【完結】調の軌跡   作:ウルハーツ

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断-3+α

 修練場にて。その日、ティアはとある2人の戦いを心配そうに眺めていた。片や剣と盾を手に、神速と言われるのも頷ける速度で翻弄する様に動いては攻撃を加えるデュバリィ。そんな彼女に対するのは、最近執行者になったシャーリィだった。身長も伸び、束ねていた髪を降ろして揺らしながら巨大な武器、テスタ・ロッサを手にして戦う彼女は……非常に楽しそうであった。

 

「ほらほら、まだまだ行くよ!」

 

「ちっ! 面倒ですわね!」

 

 目にも留まらぬ速さで攻撃を加えるデュバリィだが、それを軽々と回避しては反撃をするシャーリィ。だが彼女の攻撃もデュバリィに届く前に回避が行われ、お互いに大きなダメージは与えられていなかった。

 

「死ななきゃ治るんだからさぁ! もっと本気で来てよね! それとも、それが全力な訳?」

 

「……良いですわ。ならここからは本気で、参りますわよ……!」

 

「おっ! やっとその気になった? じゃ、ティア! 怪我したらよろしくね!」

 

「怪我……しないで、欲しい」

 

 魔法には傷を癒す物も存在する。この場で一番魔法を使えるのはティアであり、実は彼女の使う魔法はARCUSや他の導力器を介して発動する魔法とは色々違った。……その1つが傷すらも即座に修復出来る事。シャーリィがある人物に喧嘩を売り、手も足も出ずに敗北した際にティアが傷を治そうとして発覚した事実である。故にシャーリィは死なない限り、ティアが居れば何とかなると知ってしまった。

 

 今回も怪我なら治せるティアが居る為、殺さない程度に全力で戦う事になった2人。当然発案者はシャーリィであり、殺し合いに近く模擬戦とは呼べないこの戦いに彼女はとても楽しそうに戦っていた。が、ティアとしては不安で仕方無いのである。

 

 戦い合う2人を唯見守る事しか出来ないティアは不安が募り、到頭泣きそうにすらなってしまう。するとそんな彼女の頭に誰かの手が置かれた。その手が女性では無かった故に硬直したティアはゆっくりと顔を上げ……その顔を見て何処かホッとする。

 

「マク、バーン」

 

「あんな遊び(・・)程度で泣きそうになるな、チビ。お前が泣くと鋼が来る。まぁ、それはそれで面白そうだけどなぁ?」

 

 笑みを浮かべながら告げる彼に別の意味で恐怖を感じるが、彼の言う鋼。つまりアリアンロードが来ると言う言葉にティアは眼元を拭った。そして甲高い音と共に戦う2人を見て、もう1度マクバーンへ視線を向ける。

 

「2人、とも……止めない、の」

 

「はっ。なら、止めさせれば(・・・・・・)良い。お前がな」

 

「……()、が……?」

 

 マクバーンと会話をするティアに気付かず、戦いを続ける2人。しばらく武器をぶつけ合っていると、突然2人の足元が赤く光り始める。そして何匹もの赤い蝶が周辺を回り始め……デュバリィは額に今までの戦闘とは違う、冷や汗を掻いた。

 

「これ、魔法? え、じゃあ……ぁ」

 

「なっ! 洒落になりませんわよ!?」

 

 シャーリィが気付いて視線を向ければ、ティアが両手を上から下に降ろす動作が目に入る。そんな彼女の背後ではニヤニヤと言った言葉が似合う様な笑みを浮かべるマクバーンが居り、周辺とは別に空から感じる熱気に顔を上げたシャーリィは固まった。そこにあったのは巨大な球体。途轍もない熱気を放ち、一度味わった事がある故に彼女は理解する。そしてデュバリィの声と共に、2人は爆発する蝶と球体から発射させる炎の波に飲み込まれた。

 

「上出来だ。んじゃ、後は治してやれ」

 

「治す……ぁ。あ、あわわ!」

 

 ティアはマクバーンに言われるがまま、2人を止める為に魔法を放っていた。それが2人を戦闘不能にさせると終わってから気付いた彼女は慌てて2人の元へ。不思議と身体を黒くして黒煙を上げるのみで大きな怪我の無い2人を急いで回復。その間にマクバーンは修練場から去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、酷い目に遭いましたわ」

 

「だが、ティアも大分魔法を扱えるようになったな。不意を突いたとはいえ、血染めとデュバリィを同時に倒すとは」

 

「……」

 

「エンネア? どうかしましたの?」

 

「えぇ。少し、気になる事があって」

 

 鉄騎隊として集まった3人はティアが居ない部屋で、修練場で起きた事について話をしていた。何処か疲れた様子で語るデュバリィと満足そうなアイネス。だが彼女の話を聞いたエンネアは難しい顔をしており、デュバリィの質問に頷いて答える。彼女が何について気になっているのか? デュバリィはアイネスと目を合わせた後、「何ですの?」と続けて質問した。

 

「デュバリィ。貴女も一応、魔法は使えるわよね?」

 

「えぇ。当然ですわ。と言っても導力器が必須ですが」

 

「魔法を使うと、どうなるかしら?」

 

「魔法は精神力を使うからな。疲れはするが……ん?」

 

「な、何なんですの!?」

 

 質問に質問で返され、デュバリィが答えれば会話の中で今度はアイネスが何かを気になり始める。デュバリィだけが分かっていない様で、2人の考える姿に我慢出来ず両手を握って声を上げた。すると、真剣な表情でエンネアは彼女へ告げる。

 

「ティアちゃんは普段、導力器無しに魔法を扱える。もし同じ様に精神力を使うとして、あの子が同時に2つの魔法を使えると思えないのよ」

 

トヴァル(零駆動)の様に魔法に長けているなら分かるが……ティアの場合、それにしても幼過ぎる。まだ精神年齢は10に満たない子供だからな」

 

「ですが、実際にティアは同時に魔法を使いましたわ。劫炎が使っている様には見えませんでしたし……」

 

 3人は考えるも、答えが出る事は無かった。だが分かるのは、まだ自分達の知らない何かがティアにはあるかもしれない。と言う事だけ。

 

 

 

 一方、アリアンロードの居る部屋には現在ティアと共に珍しい人物が来客していた。それはミシュラムでティアを攫った張本人、カンパネルラ。優雅に椅子に座って紅茶を飲む彼にアリアンロードは何も言わず、その隣に座るティアはチラチラと彼を見ていた。

 

「ティアはもう、僕の事を思い出したかな?」

 

「うん……カンパ、ネルラ」

 

「そっか。それは良かった。折角連れて帰って記憶も戻したのに、もう1度初めましてからじゃ面倒だからね」

 

 決して彼とティアの仲は良いと言えない。ママやデュバリィ達の知り合いであると言う印象しか無く、警戒を解けないで居るティアに彼は思いだした様に口を開いた。

 

「あぁ、そう言えばシャーリィが呼んでたよ。行ってあげた方が良いんじゃない?」

 

「そうなの……?」

 

 カンパネルラの言葉に首を傾げ、アリアンロードへティアは視線を向ける。何処か真剣にも見える様子で彼女はティアへ頷いて返すと、それを見てティアは部屋を後にした。……そして残るはアリアンロードとカンパネルラの2人だけ。

 

「態々あの様な嘘をついてまで、何を話したいのですか?」

 

「いやぁ~、気になっちゃうんだよね。……何時まであの子と親子ごっこ(・・・・・)を続けるつもりなのかってさ」

 

「……」

 

「まぁ、僕には余り関係ないんだけどね。……だけどもうそんなに長くは持たないと思うからさ」

 

「……そうですね」

 

 気付けば飲んでいた紅茶も無くなり、彼は立ち上がると優雅にお辞儀をしながら消えてしまう。そして1人残されたアリアンロードは窓の傍に立ち、数年前の出来事を思い出していた。

 

 それはティアを拾った時の出来事。何の策略も無い、唯の偶然だった。雨の降る中、草木の生える地面に泥だらけの姿で横たわったまだ幼い子供。身体は汚れていたが、その身体に目立った傷は無かった。呼吸もしっかりしており、だが放置すればやがて死に体となる小さな命。彼女はそれを救い、育て、預け、帰って来た彼女と今、共に居る。

 

「親子ごっこ、ですか。……確かにそうかも知れませんね。まだ、私はあの子の全てを知らない」

 

 ティアは嘗てD・G教団と呼ばれる者達によって実験体とされ、破棄された。それは間違い無い事だが、それならば可笑しい点が幾つかあった。

 

 ティアが生きたまま破棄された理由。それはそのままでも死ぬと判断されたから。元気だったなら、何処か人の居る場所に彷徨った末、自力で辿り着く可能性もある。そうならない様にする為には、殺してしまう方が良い。だがそれをしなかったのは、それ程までに破棄された時点で弱っていたからなのだろう。放って置いても死ぬと思える程、その時点で弱っていた。……しかしアリアンロードが拾ったティアは意識を失っていたものの、その身体は健康体と言えたのだ。

 

 アリアンロードはこの事実に何処か別の意思(・・・・)を感じていた。ティアの中にあるであろう、別の意思を。




ティア・プラトー


言語Lv10(最大Lv.10)

人慣れLv.10(最大Lv.10)


好感度『ティア→キャラ』

★★★★★
フィー
アリアンロード
デュバリィ
★★★★☆
トヴァル・シャロン
ティオ・アルティナ
ヴィータ・シャーリィ
アイネス・エンネア
★★★☆☆
アリサ・サラ
エリィ・ノエル・キーア
アルフィン
マクバーン
★★☆☆☆
リィン・エリオット・ガイウス・マキアス・ユーシス
ラウラ・エマ
ロイド・ランディ・ワジ
クロウ・ゼノ・レオニダス
カンパネルラ
★☆☆☆☆
ブルブラン
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