シャーリィとフィーだけで戦えば、その戦力差は前者の方が上回る。だが、今フィーは1人で戦っている訳では無い。エリオットやリィンと共に戦えば、その戦力差は反対に彼女の方が上回る事が出来る。……が、それはシャーリィも同じ事だった。
「っ! うわぁ!」
魔導杖を手に魔法を使おうとするエリオットの元に、銀の刃が迫る。何とかそれを回避すれば、その足元に浮かぶは巨大な時計。急激に足が重くなり、更に重ねる様に炎の球体が彼へ迫る。が、それを間に入った長身の男性……A級遊撃士、アガット・クロスナーが持っていた巨大な剣を片手で振るい、払い退けた。重剣と言う異名を持つ彼はその通り巧みにその巨大な剣を軽々と扱う実力者。そんな彼へ、今度はデュバリィが迫る。
「えいっ! やぁ! もう、1回……!」
そんな彼女の後ろで、様々な動作を繰り返してティアは魔法を発動する。シャーリィの周りに攻撃を防ぐ障壁が生まれ、デュバリィの胸が白く輝くと共にその身体能力が向上。そしてティアを中心に広がる赤い波紋が2人の士気を高める。
「でりゃぁ!」
「ぬぉ!」
巨大な剣とデュバリィの持つ剣では当然その威力も違い、男女の差もあって前者の方が強い筈だった。しかしデュバリィの一撃はアガットの身体を後方へ引きずり、そんな彼の頭上に水滴が1つ。巨大な渦となって彼を襲う。
「ラウラ、ティアを止めるぞ!」
「承知した!」
「させないよ!」
「貴女の相手は私」
2人の補助をするティアを止める為、動き出したリィンとラウラ。お互いに戦術リンクを繋ぎ、迫る2人を前にシャーリィが止めに入ろうとするも、フィーが立ち塞がる。デュバリィはアガットとエリオットに掛かり切りで助けに行けず、迫る2人の姿にティアは怯えた様子で目を閉じて両手を突き出した。……それは2人への恐怖では無く、強力な魔法を扱う事への恐怖だった。
「なっ!」
「リィン! 立ち止まるな!」
嘗てデュバリィとシャーリィを戦闘不能へ陥れた巨大な火球。全く駆動時間も無しに生まれたそれに驚くリィンを横目に、ラウラが足を止めずに走る。彼女の言葉にリィンも足を再び進め、2人は臆する事無く球体の中へ自ら入ってしまう。
「リィン! ラウラ!」
「あの馬鹿ども、何やってんだ!」
「正気ですの!?」
2人の行動に驚かずにはいられなかった3人。フィーとシャーリィも横目で見続ける中、突然空に浮かぶ火球は内側から崩壊する。空に舞う火の粉に包まれる中、リィンとラウラはティアの目の前と背後に着地した。
「良い温度だったぞ、ティア」
「勝負ありだ」
「あう……」
互いに着ていたコートの端を焦がしながら、ティアの前に刀と大剣を突きつける2人。それはティアの完全なる敗北を意味していた。
「ティア! ぬぐっ!」
「おらぁ!」
ティアの敗北に動揺するデュバリィの隙を突き、アガットは大きく大剣を斬り払う。大きく飛ばされながらも綺麗に着地を決めたデュバリィは猛スピードでティアの元へ迫るも、それを妨害する様にラウラが前へ。……その間にリィンは「すまない」と謝罪をして、ティアの後ろ首を刀の柄頭で叩いて気絶させてしまう。
「……ませんわ……許しませんわぁぁぁ!」
「くっ!」
ティアがやられた事で怒りを露わにしたデュバリィ。怒りの乗った一撃は単調だが、途轍もない威力を持っていた。そして神速と呼ばれるにふさわしい速度が加わり、ラウラが剣を横に構えて防ぐだけで手一杯になってしまう。
「あぁ~あ、少しは抑えろ。なんて人の事言えないじゃん。思いっきり姉馬鹿が出てるし」
「ティア、傷物にされた」
「
「気絶させただけだ! 煽らないでくれ!」
敵同士であり、戦いながらも話をする2人の会話に。特にフィーの言葉に反応したデュバリィ。その頭に角すら見えそうな様子にリィンが抗議しながら、ラウラと共に彼女と戦闘を開始する。フィ―の元へはアガットとエリオットが合流して、再び死闘が再開した。
ティアが目を覚ました頃には、もう廃村の傍どころかセントアークからも離れていた。初めての実戦は惨敗。足を引っ張ってしまった事もあり、彼女はその事実に塞ぎこんでしまう。余り誰かを慰める事をした覚えのないシャーリィは掛ける言葉が思い浮かばず、デュバリィは溜息をついてしゃがんでから声を掛ける。
「誰でも最初は上手く行きませんわ。失敗は成功の元、ですわよ」
「うん……」
弱々しくも頷くティアだが、立ち直れている様には到底見えなかった。……デュバリィはあの時、初めてティアが共に戦おうとする理由を知った。だからこそ、放って置く気にはなれなかった。しかし何を言っても慰めにはならない。そう思ったデュバリィは意を決して自分のマスターであるアリアンロードの元へ赴いた。
「マスター、失礼を承知で少々お時間を宜しいでしょうか?」
「えぇ。良いでしょう。どうしましたか、デュバリィ」
「今回の任務でティアが落ち込んでしまっているのはもうご存知だと思います。そこで、彼女に気分転換をさせたいと思うのです」
デュバリィの知る限り、ティアは基本同じ場所に居る事が殆どだった。今回の任務で違う街へ行ったのは彼女に取ってかなり久しぶりの外出とも言える。そこで、デュバリィが考えたのはティアを任務とは関係なく何処かへ遊び目的で連れて行く事だった。悲しい事や辛い事があった時は、楽しい時間を過ごして元気になる事で乗り越えられる者も居る。……決して無駄な事では無いだろう。
「そうですね……貴女達が動く次の任務は約2月後。それまで、ティアを連れて自由に何処かへ行くと良いでしょう」
「あの、マスターは……一緒では無いのですか?」
「私が、ですか?」
「ティアもその方が喜ぶと思いまして。お忙しいのであれば、致し方ありませんが」
「……考えておきましょう」
「! はい!」
完全な否定が返って来なかった事で嬉しそうに返事をした後、デュバリィは部屋を後にする。……嘗て、ティアと何処かへ行った事がアリアンロードにあったか? と問われれば、答えは否である。デュバリィの進言に、塞ぎこんでしまったティアを元気付ける為に。偶には彼女達と共に行動する事も良いかも知れないと、彼女は僅かに思うのだった。
一方、アリアンロードの部屋から出たデュバリィは嬉しさを隠せずに喜びながらティアの元へ。まだ悲しそうにベッドで座るその姿に内から溢れ出る喜びの感情を失いながらも、デュバリィは隣に座って先程アリアンロードへ話した事を告げた。
「ママ、も……一緒?」
「まだ分かりませんわ。ですが、来てくれると良いですわね」
「うん……デュバリィ」
「何ですの?」
「ごめん、なさい」
「……違いますわ。こういう時は、ありがとう。と言うべきですわよ?」
「うん……ありがとう」
「どう致しまして、ですわ」
その後、弱々しいままのティアを元気付ける為に行きたい場所についての話をしたデュバリィ。後日アイネスとエンネアにも話を通して、ティアが信頼している好としてシャーリィにも話を持ち掛けた。戦う事が大好きと言えど決してそれだけでは無い彼女は乗り気を見せ、やがてティアの慰安を目的とした外出が決行される事となった。……そしてそこには、優し気に少女達を見守る鋼の聖女の姿も……。
アリアンロードの結末について
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原作通りに退場
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『ママ』として残る