天空のバビロニア   作:早起き三文

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第12話「鼓動する親子(前編)」

   

「リゼルで、どこまでやれるか……」

 

 昔乗っていた機体だ、しかしそれでもリディ・マーセナスにとって、彼にとっては今のこのご時世、旧式も甚だしい可変型モビルスーツである。

 

「メジナウムめ、逃げるとは何か思い当たるふしでもあるのか?」

 

 もちろんリディにとってもエビル・ドーガ、いやクロスボーンはどう対処をしていいか迷う勢力だ。だがそれでも警告を無視して連邦艦に接近してくる不明機、それは撃破してよい。

 

「リゼル、リディ機準備よし」

 

 月面で昔の友人達と会って嬉しくなったリディではあるが、その数日後にこの、何年かぶりの出撃である。彼にとっては身体の「鈍り」が気になる所。

 

「不明機、接近中」

「クロスボーンめ……」

 

 薄暗いハンガーの中、通信士からの声に頷いてみせるリディの声は、誰にも響かない。

 

 

 

――――――

 

 

 

 ナツメのチームとて、さすがに最初警告は出したものの。

 

「いきなりか!!」

 

 そのペーネロペー達にと襲いかかる「円盤」達、それをいきなり放ったモビルアーマーは敵と認識してもよい、であろう。

 

 ギュア……!!

 

 何でもアナハイム社製F91の技術が使用されていると言われているこの改良型ペーネロペー、新型の宙間戦闘用マルチスラスターのそれを搭載したペーネロペーはその巨体と言えども、動きだけなら必ずしも今流行りである小型機に遅れをとるものではない。

 

「効かない、無人機のくせに!?」

 

 しかし、エビル・ドーガから放たれたバグに対しては不利は免れない様子だ。アラヴィス機を襲ったバグを可変ビーム式メガ粒子砲で薙ぎ払おうとしたナツメであるが、まるで何かに反応するかのようにバグはそのナツメ機からの射線、それから逸れてしまう。

 

「勘が良い機械が!!」

 

 どうやら彼女と共にエビル・ドーガにと立ち向かっているデッツ、口うるさい老パイロットが乗る機体はその「バグ」達にも対応している。流石はF91のデータを「拝借」したアナハイム製のジェムズガンだけはある、技術部サナリィだけではこのレジスタンスは賄えない。

 

「敵はエビル・ドーガだけ、しかし!!」

 

 ナツメが見たところ、この地球を背後に望む宙域にと見える敵機はその大型モビルアーマーだけであるが、彼女のレーダーには薄く光点、クロスボーンの機体を表す印が点っていた。

 

 ギュウ、ア……!!

 

 再びナツメ機ペーネロペーを死角から襲うバグ達、何かステルス性があるのか、レーダーにはなかなか反応しない所が厄介だ。常に不意を突かれる。

 

「それでも!!」

 

 ビームサーベルをその手にかざすナツメの声、彼女には自機に新しく搭載されているバイオ・コンピュータとやらを信じたい気持ちもあるが、なかなかそのハイカラな機械は上手く彼女の欲求に答えてくれない。

 

「やはりバリアーか!!」

 

 デッツが高性能機から放ったビームライフルはバグの周囲を取り囲んでいるビーム・バリアーによって弾かれ、その彼の機体とアラヴィスのジャベリン、そして他のモビルスーツ達から放つ火線もバグの外殻を破壊することは出来ない。

 

 シィン……

 

 その、ナツメ達が手こずっている宙域に忍び寄るクロスボーン機、例の紅いビギナ・ギナを先頭とした機体達が、バグが泳ぎ回る宙を舞ってそのまま、エビル・ドーガにと接近を仕掛けようとしているが。

 

「母上、私だ!!」

 

 その男の声、それにも構わずエビル・ドーガは高速移動をしながらバグ達を放ち続ける。

 

「こちらアラヴィス機ジャベリン、後退する!!」

 

 持たなくなったのであろう、光を放ちながら漆黒の宇宙に溶け込むアラヴィスの機体を見やりながらも、しかしナツメは。

 

「攻撃する隙がない、ファンネルもどうか……?」

 

 その身を何か、青く光る地球の方向へ向け始めているエビル・ドーガの姿を、下唇を噛みながら睨み付けている。

 

 

――――――

 

 

 

「こいつ!!」

 

 シーブックのF91、それはセシリーから放たれたショット・ランサーによる援護を受けながらエビル・ドーガにと最接近する。

 

「大したこと、ないと思う!!」

 

 接近した際に与えたF91による痛撃、それを見るに確かにそのシーブックの言い分には理があるように見えた。

 

 クゥン……

 

 だが、それでも接近したF91にまとわりつくバグ達、それをシーブックは自機を高機動形態にと移行させて、寸前で振り払う。

 

「ハァ!!」

 

 シーブックの裂帛の声と共に浮かび上がるF91の「影」が、その機体の隠し球である残像出現はこの新型のバグ達も有効なようだ、明らかにシーブック機本体に向かってくるバグの数が減った。

 

 ジャ……!!

 

 そのシーブックのF91に対して狙撃をしてきた黒い機体、そのゲナン・ゲーのパイロットとシーブックは一瞬「目が合った」ように感じたが。

 

「シーブック、何をしている!?」

「おっと!!」

 

 ザビーネ機から受けた支援の元で撃ち落としたエビル・ドーガのファンネル、大型のビーム砲台を横目に見ながら一旦シーブックは戦場から勢いよく離れ、戦域全体の状況を確認しようとする。

 

「!?」

 

 その揺らめく影を放つ、「ターボ」が掛かった輝くF91を駆るシーブックの視線の先で、セシリーのビギナ・ロナとレーンのジャベリンが一つ目のデナン・ゾン達から集中砲火を受けている姿が彼の目に止まった。

 

「セシリー!!」

 

 だが、そう怒鳴ってもシーブックが見る限り未だにそのセシリー達には余裕があるようにも見える。ビギナ・ロナの切り札である背部ショット・ランサー類を使用していない。

 

 ジャア……!!

 

 その緑色のデナン・ゾンにと向けて放ったザビーネのマシンガン、それが瞬く間に一機の機体を撃破し、そのまま彼は支援にと駆けつけた他の「一つ目」達にそのビームサーベルの刃を向ける。

 

「大丈夫そうか、ならば!!」

 

 チィ……

 

 何か妙な挙動を見せる先の不明機体、黒いデナン・ゲーの事も気になったが、今はそれよりもエビル・ドーガ、そしてバグ達の事だ。

 

「バグめ!!」

 

 そのままシーブックはヴェスバーの出力を上げて、重火力モードのビームをもって敵バグをはね飛ばす。その跳ばされたバグを手に持つビームランチャーで止めをさしつつも、機体の進路は。

 

「月面、地球が見えるのに本当にそこへいくのか!?」

 

 凄まじい速度でもって、進出するエビル・ドーガへ一直線に疾る。何か先程から無線機の響く声がうるさいが、単なるノイズであるそれに拘っている暇はない。このミノフスキー粒子の高濃度だ、不都合の一つや二つはある。

 

「いけい!!」

 

 気迫の一声、それによってか心なしかF91のビームサーベルが膨らんだかのように見え、その刃は残像を伴ってエビル・ドーガのコクピットにと向かった。そこの場所は解る。

 

 バジァ……!!

 

 何か水が破裂するかのような音、それがシーブックの耳を打つと共にエビル・ドーガの動きも一瞬止まったような気が、彼にはしたが。

 

「動くか!?」

 

 まだ生きていたファンネル、それによるビーム砲火をシールドで防ぎつつ、シーブックは刃を突き立てたままのエビル・ドーガから視線は離さない。

 

「くぅ!!」

 

 そのシーブックの目の先で、突如としてエビル・ドーガが振動を始めた。

 

 

 

――――――

 

 

 

「シーブックが!!」

「ここは任せろ、セシリー!!」

「すみません、レーンさん!!」

 

 サイコ・バグがでたらめな挙動を示し始め、ビギナ・ロナが手負いにしたデナン・ゾンを相食らった瞬間、セシリーは自機の推進力を一気に上昇させてグレーの切り花、サイコ・ドーガの巨体にとその機体を向かわせる。

 

「では、私も……」

「ああ、勝手に行けザビーネ」

「ふん……」

 

 レーンは未だザビーネ・シャルの事について全幅の信頼はしていない、しかし、今はそれどころではなく。

 

 グゥウ……

 

「お前、ザビーネとやらの部下ではないのか!?」

「……の仇!!」

「何!?」

 

 突如として刃を突き立てながら突進してきた黒のデナン・ゲー、その機体からの斬撃を間一髪でレーンはかわす。その時に彼レーンが感じた自機ジャベリンの異常、それにレーンの気持ちは捕らわれていた。

 

「俺は、こいつを知っている!?」

 

 そのレーン達の背後では、蒼い地球の影が大きく映る。

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