☆10 トウカ@12 様
☆8 キントレスキー 様
ご評価下さりありがとうございます‼︎
更新が1ヶ月過ぎてしまいました。イベントなどで忙しかったのと、リコリス・リコイルを一気見した影響でその作品を題材にした小説を読み漁っており遅れてしまいました。申し訳ございせん。
さて、今回の話で一気に話が進みます。後1,2話で5章は終わってくる予想です。
私も心の中では、作品上で早くオフェリアを救ってオリ主と現実でイチャイチャさせたいと思っています。出来る限り早く投稿していきたいと思っておりますが、仕事や私事の用事その他諸々で遅れてしまう事については本当に申し訳なく思いますが、何卒これからも本作をよろしくお願いいたします。
それではご覧下さい。
(こんな相手に対して弱気になっていたとは……つくづく情けない)
確かにこの特異点に来てからガイアまたはアラヤに能力の制限を勝手に課せられたものの、狂犬を殴り飛ばして感じた。確かにコイツはランサーの時の知性を兼ね備えつつ、バーサーカーとしての戦闘技能や力の向上は格段に跳ね上がっている。
ただそれだけに過ぎなかった。実体剣を兼ね備えていたドラグーンを奴に飛ばしてどれ程の力を持っているのかを測ってみたつもりだったんだが……本気を出していないといえどあの程度の力量かと感じたよ。
(にも関わらずだ……先程弱気だった自分をぶん殴ってやりたい)
そんな感情を込めながら俺は、嫁ネロを傷付けた奴が吹き飛んでいった方向を凝視する。狂犬がいつ俺に突っ込んで来ても対処できる様に……
「奏者……」
背後からそう呼ばれた俺は、狂犬からの注意を解く事なく嫁ネロの方へと振り返った。致命傷は無いが、奴からの攻撃で嫁ネロの白く綺麗な肌が多数の傷を負って血が流れていた。その血は纏っていた花嫁衣装も所々赤く染めている。
俺は彼女にゆっくりと近づいて行った。
side 嫁ネロ
(余は……奏者を心配させてしまった)
前特異点で奏者の想いを知った。想い人を助けたい気持ちは勿論あったが、余達の事もまた大切であると……目の前で見ていたはずだったのにだ。
「ネロ……」
いつの間にか目の前に立って余の事を呼びかけてきた事にビクリと身体を震わせた。多分余が勝手にこんな事をしたから怒ってくるだろう。そう思っている余は、アルジの事を真っ直ぐ見る事が出来なかった。
(こんな勝手な事をした余が……奏者に合わせる顔などない……)
そんな感情で心がいっぱいになっていた時だ。余の身体は温かい何かに包まれていた。
「……遅れてごめん」
(あぁ……マスターは……)
こんな余にも優しくしてくれるのか……やはり余はもう……
(アルジ……余はそなたがいなければ生きていけない身体になってしまった様だ)
心配させてしまった事は……精一杯謝ろう。邪ンヌ達からは滅法殴られたりする事も絶対に避けられないだろうが、それでも……
(余は……最後までそなたの傍にいたい。そなたがこの世からいなくならない限り、ずっとそなたの元へ)
例えアルジとの契約が解除されて別のマスターの元に行ったとしても、この記憶は未来永劫廃る事は無いほど自身の身体に刻み付けららてしまった。アルジが意図しなかったとしても、彼女はアルジの他に最優のマスターに出会う事など無いに等しい。
そしてアルジに抱きしめられながら嫁ネロは、その想いを知られない様にアルジを強く抱きしめ返した。
side out
アルジが嫁ネロの事を抱きしめて数分経った頃、アルジの方から抱き締めを少し緩くして嫁ネロの顔を見れる様にした。嫁ネロは一瞬アルジが離れるのかと思い残念そうな顔になったものの、ただ抱き締めを緩くしただけだと気付くと一瞬で嬉しそうな顔に戻る。
そこでアルジは開口一番に嫁ネロに告げた。
「ネロ……俺は先に謝らなくちゃならない事がある」
「な、何を言っておるのだ⁉︎ あ、謝るのなら勝手な行動をしてしまった余で……」
「でもそれは多分……俺の事を考えて、想ってくれての事だろ? なら俺は、ネロの事に対して怒るとかそんな事するつもりはないから」
「そ、そうか……だがどうして奏者が余に謝るのだ?」
「俺は今……ガイアまたはアラヤって奴に地球を滅ぼす存在だと認識されてる」
「っ⁉︎ そ、そんな事、あるはずが!」
「だがアイツらは内面なんて見ちゃいない。俺という戦闘力がこの地球に対してどれだけ危ないのかってところだけしか見てくれていないんだ」
「だから今……俺はアイツらにかけられた制約のせいで十全に力を使えない状態だ。それも時間が経つごとに勝手に付けられていく。そんな状況ってだけで俺は弱気になって……ネロを助けに行く事が出来るのかと、悩んでしまった」
「アルジ……」
「ネロも俺からしたら既に大切な存在なのに……いざいつも通りの力を出せないって感じただけで俺は……少しだけ諦めかけた。助ける事が出来ないかもって。だから俺h「良いのだ。余はそなたを許すぞ」っ⁉︎」
「そなたは、そんな状態でも余の事を助けようと考えてくれた。諦めかけたかもしれん。だがそなたは余の事を今救ってくれたのだ。そもそもこれは余が勝手にしてしまった事だ。逆に余の方こそ奏者、心配させてしまった事と、勝手にそなたの前から消えようとしていた事を……謝りたい」
「……なら、どっちとどっちでこれ以上は無しにしよう。このままだったら両方譲らない様な気がするしな」
「フフッ、そうだな」
「でも……本当に無事で良かった。君が、ネロが生きていてくれて……」
「余も……こうしてアルジと抱き合えて嬉しい。こんな時なのに……そなたの温かさが心地よい。一生離したくないと感じている」
「俺みたいな人間に、そう言ってくれるってのは素直に嬉しい。だが……」
「うむ、この続きは……出来れば帰ってからしたいものだ」
「邪ンヌに引き続いて君もそう言うのか……」
「邪ンヌだけあんな好待遇なのは嫌なのでな。それと……今この状況で場違いなのは分かっているが……余の我儘を聞いてはくれぬか?」
「……俺が無理しない程度の事なら」
「無理しない程度か……この我儘がその内に入らない事を願うのだが……離れる前に余にキスをして欲しい」
「はぁ……ったく」
一瞬そうして悪態をつくものの、アルジは嫁ネロの我儘を聞いた。目を閉じて少し唇を尖らせる。それを承諾だと感じ取った嫁ネロは、自らの唇をそのままアルジの唇に重ねようt「ちょーっと待ちなさい‼︎」はて、誰が止めたのだろうか?
「なにアンタ達良い雰囲気を出しているのよ⁉︎ コ・コ! 戦場のど真ん中なんだけど⁉︎ それにそこの銀髪でいかにも乱暴者に見えるアンタ‼︎」
「乱暴者なのは俺が吹き飛ばしたアイツの方だろ?」
「口答えするんじゃないわよ! そもそも誰よアンタは⁉︎ それによくもクーちゃんに酷い事してくれたわね‼︎」
「アルジ・ミラージだが? それと酷い事をしたのはそっちの狂犬だろう? 正当防衛の内に入ると思っているが?」
「アンタの名前も正当防衛何ちゃらも聞いてないわよ‼︎ この落とし前をどうつけてくれるのって聞いてるのよ‼︎」
「……テメェ、今そんな事言える立場か?」
「はっ? そもそもここは私達が統治しているのよ? そんな味方がいないど真ん中にアンタ達はいて、果たして生きて帰れるとでも思う?」
「生きて帰れるから直接殴り込んで来たんだろうが。テメェ頭悪いな」
「ムッキーッ‼︎ もう許さないんだから! そこの花嫁衣装を纏った女共々アンタの事もギッタンギッタンにつぶしt「あぁっ?」(な、何よこの寒気は……っ⁉︎)」
「テメェ……俺のネロをどうするって? もう1回言ってみろ」
「ひっ……」
「オイオイ聞こえてたか? さっき言った事をそのまま口に出せっつってんだよ。簡単な事だろ?」
未だアルジ達は抱き締めあったままだが、彼がメイヴを射抜く視線からは……ただそれだけで相手を恐怖のドン底に落とし、それ以上の思考は許さないかの様に威圧がダダ漏れていた。
「というかよ……この特異点さっさと元に戻せや。どこのクズから聖杯を貰ったか知らねぇがな……お前らの為に時間取るとか正直勿体無いんだよ」
「な……そ、そんな事出来るわけ「そうか……ならここでテメェを即刻再起不能にして聖杯を回収してやるよ」えっ……?」
いつの間にかメイヴの目の前に移動していたアルジ。彼の手には、先程まで握られていなかった無骨なメイスがあり、それを上段に構えていつでも振り下ろせる様にしていた。
(あっ……これ……私ここで死ぬんだ)
真っ先に浮かんだイメージがそれであり、それが浮かんでいた頃には無骨なメイスが自分の頭を叩き潰さんと迫っていた。
反射的に目を瞑るメイヴ。目の前の存在から振るわれるその一撃は、エーテルで構築されたこの身体諸共霊核を確実に壊すだろう。
そう思考は出来るものの、避けるには遅過ぎた。そもそもアルジの威圧を受けてその場から動けないでいた。その為に反射的に目を瞑るしか出来なかったのだ。
だがメイヴが死を意識していた事とは裏腹に、本来なら鳴らないはずの音が目の前で鳴った。それは鉄と鉄がぶつかり合った音で、だが自分にはそんな装備も、ましてや構える時間も無かった。恐る恐る目を開くと、そこには……
「邪魔するな狂犬」
「……俺を召喚した奴が狙われてんだ。邪魔するに決まってるだろ」
「く、クーちゃん‼︎」
「オメェもなにコイツの殺気に囚われてんだ。生前では日常茶飯事だっただろうが」
(いや、アイツからのものは半端ないわよ⁉︎ 生前に受けていたものとは全く違うわよ‼︎)
「チッ……にしても重い攻撃だ……なっ!」
「そうやって軽々と弾き返されたら自身無くなるな」
「……ふざけた事言いやがって。余裕があるのはテメェの方だろうが」
「まぁテメェを圧倒するくらい普通に出来るが?」
「チッ……腹立たしい奴だ。ならこっちも今から本気でテメェを潰す」
そう言いながらクーフーリンが地面を蹴り、アルジに槍を突き出す。それをアルジは軽々と鉄血メイスで捌く。
「わ、私も何かしないとっ!」
メイヴはクーフーリンに喝を少し言われたおかげで何とか援護に回ろうとする。だが……
「あら? よそ見をして良いのかしら?」
「お前には悪いが、マスターの邪魔はさせんよ」
「っ⁉︎ あ、アンタ達は!」
「マスターのサーヴァント、スカサハだ。まぁ彼奴から聞いているかもしれないが、立ち位置的にはアルジの師だな」
「同じく、アルジのサーヴァントでキャスターのエレナよ。私から見たらアルジは私の弟子と言ったところね。将来的にだけど……」
「(嘘でしょ⁉︎ なんでこんな奴もここにいるのよ⁉︎)「それはだな」っ⁉︎」
「さっきマスターが通って来た空間の歪みがあるだろう? 私達もそこから着いてきたと言うわけだ。簡単な事だろう?」
「うぅ〜……何でこんな良い時に邪魔が入るのよ⁉︎」
「まぁその思いには同情するが、お主がこの特異点でセタンタを召喚し、自分の国を作ろうとしている。まぁここまでなら大丈夫だったろうが、生憎とお主達は1つ間違いを犯してしまったのだ」
「な、何の事よ⁉︎ 私はただクーちゃんと一緒に自分だけの国を作りたかっただけなのに‼︎」
「そこまでなら問題ないと言ったであろう?」
「そうねぇ〜……その程度だったらあの子もこんなに早く介入はしなかったでしょうね」
「なら何を私が間違ったと言うのよ⁉︎ (というかどちらにしろ私達に敵対するって事じゃない‼︎)」
「我がマスターの大切な存在を傷付けてしまった事だな」
「っ⁉︎ ま、まさか!」
「そう、あの白い花嫁衣装を着ているサーヴァントはな……マスターの大切な存在の1人だ。その者が傷付けられたのなら……今のマスターの心境も分かりはするだろうな」
「(……これ、もしかしなくても完全に詰んだんじゃ? で、でもでもただの人が私達サーヴァントに敵うはずが)「確かにただの人の子であればとんなサーヴァントに対しても敵わないだろう」えっ?」
「ただお主も感じたであろう? マスターのただならぬ殺気とやらを……あんな殺気を出せる存在が、ただの人の子の器と同じ様に捉えても良いのかな?」
「それにアルジからはとてつもない程のマハトマを感じるもの! あんな子が普通な人間なんてありえないわ‼︎」
そう言われたメイヴは再度クーフーリンの方へと視線を向ける。見ている限りはクーフーリンは攻撃の手を緩めずアルジに攻撃をしており、逆にアルジは防戦一方に見える。見えるが……
「……こ、これは何かの見間違いなの?」
「いいや、見間違いなどではないぞ?」
「なら……ならなんで……クーちゃんの攻撃でアイツは傷一つついていないの……」
「そんな事簡単なことだ。アルジがセタンタよりも……何枚も上手だからだ」
その一言を聞いたメイヴは、血の気が引く思いだった。生前でも最強の1人であるクーフーリン。そんな彼をバーサーカーとして召喚している今、生前以上に獰猛で知略も兼ね備えている正に完璧と言って良いほどの存在だとメイヴは思っている。
だが現実はどうだ? その最強だと思っている彼は……たった1人の魔術師に苦戦している。
(いえ……これは苦戦というよりも遊ばれている感覚に近いわね……)
そう思ったと同時に、クーフーリンはアルジにメイスによる横殴りを受けていた。何とか槍で防御が間に合ったものの、結果として少し軽減することしか出来ずに吹き飛ばされた。
「さて……気が済んだか? 俺はそろそろテメェをこの特異点から退場させる気なんだが」
「ペッ……まだその上があるってのか」
クーフーリンが血反吐を吐きながらも睨み付ける目は変わらない。
「誰がいつ本気を出したと言った? さっきまでのはネロに対してテメェが行った落とし前のほんの一部分だ。まぁテメェが退場するまで終わらせる気はない。というわけでだ……」
「来い、タクティカルアームズ」
それは空から飛来した。言った瞬間にアルジの目の前に、轟音を鳴らしながら落ちてきた。その衝撃は凄まじく、地面に突き刺さると同時に土埃を巻き上げる。
周りからは土埃が舞って見えていなかったが、次の瞬間アルジが飛来した物を手に持って横へと薙ぎ払い、その全容が明らかになる。
それはアルジの身の丈程ある巨大な両刃の大剣だった。刃の部分は白く光り、刀身は青い色だがその中心には黒い筒状の物が設置されている。
(……ありゃ一体なんだ?)
(えっ? えっ⁉︎ 何あれ⁉︎ あれが武器なの⁉︎ 訳わかんないんだけど⁉︎)
(ほぅ〜……面白そうな武器ではないか)
(何あれ何あれ⁉︎ あれもマハトマよね⁉︎ ねっ⁉︎」
「余も見たことない武器ではあるが……何とも浪漫があるのだけは分かるぞ!」
「さて……それじゃあ第二ラウンドといこうか」
「っ‼︎」
アルジがそう言い放っていた頃には既にクーフーリンに肉薄して大剣を振り下ろしていた。それを何とか朱槍で受け止めるが、威力は鉄血メイスの時と変わらない。
「なんて馬鹿力してやがるっ……!」
クーフーリンが無意識で言った次の瞬間には、横薙ぎの一撃が振るわれていた。あの体勢からどうやってと思ったものの、それを後ろに飛んで避ける。しかし大剣が振られた風圧によって少し吹き飛ばされてしまった。
そこに追い討ちをかけるようにアルジは剣先を向けて距離を詰める。クーフーリンも咄嗟に反応して受け流そうとするが、大剣の重量とアルジの突進力が強すぎて右脇腹に刃の一部が当たってしまう。
(だがあの勢いで直ぐに反転するのは無理だろぉっ‼︎)
クーフーリンは自分の右側を通り過ぎたアルジの背後から朱槍を突き刺さんと攻勢に出た。攻勢に出たのだが……
(あっ? あんな形状してたか?)
今も尚アルジはクーフーリンの方に身体を向けていない。正に隙だらけの状態なのだが、問題はアルジが右手に持っている物だった。その正体はガトリング砲で、アルジが先程まで手にしていた大剣である。それを右腕だけを背後に向けていた。
刃の部分は内側に畳まれた状態で、そうした事によって丁度その銃口がクーフーリンに向いている構図になる。アルジが引き金を引くと、銃口がいよいよ回り出して銃弾がクーフーリンへと殺到する。
少し反応が遅れたクーフーリンだが、やはり歴史に名を残す戦士なのか自分を穿たんとすると銃弾を朱槍で弾き返していた。
だが銃弾の合間合間にナイフも飛んでくる。アルジの方を見るとガトリングの銃口をこちらに向けながら身体ごとこちらに向けており、空いていた左手の指の間に何本もナイフを挟んでいた。それをクーフーリンに対して投擲する。そのナイフは全て急所目掛けて飛んでくる為に銃弾を後回しにしてでも弾く必要があった。その為に何発か身体に銃弾を受けてしまう。
しかしながらそれで攻撃が止む事はなく、いつの間にかアルジは右手のガトリング砲を大剣に戻しており、それを振り下ろす体勢となって今にもクーフーリンに叩きつけんと接敵した。
それを察知してクーフーリンは後ろへと飛び退る。同時に大剣の振り下ろしが先程までクーフーリンが立っていた地面に叩きつけられ、小さなクレーターを使っていた。その余波は避けた筈のクーフーリンにも襲いかかり、少し吹き飛ばされる。
(チッ……どうにか相手の隙を誘わねぇとな)
そうすれば一気に宝具を叩き込んで形成逆転できる。確かにサーヴァント同士の戦闘であっても、攻撃系の宝具であれば難なく一撃で倒す事も可能だろう。それが魔術師であれ人間と変わらない存在であれば尚のことだ。
それがただの人間であれば……
「っ⁉︎」
クーフーリンがどうにかアルジの隙を作ろうと考えていると、こちらに向けて何かが横回転しながら飛んで来る。それを槍で防御した。飛んできた物は何とアルジが先程まで手にしていた大剣だった。
(武器が無くても余裕ってか⁉︎ 舐められたもんだが……これでっ‼︎)
相手は無手の状態となり、宝具を簡単に叩き込める。その算段がついたクーフーリンは大剣を弾いた後一直線にアルジに接敵した。
「全呪解放……貴様に対しては手加減すら生ぬるい程の絶望をくれt「そう呑気に口上宣って大丈夫か?」っ⁉︎」
クーフーリンが宝具を止めて防御の姿勢にシフトした。本来ならばあと一歩でアルジに攻撃を叩き込めたにも関わらずだ。その理由は、アルジは先程まで出していなかった武器を両手に構えて振り下ろす途中だったからだ。
アルジからの攻撃を何とか防ぐ事が出来たクーフーリンだが、防御の姿勢が中途半端になってしまった事と、相変わらずの威力で身体全体の骨が軋む音がした。
「テメェ……あれが主兵装じゃねぇのかよ」
「誰がアレをそうだと言った? そもそも無駄口叩く暇があったらとっとと動けよ。じゃないと……死ぬぞ?」
(っ⁉︎ 背後からかっ⁉︎)
背後から迫る殺気に気付き、アルジから離れる。
「グッ⁉︎」
だが少しだけ回避が遅かったのか、背後から左脇腹辺りに喰らってしまう。その場から離れたクーフーリンは、アルジの手元を見る。すると右手には先程自分に振り下ろされた黒金色の大剣が握られており、左手には……
(どういう原理だこりゃあ……)
先程槍で弾き飛ばした青い大剣が、アルジの左手に握られていた。
(何の手品か分からねぇが……最初俺を攻撃した何かと同じ原理か?)
クーフーリンが感じたのは正に正しく、青い大剣がアルジの手元に戻ってきたのは同じ原理だ。青い大剣は、普通の大剣の様に鍔が無い。その代わりに刀剣部分の持ち手側が横幅に大きく作られていた。横幅に作られた持ち手側部分には左右に2箇所噴射口が存在し、それが意味する物事は、アルジはいつでも遠隔でその大剣を遠隔操作出来るという事だ。
(さて……そろそろアイツを倒してこの特異点を終わらせるか)
一方のアルジは、クーフーリンを倒して早くこの特異点を終わらそうとしていた。本来ならば立香の役目であり、ここに自分という存在はいない。だが、アルジはこの世界に深く関わってしまった。オリヴィアによってこの世界に導かれた時から、時間軸関係なくこの世界を転々とした。
それによりガイア又はアラヤからこの世界線を崩壊させる重要人物として認識され、特異点に移る度変な制約を勝手に付けられる。
(俺はただ……オフェリアがこの世界で幸せに過ごして欲しいだけだ。そして……オフェリアに返事を返したいだけなんだ)
擬似的な夢の空間では数回会い、そこで愛し合う行動は取っている。だが未だにアルジはオフェリアとの約束を果たせていない。それは彼女が現実世界でアルジからして欲しいと願ったもの。そしてアルジもその事に同意した。
だからこそ……
(俺はこんな所で、テメェなんかと遊んでいられる程暇じゃあねぇんだよ! だから‼︎)
アルジの握る獲物が魔術光を放つ。右手に持つデモリッションナイフからは紅い光が、左手に持つタクティカルアームズからは蒼い光がそれぞれ放たれていた。
「な、何なのよアイツ……あれがただの魔術師に出せる魔力なの⁉︎ こんなの……こんなのって……」
それを少し離れた所から見ていたメイヴは、もはや驚くだけで何も出来なかった。あの後何とか気分を持ち直してクーフーリンを援護すべくケルト兵を向かわせたが、その悉くを目の前にいるスカサハとエレナ、そしていつの間にか動けるまでに回復した嫁ネロによって自分の周りにいたケルト兵は壊滅していた。
そして残ったのは自分のみで、周りを見渡せば確かに兵力はあるものの、それも随分と遠い。例え援軍として呼び戻せたとしても、その頃には既に……
(あぁ……これもう詰んだじゃない……)
メイヴはそこにへたり込んでしまった。
そして場面はアルジに戻る。アルジの両手に握る獲物から発せられる魔力光、それを真正面から見せられたクーフーリンは……
(はっ……こんなん誰が勝てんだ)
内心諦めていた。だが戦士の矜持として、そのまま敗れ去る訳には行かない。何としてでも相手に一矢報いる……朱槍を持って、今出せるだけの全力を身体中に巡らせてアルジへと馳ける。
それを見たアルジは、両手に持つ獲物を天高く掲げた。同時に天へと向けて真っ直ぐと紅と蒼の魔力光が伸びていき、やがて二振りの大きな剣の形状に変わった。
その剣をアルジは、クーフーリンへ向けて真っ直ぐに振り下ろした。その攻撃を避けようとせず、クーフーリンはただ真っ直ぐアルジに突撃する。それは自分の身体が大剣から発せられる魔力光に包まれても止まる事はなく、鎧が砕けようと、身体の一部がどんどん欠けていこうとも……止まる事はなかった。
(チッ……結局一撃も届かなかったか……)
クーフーリンは最後にそう思いながら、紅と蒼の閃光の果てに消えた。
魔力光が消えた後、デモリッションナイフとタクティカルアームズは最初からその場になかったかの様に消えていた。その場に立っていたのは無傷のアルジとそして……
「……惜しかったな」
アルジの立つ地面から少し横にズレた位置、そこにクーフーリンが握っていた朱槍が突き刺さっていた。確かにクーフーリンは大剣から発せられる魔力光に飲み込まれた物の、最後まで一矢報いようとしたのだ。身体が欠けて、最後には朱槍を握る腕だけが残ったとしても……
「まぁ、これでこの特異点も終わりだな」
本来ならば立香の役目ではあるが、偶にはこれほどまでに早く終わっても文句は言われまい。
まぁ文句があったら受け付けはするが、ともかく聖杯を回収し次第立香達と合流してカルデアに帰るか。
「さて、これでアンタを守る奴も座に還った訳だが、大人しく聖杯を渡してもらおうか?」
「……ない」
「どうした? まさかアンタから無理矢理聖杯を引き剥がさなければならないと?」
「マスターよ、どうやらそうではないらしいぞ」
「スカサハ?」
スカサハにそう言われて改めてメイヴを見る。今の俺は、今も尚いけすかない連中から妨害行為を受けている。だから聖杯程の大きな魔力であれば俺もすぐに気がつくのだが、今は上手くその反応を拾う事が出来ない。本当にアイツらは俺の邪魔しかしない様だ。
「私は……持ってない」
「……は? 持ってないだと?」
「そうよ! 私は聖杯を持っていないわ‼︎ 聖杯でクーちゃんを呼んだ後にクーちゃんにずっと預けてたのよ! それをアンタがクーちゃんと一緒に消し飛ばしたんじゃない‼︎」
「ふむ……ならばこの場には既に聖杯はなく、マスターがセタンタを消し飛ばした余波で遠くに吹き飛ばしたという事か?」
(……俺のせいか?)
オフェリアを救おうとした事が、まさか俺自身の手で回り道をしてしまうなんて……
(クソッ……なんでだよ⁉︎)
この特異点は、本当の意味で俺を精神的に参らせようとしている様だ。ここまで精神的にダメージを受けたのは……オフェリアを俺の力で治せないと分かってしまったあの日以来だろうな。
(ともかくとして、俺のせいであらぬ方向に聖杯が飛んでしまったとしても、回収には行かねぇとな)
「っ⁉︎ 待って! あそこに浮かんでいるの……聖杯じゃないかしら?」
その一言で俺は、エレナが言う方に顔を向けた。
するとそこには……確かに聖杯がひとりでに浮かんでいた。マシュが回収した時と同じ様に聖杯が光り輝いている事も確認できたし、あれは間違いなく聖杯だろう。
だが……
(いつもと違って胸騒ぎがするのは何でだ?)
アルジがそう思ったと同時に、聖杯から鼓動が聞こえた。それは生物の心臓が発する物に等しい。その鼓動はどんどんと大きくなり、やがて聖杯の周りの空間が歪み始めた。同時に遠くに陣取っていたケルト兵が、まるでブラックホールに吸い込まれるかの様に聖杯に吸い込まれる。
最後のケルト兵が聖杯に吸い込まれると、聖杯から一直線に白い柱が天高く伸び、それは聖杯すらも飲み込むほど直径を大きくしていく。光力は目を瞑る程の物でも無かったが、天に昇る光の柱は尚も直径を大きくしていく。
それがある程度広がると、地上からおよそ15mくらいの高さに、大きな白い球体が浮かんでいた。5,6mくらいの直径だろうか。
「な、何よあれ……」
「さぁな。ただ……禍々しい気配を感じはするが」
「あれもマハトマ……なんでしょうけど、あまり関わりたくないわね」
「せっかく奏者が彼奴を倒してくれたのに、聖杯はあの白い球体の中という訳か……余もあの球体の中から嫌な物を感じるぞ」
確かに、あの白い球体からはその色合いとは真逆の禍々しさを感じる。そう思っていたと同時に、浮かんでいる球体が激しく揺れた。揺れたというより中から何かが出ようとしている。
バキンッ‼︎
ガラスが勢い良く割れる様な音が鳴ったと同時に、球体の一部が割れ、中から何かの足であろう構造をした物が突き出ていた。そこから反対側の方も足らしき物が突き出てくると同時に白い球体は割れた。
球体の中から生まれ出た物が荒野に落ちると、落ちた衝撃で土埃が周囲を覆った。少しずつ土埃が晴れていくと、全身が角張っている様なフォルムを持った何かが影となって現れる。
(……アイツらまた余計な事しやがったな)
アルジはその影の形を見て瞬時に分かった。これは俺を倒す為にあの邪魔者どもが用意した物だと。例え英霊が束になっても倒す事が困難な存在を呼び寄せ、ただアルジだけを倒す為ならばその世界の幾らかは被害を出しても良いと……
フザケルナッ‼︎
(お前達が俺をどう思ったって知った事か! そんなもの俺はハナからどうでもいい事だ。そもそもテメェらに好かれようとも思ってねぇよ。ただな……)
「この世界を生きる住人を巻き込んで良い訳ねぇだろうがぁっ‼︎」
「アルジ……」
「フム……マスターはあの存在が何なのかが分かっているのか?」
「……全人類を滅ぼす殺戮兵器だ」
「っ⁉︎ な、なんでそんな物を⁉︎」
「どうせ俺を倒す為に違う世界からデータを引っ張り出したんだろ? 人類を滅亡から守る為のシステムが聞いて呆れる」
「それにあの敵には魔術とか生半可な物理攻撃は効かない」
「……奏者が1人で相手取るのか?」
「あぁ、それしか考えてねぇよ」
「……今の余ではそなたの役に立たないのだな」
「そうじゃない。これは、アイツらが俺にふっかけてきた喧嘩だ。そんなものに……俺の大切だと思ってる奴らを巻き込むとか、んな事が嫌なんだよ」
「余は……悲しい」
「ネロ……」
「奏者が……余を助けにきてくれた事が素直に嬉しかった。本当は逆の立場なのに……それでも奏者は関係なく大切な物が危機に陥ってくれたら真っ直ぐと飛び出していく。そんな奏者が格好良くて、余は大好きだ!」
「だが……余は、そなたに何も返せていない。毎日考えてしまうのだ……奏者が余に与えてくれるのに、余はそれにどう応えればいいのか? そなたよりもずっと前の時代に生まれて、国王としても国の繁栄に力を注いで来た。本来は奏者よりもずっと長く生きてきた大人なのだ‼︎ それだというのに……余は……」
「……ゴメンな」
「っ⁉︎ そ、奏者⁉︎」
アルジはネロを抱き締める。急にやられた事でネロは驚いていた。いつもならば自分から隙あるごとにアルジへと抱き着いており、そうしなければアルジの事を好いている他のサーヴァントに時間を取られてしまうからである。
だが今回はアルジの方からネロを抱き締めていた。そして、先程の様子とは180°変わって優しい口調で続ける。
「俺はただ……こんな俺に着いて来てくれただけで嬉しかった。それに心強くもあった。俺1人だったら……1人でもここまで来れたかもしれないけど、こんなに心の余裕を持てなかった。毎日毎日……俺みたいな奴を構ってくれるうるさい程の、温かい日常が復讐心しか持ち合わす事を許さなかった俺の心を救ってくれたんだよ」
「だから……俺のそばにいてくれるだけで凄く助かってる。俺はネロが、ネロ達が思っている以上に沢山のものを貰っているんだ。でも……俺は素直に表に出す事が苦手だから、ネロ達を逆に不安にさせちまってたんだよな。ホントに……ゴメンな」
アルジはそう言って更にネロを強く抱き締める。いつもならば気恥ずかしくてぶっきらぼうに返すのがせいぜいなのだが、この時だけは素直にいつもの感謝を伝えた。
「うぅ〜……/// そ、そんにゃことを急にい、言うなど……ズルいではないか」
「あぁ、卑怯な人間だと、俺も思ってる」
「そ、そんな事を言った訳ではないが……」
「ちょっとちょっと! いつまでそんな甘い雰囲気を撒き散らしてるの⁉︎」
「全くだな。それよりも気を引き締めろマスター、奴が動くぞ」
スカサハそう言う様に、いつの間にか土埃が晴れており、相手の全容が明らかになった。全長4m程の大きさで、人というよりも動物に近く、動物の中では鳥か若しくは翼竜のフォルムである。
全体的に白く、そしてこの存在には足がない。代わりに鋭い形状をした腕部が長く伸びて脚の役割を果たすかの様に地面を踏み締めていた。腕部が伸びている付け根からは鋭いブレードみたく伸びる肩部がまるで翼を広げているかの様で、横幅としては7,8mあるだろう。そして頭部は鋭い嘴に見える。
そんな大きさもさる事ながら、もう一つ異常な点があるとすれば……尻尾の存在だ。それはワイヤー状で先端にはこれも鋭いパーツが付いていた。
そんな存在が俯いている姿勢から頭部を空へ向け……
『キュアァァァァッッッッ‼︎』
その世界に自分が生まれ落ちたと誇示する様に雄叫びを上げていた。
「……本当にあの存在をそなた1人で迎え撃つのだな」
「言った通りだ。アイツという存在は、俺の事をいけ好かないと思っている奴らが、この世界にいる住人達を犠牲にしてでも排除したいと考えて送り出してる」
「そんな訳で……アイツ自身は俺の手で片をつけたい。でも……」
「もし……ネロが良いと言うなら、俺に力を貸して欲しい」
「そんな事……決まり切っている事であろう? 余はそなたが、アルジの事を愛している。そなたが契約しているサーヴァントの中で1番! 1番にそなたの事を想っておる‼︎ その想いを……受け取って欲しい。んっ……」
今度はネロからアルジに抱き付き、アルジの唇に自分のものを重ねた。それはとても情熱的で、今の緊迫として状況が嘘であるかの様にネロはアルジに口付けをする。
それをされるが事にアルジは、自分がネロに貸し与えていた魔力の2倍もの数値を受け取っていた。その事が意味するのは……
(あぁ……これで奴らの邪魔とか一切関係なくアイツを屠る事ができる)
アルジの身体から白と紅の魔力が漏れ出る様にほとばしる。ここにロマニ達が通信越しにでもいたなら、いつもの如く驚いていたであろう。それとイチャイチャするごとにオルガマリーのツッコミも聞こえていただろうが……
ともかくとしてアルジは目の前の存在に相対する準備ができた。
「さぁ……お前の獲物が目の前にいる。ソイツを狩らせてやるからお前の力を貸せ……
バルバトス‼︎」
忽ちアルジは紅と白色が混じった魔力に覆われた。
5章もいよいよ大詰めとなって参りました。それにしても書いているノリでアルジはクーフーリンを打ち破ってしまいました。なのでこの特異点では立香とクーフーリンは一度も会っていないと言う事に……いや、もしかしてどこかで会ってる?
ともかくとして今回の解説入ります。
解説
タクティカルアームズ
ガンダムアストレイ ブルーフレームセカンドLの主武装。
『機動戦士ガンダムSEED MSV』にて、叢雲劾が搭乗する機体である。
両刃の大剣、ガトリング砲(4銃身)、スラスターと3つの役割を持つ。SEEDの世界ではPS装甲(フェイズシフト装甲)という実弾兵器の威力を軽減もしくは無効化する機体との戦闘もあった為に、ガトリング砲では2銃身は連射式のビーム砲が撃てる仕様だが、本作の1部では基本的に実弾兵器しかほぼ使うつもりはない為全て実弾式で書いています。
解説と書いておきながら間違えてたらすみません。基本的に自分の中での解釈も含まれております。
最後に出てきたストッパー(アルジを滅ぼす為に送られた存在)については、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』を最後まで見られた方々からすれば「あぁ〜」と分かってしまう機体となります。にしてもビーム兵器を搭載した機体とか武装はほぼ出さないと言っていたのは何だったのか……まぁ敵側でしたらまぁOKだと思って書いてます。
と言う事で、次回更新は……また1ヶ月後になるかもしれませんが、また見ていただいたら幸いです。
久々のアンケートですが、第5章にて貴方が思うヒロイン候補は?
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殺菌!滅菌!除菌‼︎の三拍子が揃った婦長
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良くってよ‼︎ のエレナおばちゃま
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お前となら全力で死合が……スカサハ師匠
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まさかの鞍替え⁉︎ 女王メイヴ
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いや!嫁ネロ一択だーっ‼︎