天空のバビロニア   作:早起き三文

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第14話「地球上空」

  

 エビル・ドーガにと掴まっているザビーネのベルガ・ギロス、その機体から放たれたショットランサーが深々とその巨大モビルアーマーのコクピットをくり貫いたはずであるが。

 

「自動操縦なのか!?」

 

 すでに前方には地球の姿が見える。月面ではなく地球である。

 

「目的は地球か、このモビルアーマーは!?」

 

 だが、そう言いはなったシーブックの脳裏に何か、妙な感覚が疾る。

 

「シーブック、あれ!!」

「何だ、セシリー!!」

「エビル・ドーガよ!!」

「何だって!?」

 

 そのシーブック達が見つめる先には、複数の機体と戦っているエビル・ドーガの姿。

 

「量産か!!」

 

 だが、何かそれだけではない。彼シーブックの脳裏には大きなプレッシャーがのし掛かってくるのだ。

 

「見えている敵の他にも、何かいる!?」

 

 バグやファンネルではあるまい、もっと威圧的な物である。

 

「くそ、止まれよデカブツ!!」

 

 だが、そのシーブックの罵り声にもエビル・ドーガはその勢いを抑える素振りを見せない。そのまま彼シーブックがヴェスバーからの一斉射を巨大モビルアーマーにと与え、その巨体を停止させた後。

 

 ズゥ、ウ……

 

「シーブック、真下だ!!」

 

 ザビーネ機が指し示す方向、そのF91という機体の下方から。

 

「量産だ!!」

 

 怪物がやってきた。

 

 

 

――――――

 

 

 

 リディ達のモビルスーツ「リゼル」の火力である大型のビームランチャーでは全くに、エビル・ドーガのバリアーを突き破る素振りは無い。

 

 バォ!!

 

 しかし、そのリディ達の後方から迫ってきた旧型機、運搬機フライングアーマーへと跨がっていた白いガンダム・タイプが放った強烈なビームのそれはエビル・ドーガにと損害を与えたようだ。

 

「旧式に負けるか!!」

 

 ダ、フゥ!!

 

 その回避機動のまま自機を急速反転させたナツメ、彼女が撃ち放ったメガ粒子砲が一時的にビーム・バリアーの出力が低下したそのエビル・ドーガにと直撃し、そのまま奇っ怪なモビルアーマーは大きくその身を揺らがせる。

 

「ファンネル、もう残りは少ないけど!!」

 

 とは言っても、ナツメ機ペーネロペーの目の前でファンネル、及びバグの猛攻を受けているリゼル達を放ってはおけない。

 

「父親だもの!!」

 

 フライングアーマーを駆る機体から放たれる再度の強力なビームライフル、その「弾」がかすったエビル・ドーガから強い火花が散り、そのままモビルアーマーはその速度を落とす。

 

「父親と言ったか、あたしは!?」

 

 だが、その「父親」が乗るらしき、直感でそうだと判断をしたリゼルはバグの勢いに完全に呑まれてしまい彼の仲間と思われるモビルスーツ達も狙いを定めるのに手間取っている。

 

「しかし、今しか!!」

 

 そのナツメの考えが届いたかどうか、残りのジェムズガンが無茶を承知で挑んだ接近戦、そのビーム刃がエビル・ドーガの巨体を貫く。

 

 ジャ!!

 

 彼らに続いてペーネロペーを噴かしたナツメ、その巨大機がもろ手で放った斬撃が幸運にもそのモビルアーマーのコクピット周りを十文字に切り裂いた。

 

「やったか!?」

「油断するな、ナツメ!!」

「うるさい、親爺い!!」

「下ぁ!!」

 

 その僚機リゼル達との自動的無線チューニングが成功したのは幸いであった。

 

「増援!?」

 

 でなければ、ナツメのペーネロペーは真下から迫った大型バグによって両断されたいたはずだ。

 

 ジャア!!

 

「効かないか、マグナム!?」

 

 旧式ガンダムからの驚きの声、その声の通り新たに現れた巨大、そう巨大なバグには強力なビームが通用していない。少なくともナツメにはそう見えた。

 

「貴様ら!!」

 

 キィン……

 

 頭に響く声、どのような通信手段を用いているのかは解らないが、ともかく聴こえてくる甲高い女の声。

 

「よくも、私のプル・シスター達を!!」

「そうか!!」

 

 バジャ……!!

 

「あんたが最終回!!」

「よくも、よくも!!」

 

 取り付いたと思われるF91達と共に浮上した新手のエビル・ドーガ、先に戦った同型機よりも一際巨大なその機体は、旧式ガンダムから放たれたビームを弾きつつ、ナツメやシーブック達にと向かって罵りの声を上げている。

 

「た、助けてくれ!!」

 

 そのエビル・ドーガの「手」には、マニュピレーターには大きめの内火艇が一隻、そこから響く男の声にはリディは聞き覚えがあった。

 

「ひい、助けてくれェ!!」

「メジナウムか!!」

 

 あまり聴きたくはないその声、反射的にリディは自らの機体に備わっている通信機を切ろうとしたが、そのまま思いとどまり。

 

「人質か!!」

「そんなものかよ!!」

「違うか、女!?」

「地球の火で燃やすのさ!!」

「恨みがあるか!?」

「全てにな!!」

 

 シャア!!

 

 そのリゼルの身を、エビル・ドーガから放った拡散ビームを防ぐべく可変機能を駆使して宙に舞う。

 

「リディ、あの女は俺の知り合いだったのかも知れない!!」

「それは死んだ女の事だろう!?」

「そうだろうがな!!」

 

 散り散りに拡がるリゼル隊にと追従する旧式、運搬機を重たげに操るその機体は呻き声をリディに対して上げながら、それでも拡散ビームから身を反らそうとしているようだ。

 

「邪魔だ、旧式!!」

 

 ビームの波が命中した旧式ガンダム、そのパイロットに向けてシーブックは怒鳴りながらも、エビル・ドーガに向けてF91の機体からマシン・キャノンを撃ち放った。間合いの調整だ。

 

「マリーダさんを殺すな、ニューエイジガンダム!!」

「うるさいぞ、ガンダムMK-Ⅱ!?」

「知っているか!?」

「伊達にシーブックという名ではないよ!!」

「名前、そうか!!」

 

 そのままF91は一旦エビル・ドーガからその身を離しつつ保持したランチャーを撃ち、そしてその手をガンダムMk-Ⅱとやらが突然に投げつけてきた大型のビームライフルへと向ける。

 

「リンクス、規格は合うはずだ!!」

「旧式だろう!?」

「ビームマグナムとこの機体とは十年の差がある!!」

「大して違わない!!」

 

 その、マグナムとやらをその手に取ったシーブック機を援護するかのように、セシリーのビギナ・ロナとザビーネ機が射撃兵器をエビル・ドーガにと向けた。

 

「三十年も四十年も同じだ!!」

「助けてくれェ!!」

 

 情けない悲鳴を上げ続けるメジナウムを他所にリディ達リゼル隊、そしてナツメのスペースアーク隊もエビル・ドーガの脚を止めようと火線を向け続ける。

 

「助けてくれッテェ!!」

「うるさい、メジナウムさん!!」

「ナツメちゃんかい、気に入っていたぞ!!」

「嘆きの豚が!!」

 

 グゥン!!

 

 その声に呼応した訳でも無いであろうが、ナツメが一斉に放ったメガ粒子砲、それが何故かエビル・ドーガのバリアーを貫き、そのコクピット。

 

「ええい、エビル・ドーガⅡのバリアーがバーストしたか!!」

 

 敵機の中心と思われるコクピット周辺にと着弾する。

 

「貫かれた、痛いが為にこのまま降下する!!」

「イエス・シスター!!」

「地球圏と火星の、男の穴埋めからの解放の為に!!」

「イエス・シスター!!」

「プル達の為に!!」

 

 リィン……

 

「来るぞ、ナツメ!!」

「解っている、シーブック!!」

 

 突如として重複して聴こえた女の声、その声が鳴り響くと共に。

 

 グゥ!!

 

 エビル・ドーガⅡとやらは、眼下の地球へとその身を投げ出した。

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