンの槍がぶつかった。といっても槍の効果範囲よりも懐に入られた為に何とか持ち手で防ぐ事となったが。

 

 そこにフェルグスが加勢する。カラドボルグでアルジの左側から突進し、そのままの勢いで上から下へと振り下ろした。

 

「遅い」

 

 だがアルジも左手に無手の状態から鉄血メイスを顕現させてその一撃を止めた。

 

「クッ……化け物め!」

 

「俺から見たら神話で過酷な時代を生きたアンタたちの方がよっぽど化物染みている様に見えるがな」

 

「その言葉はそっくりそのままお返ししますよ……いくら魔術師の中で一定の力を持っている者がサーヴァントと対峙できる戦闘力を持っているとはいえ、肉弾戦主体で私達サーヴァント2人と闘っているあなたがただの人の子である訳がない」

 

「ひどい言われ様だな……俺は普通の魔術師の家系に生まれただけだというのに」

 

「俺達相手に全く引かない姿勢、もとい逆に襲いかかって来る胆力……魔猪と戦った方がまだマシなぐらいだ!」

 

「失礼な奴らだな。まぁ過去にサーヴァント4基とやり合った事があるし、ソロモン(偽)とやり合ったぐらいだからな……そう考えると全然生温いな。まぁアンタ達に対する復讐心は変わらないが」

 

「これで生温い戦闘と言われた暁には……もはや我々も何の為にここに呼び出されたか分かりませんね……」

 

 悠長に言葉を交わしているが、この時点でも彼らの応酬は続いていた。アルジは鉄血メイスだけを構えて2基のサーヴァントに向かう。

 

 対するフィンとフェルグスも2人がかりでアルジを攻撃するが、鉄血メイスによって尽くを防がれる。

 

「これは四の五の言わず宝具を使うしかないか」

 

「これでも本気でやっているにも関わらずこの結果……なりふり構っていられないのは事実の様ですね」

 

「エレナ、宝具が来る。君はこの場から離れるんだ」

 

「何言ってるのよ⁉︎ あなたは私のマスターでしょ⁉︎ 宝具を出してくるなら魔術師のあなたが防ぐ見込みなんてないじゃない‼︎」

 

「それに私はサーヴァントよ? 確かにさっきはあなたに助けられちゃったけど、私だってあなたに良いところを見せたいんだから‼︎」

 

「……分かった。でも俺は君の仮のマスターであるとは言え、君が傷つく事を俺は願わない。だから、あのフィンって奴の宝具だけ相殺してくれないか?」

 

「むぅ……信じてないのね。でも、分かったわ!」

 

「よし、なら魔力をエレナに」

 

「んっ⁉︎ (まただわ……流れ込んでくる魔力にとてつもない程のマハトマを感じる!)」

 

「何をしようとしているかは知らんが、一気に決めさせてもらう! 『虹霓剣(カラドボルグ)‼︎』」

 

「これで沈めれれば御の字ですが……堕ちたる神霊をも屠る魔の一撃。その身で味わえ『無敗の紫靫草(マク・ア・ルイン)』」

 

 フェルグスが螺旋剣で地面を突き刺すと、それを中心にして円形に亀裂が入る。同時にアルジ達の地面から虹色の光が漏れ出たかと思えば、それに押し上げられる様に岩石も噴き出て襲い掛かる。

 

 フィンはというと、槍をアルジ達に突き出した姿勢からウォータージェットの如く魔力を纏った水圧を放つ。並のサーヴァントであれば一撃で倒してしまう程の威力だ。

 

 だがそんな宝具も……

 

「そんなものでやれると思うなぁっ‼︎」

 

 アルジはメイスを地面に叩きつけて岩石どころか虹色の光さえも噴出を抑えた。逆にそれが逆流したのかフェルグスの地面から虹色の光と岩石が溢れ出て、宝具を放った本人に襲いかかる。

 

「宝具には宝具で相殺するしかないと思ったけど、今だったらこれで行けそうだわ‼︎」

 

 エレナは魔本を4冊程自らの上下左右に展開してレーザーを放つ。そのレーザーは全て1箇所で交わると、そこから大きなものに変わってフィンの宝具とぶつかった。

 

 最初は拮抗していたが、アルジに注ぎ込まれた魔力がフィンの注ぎ込んだ魔力よりも多かった為に、相殺どころかフィンの宝具を打ち消した。そのレーザーは直線上にいたフィンを呑み込む。

 

 その応酬が終わって数秒後、先ほどの姿とは見る影もない程ボロボロになったフィンとフェルグスが辛うじて立っていた。

 

「まさか……宝具を出しても歯が立たんとは……」

 

「宝具同士のぶつかり合いならば納得出来ますが……まさか通常の攻撃手段で消し飛ばされるとは……誰が予想できるでしょうか」

 

 そう言いながらも限界が来たのか、2人の身体から金色の粒子が流れ出る。

 

「だが……現代にもこんなに強い猛者がいるとは。確か魔術師いや、アルジと言ったな。坊主はカルデアと呼ばれるところから来たのか?」

 

「あぁ、もう1人の魔術師と一緒にな」

 

「そうか。もし俺がそちらに呼ばれたのなら、もう一度坊主と再戦したい。その時までには俺も鍛錬を怠らず、技を磨いておくとしよう」

 

 そう言い残してフェルグスは去って行った。

 

「最後まで自由というかなんというか……腕は買っているのですがね。それにしてもあなたも……最後まで分からずじまいだった。その力の出どころは……普通に考えても神霊と同等といっても過言ではないですね」

 

「ですがあなたはその時代よりもずっと後の時代、平和な時代に生まれたあなたが何故そんな力を有しているのか、本来であれば絶対と言って良いほどあり得ない」

 

「最近よく言われるな。まぁ……俺もこの力を望んで手にした訳じゃあない。ただ……」

 

「俺は大切な人を取り戻す為にここにいる。だからアンタ達が言う神霊という力がなんであれ、大切な人達が救われるなら、助けることができるなら、俺はどうなろうとこの力を使うまでだ」

 

「……私達に比べてそこまで生きていないだろうあなたが、あなたの目は確固たる信念を灯している。口だけの若者ではないという事ですね」

 

「当たり前だ。そうでなかったら今頃俺はこんなところにいねぇよ」

 

「はは……短い時間、数手応酬した程度ではありますが、確かにあなたはそんな人間ではなかったですね。っと、そろそろ私も限界ですね。では、またどこかでお会いできる機会があれば、その時は味方でありたいものですね」

 

 フィンもその言葉を最後にこの特異点から姿を消した。

 

「……やけにあっさりだったな」

 

「そう? 私から見たらとても苛烈な戦闘行為に見えたんだけど……」

 

「まぁ、何はともあれ立香の手助けにはなったな。それで、これからどうするか」

 

「そうね……私はあなたの話を聞きたいわ」

 

「俺の話? 対して面白くないが……」

 

「それでも、よ。あなたの体験した事が、私にとってのマハトマに繋がるかもしれないんだから」

 

「そのマハトマってやつは俺にはよく分からないが……まぁエレナが知りたいというなら」

 

「っ! うん! なら沢山あなたの事を教えて頂戴‼︎ (それに……さっき魔力を流されてからか分からないけど、あなたの事が凄く気になって仕方が無いわ。生前人に対してここまで思った事がない程に……ね)」

 

 そしてアルジとエレナがエジソンの工場に戻ろうとした時だった。

 

「待て、そこの少年」

 

 背後から呼び止められた。いつもなら魔力感知が働くのだが、アラヤ若しくはガイアからの誓約(後付けされた)によって全く分からなかった。内心驚きながらも、これが急に相手が背後から現れるって感じか、と呑気に考えながら振り向いた。

 

 そこには全身黒いタイツらしきもので覆い、口元も黒い布で覆う女性が立っていた。その女性は紫色の長髪を持ち、紅い綺麗な瞳をしていた。そして手に持っているのは女性の瞳と同じ色の槍だ。

 

「お主……相当な力を持っている様だな。それに数々の死線を潜り抜けてきた風貌……歴戦の勇士といっても差し支えない」

 

「急に出てきたかと思えば何を言い出すんだ? 歴戦の勇士? ただの魔術師だが? それ以前にただの人だ」

 

「そのくだりはさっき聞いておった。それに先の戦闘よりも前に起こった戦闘も見ておったし、そもそも一目見た時から只者ではない事は分かる」

 

「……で? 俺に何の用だ?」

 

「お主……いや、アルジと言ったな。アルジよ、私と戦え」

 

「戦え? 悪いが俺はアンタと戦う理由は持ち合わせてねぇが? それに俺はアンタの名前すら知らない。そもそもそんな奴の願い事を聞く慈悲を俺は持ち合わせてないがな(まぁ名前は知ってるんだがな)」

 

「確かに……名乗るのが先だったな。私はスカサハ、影の女王スカサハだ」

 

「影の女王って……あのスカサハっ⁉︎ ケルト神話の超大物だわ‼︎ そんな英霊がどうしてアルジとの戦いを望むの?」

 

「フッ……決まりきっている事。お主が私を殺し得る存在だからだ」

 

「俺がアンタを? ……訳が分からねぇな。まぁそもそもアンタとし合うつもりなんてもうとう「私がそこのサーヴァントを攻撃してもか?」……はっ?」

 

「先程の戦闘もしっかり見ていた。そこのサーヴァントが攻撃されようとした時に目にも止まらぬ速さで前に出て防いでいたな。ならば私もそこにいるサーヴァントを攻撃したら、否が応でも私と戦うだろう?」

 

「……お前もか」

 

「何がだ?」

 

「お前も……俺から大切な奴モンを奪わないと気が済まないってか? それ程までに俺の事が憎いか?

 

「っ⁉︎ (やはりこの威圧、私と並びうる。いや、それ以上と言っても良い。まさかこんなにも私を奮い立たせてくれるとは、やはり私を殺せるのはあの者とお前くらいだろうな)」

 

「おい、なんとか言えよ」

 

「そうさな、別に私はお主の事が憎くて死合おうと行っているわけではない。ただ私を殺せるだろう存在と誠心誠意死闘をしたいだけだ」

 

「……はぁ、面倒なんだよ。そんな戦闘狂と戦うのは」

 

「それにそうしようとしてるならさっきのフェルグス然り、既に手を出してるだろうが。一々聞いてくるとか律儀なところあるな」

 

「ムッ……私とした事が、そうすれば良かったか」

 

「……変わった奴だな」

 

「ハッハッハッ……なに、お主も変わった奴の1人ではないか! そもそも宝具をそのまま相手に返すなど見た事が無かったぞ! それも魔術師がサーヴァントに対してな」

 

「出来るものはできるんだからどうって事ないだろ?」

 

「ハハハッ……そうか。思い切りの良い魔術師だ! いや、人間と言った方が良いな。よし、気が変わった。魔術師アルジよ、私と契約して欲しい」

 

「また唐突だな……まぁ俺としてはすぐこの特異点を修正出来れば良いし、戦力が多いに越した事はない」

 

「フフッ、まぁ大船に乗ったつもりでいるが良い。しかし条件を先に提示しておきたいのだが……」

 

「どうせ私と最後に死合えって言うんだろ? 全く……」

 

「話が早くて助かる」

 

「面倒な事だがな」

 

「まぁそう言うな。その代わりとしてはなんだが、この特異点ではお主の指示通りにしてみせよう」

 

「そうかい……まぁんな事よりもさっさと契約するぞ」

 

「あぁ、頼むぞ」

 

 スカサハに手を差し出されたアルジは、それを優しく掴んで魔術回路を擬似的に繋げる。そこから自らの魔力を流し込んだ。

 

(あっ……な、何だこれはっ⁉︎ 今までに感じた事がない程の魔力の質……どおりであれ程強い訳だ。いやあれすらもお主の力の半分も出していないと言うことか)

 

「あぁ……これはマスターとの死合がたのしみで仕方がないな」

 

「おい、口に出てるぞ」

 

「おっと、ついつい本音が漏れ出てしまったか」

 

「悪びれる様子もねぇのか」

 

「うぅ〜……」

 

「ん? どうしたエレナ。何でそんなに頬を膨らませている?」

 

「っ⁉︎ な、なんでもないわよ‼︎ とりあえずこれで戦力が増えたのだから、工場に戻って作戦会議とかしましょ‼︎」

 

「普通に正面から力押ししても勝てるがな?」

 

「うっ……ま、まぁ確かにアルジからの魔力供給のお陰で物凄く攻撃も強化されているし、攻撃のレパートリーも何となく掴めたからいけない事はないけど……」

 

「何なら今すぐにでもこの特異点を支配しているものを倒しに行こう。善は急げだ」

 

「いや、ただ単にさっさと特異点を終わらせて俺と戦いたいだけだろうが」

 

「バレたか」

 

「戦闘狂め……っ⁉︎」

 

「なに? どうしたの?」

 

「……ネロが危ない」

 

「えっ⁉︎ それって私とエジソンを助けてくれた子達の1人よね⁉︎ なら早く助けに行かなくちゃ」

 

「……だが俺には誓約がある。エレナの元から半径50mより外へ行く事ができない!」

 

「な、なら私をあの時の様に持って運んだら良いわ!」

 

(確かにエレナの言う通りだ。だがそれで行けたとしても……相手は“狂犬”だ。邪ンヌ達より日が浅いとはいえ、俺と一緒に訓練したネロが今、殿をして仲間を逃がしている。と言う事は物語と同じ様にメイヴの暗殺に失敗した。それにプラスして俺の存在が奴を強化しているかもしれない)

 

 そんな状態で俺は、エレナを守りながらネロに加勢できるか? いつもなら出来ると言っていたが、あのアラヤ若しくはガイアが知らない内に制約を付け加えているかもしれない。

 

(そんな万全ともいえない状態で……出来るのか? 俺に?)

 

「アルジ? 何を考えているの? 仲間が大変なんでしょう⁉︎」

 

「あぁ、分かってる。分かっているんだ……」

 

「なら何で……っ! もしかして……私の事?」

 

「今の俺は、いかすかねぇ奴らが外野から下らない制約を幾つも課せられてる。そんな状態でもし間に合ったとしても……エレナも守りきる自信がない」

 

「……アルジ、顔を上げてちょうだい」

 

 アルジはエレナに言われた様に俯いていた顔をあげた。それと同時に両頬に平手で打たれた衝撃が走る。

 

「そんな弱気になってどうするの⁉︎ さっきでの戦いで見せた勢いはどうしたの⁉︎ さっきのあなた……とてもカッコ良かったわよ! とてもマハトマを感じたのよ‼︎ 大丈夫‼︎ 私があなたの強さを保証してあげる! 自信がなかったら私があなたに自信を付けさせてあげる‼︎ だから、前を向いて考えるの‼︎」

 

「っ……(そうだ。こんな所で何ウジウジ並んでんだ俺は! アイツらから知らないうちから制約を加えられて、出来る事が出来なくなったのがいつの間にか怖くなったか?)」

 

(いや、そもそもこんな情けない姿……オフェリアに見せれる訳ねぇだろうがっ‼︎

 

「エレナ、ありがとう。目が覚めた」

 

「っ! うん! それじゃあ早速助けに行くわよ‼︎」

 

「悩み事は済んだ様だな。さてマスター、私達はどうすれば良いかな?」

 

「あぁ、それでだが……」

 

 そしてアルジはエレナとスカサハにネロを助ける算段を伝えた。それを2人が聞いた時だが……

 

「す、凄い凄い‼︎ とてもマハトマを感じちゃう‼︎」←エレナ

 

「ほほぅ……そんな芸当も出来るとは、やはり私を殺せるのはマスターだけやもしれぬな」←スカサハ

 

「よし、それじゃあやるぞ!」

 

 こうしてアルジは行動を開始した。それも相手が驚きに固まってしまう様な事を……

 

 

 

 

 

 

 

 

side 嫁ネロ

 

 

 今余は窮地に立たされていた。余の奏者であるアルジと合流するまでの間はもう1人のマスターである立香と行動していたのだ。途中ディルムッドと呼ばれる槍兵のサーヴァントと対峙したものの、そこは立香達が相手をして勝利を収めた。

 

 その道中で余は、途中で合流した弓兵サーヴァントのロビン・フッドからこの特異点を支配しているサーヴァントの暗殺を持ちかけられた。余としてはアルジの目的が少しでも早く近付くならとの事で二つ返事で了承した。

 

 そしてロビン・フッドの宝具を使って一気に特異点の支配者、女王メイヴの懐へと入り込んで余の宝具で一気にカタをつける気でいたのだ。だがその見通しは甘く、側にいたクーフーリンの闇落ちをした姿に防がれ、逆に反撃を喰らってしまったのだ。

 

 そこからは皆を逃すために余が殿を受け持ったのだが……

 

「まだ粘りやがるか……白い衣もテメェの血で所々染まって、そこまでしてアイツらを生かす価値があったか? それだけの実力を有するテメェを逃すならまだしも」

 

「フッ、こちらも好きでやっている事だ。それに余はまだやらねばならん事もあるからな。ここで負ける訳にもいかないのだ!」

 

「フンッ……だが押されているのはテメェの方だ。それに俺もそろそろテメェとは飽きて来たところだからよ、この赤黒く染まった槍のひと突きで消え失せな」

 

 間違い無く奴が放とうとしているのは宝具だった。余は最初で全力の一撃を放ち、それを軽々と受け止められてしまった。アルジと訓練をしているのに情けないところだが、今の余に受け止められる余裕は無い。

 

(どうやら余はここまでみたいだ。アルジは……余が勝手にいなくなったらどう思うだろう。泣いて悲しんでくれるだろうか?)

 

 そんな顔も……見てみたい気はする。奏者はあまり泣き顔を見せてくれはしないからな。それを余が優しく抱き締めて、宥めてやるのだ。そんないっときが、余にとってどれほど嬉しいものか……考えただけでもニヤケが止まらぬ!

 

(だがそれも、ここまで……長い様で短い付き合いであったな)

 

 まぁタダでやられる訳にはいかぬからな! 奴に一矢報いて見せよう‼︎

 

 そして余はクーフーリンに向けて一気に距離を詰めた。奴も宝具を余に叩きつける為に余へと飛びかかる。それ故に、1秒にも満たない速さで間合いは詰められた。だが槍を持つ彼奴の方が余に攻撃を喰らわすのが早かろう。槍先が余の心臓に突き刺さろうとしている事が分かる。

 

(余の奏者……アルジよ、そなたがこの先も幸が多がらんことを祈っているぞ)

 

 嫁ネロがそう覚悟した時、槍の軌道を一瞬で逸らすほどの風圧が槍の横合から生じた。それによりクーフーリンは体勢を崩し、逆に嫁ネロの攻撃はクーフーリンの左腕を傷付けた。

 

「クーちゃん⁉︎」

 

 それを側で見ていたメイヴは、何が起こったのか分からないと顔に出す。そこで両者は一旦距離を取った。

 

「今のは……なんだ? テメェ、まさか手品の類でも仕込んでたのか?」

 

「フッ、余がそんな事をする余裕でもあった様に見えたか?」

 

「だろうな。だがそれであるなら尚更さっきのはなんだ? まさかテメェの仲間がまだ近くにいやがったのか? ……いや、それも違うな。それなら最初から全員で俺と対峙した筈だ」

 

 クーフーリンが1人で思案しながら呟いていると、クーフーリンと嫁ネロの丁度中間点でまた風圧が生じた。それも今度は空間が歪む程の……

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

side クーフーリン・オルタ

 

 

「何が起こってやがる?」

 

 そんな呟きも掻き消すほどに、空間の歪みから絶え間なく風圧と衝撃が生じる。その感覚はどんどん短くなり、やがて黒いヒビが入った。

 

「えっ? えっ⁉︎ 何が起こっているの⁉︎」

 

 メイヴがそう騒ぐのも束の間、黒いヒビから人の両手が出て来る。それは黒いヒビを扉を開く様に広げていき、最終的に人1人が通れる穴が出来上がった。出来上がった途端……

 

「っ⁉︎」

 

 クーフーリンが槍で何かを捌く様に振るった。当然側にいたメイヴは見えていない。

 

(一瞬だけ切先が見えた……だがなんだありゃ? 今まで見た事ねぇ。しかも……)

 

「チッ……」

 

 知らず知らずのうちに右足が後ろ側から何かに斬られる形で攻撃を受けていた。どうやらさっき防いだのは自分に向かって飛んできたもののうちの1つだったらしい。

 

(……あの黒い空間の中から底しれねぇ魔力を感じる。しかも段々近づいて来やがるか)

 

 この世界に来て、目の前の嫁ネロはそれなりの強者ではあったが、それよりも数十倍も濃い魔力を纏わせる存在がいるとなると、戦闘狂である自分からしてみれば早く死合たいところだ。

 

 持っている槍を無意識のうちに強く握り、その空間からまだ見ぬ強者が現れるのを今か今かと待つクーフーリン。その瞬間だった。

 

「っ⁉︎ またかよっ‼︎」

 

 今度は視認できる程の速さで空間から複数の何かが自分目掛けて飛んでくる。一直線で飛んで来た物を弾き返しはするが、弾き返された物はすぐ様方向転換してまた襲い掛かってくる。

 

(弾くよりも避けた方が良かったか)

 

 そう思いながらも、避けたら避けたでまた軌道を変えてくるだろうと考えてからその思考は捨て、襲い掛かってくる物をいなした。それが十数秒続いた所で攻撃して来た物は攻撃をやめて黒い空間に沿う様にして集まっていた。

 

 コツ……コツ……

 

 

 

 

 足音が空間から響いて来ては、ようやく相手が来たかとクーフーリンは口元の端を吊り上げる。そこから覗ける犬歯が彼の獰猛さを表しているかの様だった。

 

 そしていよいよ空間から強者が姿を現した。姿形はどこにでもいる様な人間で、だがその者から垂れ流されている魔力は、さっきから感じ取っていたそれと一緒だ。

 

(ともかく、奴がどんな存在であろうと俺が楽しめればそれで良い)

 

 クーフーリンはそう簡単に思っていた。思っていたが故に見誤ったのだ。空間から出て来た男……顔は俯いており、銀色で少し長い前髪が目元にかかる様にこちら側から見えた為、相手の目元を伺う事は出来なかった。出来なかったが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 貴様は地獄に行った方がマシな程の後悔を与えてやる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(っ⁉︎ コイツ……ヤベェ……)

 

 相手の口元が微かに動く。読唇術を体得しているわけでは無いが、自らに備わっている直感がそう言われたのだと告げている。

 

 自分が戦闘好きな事は誰よりも理解していた。そして強者との戦いが自らの生き甲斐である事も……

 

 だがそんな彼であっても理解してしまった。目の前にいる存在は……この世で怒らせてはいけないものの1つであると……

 

 そんな思考をしていたが為に、自分がいつの間にか殴り飛ばされていた事に気付いたのは、周りに陣取っていた数百程のケルトの軍勢を巻き込んで建物の外壁を貫通した時だった。

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 







解説


ギャラルホルン地上部隊

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』二期の最終回において主人公達を包囲していた部隊。グレイズと呼ばれるモビルスーツがライフル、手斧、ハルバート、大楯等を装備している。陣形に割り振られて装備は変わる。前衛は基本的にハルバートと大楯装備。後衛はライフルと手斧である。


さて、今回はメインシナリオの通り嫁ネロがクーフーリン・オルタの暗殺に失敗し、本来であれば反撃を受けて敗れるはずも、アルジとの戦闘訓練で強化されてなんとか持ち堪えました。

次回はクーフーリン・オルタと死合が発生する予定で、その回が終わればこの特異点の最後の方を書く予定です。私もできるだけ早めに2部へと行きたいので……

では本日はここまで! 次回お会い致しましょう。

久々のアンケートですが、第5章にて貴方が思うヒロイン候補は?

  • 殺菌!滅菌!除菌‼︎の三拍子が揃った婦長
  • 良くってよ‼︎ のエレナおばちゃま
  • お前となら全力で死合が……スカサハ師匠
  • まさかの鞍替え⁉︎ 女王メイヴ
  • いや!嫁ネロ一択だーっ‼︎
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