天空のバビロニア   作:早起き三文

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第13話「鼓動する親子(後編)」

  

「シーブック!!」

「セシリー、君が俺を助けたいなら!!」

 

 その速度を増すエビル・ドーガ、ヴェスバーの至近射撃でコクピットは完全に潰したはずであるが、それでもこの巨大モビルアーマーは動きを止めない。

 

「この化け物に掴まれ!!」

「つかまれって!?」

「サーベルを突き立てるんだよ!!」

 

 強烈なGが己の身を覆うなか、シーブックはそうセシリーに対して怒鳴りつつも、F91が吹き飛ばされないようにエビル・ドーガへ突き立てているサーベル出力を上げる。

 

「何処へ行くつもりだ、婆!!」

 

 シーブックが見るに、すでにザビーネはこのエビル・ドーガの機体にビームサーベルを突き立てている。そのはね飛ばされそうな機体を必死で支えているザビーネ機の脇にはレーンのジャベリンの姿もあったのだが。

 

「仇!!」

 

 ゴ、ギャ!!

 

 そのレーン機であるジャベリンは黒いデナン・ゲーによって頭部を蹴り飛ばされ、レーンはコクピットの中で怒りに満ちた声を上げつつも、そのデナン・ゲーと取っ組み合いを始めている。

 

「レーンさん、また後で!!」

「おう、シーブック!!」

 

 シーブックにとっては一つ目のデナン・ゾン達、生き残りのそれらの機体達の事も気にはなるが、まずはこのデカブツからだ。

 

 ジャ……!!

 

 その黒いデナン・ゲーに加勢しようとした緑色の一つ目をライフルで強く弾き。

 

――ギャーン……!!――

「小娘の声!?」

 

 撃破しながらも再び黒い敵機と格闘戦を始めたレーン。その彼らの姿へ一瞥を与えた後にシーブックは自機を支えているサーベルの出力を一気に上げた。ますますエビル・ドーガのスピードは増している。

 

 

 

――――――

 

 

 

 急遽として勢いが増したファンネル達、その弾幕によってナツメ機の近くにいたデッツのジェムズガンが強く被弾をし、そのまま彼は後退する。

 

「ミサイルの残弾が残り少ない!!」

 

 一旦、ナツメ機ペーネロペーはエビル・ドーガにと大きく接近出来た瞬間があったのだが、その時でもエビル・ドーガの機体に設置されたビーム砲によってバリアーごと弾き飛ばされる。ナツメとしてはそのまま勝負を決めてしまいたかったのだが。

 

 バァオ!!

 

 フライングアーマーを駆りながら宇宙を疾るレジスタンス達、しかしその彼らと言えどもエビル・ドーガには接近出来ない。モビルアーマーの廻りをまとわりつくバグに気圧されているのだ。

 

「母上、お止め下さい!!」

 

 いや、一部隊だけいる。クロスボーン・バンガードの紅い機体達だ。その彼らは地球を背にしながら身を寄せ合いつつも、どうにかしてエビル・ドーガの進出を防ごうとしているらしい。

 

 グゥン……!!

 

 だが、はた目から見るナツメではあるが、そのクロスボーン機の行いでエビル・ドーガがストップしたようには見えない。その時。

 

 ガシャア!!

 

「味方殺し!?」

 

 エビル・ドーガのファンネルを自らのファンネルミサイルで相殺しているナツメの見た光景、それは先程からエビル・ドーガにまとわりついた紅の機体、ビギナ・ギナシリーズの機体と思われるそのモビルスーツが、サイコ・バグによって打ちのめされた姿である。

 

――カッ、ハァ……!!――

 

 その時、ナツメの機体ペーネロペーのサイコミュ・システムを通して何か、女の哄笑のようなものがナツメ機のコクピットにと響いた。

 

「雑念だ!!」

 

 しかし、そうは言っても事態は何も好転しない。壊れた深紅の機体から這い出るパイロット・スーツの姿をその目にしながらも、今のレジスタンスには彼らを助け出す余力はない。その時。

 

 ギィイ……!!

 

 何処ともなく飛来したビーム砲、それがエビル・ドーガのバリアーに弾かれる光景をナツメはその目にする。

 

「リゼルか!?」

 

 そのリゼル部隊がどの勢力に所属するのかは解らないが、少なくとも敵ではなかろう。ならばナツメは味方と見なす。

 

「しかし……!!」

 

 エビル・ドーガのバグ、そしてファンネルも厄介ではあるが、その身を覆うビームバリアーも頭が痛い所だ。何しろ味方全ての攻撃が通用しない。可変機能を搭載したペーネロペーのメガ粒子砲もその威力が不足しているようだ。

 

「ヴェスバーでもあれば!!」

 

 だが、その次の瞬間。

 

 バァ……!!

 

 リゼル達の後続、フライングアーマーにと乗った旧式の手から、強烈なビーム砲が放たれた。

 

「ヴェスバー、か!?」

 

 ナツメの感覚ではそれはヴェスバーではない。だが、それに類するほど強力なビームだ。

 

 

 

――――――

 

 

 

 最後の「一つ目」を、女の声を響かせるデナン・ゾンを下したレーン・エイム。その彼の機体にしつこく付きまとう黒のデナン・ゲーに彼は苛立ちを隠せない。

 

「貴様、何者だ!!」

 

 その声に「黒」は何も答えず、ただ距離をとってライフルのビーム弾を投げつけるのみ。

 

 ジャ……!!

 

 レーンが放ったビームサーベルの刃、ジャベリンのそれは手慣れた手つきでデナン・ゲーによって防がれ、そのまま反撃としてレーン機を襲う連続攻撃。

 

「カタキ……!!」

 

 それはレーンのジャベリンをしつこく襲うが、その五太刀の内最後の一撃、その中に彼レーンは隙を見いだしてしまう。

 

「ハァ!!」

 

 一閃させるレーン・エイムのビームサーベル、その勢いに怯んだ黒い機体は反射的にその肩からグレネードを放とうとしたが、それをレーンはジャベリンのビームシールドをグレネード砲門を塞ぐようにと揺らし、そのまま。

 

 グゥウ……!!

 

 相手機デナン・ゲーのコクピットにと、ビームサーベルを強く突き立てた。

 

「母さんの……!!」

 

 レーンにとっては何処かで聞いたことがあるその声、しかしその敵機の断末魔はジャベリンの機体内部に響く警告音にかき消され、詳しくレーンの耳に入ってこない。

 

 ボゥウ!!

 

 その漆黒の宇宙の中で爆発四散するデナン・ゲー、その機体から放たれた破片をビームシールドをもって防いでいるレーンは。

 

 ビィイー……

 

「何だ、この不快感は……!!」

 

 機体異常を知らせる音が鳴り響くジャベリンの中で、その身を固く一人震わせた。

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