天空のバビロニア   作:早起き三文

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第6話「黒の宙域(前編)」

  

 この工房、クロスボーン・バンガードの母体となっている企業「ブッホ・コンツェルン」のモビルスーツ生産工場を攻めるのはかなり思い切った行動である。

 

「こちらアマズガム艦、戦闘配備よろし」

「こちらスペースアーク、了解」

 

 確かにこの企業が連邦軍の「敵」であるクロスボーンの後ろ楯となっているのは確かだが、それでも立場的にはブッホは中立を表明している。

 

「ジェシカ、艦はこれでそろったわね?」

「あと旗艦の立場であるラー・カイラム級が来ていませんよ、レアリー艦長」

「全く、遅い……」

 

 レアリーの考えではこの宇宙空間での戦闘は出来るだけ避けたい。本来ならばコロニー被害が大きいコロニー内戦闘の方を避けるべきではあるのだが、モビルスーツの性能的にブッホ社製、クロスボーンのモビルスーツは宇宙空間の方がより強力になるのだ。戦争の話である。

 

「こちら、観測機!!」

 

 エビル・S、先の戦闘でクロスボーンから鹵獲した偵察用機から連絡が届き、そのパイロットのやや上ずった声が。

 

「ク、クロスボーンが出てきました!!」

 

 スペースアーク、その艦内に緊張をもたらす。

 

 

 

――――――

 

 

 

 F91のビームガトリングはヴェスバーの代用品であるが、シーブックの考えでは全く使用感覚が異なる兵器である。ビームシールドを相手にすることを想定されていないのだ。

 

「一つ!!」

 

 それでも集中連打を浴びせればシールドの耐久限度を越えさせる事も出来るし、そのビームシールドの基部に被弾させる事も出来る。威力自体は高い。

 

「二つ!!」

 

 F91には状況によっては、より高度な高機動戦闘を出来るシステムも搭載されている、しかし現段階では通常の機体性能だけで十分な様子だ。そもそも常に限界まで機体の性能を絞りだすのがモビルスーツに限らず、機械にとって良いはずがない。車のターボエンジンと同じ事だ。

 

「三つ!!」

 

 その三機め、ベルガ・ダラスという指揮官用機を撃破した得物はビームサーベルだ。漆黒の宇宙空間の中、シーブックは自機「F91」に縦横無尽の働き、高機動戦闘をさせる。

 

「シーブック!!」

「何だ、レーンさん!?」

「黒い連中が出たぞ!!」

 

 アルゴスユニットというセンサーアイだらけの珍妙なユニットを装備しているオデュッセウス、ペーネロペーの素体であるオデュッセウスガンダムに積み込まれたそのユニットにシーブックは少し嫌な顔をしたが、彼はすぐにその雑念を振り払う。

 

「黒いヴェスバー付きか!!」

 

 だとすると、やはり情報通りにブラック・バンガード、クロスボーンの精鋭部隊がこの工房には駐屯していたらしい。危険な状態だが好都合だ、予定通りでもある。

 

「しかし、一網打尽というには獣として甘く見ているがな!!」

 

 その「黒い奴ら」相手にシーブックはガトリングに備え付けられたミサイルを牽制として放ちながら、軽く皮肉げな笑みを浮かべる。レジスタンスの上層部だか支援を行っている連邦の考えだかは解らないが、スポンサーというものは無茶を言うものだ。

 

「ここで叩けば、クロスボーンは一気に弱体化するっていう理屈は解るが!!」

「良い理由じゃないか、鉄仮面を仕留めた男!!」

 

 その黒いヴェスバー付き、ビギナ・ゼラは瞬く間に二機のヘビーガンを撃破した後、その旧式化しつつある小型機の残骸をはね飛ばしつつ、シーブックのF91にとランスの矛先を構える。

 

「さすがにやる!!」

 

 その質量兵器、ランス突撃を身軽にかわしたシーブック機に対して、ビギナ・ゼラに乗るザビーネはその手にビームサーベルを出現させ、一気にF91との距離を詰めようとした。

 

 バァ!!

 

 そのビーム刃を合わせあうシーブックとザビーネ、彼らの近くでもジェムズガンというレジスタンスの新型とクロスボーンの機体がライフルによる応酬を始める。その戦域にオデュッセウス、アルゴス・オデュッセウスの無線誘導兵器が散らばり、攻撃に移行する。

 

「ナツメに負ける訳にはいかんのだよ!!」

 

 アラヴィスのジャベリンを誘導兵器「ビット」のビーム砲で支援しつつ、レーン・ハイムはそのまま自機の制御を慣性をもってして行う。サイコミュ兵器であるビットは神経を使う兵器なのだ。他のモビルスーツ操縦の部分がおざなりになってしまうという欠点があるのだ。

 

 ビィン……!!

 

「どうした、シーブック!?」

 

 ビギナ・ゼラのパイロットの腕は驚異的だ、接近戦を挑まれたF91を押している。

 

「ラフレシアを仕留めた気骨を見せてみろ!!」

「俺の名を知っているか!!」

「ベラ様から聴いた話だ!!」

「お前は誰だ!?」

「ザビーネ・シャル、目的を持つもの!!」

「バグの再来を望むか!?」

「まさか!!」

 

 そのままシーブックは頭のバルカンを放ちつつ、ザビーネ機とは一旦距離を取ろうとするが。

 

「甘い!!」

 

 そのバルカンの連射はビームシールドによって弾かれ、そのままザビーネはシールドを展開させたままF91にとシールドの先端を叩きつけようとする。

 

「くそ!!」

 

 そのビームシールドの先端、それを機体を駆使して回避したシーブックは、そのままあたかもクロスカウンターを決めるかのように自らのビームシールドを発生させ、そのシールドをザビーネ機ビギナ・ゼラにと突きつけた。いい角度だ。

 

「さすがにやる、シーブック!!」

 

 ザビーネはそのまま僅かに破損した機体を後退させ、その手にヴェスバーを構えさせる。

 

「させるか!!」

 

 その機体の背に装備されているヴェスバーをビギナ・ゼラが構えたのであれば身動きは制限されるはずだ。シーブックはF91のシールドを展開させたまま、ザビーネ機との距離を詰めようとする。

 

 ドゥ!!

 

 ザビーネは少し判断にミスを犯したのか、シールドを貫通できる速射ビームではなく重ビームをヴェスバーから放ってしまったようだ。そのビームの反動によってF91は大きく姿勢を崩すが、機体そのものは無傷なまま背部のビームガトリング、ヴェスバーの代用兵器を零距離にてビギナ・ゼラにと撃ち放つ。

 

「おのれ、シーブック!!」

 

 そのガトリングは極めて距離が狭まれた為か、敵機のシールドを貫通しそのままザビーネ機ビギナ・ゼラの左腕を破壊する。

 

「この程度の手傷で!!」

「くっ、ザビーネとやら!!」

 

 しかしザビーネ・シャルの気迫は怯まない、そのまま破壊された左腕残骸の脇からヴェスバーの照準をシーブック機にと合わせる。そこから放たれたビームは今度は高速のビーム砲だ、二の轍を踏むような男では無いのであろう。

 

 ガォ!!

 

 その短波ビームはシールドを貫いてF91の胴体に直撃し、その機体中央に大きな損害を与える。しかしシーブックは冷静な判断でザビーネ機から距離を、推力を最大に生かして機体間の距離を取ることに成功する。そのF91のスラスターが発した光が、付近に何も遮るものがない漆黒の宇宙にと疾る。

 

「手柄を取らせてもらう、シーブック!!」

 

 手負いになりながらもシーブックに迫るザビーネ、しかしそのビギナ・ゼラが連射したショットランサーはF91の高スピードを捉える事が出来ず、その上ザビーネ機には謎の誘導兵器「ビット」がまとわりつきはじめた。

 

「ファンネルとやらか、レジスタンス!?」

「ザビーネ様、あの旧式は強敵です!!」

 

 ザビーネ機にと接近してきた二機のデナン・ゲー、強襲用の量産機の内の片割れがそうザビーネに告げた後、そのままビットを操る事に専念しているアルゴス・オデュッセウスにと接近戦を仕掛ける。

 

「速い、か!?」

 

 やや無謀とも受け取れる突撃を仕掛けてくるそのデナン・ゲー、ジャベリンに乗ったナツメ機を捌きながら、黒い敵機はそのままビームライフルの照準をレーン機にと向け、その銃口から光の弾丸を撒き散らす。

 

「デナン・ゲー、一般量産機のはずだが!?」

 

 ビットをかわし、取りつこうとしたヘビーガンをも退けたそのデナン・ゲーは威嚇としてその肩のグレネードを放ちつつもサーベルを引きだし、その刃をレーン機オデュッセウスにと叩きつけた。

 

「く、くそ!!」

 

 そのデナン・ゲーの刃をオデュッセウスは自らもビームサーベルを持ち出して、かろうじて受け流す。旧式のオデュッセウスと比べては明らかに出力が上、高性能と思われる量産機デナン・ゲーのサーベル圧力がレーン機の刃にと多大な負荷を与える。

 

「新型、この時代ではガンダム信仰は通用しないか!!」

 

 それを言ったら、彼レーン・ハイムが若者であった頃にはすでにガンダムというものは絶対的な存在ではなかった。何しろ罠にかかったテロリストという役割だったのだ。

 

「レーンさん!!」

 

 シャア……!!

 

 ナツメ機とアラヴィス機、二機のジャベリンから放たれたビームライフルがその腕利きのデナン・ゲーをアルゴス・オデュッセウスから引き離し、そのままナツメ機はサーベルを構えつつ、その黒い機体と刃を合わせる。

 

「ラー・カイラムが来たぜ、レーン大佐!!」

「遅いじゃないか、すでに敵の赤い奴も目に見えているぞ!!」

「知るもんかよ!!」

 

 そのアラヴィスの言う通り、ラー・カイラムが集合に遅れた理由などは彼らの知るよしもない。そして、クロスボーンの赤い機体群、黒い機体と同じく敵の精鋭部隊と共に現れた。

 

 ズゥ……

 

 謎の異形、灰色のロービジリティに覆われた巨大機から感じる、謎のプレッシャーは。

 

「ラフレシア!?」

 

 主戦場にと巻き込まれたF91、シーブック機はそのモビルアーマー、大型機動兵器の姿を見て喫驚の声を張り上げる。

 

「まさかエビル・ドーガ、銀面の淑女殿か!?」

 

 機体不良の為に撤退しようかと考えていたザビーネにしても、その気持ちはシーブックと同じである。彼の場合、そのドレル・ロナの母親に言い寄られていた経験もあってか、私事でもそのラフレシア改良タイプに対する嫌悪感はなお一層であった。

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